<リアル30’s>番外編(2止)「直接こどもたちを相手に始めたい」
当たり前だよね!
連載リアル30’sの番外編。前回に続き、ゴム製品専門商社「小菅」(東京都墨田区)の小菅崇行会長(62)へのインタビューです。社員のみなさんにもお話を聞きました。【聞き手・鈴木敦子】 −−社員を大切にされていますね。従業員を「コスト」と見る企業もありますが。 確かに人件費は経理上、一般管理費の一つですし、そういう割り切り方もあるでしょう。しかし、工業機械や材料と人間をいっしょくたに位置づけるのはいかがなものでしょう。商社は仲介することに意味を付ける仕事だから、もともとそういう考えはなじまないのです。 −−経営が厳しくなっても方針は変わりませんか? わが社では常に社員に数字をオープンにしています。毎年決算後に社員を集めて説明会を開きます。収益の増減や財務諸表などの情報も、経営方針と共に理解し、共有してもらっています。無駄をなくして収益を上げようという意識は社員にも根付いています。もし、業績が悪くなって今の福利厚生などを維持するのが難しくなったとしても、常に数字をオープンにしているので、社員のみんなと考えて、納得できる方法を採れるでしょう。経営者が勝手に決めて押しつけるという方法はしません −−今後の目標は? 社員個人の生涯設計にもっとしっかり気を配りたい。今後、社会保障制度が後退し、個人の負担が増えた分、給料を上げてすべて補ってあげられればいいが、なかなかそうもいかない。税金や年金のことを一緒に考えながら、今後の長い目で見た時の個人の生涯設計について話し合いたいと思っています。 墨田区の子育て支援にもさらに貢献したいですね。子育て中の女性が働きやすい職場にしたり、社内に赤ちゃんが立ち寄って休憩できる場所を作るなど、間接的に子育てを応援していますが、直接子どもたちを相手に何か始めたいです。 小菅で働く社員の人たちにも話を聞きました。 ◇外勤営業の課長の男性(40) 高校卒業後入社し、勤続21年です。家族は妻と0歳から12歳まで3人の子ども。基本的に残業はなく、会社のすぐ近くの社宅に住んでいるので、晩ご飯は家族そろって食べることが多いです。赤ちゃんの夜泣きの時は奥さんと交代で見たり、土日は僕が子どもを連れて出かけたり……。育児は全然負担にならないし、楽しいですよ。入社するまで化学の専門知識がなかったので、入ってから必死で勉強して、危険物取扱関係の資格を四つ取りました。◇物流部門のグループリーダーの男性(39) 勤務は8時〜16時半。妻が働いているので、保育園と学童保育に子どもたちを迎えに行くのは僕が担当したり、妻と手分けしたりです。子どもが病気の時などは、会社が休みを取りやすい環境を作ってくれているので、有給休暇を使わせてもらうことも。保育園から急に呼び出されると、同僚に仕事を引き継いで早退させてもらったこともあります。今後の学費のこともあるので、もう少し夫婦共働きを続けたいと思っています。長男の保育園ではお父さんのお迎えも多いですよ。◇経理部門の主任の男性(34) 専門学校を卒業後、税理士事務所に就職しましたが、20代後半で小菅に転職しました。 上司や先輩より先に帰ることも普通で、みんなそれぞれ自分の仕事が終わっていれば、17時半終業のチャイムが鳴ればすぐ「お疲れさまです」と言って席を立ちます。夜は時間があるので買い物をしたり、本屋に行ったり、ゴルフの練習をしたりする……。あと、もっと勉強した方がいいかな、と思っています。独身で今のところ結婚の予定はないけど、将来は子育てにしっかり携わりたいので、子どもと一緒に遊べる時間に帰れる雰囲気はいいですね。◇総務部門の係長の女性(52) 次の日にできる仕事は残業せず次の日に回す。上司は無理をさせないし、社員がさぼることもありません。安易に残業に逃げないよう、グループ内で工夫するのが会社の考えです。仕事とプライベートは分ける習慣ができて、ワーク・ライフ・バランスが社員の幸せにつながるという考えを実感しています。 前職は銀行員です。結婚すると続けられる雰囲気ではありませんでした。結局辞めて、すぐに小菅に転職しました。今は子どもが1人います。 私は古い時代の人間なので、有休を取るときはやはり心苦しい。でも会社の雰囲気として取りづらいというのはありません。体が動く限り働いて会社に恩返ししたいし、子育て中で休まざるを得ない若い社員を応援したい。私も子どもを抱えて仕事を続ける身として、次の世代を手助けしたい。男性社員も子育てに協力するのはいいことだと思いますよ。◇総務部門の女性(50) 中途採用で勤続18年目。今は子育てのため1時間の時短勤務を利用しています。給料は減りましたが、仕事に見合った額だと思います。子どもの都合で休みが多く、辞めようかどうか葛藤もありますが、上司や同僚のお陰で続けられています。親切にしてもらっている分、仕事で貢献したい。 この会社は良い意味で家族ぐるみ。でもなれ合いはない。仕事は仕事と割り切って、みんな真面目です。今の時代、何があるか分からないから共稼ぎは続けたいし、それが当たり前だと思います。子どもの同級生のお母さんで正社員の人は少ないですね。時間も不規則だったり残業が多かったり。私は仕事が定時なので、子ども会の役員を引き受けています。