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Sep 22, 2008
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カテゴリ:阪神2008
首位死守…虎の新人石川 初先発で大仕事

 孝子出現!阪神が1点差試合を制し、巨人3連戦3連敗の悪夢を振り払った。上武大から3巡目入団の新人・石川俊介投手(23)が5回を2点に抑え、プロ初先発で初勝利をマーク。八回から守護神の藤川を投入した岡田さい配もさえた。巨人と並走で首位を死守。この一騎打ち、絶対に勝つ。

  ◇  ◇

 真っ赤に腫らした目でスタンドを見渡し、涙をこらえて天を見上げた。連敗脱出を渇望していたチームに、彗星(すいせい)のごとく登場したルーキー右腕。石川がプロ初先発で、初勝利を挙げた。見てるか、母さん。やったよ、母さん-。

 負けられない一戦で巡った先発のマウンド。指揮官は救世主としての役割を石川に託し、登板4試合目で初先発を託されたルーキーは、必死に期待に応えて見せた。

 最大のピンチは、1点リードで迎えた五回。力みから制球を乱し、二死満塁のピンチを迎えた。ここで打席にはハマの4番村田。1ボールからの2球目、セットで投げる石川に矢野がワインドアップで投げるように指示した。そこから矢野は、3球連続で直球を要求。 「矢野さんの気持ちが伝わった。それに応えようと思って投げました」2球目で自己最速の147キロを計時すると、2-1からの4球目。その打撃像にあこがれ「プロで一番対戦してみたいバッター」と話していた男を、こん身の直球で見逃し三振に斬って取った。

 スタンドには最愛の家族が駆け付け、亡き母の淳子さん(享年44)は空から石川の勇姿を見守った。大学1年の夏。プロを夢みた青年は右ひじに炎症を起こし、打者への転向を勧められた。だが石川は投手の道を選び、手術を拒否してリハビリでの回復を心に誓った。

 投球再開までは2年の歳月を要した。そんな日々に、悲劇は重なる。同年秋に母が病に倒れて緊急入院。練習を休み、付きっきりで看病を続けたが、最愛の母は1カ月後に帰らぬ人となった。

 「あの時からですね。緊張しなくなったのは。この先の人生でも、あれ以上につらいことはないでしょうから。対戦するのはバッター。殺されることはないですから…」

 だが悲しみを乗り越えた先に、どんな苦境でも動じない心を手に入れた。八回の攻撃。九回のマウンドに備え、肩慣らしに向かう藤川から「ヒーローにしてやる」と声を掛けられ、必死に止めた涙腺が少しだけ緩んだ。

 病床の母に誓った。涙を流しながら、プロで活躍すると心に誓った。「ウイニングボールは、亡き母にささげます」。始まりの1勝は、終盤戦でもがくチームにとっても大きな1勝。ドラフト3巡目右腕・石川俊介-。猛虎に新たな救世主が誕生した。


岡田監督の執念…球児が八回から登板

 今まで黒子に徹し続けてきたのはこのためだ。今まで努めて全力投球を封印してきたのもこのためだ。今まで決して多くを語ろうとしなかったのも、このためだ。

 1点リードの八回。突然流れ始めた“球児のテーマ”に、マンモスの山肌が揺れ渡る。開幕からこの日まで、阪神・藤川はただひたすら、この時に備えていた。

 「いつでも行くつもりやったから。ポジションを(抑えから)変えてもらってでもね」

 しびれる終盤に仁王立ち。勝者の通路で、球児の声が弾んだ。

 07年9月24日の横浜戦以来、今季初となる八回からの前倒し登板。3番・内川から始まる中軸を無難に0封。そして最終回のマウンドに向かう直前、プロ初勝利のかかる石川に声を掛けた。

 「お前をヒーローにしてやるよ」

 感涙にむせぶルーキーをベンチに残してマウンドへ。二死からの失策などで一、二塁とされたが、最後は貫禄たっぷりに後続をねじ伏せ、石川との約束を果たした。

 昨季はフル回転でチームを首位に押し上げたが、ペナント最終盤で右腕の疲労が限界を超えた。そしてチームも失速、V逸…。その経験を糧に、昨オフから年間を通じて同じパフォーマンスを発揮するための体力づくりに徹してきた。

 「ブルペンから(複数イニングを)『行けます』と言っていたので…」。岡田監督が舞台裏を明かす。志願の複数イニング登板でチームを勝利に導いた球児は「(去年の同時期に比べて)全然楽です。必要と言ってくれるならどこでも投げる。3イニングぐらいなら行けると思う」とラストスパートに意欲を見せた。

