【1日1冊!】猿のごとく読み、人のごとく考える

2018/01/01(月)08:48

【猿のごとく読み、人のごとく考える・その302・295冊目】『樅ノ木は残った』山本周五郎著

時代小説(64)

【猿のごとく読み、人のごとく考える・その302・295冊目】 ・紹介する本 ​ 樅ノ木は残った 上中下巻セット [ 山本周五郎 ]​ ・サノーさん一言コメント「策略、陰謀にうごめくのは、自意識と欲望。武士の一念が願うのは、組織の存続」【サノーさんおすすめ度★★★★★】・ウノーさん一言コメント「信念を貫く魂こそ、武士の本懐です。絶対的権力も、及びつかないチカラが、そこにはあります」【ウノーさんおすすめ度★★★★★】 ・サノーさん、ウノーさん読書会 サノーさん(以下サ):「樅ノ木」は、「もみのき」と読む。ウノーさん(以下ウ):この本のタイトルでしか、お目にかかったことがない漢字です。サ:山本周五郎の代表作の一つといってもいいだろう。ウ:仙台藩存亡の危機である「伊達騒動」を、魅力にあふれた登場人物と、緻密な描写で描き出した大作です。サ:仙台藩取り潰しを目指す幕府側の陰謀と策略、それに対抗する「原田甲斐」を軸とした「仙台藩の志士たち」の愛憎劇、そこに一剣の冴えが情勢を逆転させる殺陣(たて)が加わり、大娯楽時代小説となっている。ウ:敵かと思うと味方、味方かと思ったら敵、好機かと思えば罠、危機かと思えば好機と、敵味方の思惑と策略を存分に楽しめる一冊です。サ:テンポも速く、描写も鮮明、傑作だといっていい。ウ:敵味方、それぞれに「正義」があり、「守るべきもの」があるというのが、単純な「勧善懲悪」ものにはない、魅力を放っています。サ:ひたすら「伊達家の内紛」を誘導し、策と挑発を繰り返してくる「幕府側」に対し、知恵と度胸、そして「忠義」をもって対処していく原田甲斐の姿は、現代にも通ずる「武士の魂」を学ぶことができる。ここで描かれた組織の条理と不条理、権力への対抗策は、現代でも変わらない。ウ:読んでいて連想したのは「半沢直樹」シリーズです。サ:似てるよな。陰謀と策略に対し、智謀で対抗し、道理と筋を立てて、組織を守り抜くわけだから。ウ:そっくりです。ただ違うのは、武士の時代は文字通り「命がけ」であり、現代は「殺されはしない」という点です。サ:その「無常観」が、このタイトルに見事にあらわれている。この作者が見つめていたもの、描きたかったことを、雄弁に語っている。ウ:原田甲斐の「死にざま」に、武士の「生きざま」が、はっきりと浮かび上がります。それは、雄大な時の流れの大河のなかで、人間の命が放つ一瞬の輝きを、教えてくれます。【了】http://amzn.to/2C39mCO 

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る