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ヒット商品応援団日記No520(毎週更新) 2011.11.28.
前回もそうであったが、忙しさにかまけてブログの更新に1ヶ月以上かかってしまった。ところで、6月のブログで「小さなブータン国に学ぶ」というタイトルで幸福とは何かについて私見を書いた。3.11以降の価値観変化の先に見え隠れする「幸せって何!日本って・・・」と書き、人口70万人という小さなブータン国の成長と東北3県の復興を重ね合わせたブログであった。そして、次のようにも書いた。 「国民総幸福量という視座も復興構想の一つになりえると思う。もう一つの国づくりを東北で行うということである。つまり、東北3県に無数の小さなブータン国が生まれるということだ」と。 その国王夫妻が来日し被災地福島を訪れ、国会においてもその爽やかな幸福論の一端を見せ勇気づけてくれた。その演説のなかでブータン国を次のように表現していた。 「国の魅力的な外形的特徴と、豊かで人の心をとらえて離さない歴史が、ブータン人の人格や性質を形作っています。ブータンは美しい国であり、面積が小さいながらも国土全体に拡がるさまざまな異なる地形に数々の寺院、僧院、城砦が点在し何世代ものブータン人の精神性を反映しています。手付かずの自然が残されており、我々の文化と伝統は今も強靭に活気を保っています。ブータン人は何世紀も続けてきたように人々のあいだに深い調和の精神を持ち、質素で謙虚な生活を続けています。」 多くの日本国民がこの演説に心動かされたのも、戦後の工業化、近代化によって無くしつつあるものを思い起こさせてくれたからであろう。演説のなかで使われているキーワードの一つが「調和の精神」である。 こうした「調和」というキーワードにふさわしい穏やかな優しい笑顔を見せてくれたブータン国王夫妻であるが、一方ではTPP参加の是非についての議論が始まった。「調和」とは反対の極にあるようなグローバル競争についての論議である。何度となくグローバル市場について書いてきたが、短絡的ではあるが一言で言えば、販売対象とする市場ばかりか生産拠点や就業労働者を含めたビジネスが地球規模に広がり、関税を含めた障壁を撤廃して自由競争を行なうということである。つまり、顧客支持を得た強いものが勝つという市場のことである。弱肉強食といえばそうであるし、恐らくスタートしてから一定期間は企業間、地域間、個人の間の経済格差はより激しくなる。つまり、勝者は大きな利益を得、敗者は市場から消えてゆくということである。課題は産業構造が変化した時、就業していた人達が、新産業へとうまく移行できるかにかかっている。そして、この時期冷静に過去の歴史、産業転換の歴史を辿ってみることも必要で、俯瞰的に見れば日本国内においては市場の多くは既にグローバル化しているという事実である。 さてこのグローバル化はいつから始まったのかというと、例えば私がテーマとする消費に密接な小売業の分野では地元商店の保護を目的として1970年代に制定された大店法があった。確か1990年代初頭の日米構造協議のテーマの一つであったと思うが、米国の外圧により規制が緩和され、そして廃止された。その結果、大型商業施設が次々と地方都市の郊外に誕生する。そして、次第に地方都市の中心市街地には競争結果として空き店舗が目立つようになり、やがてシャッター通り化し、今日に至る。 TPPの詳細内容は未だ明らかにはなっていないが、この日米構造協議を経た大店法の廃止とどこか似ている。勿論、その後地域商業の活性、空洞化した中心市街地の再生を目的に、いわゆる「まちづくり三法」が制定されたが、周知の通り地方再生への道のりはまだまだ遠い。 以前、東京で勝ち残れれば世界の都市への進出の入り口になる。東京は東京であると同時にTOKYOでもあるとブログにも書いた。自動車産業を始めとした製造業だけがグローバル競争しているわけではない。例えばユニクロはNYでも上海においても、GAPやZARA、H&Mといった企業と競争している。流通も百貨店だけでなく、ファミリーマートのようなコンビニも中国へと進出し、ラーメンを始めとした飲食業もかなり前から東南アジアを中心にグローバル化している。いや、こうした第三次産業の例を挙げるまでもなく、誰もが知っているアニメ、マンガ、といったサブカルチャーを筆頭に「クールジャパン」商品群が世界中を駆け巡っており、その流れの先には注目の「AKB48」も入ってきた。 ところで仕事上、先日神奈川辻堂にオープンした「テラスモール湘南」を見てきた。住商アーバン開発が開発した店舗面積6万3000平方メートルという巨大商業施設である。店舗数281店、つまり日経MJは”テナント多彩 楽しみ<一人十色>”と表現したが、他の商業施設に出店している主要専門店のほとんどが金太郎飴の如く勢揃いしたということである。近隣の駅ビル商業施設を始め旧商店街などには大きな影響が出てくることは間違いない。ただですら空き店舗が目立つ地方商店街はシャッター通り化するであろう。 この「テラスモール湘南」の出店企業を見ていくと、既に押し寄せるグローバル化の波がわかりやすく出ている。多くの海外企業が日本に進出しているが、まだまだ進出していない企業もあり、例えば英国から日本初出店の「キャズカフェ」には長い行列が出来ていた。そして、周知のGAP、ZARA、H&M、と共に日本企業ではユニクロ、無印良品、といった世界の主要都市で競争しているカジュアル衣料量販専門店群も出店している。このユニクロも無印良品もヨーロッパに進出し大きな失敗をし、それら経験を踏まえて今日に至っている。 しかし、こうした企業群を見ていくとグローバリズム一色のように見えるが、けっしてそうではない。1Fの食品フロアやフードコートを含め食品専門店や飲食施設のなかには、数は少ないが横浜や鎌倉の名店が出店している。 一年程前であったと思うが、「ユニクロ栄えて、国滅ぶ」と、国内産業の空洞化とデフレを促進させる元凶であると月刊誌の掲載を通じ発言した経済学者がいた。しかし、大量生産、大量販売によって、均質な製品をどんな場所でも安く手に入れることが可能となった。ユニクロがいみじくも代表するように、物質的な豊かさを手に入れてきたことは事実である。あるいは地方都市の郊外に進出している大型商業施設は買物だけでなく、映画を観たりゲームをしたり、家族で食事もして楽しく半日を過ごすことができるようになった。しかし、中心市街地の商店街はシャッター通り化し、更には進出した大型商業施設自体が経営に行き詰まり、撤退した後はどうなったか。何年もの間、閉鎖され野ざらし状態が続いているのも事実である。そして、今夜の夕食を相談する魚屋や八百屋はなくなり、デパ地下やスーパーには調理済みのパック惣菜ばかりが店頭に並ぶようになった。我が地方の味、我が家の味、おふくろの味は給食とデパ地下&コンビニの味にとって代わった。こうした均質さから脱却するかのように、クッキングスクールがはやり、使って楽しいキッチングッズが多数生まれた。B級グルメのグランプリが注目されるのも、おうちでご飯がブームになるのも、手作り、、ここだけ、固有、・・・・・少し大げさではあるが地域や家庭文化への興味と回帰といった現象が消費のいたるところで出てきている。ある意味、デパ地下のお惣菜も買うが、週末だけは手作り料理を楽しむといったバランスのとれたライフスタイルに向かっているということだ。 大分長くなってしまった。次回もグローバリズムとローカリズム、競争と調和、均質と固有、変化と移動、・・・・・・・・この時代の大きなテーマについて引き続き書いてみたい。(続く) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.11.28 15:43:09
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