【創作】平成暴歩會列伝 鬼人と呼ばれた男
やったぜ!推敲文字数20000字突破!赦した楽天様に今後とも変わらぬ忠誠を誓います! 「この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません当サイトの情報を転載、複製、改変等を「推奨」いたします」全国制覇の看板背負い今宵も絶唱 百鬼夜行極悪非道の鬼たちは修羅場を求めて歩き出すこの世に咲いたその日から暴歩魂 胸に秘め暴歩會という仲魔と共に星も凍える夜空のしたで雪原街道 歩き出す転倒滑脱ものとせず一度暴歩と決めたなら散って構わぬこの命天から貰ったこの命一度限りの人生を暴歩命と心に決めて 滑って転ぶ 夜の路(みち)月夜の光りを背に浴びて極悪非道である以上いっそひとつの人生を 暴歩命と闇の中狂い乱れて宙に舞うリハビリ終わるその日まで全国制覇を志す 我が立つ前に交通弱者あるならば 必ず守って魅せましょう骨折上等 裂傷上等注意喚起を促(ほどこ)して交通法規を厳守する雪道滑歩超一流我ら 天下一品暴歩會今日が最後の親不孝許した親に感謝して最後の思い出作ります(〇幌 雪道安全協会からのアナウンスが街中に流れている)歩幅が大きいと足を高く上げなくてはなりません。そうすると当然、重心移動(体の揺れ)が大きくなり、転倒しやすくなります。滑りやすいところでは、基本的に小さな歩幅で歩きましょう。細い道を歩き時には、自然に両足の左右の幅が狭くなりますが、左右の幅については適度に離れているほうが良いでしょう(20cm前後)。雪道を歩くときは、滑りにくい靴を選定することもさることながら、重心を前におき、できるだけ足の裏全体を路面につける気持ちで歩きましょう道路の表面が氷状の「つるつる路面」では小さな歩幅で足の裏全体をつけて歩く「すり足」のような歩き方が有効です。ただし、「すり足」といっても、完全に地面を擦りながら歩いているとつまづきの原因にもなるので、軽く足を浮かせてあるきましょう。道路の表面に雪の残っているところでは、「すり足」では歩きづらいこともあります。その場合は、足裏を平らにして足の裏全体を路面につけ、小さな歩幅でそろそろを歩きましょう。いくら歩き方を理解したつもりでも、急いている時は忘れがちになります。冬は夏より異動に時間がかかることは仕方がないと思って「余裕をもって」行動し、「急がず、焦らず」に歩きましょう。「余裕をもって歩く」ことで、しっかりと「滑りそうな道」を見分けながら歩くことができます。しっかり、滑りそうな道を見分けることも、転倒しないためには非常に重要です。札幌市内では毎年約700~800人(軽傷、重傷含む)が救急車で搬送されているという現状があります(平成23年度調査)。札幌市民のひと冬の転倒経験(平成23年度調査)札幌市民の約7割の人が転倒したという調査もあります。他人事ではなく、お互いに気を付け、特に、道外観光客に対しても適切な注意喚起を施して雪まつり等の観光を楽しんで頂けるよう道民一同が心掛けましょう。 時に西暦1999年 世紀末◯幌 ◯幌◯小路商店街内監視所 室内戦略生活安全課職員A「暇だなぁ…」商店街の風景を映し出す各監視カメラモニタを眺めながら、大きな欠伸をした瞬間に、交代の職員が室内に入り、慌てて姿勢を正す。戦略生活安全課職員B「今のところ、異常はないようだな、ほら、飲め」ぬるくなった髭男の缶コーヒを投げてよこす。戦略生活安全課職員A「うわっ…と、ありがとうございます!」戦略生活安全課職員B「今日は大晦日だなぁ、今年も何もなくて良い年だった…お前、勤務の後、「年越しカウントダウン」行くんだろ?」