報告数は過去11年間の同時期で最多
口腔粘膜や四肢末端に現れる水疱性の発疹を主症状とする手足口病は,ほとんどが数日で治癒するが,まれに髄膜炎や脳炎などの中枢神経系合併症を来し,死亡に至る例もある。
国立感染症研究所感染症情報センター長の岡部信彦氏らは5月31日,同研究所内で開かれたメディア向けの感染症意見交換会で,手足口病の報告数が過去11年間で最多の状態が続いており,原因ウイルスのなかでも中枢神経系合併症を併発しやすいエンテロウイルス71型(EV71)の割合が多いことを報告。重症例の存在に留意するよう呼びかけた。
頭痛や嘔吐を伴う症例は要注意
手足口病の潜伏期間は3~4日程度が最も多く,口腔粘膜や四肢末端の水疱性発疹のほか,口腔内症状が強いことによる経口摂取困難からの脱水症,2分の1~3分の1程度に発症初期の発熱(38℃前後)などの症状がある。
合併症として脳炎,脳症,髄膜炎,心筋炎,急性弛緩性麻痺,急性呼吸不全,小脳失調,ミオクローヌスなどが挙げられている。
重症合併症の発現はいずれもまれであり,同センター主任研究官の砂川富正氏は「手足口病患者すべてに厳重な警戒を呼びかける必要はない」と説明。そのうえで「あまり軽く考えることなく,発疹初期2~3日の症状の変化には注意すべき。特に元気がない,頭痛や嘔吐を伴う,高熱を伴う,発熱が2日以上続くなどの症状がある場合は,慎重に対処する必要がある」とした。
発疹には特別な治療は必要ないが,重症例の治療法について藤本氏は「早期発見により呼吸循環管理を徹底し,急性期の左心機能低下や神経原性肺水腫を乗り切ることが重要。具体的には強心利尿薬の投与および人工換気,機械的循環補助が挙げられる」とし,根本治療として使用されている免疫グロブリン製剤,ステロイドホルモン,抗ウイルス薬などに対しては「確実に効果の証明されたものはない」と述べている。
主症状消失後も3~4週間は糞便中にウイルスが排泄されることがあり,長期にわたって感染源になる可能性がある。そのため,同氏は「糞口感染を防ぐには,手洗いの励行が必要。乳幼児は自ら手洗いできないので,保護者の感染予防への配慮が重要となる」とした。 MT Pro記事より
コメント: 手足口病が乳幼児期に多いウイルス感染症ですが、今年の流行が多いこと、稀に起こる合併症として脳炎,脳症,髄膜炎,心筋炎,急性弛緩性麻痺,急性呼吸不全,小脳失調,ミオクローヌスなどが挙げられている。
重症合併症に対する治療は根本的なものはないが、早期に重症化に対する備えが重要だろうということです。
感染予防が重要ですが、乳幼児は自ら手洗いはできないので、保護者が感染予防の手洗いの実行を教えることが重要でしょう。
当地では特定検診が6月初めから始まり、何となく気忙しい診療になっています。
大人の感染症は、一時期より減少しましたが、暖かい日々があるかと思うと、また寒い日になるという繰り返しなので、高齢の患者さんには厳しいように思われます。
体調管理には、それぞれ自分自身で気をつけて過ごしましょう。