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カフェ・ヒラカワ店主軽薄

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2008.11.02
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カテゴリ:ヒラカワの日常
秋の気配が濃厚になってきた。
音楽が必要だということで、
インターネットから四枚のアルバムを購入。
大人買いである。
Ann Sally
Bei Xu
Sophie Milman
Noon
どうも、この手のジャズ・ボーカルに弱い。
ノラ・ジョーンズから、
プリシラ・アンに行って
また、アン・サリーに帰ってくる。
上の四人はどれもよいが
なかでもNoonにしびれる。
こんな500マイルを聞いたことがない。

大人買いついでに、
車の中に産卵(おお、誤変換だが、これはこれで感じが出ている)
しているCDを整理する。
朝の弱い光のなかで、
Noonを聞きながら
裸のCDのジャケットをつくったり、
コンピュータの中で、
落語と音楽を選り分けたりしながら
半日を過ごす。
枯葉の庭を掃き清め、水雑巾で床を拭き掃除して
縁側で一服したような気分である。
不景気と、個人的な諸々で
片付かなかった気持ちが片付いていく。
気持ちを片付けるには、身の回りを片付ける必要があるということだ。

バジリコの安藤さんと約束した原稿は一向に進まない。
途中まで書いたのだが、全部捨てることにする。
アメリカの覇権と急激な衰退と、それに伴う市場原理主義の
落魄について、今それらを批判的に検証する気持ちが沸いてこない。
メディアの風向きが市場主義礼賛から批判へと変わってしまったのである。
メディアの追い風の中に自分の立ち位置を定めることは
恥ずかしくてできないのである。

リーマンショック以後、多くの会社が一夜にして
その価値を減じたのだとメディアは報道している。
確かに、株価は急落し、不動産や債権の資産も急激に減じている。
しかし、ほんとうは価値は一夜にして消失するようなものではない。
もともと、価値のないものを価値と呼んでいたのである。
昨日の会社と、今日の会社はほとんど同じである。
急激に価値が減ずるなどということはありえない。
総資産額や、株価の変化というものは、もし会社が売買されるとした場合の
価格が変化したということであって、
価値が変化したわけではあるまい。
価格が価値を象徴できるのは需給メカニズムが働く場所においてだけである。
会社の価値とは、労働者、経営者、家族、関係会社、商品購入者といった
関係者総体あるいは個々と会社との関係の異名なのであって、
価格が変化したからといって容易に変わりうるものではない。
それは、無名の画家の描いた一枚の絵と同じである。
その絵から切実な何かを感受できるものにとっては、
何ものにも換えがたい価値だが、
画商にとっては無名の一枚は、価格のつかないガラクタに過ぎない。

インターバンク取引が無くなり、証券の値がつかなくなる。
失われたのは極度に膨張した信用であり、急激な信用収縮が起きている
とも説明される。
しかし、もともと信用などなかったというべきであり、
欲得づくの信憑が市場を支配していただけなのである。
もし、信用している人物が何らかの過失を犯して
収監されたとしても、信用している友人は見捨てることはあるまい。
信用を担保しているのは、彼の身分や、財産ではなく、
時間の中で培われた信用そのものだからだ。

だからもし、変わったものがあるとするならば
それは価値そのもではなく価値観であり、
信用という見えない資産ではなく、信憑の対象である。
そして、もしそこに考察すべき問題があるとするならば、
何故ひとは一夜にして崩れ去るような価値観に支配され
何故ひとはかくも脆い信憑に帰依してしまうのかという
ことだろう。
そのことを知るためには、今行われているような
金融や経済の分析はほとんど役に立たない。
俺は、そのような難問の前で
もう一年も立ち往生しているという訳である。






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最終更新日  2008.11.04 16:25:50
コメント(9) | コメントを書く


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Re:立ち往生の理由。(11/02)   サンポール さん
>何故ひとはかくも脆い信憑に帰依してしまうのか

