【1日1冊!】猿のごとく読み、人のごとく考える

2018/03/03(土)08:32

【猿のごとく読み、人のごとく考える・その363・356冊目】『放浪記』林芙美子著

文学(41)

【猿のごとく読み、人のごとく考える・その363・356冊目】 ・紹介する本 ​ 放浪記 (ハルキ文庫) [ 林芙美子 ] ​・サノーさん一言コメント「宿命的な放浪者である著者の、生存への渇望。彷徨うなかで培われる感覚」【サノーさんおすすめ度★★★★☆】・ウノーさん一言コメント「花の命を儚みながら、作家を目指した女性の告白を追ってみましょう」【ウノーさんおすすめ度★★★★☆】 ・サノーさん、ウノーさん読書会 サノーさん(以下サ):女流作家は数いれど、林芙美子ほど「破天荒」で「正直」な作家はなかなか珍しい。ウノーさん(以下ウ):まさに「露骨」で「生々しい」日記文学です。サ:第一部は幼少時代から、画家との結婚、初めての原稿料を手にするまでの「つれづれ」物語だ。ウ:「ふるさと」はなく、「旅がふるさと」だと言い切れる「幼少時代」は、つい引き込まれてしまう話しです。サ:「行商」というスタイルは、いまでは少数となってしまったが、物流が発達していない社会では「有効な販売方法」だった。ウ:仕入れたものを違う場所で売る、その差額でまた仕入れを行い、違う場所へ向かう、まさに「旅から旅」のお仕事ですね。サ:その環境が、この「放浪の女流作家」の土台となっている。転職につぐ転職、貧苦と屈辱、相手が固定されない恋愛の連続、虚構かと思えば、随分とリアルな描写で、告白であることに驚かされる。ウ:その生活のなかで培われ、育っていく「作家魂」に、多くの人が惹かれたんですね。サ:自分勝手であるとの非難を覚悟の上で、というより、その非難により注目を集め、自分の文学に持ち込んでいった作家でもある。ウ:まるで現代の「炎上マーケティング」ですね。でも違うのは、とことん「正直」であることです。サ:それだけではなく、「言葉で表現すること」「文体と文学」に真摯に向き合い、発表と修正を重ねた結果、得られた評価であることに「共感」と「価値」がある。ウ:全ての「想い」は、全ての「出発点」であることを認識させてくれる一冊です。【了】http://amzn.to/2t76Hbe

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