毎日は書かないダラダラブログ

2007/02/21(水)23:01

底歩のための飛車切り

将棋棋譜(28)

▲佐藤康光ー△谷川浩司  1990年の王位戦7番勝負第7局です。ここまで3勝3敗で谷川さんが勝てば防衛、佐藤さんが勝てば奪取の1局です。この当時はすでに羽生さんが竜王で(この将棋の直後の竜王戦で谷川さんが奪取)91年になってすぐに棋王奪取(南さんから)、早指し戦準優勝、屋敷さんが棋聖、勝ち抜き戦10連勝(この年最多)、森下さんが全日本プロ(現朝日オープン)、天王戦、新人王戦優勝、棋聖挑戦、先崎さんがNHK杯、若獅子戦優勝とそれまでの中原さん、米長さん、谷川さん、加藤さんなどが中心の時代から若手(現在の羽生世代中心)が活躍し始めた頃です。 佐藤さんは当時五段で王位挑戦以外にも早指し新鋭戦優勝があります。  さて谷川さんは当時から第一線級棋士。春に名人位を失冠しています。同時期に王座戦挑戦者にもなっています。それまでは自分と同世代か上の世代とのタイトル戦ばかりでしたが、この王位戦が初めての下の世代との対戦。若手の勢いが勝つのか、それとも谷川さんが意地を見せるのか?  将棋は相矢倉。先手は当時はもう常識の飛車先不突き型で後手は5筋を突かない指し方です。後手は△3三角から角を転換します。通常の△3一角からの活用に比べて1手得をしています。後手は玉を入城させる2手を省いて△6五歩から先に動きます。桂を6五に跳ねだして△6四歩では勢いが無さそうですが、さすがに玉の位置が悪いので無理はしません。また矢倉戦ならとりあえずここまで桂が跳ねられれば最悪でも完封負けする事はないでしょう。後手はここまでやってから一旦玉の整備をします。 先手は攻めの形を作ってから3,1筋を狙って攻めます。▲3五同銀に△同銀は後手がまずくなるので△2五銀から△3四歩は受けの手筋。後手玉が2二だったり先手の飛車が2筋にいるなら▲2四銀の突進もありそうですが、ここでは▲4六銀は仕方なし。しかしこれで一瞬先手の角と攻めの銀が重くなります。手番を握った後手は猛攻を仕掛けます。先手は攻め合いの順を選ばずに受けきりを狙います。ここからしばらくは難解な攻防になります。  99手目▲7三馬の局面。後手のギリギリの攻めに先手は上部を厚くしながら受ける展開が続いてきました。▲7三馬で先手も飛車の成り込みがほぼ絶対に。ここで後手は桂馬で金か銀を取りたいですが飛車成りの王手が嫌味(歩切れ)な上に先手の馬が9五に利いてきます。 単に△9五飛が決め手。底歩のための歩を得るのももちろんですが、封じ込められそうな飛車と香を使い切る一手。これで攻めが切れない形になります。  最後はきれいに寄せきって谷川さんが王位を辛くも防衛。さらに勢いがついたか王座、竜王を奪取して谷川さんはこの後3冠になります。

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