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人生投げずに球投げよ☆

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Nov 3, 2006
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カテゴリ:自作小説。
当てるつもりは、なかった。

当てるつもりは、なかった。

当てるつもりは、なかった。



いまだかつて、私はこれほど短い時間に、

同じ言葉をここまで連呼した経験がなかった。



故意ではなかった。

うらみ、つらみもなかった。


しかし、それは現実に起こった。




小さな水滴がひとつ。



そのひとしずくが、水面に落ち、


波紋を広げるように、


その「乾いた悲劇」は、


私の世界をゆがめ、揺らし、


そして震わせた。





夜6時ごろ。


私は、電車にて帰路についていた。


会社帰りの人。


学校帰りの人。



この時間は全ての家路を目指す人がおり重なり、


電車内はごった返す。



そんな満員電車の中、私は、

右肩にかけたバッグのチャックが

完全に開いてしまっていることに気が付いた。


そして、その口の中からは財布が顔を出している。


「無防備なお金=盗まれて当然」


こんな、昨今の日本に蔓延する、

犯罪を「あって当然」とするような空気の中で、

このバッグの無防備さは、危険すぎる。


そう思った私は、即座にチャックを閉めようとした。


しかし、うまくいかない。


混雑する電車内で、

右肩にかけたバッグのチャックを、左手で閉めるのは

思いのほか、困難だ。



悪戦苦闘をしたすえ、

私はバッグを一度肩から外すことを選択した。



降ろされたバッグのチャックをすんなりと閉めた私は、

再度それを肩にかけ、その流れのまま、

すぐに吊り革を右手で掴みにいった。







悲劇はそのとき、起こった。







吊り革を掴むため、伸ばした僕の、右肘の側面。


それが、


前に立っていたおばちゃんのうしろあたまに、


これ以上ないほどクリーンにヒットした。








ぱこっ。









悲しいほど、狂おしいほど乾いた音が、

静寂の電車内に響き渡った。




大いなる空洞に快い衝撃を与えた音。



私の語彙では、その音の表現するのは

ここまでが限界である。



しかし、


その「悲しすぎる真実」を具現化するには、


それでもあまりに遠すぎる。



おばちゃんのうしろあたまから発生したその音は、

私の心臓を激震させるには、十分すぎる威力を持っていた。



しかし、それ以上の衝撃はそのあとやってきた。






その、おばちゃんが、何故か、振り向かないのだ。





私の指は震えた。



いや... ちょ、、ちょ、、ちょ、、、



キムタクになりそうな気持ちを必死で押さえた。


乾いた口内が、やけにざらついていた。



すると。。



おばちゃんが振り向き始めた。。



しかし、嫌味なくらい、ゆっっっくりと。



それは、


お茶酌み人形が、曲がり角で方向転換する速度と似ていた。



しかし、そこにお茶はなかった。


ただ、深い怒りがその顔面に乗っかっていた。




「すいません」



即座に口からこの言葉が出た。


しかし...


謝りながらも、何故か、


私は負けたくはなかった。



プライドがそうさせたのか。


「男」がそうさせたのか。


理由なき反抗が、私の心に渦巻いた。



それは、ある種の開き直りだった。



やってしまったものとして。


肘をクリーンヒッツさせたものとして。


全てのプライドを盾に、私は何故か堂々と、




「すいません」



と、もう一度「主張」した。



強い瞳だった。


それは、強い瞳だった。


諦めから生まれる勇気が、あったのだ。




おばちゃんは、小さく両方の口角をあげると、


もと来た早さと同じ速度で、顔の方向を直していった。


ゆっくりと、ゆっくりと。


それはさながら、


前半50メートルと、

後半50メートルを同じ速さで泳ぐ競泳選手のようだった。





【hironoview著作「乾いた悲劇」(珍獣文庫)抜粋】

※「バクタガワ症」受賞予定








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Last updated  Nov 3, 2006 12:40:48 AM
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