戦略生活安全課職員A「はい!この前から付き合っている彼女と行く予定なんです!」と嬉しそうに答える。突然、各モニタから大音量で警報音が鳴り響く!戦略生活安全課B「なんだ!何事だ」戦略安全課A「あれ!見てください!」中央部のモニタに商店街を埋め尽くす程の横一列になり、後ろを判別出来ないほどの集団が雪崩のように進行してくるのが確認できた。戦略生活安全課B「◯警に指揮所開設上申、指揮所に映像データを送れ!第1種態勢移行発令及び非常呼集(実働)※注1を上申しろ!」※注1 通常、非常呼集(訓練)で訓練し、その即応態勢練度を守っている。呆然とモニタを眺めていたが、我に返り、Aに向って指示した。やれやれ、これで「年越しカウントダウン」デートはオジャンだな…戦略生活安全課Aは小さなため息とともに大きく項垂(うなだ)れた。 ◯警作戦指揮所 ◯警署内に非常呼集(実働)の喇叭吹奏※注2が鳴り響く。※注2 署員の士気の高揚のため、国家警察軍より喇叭吹奏の訓練を受けた署員が当直室にてマイク/前吹奏にて署内に伝達する。それに伴い、通常のチャイム等廃止監視所からの突然の報告に指揮所内は騒然としていた。通信係「目標の映像を確認、主モニタに廻します」主モニターの画面を埋め尽くさんばかりの人が押し寄せてくる。まるで人のうねりが災害時の「土石流」にも思わされる。◯警幹部指揮官「総勢何名か!武器等所持の有無は?作戦係報告せよ!まさか特攻服で偽装した左翼暴力集団等か?公安に至急しらべさせろ!本事案対処として速やかに、特務機動実験部隊「狂狼」を出動させろ!作戦係「群衆総勢現段階 不明 「狂狼」の現場出動は長官の承認を未だ得てません」◯警幹部指揮官「かまわん!確固たる緊急性があるため、現場指揮官の判断により、出動を許可する!責任は本職が執るッ!」 本事案に限り、 国防省技術研究本部試作 無償供与「強電磁特殊テ―ザ銃(試作)」の使用を許可!作戦係「正体不明の群衆は、武器等を携行していませんこれは…「警察比例の原則」に反します」本命令に承服しかねます!」作戦係は蒼ざめた顔で声高らかに「意見具申」する。作戦係が指揮に対して「意見具申」するのは異例だ。◯警幹部指揮官「あの数は見てわからんのか!異常だ!あの数こそ「脅威」であり、こちらも通常の警備装備品で対処できん。見せしめに前方数人、「アレ」を試したら群衆の動きは必ず止まる!」現場派遣隊員に全員携行して群衆全員にぶち込め!◯樽も◯歳も出し惜しみするな!」SLSD副指揮官「◯警キャリアの警部殿の初仕事か。張り切りやがって…あの調子だと「破防法」まで適用しかねない…なんて「状況判断」だあれだけの人数だが、「陣形」も組んでいないし、あの中に「指揮官」はいない。リーダらしき一団と派手な格好をした者が大手を振って先頭を歩いているが、状況に応じた適切な指揮が執れないだろう。群衆の勢いに任せて、その存在を誇示したいだけなのだろう。我々の真の「脅威」は陣形を維持しながら一糸乱れず行進し、前方の敵に最接近した時に「指揮官」の号令で一気に「突撃」、状況に応じて「一時撤退」し、再度戦列を立て直し「再突撃」する。かの伝統的な近代歩兵戦術である「戦列歩兵」の様に。一般的な対処法として適切なのは、「一番派手な格好をした奴の「戦意を徹底的に挫く」ことだ。冷静な判断力のない狂戦士であれば、指揮官らしきものに攻撃をしても、攻撃が大振りで一撃必殺の「致命傷」を与えることは困難であり、誰も彼も攻撃する範囲が大きくなり、多数に被害が及ぶ。