少しばかり音を聞く
CDを買うなんて何年ぶりだろうか。前に買ったのはたしか浅川マキのライブの時。その前というともう十年、子供のいたずらでダメになってしまった『俺の裡で鳴りやまないもの』。パリでデビューした妹さんのピアノ曲を、枚方の貴公子が持ってきたのがその頃。ついこの間はまたNから松尾和子を貰った。断るのもためらわれて、彼からは随分CDを貰ったが、買ったものも貰ったものもまったく聞かないでいる。私はレコードファンだからCDはあまり聞く気もないし、第一プレーヤーを持っていないのだ。ステレオは三台。うち一台は手でグルグル、SP盤が聞ける。長岡の針と、鉄針だけはいつも沢山もっているが、しかしここ一年は数回しか音は聞いていない。お気に入りの方がここに来て壊れてしまったことと、階下まで降りて聞かなければいけない面倒臭さ。私は面倒臭がり。今は重い腰を上げてまで何かの音色を聞きたいとは思わず。だけど『白夜3,98』を見ていて無性にCDが欲しくなってしまった。ドラマの中でしょっちゅうかかるのだけど、曲がかかるたびに泣ける。見終わってみれば、あのドラマはヨンギョン(彼は素敵だ。好きになりそう)とソンシムの物語以外は音楽だけが良かったような気がする。いや、父親が亡命する前、16歳の少年と少女が自転車に乗って笑いながら走るシーン。人生のすべてのようなあの想い出に切ない音楽が似合うんだ。聞くたびにぽろぽろ泣ける曲のために、CDラジカセでも買おうかと思ってケイズに寄ってみた。はじめてパソコンでNから貰ったCDや風の音を集めたCDや貴公子から貰ったものを聞いてみたが、パソコンから出てくる音がなんともはや。う~ん、鉄針でブルースの女王が聞いてみたくなった。若い頃のSP盤が一等いいと思うのだけど手に入らない。