【原子力】熱出力と核分裂数ほか
原発事故をきっかけに原子力について色々学ぶ機会があった。今日は原発の熱出力から机上計算を行って見ようと思う。被災した福島第1原発の2~5号機は東電サイトの記載によると電気出力78.4万kW、熱出力238.1万kWtとの事である。おおよそ原発と言うものの熱効率はあまり良くなく、だいたい3分の1と言われている。上記の場合、238.1万の発生熱から78.4万の電力が生まれるので熱効率は32.9%と計算できる。残りの3分の2のエネルギーは温排水等となって環境中へ捨てられている。次に毎秒238.1万kWtもの膨大な熱出力を生む核分裂反応の数を計算して見る。ウラン235原子ひとつが核分裂した場合の発生エネルギーは約200MeVと判っているのでこの値をそのまま用いる。2~5号機では毎秒あたり1.486×1028eVのエネルギーが発生していると計算できた。この数値をウラン235原子1個あたりの分裂エネルギーで割ってやると毎秒の分裂数が計算できる。 ウラン235原子が毎秒7.431×1019個の核分裂を続ける事で熱出力238.1万kWtが維持されている事が判る。実際には燃料棒自身が発生する崩壊熱やFP(核分裂生成物)の崩壊熱なども熱出力に含めて考えられるので、上記の分裂数は熱の発生原因の全てがウラン235の核分裂にあると考えた場合の理論値となる。上記数値をアボガドロ数で割ってmolにしてみる。毎秒1.234×10-4molのウラン235原子が核分裂を継続していると計算できた。当然、原子炉の設計時には上記の核分裂数が安定して維持出来るように、燃料棒の配置、距離、数などを綿密に計算して決めているほか、再循環ポンプの流量調整などによって一定の定格熱出力を維持できるように作られているのだろう。次に炉心内の核燃料について計算してみる。福島第1原発の2~5号機は東電サイトの記載によると核燃料として二酸化ウラン(UO2)が94トン炉心に装填されているとの事である。燃料棒内のウランはそのほとんどが核分裂しないウラン238であるが、3%程度が核分裂をするウラン235であって発電に寄与している。ここではウラン235の濃縮率を重量比2.5%として計算してみる。・核燃料装荷量:94トン→9.4×107g・ウラン235濃縮率2.5%より 9.4×107×2.5%=2.35×106g・235UO2の分子量を267とすると 2.35×106÷267=8.801×103molよって8,801molのウラン235が存在している計算となる。最初の計算より、定格熱出力運転時には毎秒1.234×10-4molのウラン235原子が核分裂しているので、8,801mol全量を消費するのは、・8.801×103mol ÷ 1.234×10-4mol s-1= 7.132×107sec・7.132×107sec÷(60sec×60min×24hour×365day)=2.26yearと計算できた。よって計算上では2年余りで核燃料は燃え尽きる事となる。これはあくまでも素人の机上計算値である。実際はウラン235が根こそぎ無くなる事は無いし、燃料の配置場所によっても消費の割合が異なるようだ。核燃料は燃焼の度合を考慮の上で、場所を換えながら3サイクル程度(3年?)は使われるらしい。計算してみて、原子力は実に膨大なエネルギーを扱っている事が改めて判った気がした。