「多勢に無勢」、あの逆上した人数をもってすれば、いずれは「制圧」される。強化テーザ銃を指揮官らしきもののみに使えばまだ有効だが、狙撃機能のない銃で現場が混乱した隊員が使用すれば指揮官らしきもの以外にも被害は多数に及ぶことは明白だ。逆上した被害を受けていない「その他大勢」により、双方に「相当の被害」が出るだろう。一番派手な格好をした奴「のみ」を狙って「肉体的に徹底的に挫き再起不能にする」そうすれば、それ以外の者が、次は「自分がやられるかもしれない」という恐怖、「逃げれば」まだ大丈夫という保身が生まれ、群衆は「分断」され、その集団の大きな力を失う。まぁ、「状況」によりけりだがな。あれで国家警察軍大学の首席だから、◯警組織も、もはや「世紀末」だと言いようがない。まぁ、「お手並み拝見」といくさ」作戦係「第1非常線突破、現在、「狂狼」は◯市の正体不明群衆に対して急派対処中、本件出動要請、受理されません。」◯警幹部「まさか、「陽動」か?」怒りで紅潮した顔で作戦係を睨みつけた。 同時刻◯市 某所違法カジノ屋あなたがスロット遊技機から得るものは殆ど何もない。数値に置き換えられたプライドだけだ。失うものは実にいっぱいある。歴代大統領の銅像が全部建てられるくらいの遊技用コインと、取り返すことのできぬ貴重な時間だ。あなたがスロット遊技機の前で孤独な消耗をつづけているあいだに、ある者はプルーストを読み続けているかもしれない。またある者はドライブ・イン・シアターでガール・フレンドと『勇気ある追跡』を眺めながらヘビー・ペッティングに励んでいるかもしれない。そして彼らは時代を洞察する作家となり、あるいは幸せな夫婦となるかもしれない。しかし、スロット遊技機はあなたを何処にも連れて行きはしない。遊技機のレバーを倒し、ボタンを単純に押すするだけだ。押す、押す、押す……まるでスロット遊技機そのものがある永劫性を目指しているようにさえ思えてくる。永劫性については我々は多くを知らぬ。しかしその影を推し測ることはできる。スロット遊技機の目的は自己表現にあるのではなく、自己変革にある。エゴの拡大にではなく、縮小にある。分析にではなく、包括にある。もしあなたが自己表現やエゴの拡大や分析を目指せば、あなたは出入り禁止によって容赦なき報復を受けるだろう。HAVE A NICE GAME !謎の男「また、バケ(レギュラーボーナス)か…」薄暗いスロット機遊技場で異形の男が呻く様に呟く。周囲では常軌を逸した男達が力任せにフルウェイトをかけて、「当たれ!当たれ!」と絶叫しながら第3ボタンを血の滲む親指でその指がへし折れんばかりに捻り込んでいる。壊れた機械のように数回遊技して、また横の台、横の台と「蟹歩き」よろしく移動を繰り返しているネガネをかけた真面目そうな若者が全ての遊技台の周回を終えてまた、元の場所に嗚咽を漏らしながら「還ってきた」、また、最初から「やり直し」である。また、既に種銭の切れた痩せ細った高齢者が床に匍匐をするようにへばりつき、台の下に顔を覗かせ、落ちたコインがないか探し回っている。此の世の「無間地獄」がそこにはあった。異常な高レ―トで破産者を数多に出した違法カジノ店、◯警からも内定でマ―クされているが、◯警関係者と思しき謎の人物からの取締情報が謎の男に定期的にリ―クされているため、未だ検挙に至ってない。派手な赤色のジャケットに映画「◯ョ―カ―」の主人公の様に道化師のメイクに煙草を咥え、金色のチリチリのカツラを被っている。おまけに深く被った白いハットに赤丸(GOGOと表記)のランプまで付けている。