どうにも止まらなくなる。
なんとなく、夏ばて。仕事のほうはそこそこ順調に進んでいるのだが頭のほうはボーっとしていて身体と頭が別の方向へ歩き出してしまう。風邪も治りそうであとを引いている。しまらない夏の終わりである。昨日は、オフィスで菊地さんと待ち合わせてその足で黒門町の落語協会へ。毎月の、恒例柳家の喜多八、小ゑんの落語会「試作品」をのぞく。オフィスに来ていた、辣腕アナリストの小野さんと、その秘書の沖州さんにも声をかけたら是非是非というので、ご一緒した。喜多八さんの芸風が気になっていた。人一倍頭がでかく、遠目からはダンディーだが、近くで見ると毛蟹のような、グレムリンのような不思議な雰囲気でいつも、つまらなそうに高座に上がり、シニカルにしゃべってつまらなそうに去っていく。虚弱体質が売りだそうで、引く芸を受け継ぐ貴重な師匠である。本日のお題はひとつめが「粗忽の釘」とりをとったのが「おすわどん」というめずらしい噺であった。オチが素晴らしいのだが、ちょっと、文字では表現できないのが残念である。「粗忽の釘」は、何人かのものを聞いてきたが、喜多八師匠のが一番しっくりときて、笑いが深い。小ゑん師匠は、いつもながら安定したまくらで「かぼちゃうり」と新作の「即興詩人」はどちらも師匠の小さんを彷彿とさせる風情である。この噺のために、師匠は茨城は水海道まで取材に行っている。大いに笑って皆勤賞の石川君と小野さん、沖州さん、菊地さんと黒門町のソウル&焼き鳥の「SOUL BIRD」で呑む。秀逸な店名じゃないか。そこに、チリリリンと携帯が鳴った。出ると小ゑん師匠からであった。ほどなく、小ゑん師匠と、喜多八師匠、落語作家の先生と鳥越落語会を主催されている方がソウルバードに乱入してきた。あとは、小ゑんさんの独演会。濃い。落語初体験の沖州さんは、不思議の国に迷い込んだアリスのごとくであった。「ここは、ひとつこっちのおごりで」ということで散会。ロボット歩きの喜多八師匠が近づいてきて「どうも、ごっとさんでやんした」小ゑん師匠が「いいってことよって、俺がいうこたねぇか。安く使われちゃうかもしれないよ」次の喜多八師匠の一言が良かった。「こんな、汚れたからだでよかったら、なんなりとつかっておくんなさいまし」なんか、幸せな気持ちになる。文鳥舎の寺子屋講座のパンフレットを見ていたら10月から、喜多八師匠の「落語指南」があるとあった。実践、噺の稽古。受講料15,750円。口上に、「寄席で芝居をみるだけでは飽き足りなくなった、ちょいと自分でもやってみたくなった、そんな御仁のための落語道場です。」とある。よし、来月はこの講座に通ってみるか。病膏肓に入るだな。