桧山 良秀「クラシックの愉しみ」裏話

2007/10/02(火)23:14

グールド

この4日は、あの奇才グレン・グールドが、忽然とこの世を去ってちょうど25年になるそうだ。もうそんなに経つのかと思うが、あのときの驚きは憶えている。たしかその少し前に、彼のトレードマークのようなゴルトベルク変奏曲の再録音LPが出たばかりだったはずで、勿論買って聴いていたと思うが、そのグールドが死んだと聞いて、たしかに驚いたが、又何となく、そうかあ、と納得したような気がしたものだった。 グールドは、とにかく、その奇行やバッハで語られることが多い。そのことに異論もないが、僕は彼の指から現れ出るピアノの音の純度の高さこそが、彼の特徴なのではないかと思っている。どんなに速いパッセージでも決して濁らない、物凄いテクニックには驚嘆する。僕はピアノを弾けるわけではないので良くはわからないが、彼のピアノの弾き方は非常に特殊なものだったらしい。多分そうでなければ、あれだけの音は作れないんだろう。 彼がレコードという芸術の中に存在価値を求めて半世紀。しかし、今やレコードとその再生という世界そのものが、世間の大多数の人々の日常からは、消滅しようとしている。皮肉なものだ。

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