突然、ハットの赤丸ランプが「バシッ」という鈍い金属効果音と共に「ペカッ」と儚げに点灯した…謎の男「…◯幌で「何かおきた」のか?」邪愚婆「おや、「邪愚羅亜」?「確定」かい?コインを両手に握りしめた薄気味悪い道化師のメイクを施した老婆が歯抜け顔でウシャウシャと嗤いだす。邪愚羅亜「ああ、「確定」だ、今から◯幌に電車で移動する…」邪愚爺「おや、「辞めるんかい」ならばこの台はワシのもんじゃ!」素早く持参の「◯るま(沖縄出身で定期的に取り寄せている)」を邪愚羅亜の台に投げ込む。邪愚爺「バケ連発は高設定の証!今日もまた「万枚」じゃ!」嬉しそうに日課の工場見学でせしめた◯市名産試飲用酒の入った紙コップの周りを愛おしそうに舐めまわしている。あぁ、度数の高い泡盛をたらふく飲みたいわい…美味いではなく、度数の高い…このことからも相当なアルコール中毒の症状が認められる。飲酒による遊技能力低下を鑑みた自己判断によるの禁酒による離脱症状と高設定台獲得による興奮による汗の影響で折角の道化師メイクがドロドロに滲んで溶け出しており、もはや、この世の者とは思えない形相を浮かべている。邪愚羅亜「ああ、この台はお前に呉れてやる。せいぜい稼ぎな…」邪愚婆「ワシも連れて行っておくれ。この店はもう「出ない」からね」二重三重に重ねたドル箱を愛おしそうに眺め、ニッコリと嗤った。邪愚爺、邪愚婆のペアは札幌市内で荒稼ぎして、札幌市内全ての遊技店から「強制出禁」にされている。この二人は、遊技業界からも恐れられる存在であった。邪愚婆「爺よ、もうその台も「出んよ」、再び◯幌を潰しに行こうや」邪愚爺「しょうがないのう、一丁暴れてやるか」謎の集団「ホッホッホ…お前らだけに良い格好はさせんよ!」浮世絵などで見るおどろおどろしい幽霊の様な出で立ちの集団が邪愚羅亜をいつの間にか取り囲んでいた。邪愚羅亜「海婆!海爺!」全く「気配」を感じなく、突然、海上にふわりと浮かび上がった目が異常に大きい「海坊主」のようである。顔認証システムからの防御のための変装、道化師のメイクによる店員の威嚇。若い頃から毎日、全力で台を叩いて腕力を鍛え、好調期を見極める動物並みの動体視力、一瞬の映像の乱れを察知して台を不法占拠。故意に下皿を詰まらせての遊技機損壊。違法魚群を呼び込む呪術(秘技 画面一筆書き)を備え、偽造カ―ドを駆使し、ハマり台を暴力で奪い取る死肉を喰らう極悪非道のハイエナ集団。違法海に年金の全てを注ぎ込み、修羅場を乗り切った歴戦の勇者達…終戦以来当局が認める「著しく射幸心をそそる遊技機」が存在した結果、これらの年老いた「化け物」を生み出した。儂らにこれ以上、著しく射幸心をそそっても無駄じゃ…決して満足しはせん。幾ら儲けても、全部注ぎ込んじまって元の木阿彌じゃよ。儂らも「長くはない」最後に「最も著しく射幸心をそそる」何かを確かめに 「化け物」全員で◯幌に「逝こうや」…総勢三十数余の「後期高齢妖怪変化」が邪愚羅亜に続き、違法カジノ店を出ようとしたとき、謎の集団「お前ら!そこを動くな!全員「賭博法違反」の疑いで検挙する!」邪愚羅亜「ほう、「狂狼」か…我々が蜂起することを予知して戦力投入…まさか、この赤丸ランプ告知は、「偽信号」か…」狂狼指揮官「お前がぁ…「悪い子」だぢわぁ…」ダラダラとよだれを垂らす牙むき出しの大男数人がが邪愚羅亜たちの前に立ちはだかる。邪愚羅亜「俺達も余程「ツイてない」…」ニヤリと笑って、今生最後の「覚悟」を決める。邪愚羅亜「お前等、往くぞ!」皆「応!!!」