出国準備!
彼は仕事を1週間休んでいるそうで、ドイツには来週に帰るとの事。なんか、仕事しなくても食べていけるのに人生ってそんなものじゃないらしい。朝から、彼の家の古いアルバムを見る。曾お爺さんの代からの写真があった。戦争時代や、革命時代はスイスの屋敷に保管していたとの事。凄い量なので写真集だけで小さな図書館が出来そうであった。華やかな昔の貴族が贅沢に暮らしていた証と言うべき物だろう。お爺さんか曾お爺さんの頃に、日本人らしき人物が写っている写真があったので但し書きを確認すると、日本の皇族であった。留学時代パリでプリンス朝香とプリンスセス北白川と書いてあった。今、皇統維持で話題になっている旧皇族であった。私たちの子供の時代の写真が一番多くて、友人一人で写っている写真は全くなく、いつも私と二人で写っていた。大きくなってからは、一人で写っている写真ばかりだが、子供時代のこれらの写真は私は一枚も持っていない。本当に兄弟同様に育ったんだと改めて感じた。私は兄弟が多いから余り感じないが、彼が私を肉親同様に扱うのは理解できる。と言うより、こちらも実際の兄弟よりも彼の方が気心が知れている。長い時を一緒に過ごしたからだ。青春時代を共に過ごせなかった事は本当に残念。朝は、写真を見ながら軽食を取ったので、昼は彼の家で、彼が普段休日に食べているのと同じ様な食事をした。非常に重たい食事で、昔は夜が重たかったが健康の事を考えて昼に重点を置く様にしたと言っていた。昼なのに、日本のホテルのフルコースの様なサービスの仕方であった。昨日の夜の食事は、私のための特別な晩餐であったようだ。彼とロシアの領事館に行き、母国のパスポートにビザを発給して貰う。日本人なのに、その担当者は全くこの国の公務員と思い込んだ様で公用ビザ?が発券された。後で、問題にならないと良いが。少し不安が残る。友人は全く問題ない、何かあったら領事館か大使館に駆け込めば全てうまく行く様に手配しておくからと心強い事を言ってくれた。夕食は、私の希望で昔良く彼の両親が連れて行ってくれた老舗のホテルで地元の料理を食べる。昔の味を覚えていないので、美味しくなったのか、不味くなったのか分からないが、十分満足した。ワインを二人で3本も開けてしまった。今回は私が払うと言うと、友人が「ごちそうさま」と言ったので、そのままキャッシャーに行ってカードで払おうとする。テーブルの担当者が私に払わせない。今日の食事は「サービスです。」と言う。意味が良く分からない。どうやら、彼が食事してもこのホテルは金を取らない様だ。だから、友人は私が払うと言っても何も言わなかったのだ。仕組みはどうなっているか分からないが、何度もそのテーブルの担当者が「金はいらないんです」と強く言うので、仕方ない。彼に理由を聞いたが、はっきりは教えてくれなかった。私は、このホテルに、帰国した当日行きたいと言ったが、彼が米国系の新しいホテルを選んだ理由が分かった。彼には、このホテルは特別な場所ではなく、屋敷で食べるのと同じなんだ。私が長く滞在したら、きっとこのホテルで彼と食事をする事が多くなるのだろう。家で食事をするのと同じ感覚なら。今日はあえて、彼と同じベットで寝た。この国の感覚でも日本の感覚でもそれは奇異に思われる事なのにあえて。昔からいる使用人は、笑いながら寝酒を二人のために持ってきてくれた。「思い出しますねぇ~」とか言いながら。結局、彼が用意してくれた私のための部屋は服を置いておくだけの部屋になってしまった。彼が用意してくれたカジュアルウェアはこの部屋に残しておく事にした。暫くベットに入って話していたが、比較的早く寝た。