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     ~2~ (最終話)

      present ~2~ (最終話)





  それから数日後、奈緒の誕生日、メールした。
  
   ~Happy Birthday!
    カレシと楽しい想い出作れよ!~

  返信はなかった。よっぽど充実してたんだろ・・・。
 


  そして次の日の夜中に突然メールが来た。


   ~バカ潤! ひとりで想い出つくれるか!~


  ・・・?「ひとりで」って、ひとりって事?カレシは・・・?

  しばらく理解できずにいた。

  フラレた?いや、フッたのかも・・・。

  どっちにしても、ひとりだったんだ・・・。

  どう返事していいかわからず、そのまま何日か過ぎた。
  気になってはいたけど、連絡していいものか、
  放っておいた方がいいのか迷っていた。




  一週間ほど経って、ロケ先の雑貨店で
  小さなガラス細工の犬を見つけた。

  奈緒はガラスのマスコットとか集めてたっけ。
  ディズニーランドでは、シンデレラ城のガラス細工の店が
  お気に入りだって言ってたし・・・。

  少し遅い誕生日のプレゼントだけど・・・。




  その日の夜遅くに実家のマンションに着いた。
  下のエレベーターホールから電話した。
  
   「はい・・・。」
   「奈緒? バカ潤だけどっ!」
   「はぁ~? ホントに潤なの?」
   「ホント! 今、うち?」
   「うん。」

   「15階の階段のとこで待ってっから。」
   「えっ?」
   「じゃあなっ!」

  もう3月も終わろうとしてるのに、
  やっぱり真夜中の吹きっさらしの階段の踊り場は
  かなり寒かった。
  夜景は綺麗だったけど。

  こっちから呼び出してはみたものの、どう切り出そうか・・・。
  落ち着かない・・・。  おっそいよ~~。
  
   「じゅん・・・?」

  珍しく控えめなカンジで奈緒が一歩ずつ階段を上ってくる。

   「おっそいよ~! さむい~っ!!」
   「だって~・・・、パジャマだったんだからぁ。」
   「いいじゃん、どんな格好でも!今さら!」

   「・・・なに? 突然・・・。」
   「あ・・・、これ。」

  リボンで口を結んだ小さな袋を差し出した。
  奈緒は黙って見てるだけ・・・。

   「誕生日のプレゼント!」
   「え~~~っ?」 
   「ひとりだったって?」
   「あ~・・・。うん、・・・だった。」
   「どーしたの・・・。」
   「・・・別れた。」
   「そっか・・・。」  
   「・・・ありがと。」

  少しだけ微笑んで、やっと受け取ってくれた。

   「開けていい?」 
   「うん。」
   
   「うわぁ・・・、かわいい・・・くま?」
   「いぬっ!!」
   「ごめ~~ん・・・。」
   「ガラス細工、好きだったろ?」
   「・・・そうだった。」
   「え~っ、違うのかよ!」
   「・・・覚えててくれてたんだ・・・。」
   「なんだよ~~・・・。
    そっか・・・、子供の頃の話だよな・・・。」

  思いっきり脱力して、手すりにもたれかかった。

   「好きだよ・・・。」
   「えっ!?」

   「ホントは好きだよ、今でも。・・・忘れてた。」
   「あ、・・・うん。」
   「ありがと。」

  今度は本物の笑顔になった。子供の頃とおんなじ顔。

  ホッとしながら少し動揺してた。
  いきなり「好きだよ」なんて言うもんだからさ・・・。
  カン違いするほうがおかしいけど・・・。
  妙に意識してしまう自分に戸惑っていた。



