【9月26日】(ユタ州ソルトレイクシティ)孤発性筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断される前にスタチン療法を受けた患者の多くはスタチン療法に伴う筋肉の脱力と疼痛を報告したことが、新規研究によって明らかになった。 この知見は、スタチン療法がALSのより急速な進行と関連することを示唆する過去の研究で得られたエビデンスを基礎としている。今回の研究で認められた関連は孤発性ALS患者に限定されている。 「我々はスタチンがALSを引き起こすと言っているのではないが、一部の患者における診断に至るまでの経過をスタチンが加速させる可能性がある」と、Carolinas神経筋/ALS-MDAセンター(ノースカロライナ州シャーロット)の部長であるBenjamin R. Brooks, MDはMedscape Neurology & Neurosurgeryのインタビューで述べた。 この結果は米国神経学会の第133回年次総会(ソルトレイクシティ)で発表された。 スタチンの影響 高コレステロール血症と高グリセリド血症の治療のためにスタチンを投与している患者において、スタチン投与を中止すると消失する筋肉の疼痛、痙攣、または脱力が出現する可能性があることはよく知られていると、Brooks博士は述べた。稀に、治療がミオパシーまたは横紋筋融解症と関連することがある。 ALS患者を対象にトロント大学の研究者らが行った最近の研究では、スタチンを投与している患者は、スタチン療法を行っていないALS患者よりも急速な機能低下がみられたことが示唆された(Zinman L et al. Amyotroph Lateral Scler. 2008;4:223-228)。 フランスの研究者らによる同様の知見に基づき、スタチンをALS患者に使用すべきではないとの勧告がなされたと、Brooks博士は述べた。 「そのことは神経筋の治療に携わるすべての医師が徐々に基準として採用しつつあると私は思う」。 研究者らは、もしスタチンの使用が疾患の進行を加速させるのであれば、ALS患者には診断よりも前にスタチン療法に対する反応が現れていただろうという仮説を立てた。 この問題を検討するために、Brooks博士は、ALS、原発性側索硬化症(PLS)、免疫性運動ニューロパシー、および非定型運動ニューロン疾患を含む、孤発性または家族性の運動ニューロン疾患の患者240例における診断前のスタチンの使用状況を再検討した。 博士らは、孤発性ALS患者164例のうち31例が診断よりも前にスタチンを使用していたと報告した。1種類のスタチンの投与を受けていた28例の患者のうち11例は診断よりも前に、治療に関連する筋肉痛と脱力増大を報告していた。 残りの3例の患者はそれぞれ3種類のスタチンの投与を受けており、それぞれの薬剤による疼痛と脱力を報告していた。すべての患者は、スタチン療法に関連するこれらの愁訴から12カ月以内にALSと診断されていた。 「したがって、これは、スタチンに曝露し最終的にALSと診断されたそれらの患者において、半数の患者にはスタチンへの最初の曝露に関連して疼痛および脱力が発現するだろうということ、およびそれがALSの診断につながることが非常に多いということを、疫学的に述べているのにすぎない。それは原因ではないかもしれないが、患者に神経科医を受診させ診断を受けさせるに至る疾患進行過程の誘因である可能性がある」。 博士は治療に関連した、筋肉に特異的な問題および認知の問題に関する文献の数が増加していることを指摘し、「私はスタチンの潜在的な副作用について懸念する人々がますます増えていると思う」と補足した。 「スタチンは両刃の剣である。それらが役立つ疾患もあればそうではない疾患もあり、それらが役立つ人々もいればそうではない人々もあるので、投与を開始する際には非常に注意深くあらねばならない」。 スタチンを処方する医師は副作用に細心の注意を払うべきであると、博士は述べた。「総合的に、スタチンを使用するのは非常に良いことであり多数の人々に優れた効果をもたらす」と、博士は結論づけた。「我々は比較的稀なスタチン合併症のリスクを有する可能性のある人々のサブグループについて述べているのである」。 American Neurological Association 133rd Annual Meeting: Abstract M-9. Presented September 22, 2008. |