 「最後に上にいる方がチャンピオン。ここからやっていきたいと思います」。守護神の“決意表明”に、マンモスが再び揺れ渡る。まだまだ続く宿敵とのマッチレース。今こそ右腕にため込んだ力を爆発させる時だ。今こそ覇権への扉を開け放つ時だ。

3安打2盗塁の赤星 ノーアーチ記録更新

 日本記録達成をかみしめてる場合じゃないです!!「どんな形でも、勝てばいいんですよ」。窮地の虎に、もう一度、風を巻き起こすため-。打った、速攻走った、動き回った。阪神・赤星も必死のパッチ。故郷・愛知では「デラ、えれぇがや!!」というらしい。

 東京で巨人に首位に並ばれたが、帰ってきた聖地で再進撃。「とにかく流れを作るために動いた」。

 一回、先頭で吉見の内角直球を左前に流す一打で出塁すると、続く関本の打席で、今季34個目盗塁となる二盗。この回の先制点を呼んだ。

 初回が1得点止まりに終われば、二回は二死二塁から四球を選び、関本の左翼二塁打で、快足をぶっ飛ばし一塁から一気にホームへ滑り込んだ。

 この序盤3得点を守り切って、ギリギリ勝利。赤星の好走なしでは、結果はどうだったか。

 「巨人は楽な勝ち方ができてるけど、僕らはできていない」。だから最後まで攻め続けた。

 六回の打席では、吉見の2球目が、頭部付近にきた。間一髪でのけぞって逃れ、球は目の前をかすめた。首痛の赤星にはたまらない衝撃が走ったが、続く3球目を意地の左前打。八回にも左前打し、今季11度目の猛打賞も決め、ここでも二盗に成功した。

 第1打席で、日下隆(近鉄)の2088打席連続本塁打なしの日本記録を超え、それを2093打席まで更新した。「そのうち(本塁打)打ちますよ。来年ぐらい(笑)」。ただ、今は勝つためデラ走る!!

今岡 3連敗ショック速攻で消した!


 鮮やかな速攻だった。3連敗の重苦しいムードを払しょくする一打。阪神・今岡が、プロ入り初先発のルーキー・石川を援護する貴重な先制打で、ゲームの幕を開けた。甲子園に戻っての仕切り直しの4連戦、初戦の勝利を演出したのは3番打者のバットだった。

 一回、無死一、二塁で巡ってきた第1打席だ。最初のチャンスを積極的にものにした。吉見の投じた初球、内角低めの直球を力強く振り抜くと打球は鋭く左前へ抜けていった。「打つだけの場面。思い切り振りにいきました」。二走の赤星を迎え入れる先制適時打で、石川に初回からの1点をプレゼントした。

 11日に1軍復帰してから11戦に出場し8打点の活躍。「何回も同じことの繰り返しになりますけど、僕は1打席、1打席に集中していくだけですから」。シーズン開始から不調に悩み、9月に入るまで出番を与えられなかった。もう、恐れるものは何もない。がむしゃらな姿勢が好結果を生んでいる。

 この日の安打は初回の1本のみだった。二、四回はいずれも二死二塁、六回は二死一、二塁の場面で凡退してしまった。追加点を挙げ投手を楽にしたかったが、それはかなわなかった。本来の勝負強さを取り戻し、チームをリーグ優勝に導くことができる。今岡の打棒への期待は高まる。


傷だらけの関本 フェンス直撃2点打

 二回に左翼フェンス直撃の殊勲2点打を放った阪神・関本は、試合後、表情をゆがめ、右足を引きずりながらクラブハウスへ消えた。

 最終回の守り。石川の二塁ゴロを処理した平野の一塁送球がわずかに外野側にそれた。一塁に駆け込んだ石川のひざが右足を伸ばして捕球を試みた関本の右太もも裏に直撃。ナインを出迎えた岡田監督も、心配そうに関本の顔をのぞきこんだ。

 傷だらけの背番号3は、貴重な2点適時打の質問に「それどころじゃない…。気持ちで打った?そんな感じ」と話すのが精一杯だった。10日のヤクルト戦でセ・リーグ記録となる1試合3死球。17日にもチーム最多、今季6個目の死球を右腕に受けた。満身創いの関本が、また傷を負った。リーグ2位の得点圏打率・414を誇る勝負強さが、ここまでチームを支えてきた。巨人との一騎打ちで、関本抜きの戦いは考えられないだけに、右足の状態が案じられる。






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Last updated  Sep 23, 2008 08:41:54 PM
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