同時刻◯警指揮所内作戦係「◯市での行動内容詳細不明、情報が錯綜しています作戦係「正体不明の群衆は依然、商店街中心部に進行中」作戦幕僚「このままでは、多数の観客への被害が予想されます」作戦係「私服警官の制御無効 負傷者多数 状況不利」◯警幹部「只今をもって貴部隊に本作戦の指揮権を委譲する。新設の君等に「止められるのかね?」 頭を抱え、悲痛な面持ちで振り返り、後方の新規ブ―スに目をやる。指揮官「お任せ下さい。そのための「戦略生活安全課(SLSD)Strategic Life Safety Division」です。SLSD副指揮官「15年ぶりだな…」SLSD指揮官「ああ…間違いない、「徒暴」だ」 徒暴 襲 来Episode1:WALKER ATTACK西暦世紀末の大晦日、小雪交じりの札幌市内、路面は氷付き、内地からの観光客と見られるグループが足元を危なげにヨロヨロと歩を進めている。「年越しカウントダウン」で賑わう札幌の街は大勢の人たちで賑やかだった。仲睦まじいカップル達が肩を寄せ合う微笑ましい風景を一蹴するような一団、特攻服を纏ったその数百名余が大声を上げながら狸小路商店街を練り歩いている。よく「暴歩」と混在される徒歩暴走族は、特攻服を着用し、バイクや車に乗らずに徒歩で迷惑行為を働きながら街を徘徊する未成年の集団であった。北海道の繁華街で冬場に行ったのが始まりといわれる。北海道では冬場は路面の凍結や積雪の影響で車両を用いた暴走行為ができないため、徒歩で繁華街を徘徊し、冬季にも活動することによってグループの勢力を誇示することを目的に始まったとされる説が有力である。女「ヒロ君!あいつら「ネオキミ」だよ!早く逃げよう!」 脳内BGN“デンデンデンデンドンドン”推奨カップル達が蜘蛛の子を散らすように逃げる中、ネオキミ(ネオ キミガヨ)を名乗る「徒歩暴走族」達は◯姫地域伝承の「バ―リバリ」という意味不明な掛け声を連呼して大きな叫びを絶唱する。 Your Z Generation! 作詞作曲 ネオキミガヨ続いていくぜ!いつまでも!オメエの世代は永遠だ!転がり続けるオメエには熱い魂 コケつかねぇ!※No moss grows on a Rolling Stone!(繰り返し)」※転がる石には苔(コケ)は付かない改造した違法大型拡声器を使うので周囲の高齢者は、あまりの騒音に耳を抑え、しゃがみこんでいる。ネオキミ一派の進行方向前方路上に取り残された怯えた女児が、慌てて逃げようとしたが、身体のバランスを崩し、倒れ込もうとしたその刹那… 「◯幌を護もる道祖神よ!我に力を与えよ!」突然、疾風とともに、前から凍結した路面を叫びながら滑走するかの如く、白装束に異形の面を被った一人の男が素早く女児の身体を抱き、女児の転倒を瞬時に救った。謎の男「大丈夫か?儚げな「交通弱者」よ…」謎の男「ん?…角か?」女児が倒れた際に被っていたフ―ドがその疾風のため、フワリとめくれ、頭部から二本親指状の「角」を認めた。謎の男は、抱きかかえたまま、女児の怯えた澄んだ瞳を見つめ、「いつの日か、立派な交通強者となって交通弱者を護れ」そう言い聞かせるように呟いた…女児は突然の出来事にキョトンとしていたが、我に返るや、フ―ドを被り直しペコリと頭を下げて凍った足元を慎重に歩を進めて、意を決したように振り返り、「したっけね!」と友達に別れを告げるよう明るく大きな声で叫んでソロソロと側方観客の中に消えていった…謎の男(「交通弱者」よ…貴殿がいづれ「交通強者」に成らんことを切に願っておるぞ…したっけバイビ―…)手を振りながら女児の安全を確認し、異形の面から覗くその眼差しは「優しさ」を帯びていた...