新フォードシステムと時給3.6時代
フォードシステムは作業者に当時では破格に高い賃金を払った。労働者に富を分配し、自動車の買い手にするためだ。ネットを駆使した「新フォードシステム」はこの点で心もとない。 「時給は良くて三・六ドルだった」。米評論家のデビッド・マーグリウスはメカニカルターク(アマゾンの仕事仲介サイ)で様々な仕事をした経験を披露した。米連邦最低賃金の時給は五・一五ドルであるだけに、「これは究極のアウトソーシングだ」と労働の細分化について警告する。 「ネット+善意」で、個々の仕事や活動は究極の効率化を目指せる。だが、それは社会全体を豊かにするのか。「労働」「ボランティア」という概念まで崩れはしないのか――。 英国の哲学者、エドマンド・バークはかつて「市場の商品価格は買い手に依存するが、労働力を提供する人間の生活が成り立たなくなることまでは想定されていない」と指摘した。新フォードシステムでは、この指摘が現実となる世界が見え始めている。http://www3.rocketbbs.com/731/bbs.cgi?id=gensizin&mode=res&no=77852007/02/17, 日本経済新聞 朝刊