人間は均質化されたつるんつるんの状態が続くと気が変になるように出来ているのに、自分だけは汚れることがないと信じていたりするのですよね。面白い生き物です。 (2008.11.02 18:40:23)

価格は誰が決める?   妻版 さん
価格は売るほうが決める事のでも、買うほうが決める事でもないはずですよね。

買う側と売る側の、価値の一致。そこで、価格が決まる。

価値観、信憑、難しいですね・・・。 (2008.11.02 21:03:07)

憑き物が落ちると   まろ0301 さん
 だからもし、変わったものがあるとするならば
それは価値そのもではなく価値観であり、
信用という見えない資産ではなく、信憑の対象である。

☆チャペルで行われる結婚式で、神父さんが、新郎と新婦に向って、「永遠にこの者を愛しますか?」なんてことを言って、両方ともに「はい」と言うのですが、あれは違和感があります。
 「今、貴方はこのもののことを愛していますか?」と訊ねられたら、まあ「はい」と言うでしょうが、「永遠に」と言われたらためらいます。しかし、そこでためらわずに「はい」と言ってしまうのが、恋は重い病である証拠でしょうか。
 夢からさめるのにそんなに日にちは必要としないと思うのですが。
 坊さんも神主さんも、神父さんも関係ない結婚式をして良かったと思います。

 「信憑」の「憑」。「憑き物が落ちた」という言葉を思い出します。 (2008.11.02 22:49:15)

夢に願いを?   妻版 さん
本当に、ある程度の憑き物がないと結婚できませんね。

永遠に愛したい。愛されたい。

その願いが強ければ、ある程度の不安があっても、結婚出来るのでしょう。

とすると、ひとは「お金を儲けたいと思いたい」という、その願いにお金をかけている、ということなのでしょうか・・・。

(2008.11.03 04:39:18)

Re:立ち往生の理由。(11/02)   おぎの さん
みんな土から離れて、「実体」が分からなくなっているからでしょう。
人間関係に長けた「文系」の人ばかりが社会の中で偉くなり、人間関係のあれこれの中で対策を立てようったって無理でしょう。
もともと「理系」だった人までが人間心理に首をひねって、「具体策」を無視し、「打つ手がない」ことにされちゃえば、私ら若輩者に、未来はないかもしれないですね。 (2008.11.03 19:08:19)

Re:立ち往生の理由。(11/02)   ジュン さん
平川さん、こんにちは。
秋にジャズを聴く…いいですね。
ところで今、ご存じのように株価が暴落しています。 以前平川さんは「俺は株をやらない」と書いていらっしゃいましたが、今はまさに買い時ですよ~。
いや、あの、どうも余計な事をスミマセン。博打が好きな私は居ても立ってもいられなくて、つい…。 (2008.11.03 21:07:13)

Re:価格は誰が決める?(11/02)   サンポール さん
妻版さん

>買う側と売る側の、価値の一致。そこで、価格が決まる。

昨晩のWBSでもチラっと触れていたけれど、永続的な経済成長を実現しようとすると、どこかで自分の所得以上の消費を行わざる得なくなる。実際そんなことは不可能なのだけれども、その不可能を可能にしたのが金融システムですよね。クレジットしかり、ローンしかり・・・。それらを否定するのは簡単かもしれないけれど、私はむしろ「頭の良い人って凄いな」と感心してしまいます。と、言ってみても誰も私にはお金を貸してくれませんけれど。 (2008.11.04 15:13:05)

小田嶋さんが   T.Kouya さん
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/nbonline.cfm?i=2008110200558cs&p=1

にて,いいコラムを書いておられますね。単純な市場原理主義叩きでない視点を提示した最初の文章かも。 (2008.11.04 15:26:58)

永続的な安定した収入の為に   妻版 さん
私も「人にお金を使う気にさせ、そして、実際に使わせるシステムを考えられる人」が羨ましいです。

仕事の依頼を増やすのに、四苦八苦してる毎日なので・・・。


(2008.11.05 01:51:23)


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