梅林庵

2007/07/21(土)13:51

病院のこと

出来事(18)

その病院は大分川の七瀬地区を見下ろすように建っている。都合により、尋ねた目的の予定時刻が下がり、それまでの時間をつぶすことになった。最上階のラウンジに行ってみたが、すでに閉店。地下の売店前に腰掛け、インスタントのコーヒーを。持参した本を読みはじめた。全面硝子窓、それに向かうように取り付けられたカウンターは明るい。金曜日の午後遅く、閑散としている。隣に白衣を着た小柄な女性が一人座った。シュッというライターの音が聞こえ振り向くと、ヤクルトを飲んでいる。ストローで蓋に穴を開ける音だったのだ。味わう間もないように、ここを後にした。 売店の女性が店じまいを始めたので、テレビを見るためのカード(タイマー制になっていて、1枚1,000円。病室のテレビに差し込むと30時間あまりの視聴が可能)を1枚買う。これを包む見舞用の小封筒も置いてある。入院客へテレビ鑑賞券をどうぞということなのだろう。 病棟の階へ。患者の去った食堂に座り、引き続きページをめくる。 夕闇が迫り、市中の光が目立つようになると、ここが市井の生活から隔絶したところのように思えてくる。窓外、家々のひとつひとつの灯りには幸せがあり、ここには病む人の世界。 高速道路を走る車を何の思うことなしに眺めやる。車中の人は家路へか、週末の旅行に向かうのか。 ぼんやりしていると、70歳くらいの男性と家族か親戚と思しき5~6人が前のテーブルへ座った。「・・・一度は家へ連れて帰りたい。・・・」という会話。耳をそばだてると、この病院に入院している余命幾ばくもない家族に、今一度自宅のくつろぎをということらしい。 カンファレンスをしてくれた医師は、BSジャパンのウイニング競馬キャスターに似ていた。名前に覚えがあり、そのことを話すと、蒲江の方にそのようなことをよく言われるが、違うといわれた。蒲江の人は水産加工の社長。同席の若い女医は色が白く小柄、白魚のような指をしていたが、疲れからか健康そうには見えなかった。 訪ねた病棟で部屋を訊いたとき、応えてくれた看護師はとびきりの美人だった。背は165センチはあったろう。ソフィア・ローレンの若い頃によく似ている。 ここで過ごした数時間、田中義一内閣から浜口雄幸内閣への時代が舞台の本を読みながら、上に記したような体験をした。車中、アーベントロートのブラ4を聴いていたため、ちょっと日常から離れた気分。

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