  ふと見ると、奈緒はガラスの犬を夜景にかざして見ていた。
  落とさないかとハラハラした。

   「ふたまた・・・、かけられてて・・・。」
 
  ガラスの犬を目の前にかざしたまま、奈緒が言った。

   「私と付き合う前から・・・。」
   「・・・。」

   「私のこと選ぶって言ってくれたんだけど・・・、
    なんか・・・許せなくって・・・。」
   「うん・・・。」

   「ホントに好きだったから・・・、嬉しかったんだけど。
    でもさ・・・、なんか・・・。」

   「・・・奈緒?」

  横顔を覗くと、ポロポロとビーズのような涙がこぼれていた。
  一瞬ギュッと胸が痛んだ。

  こんな風に、静かに涙を流す奈緒を見たのは初めてだった。

  あわてて夜景に目を移して、冷たい空気をゆっくり吸い込む。

   「もっと・・・、かわいくなれたらいいのに・・・。
    ちゃんと謝ってくれたのに・・・。
    やさしくなれたらよかったのに・・・。」

   「・・・なれなかったのは・・・、
    それが奈緒の本当の気持ちだったから、だろ?」

   「・・・意地張っちゃうんだよね・・・。
    許せたらずっと仲良くできたかもしれないのに・・・。
    こんなんじゃ、いいオンナになれないよ・・・。」

   「いいオンナだよ、奈緒は。」

   「じゅん・・・。」
   「間違ってないよ・・・。
    自分に嘘ついたらダメだよ・・・。」 
 
   「・・・いっぱい泣いたけど、まだ涙出るんだね・・・。」
   「・・・。」

   「ごめんね・・・、潤には関係ないのに・・・。」
   「なに言ってんだよっ!
    一緒に育った仲じゃないかっ・・・!」
   「なにそれ・・・。」

  鼻をすすりながら奈緒が笑った。

  俺は少しホッとして奈緒の横顔に冗談めかして言った。

   「ふつうさ、ドラマとかだったら、
    こう、抱きついて泣きじゃくるんだけどね・・・!」

   「ふふふっ・・・。」

  涙をぬぐいながら笑ってる。
  一生懸命気持ちを元に戻そうとしてる・・・。

   「ドラマならね・・・。」
  
   「・・・やってみる?」


  軽いノリで言ってみたけど、
  ふと、そういうのもアリかな?
  なんて一瞬思った。

  静かに涙を流す、儚げな幼なじみに・・・。

  でも、
  それきり会話が途切れたのに気づいて、
  急に決まりが悪くなってごまかそうと
  奈緒のほうに向き直った瞬間・・・  

  ・・・ふわっと風が動いた・・・。


  奈緒の腕が首の後ろにまわる・・・。

  シャンプーの匂いがした。

  それと同時に一気に胸の鼓動が速くなった。

  動揺しながらも、固まってる両手をなんとか動かして・・・。

  奈緒の肩を抱いて、右手で頭を静かに撫でた。


  
  奈緒は泣きじゃくったりせずに、気持ちを鎮めてるようだった。

  余計なことは何も考えずに、ただ一緒に居てあげたい。

  不思議な感情に、とまどいながら・・・。


  静かな静かな、しんとした春の夜気の中・・・。


   
   「じゅん・・・おっきくなったね・・・。」

   「へっ?!」

  不意を突かれてヘンな声をあげてしまった。

   「昔は私の方が背、高かったのに・・・。」

   「・・・。」

   「もうチョコ潤なんて、言えないね・・・。」

  そう言って、ゆっくり腕をほどいた。

   「でも、イイトコなかったしな・・・。」

  まだドキドキしながら、余裕なふりをして言った。

   「あったよ、いちど・・・。」
   「え・・・?」

   「私が幼稚園のとき・・・。
    のら犬にほえられて泣いてたら、
    あいだに立って逃げろって・・・。」

   「そんなこと、あったっけ・・・?」

  覚えてるよ。 めちゃくちゃ怖かったんだから・・・。

   「そしたら潤が追っかけられて・・・。
    近所のおばちゃんに助けられたんだけど、
    ふたりで泣きながら、手つないで帰ったよね・・・。」

   「ふ~~ん・・・。」

   「でもあれが最初で最後・・・。」
   「なんだよ!」

  ふたりで笑った。

   「二度目もあった・・・。」
   「・・・?」

   「今・・・、潤、かっこよかったよ・・・。
    やっぱり大人だね・・・。」
   「今ごろわかった?」

   「うん・・・。
    今度は潤みたいなイイオトコさがすよ。」
   「オレじゃなくって?」

   「なに言ってんの!
    アイドルはイヤだよ! 不幸になるもん!」
   「ハッキリ言うなーっ!」
   「苦労したくないのっ!」
   「はいはい、せいぜい頑張ってください!」

   「潤もねっ! 浮気するなよっ!」
   「よけーなお世話っ!!」

  いつの間にか、普段のノリのふたりに戻っていた。

  一緒に階段を下りる。

   「来年はイイオトコにプレゼントしてもらえよ!ハタチなんだし。」

   「そっか~・・・、プレッシャーだ~・・・。」

   「誰もいなかったらまた何か持ってきてやるよ。」

   「じゃあ・・・シンデレラ城のガラスの靴!」

   「はぁ~? それは本命の仕事だろ?」

   「本命はジュエリーよ、ジュエリー!」

   「あ~なるほどね・・・。」

  鼻の頭を真っ赤にした奈緒がこっちに向き直った。

   「もう、ヘンなうちわ振らないから・・・!」

   「えっ?・・・ちょっと楽しみだったんだけど・・・。」

   「そう? じゃあ次はもっとすごいの・・・!」
   「や、ちょっと待って・・・、やっぱマズイ・・・!」

   「ふふっ、・・・今日はありがと!」 

   「・・・うん。」

   「チョコ潤返上で、イカ潤だね!」
   「・・・イカ?」

   「イカしてるってコト! バイバ~~イ!!」

   「イカかよっ!」

  走ってく奈緒の後ろ姿に向かって叫んだ。

  せめて“イケてる”って言えよ~・・・(>_<)

  
  やっぱ幼なじみの奈緒だ。
  妙に安心して見送った。


  こうやって、お互い帰る場所があって、
  その間に少しずつ大人になって変わってくけど、

  何かあった時は絶対に助けに来るから・・・なんてね。

  こんな不思議な関係もいいよな。

  チョコ潤なんて言ってくれるの、お前だけだもんな・・・。



  
  ・・・夏コンには「イカのうちわ」が踊るのか~・・・?
 
          
                     おわり  28,Sep.2004


  
  さいごに~
     とりあえず、ひとつ完結してホッとしてます。
     男女の友情は成立する、例えスキンシップがあっても・・・。
     と、思うのですが・・・。先のことはわかりませんけど。
     次は、アホなほどおもいっきりのラブストーリーに挑戦したい。

   
   追記~
     続編、完成しました。
     ちょうど1年後の設定です。
     お決まりの展開でございま~す(笑)
     
                      こちらからどうぞ♪

                              01,Mar.2007
             
     



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