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テーマ:たわごと(27538)
カテゴリ:自作小説。
15時15分。
携帯電話が鳴った。 見に覚えの無い番号に私の身は硬直した。 通話ボタンを押そうか否かと迷う私の指を すり抜けるように着信は切れた。 15時52分。 また、携帯電話が鳴った。 さきほどの番号だ。 親しみのある番号ではない。 数えると12桁もある画面いっぱいの数字列が、 無機質に並べられていた。 私は、何故かこう思った。 『取ったら、開口一番で怒鳴られる』 何故かはわからないが、こういう変な予感があった。 ごるああ!!(コラア!!の興奮版) このくらい怒鳴られる気がしていた。 私は、やはり電話を取れなかった。 「19時03分」 三たび、携帯電話は鳴り響いた。 やはり、あの電話番号から、である。 私は、見つめるのみだった。 早く切れてくれ。 私は、何もしていないんだ...。 『何もしていないなら取れるはずだ』と語りかける、 もう一人の自分の存在を振り払うように、 私はただ目を背けた。 次の瞬間だ。 これまでとは違う何かに気づく。 電話が伝言モードに切り替わったのだ。 少し長く、電話の主が話をしている。 待つこと1分ほどか。 携帯はもとの状態へ戻った。 さっそく、伝言を聞いてみる。 「ごるあああ!!」から始まってもいいように、 心では「ご...ご...ご...」 と「罵声の『ご』」を耳に入れてもいい 心の準備をする私。 しかし、予想は裏切られた。 「ああ、わしだが。 あの...オマエ、あれだ。 結婚式の花は、どうするかな? わしのほうから...いや、そちらから、 電話を返してくれないようだが、 怒ってるのか? もういい加減に機嫌を直したらどうだ。 また電話かけなおすから」 ワチョーイ!!☆☆ 豪快な間違い電話キター!!☆☆ っていう。笑 (しかも俺、機嫌はさほどわるくない。っていう。) 私は思った。 人生は、思うほど、こわくない。 そして、愛に溢れているんだね。 携帯電話という冷たい機械が、 人の心をつなごうとする瞬間の 「ぬくもり」を垣間見た。 明日もし、 ここから電話がかかってきたら、 僕は出ようと思う。 「番号お間違えではないですか?? お気をつけくださいね。 ....。 娘さん、おめでとうございます。 では☆」 他人てば、時にとっても、粋な存在。 hironoview「宛てなきテレフォンコール」(珍獣文庫) ※バクダガワ賞受賞作 これは数日前の話なんですが、 結局、以後、電話はかかってきませんでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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