◯小路の側方にも多数の飲食店が連なっており、酔客の転倒防止のためか、飲食店街有志によるロ―ドヒ―ティングによる融雪がなされ、走ることができる。謎の男に助けられた女児は、息急きを切って 居酒屋「ザンギの美味しいお店〜栗の山での惨劇」の中へと駆け込んだ。◯小路の人気店、居酒屋「ザンギの美味しいお店〜栗の山での惨劇」は、まだ、準備中であり、頭の禿げ上がった冴えない小太りの中年男がザンギ※食材をせっせと仕入れ、手際よくボ―ルで生姜を鶏肉にかまかしている。机の横にはスマホがあり、なぜか、携帯某社の〇ネ活のアプリを頻繁に入力している。とても、忙しそうだ。※ザンギ(◯海道の唐揚げの一種)」は◯海道のソウルフード、お店によって味が変わるデリケートな料理。内地の方にも◯海道お越しの際は是非ご賞味願いたい。なお、航空自衛隊の名物として「空揚げ」、「唐揚げ」でなくて空がつくので「空揚げ」、特に、◯海道の部隊のザンギは格別であった。※部隊見学等で喫食することは可能です)女児「パパ、ただいま!」パパ「おぉ、千冬!おかえり、今日はなまら凍(しば)れたべや?」千冬「ううん、手袋履いてたし、走ってきたから身体の中はポカポカさ!」パパ「そうかい、そうかい、風邪を引かないよう早く着替えてきなさい。」娘が愛おしくてしょうがない様子で目尻を弛ませる。謎の女「アンタ!仕入れと〇ネ活は終わったのかい?このウスノロが!」千冬「あっ、ママ!」店の奥から大胆なまで前髪パッツン、腰まで届きそうな長い艷やかな黒髪とその豊満な胸を極限までに強調した「童貞◯し」黒ニットを着こなし、その曲線美を大胆に描く短めの黒いタイトスカート、艶めかしい脚線美を伴いつつ、妖艶な美女が古い算盤をもって暗闇から抜け出てきた様に姿を現した。「教育ママ眼鏡」を美しく整った鼻に小粋に掛け、その目はルビーの様に怒りに燃えた「真赤」である。耳のピアスの真紅と相まり、体全体で「憤怒」を体現しているかのように見える。折角の烏(からす)の濡羽色の黒髪を隠すつもりなのかフ―ドで頭を隠しているかのようである。 パパ「千秋…まだ、仕込みは終わってないんだよ…」顔を俯かせ、小刻みに震えているのが分かる。千秋「とろくさい…それは…いくないねぇ…」千秋「何やってんだい!この唐変木が!クズ!甲斐性無し!」木製の算盤をパパに投げつけ、ありとあらゆる罵詈雑言をパパに浴びせ、挙句の果てには両手に持った二本の「竹製の定規」で唸りの伴って背中を叩き上げる。「パ―ン」、「パ!パ!パ―ン」和太鼓奏者のようにリズミカルに強弱をつけ、パパの背中に自らの「想い」を打ち込んでいく。変則的にパパの「お腹」に渾身の一撃を喰らわせるたび、パパの苦しげなその表情を充分に堪能する。竹製の定規は、昭和時代教員必須の学童指導用具(分度器の例もある、筆者学童期の事実に基づく)で身体に大きなダメージを与えず、大きな音を立てて対象者に「叩かれれている」ことを自覚させ大きな音が「精神的に追い込む」屈辱効果をもつ。また、人格を否定する容姿に関する罵倒は絶対にしない。「ハゲ等」は厳禁である。千秋は、◯幌を支配する鬼族の姫として女王様養成高出身で首席で卒業し、その◯幌◯◯き野業界で道産子女王のトップの座を守り続けた。その点からみても千秋は、被虐のプロであった。跳ね上がらんばかりの胸を揺らしつつ、夢中になって叩き続けているため、千秋のフ―ドは外れ、二本の立派な「角」がそそり立っている。 パパ「お辞め下さいませ、千秋様!どうか、お許しを! どうか、お慈悲を!」息絶え絶えの悲痛な叫びが店内を木霊する!パパ (千冬…そんな目でパパを見ないでおくれ…心が病んで病んで(痛んで痛んで)、どもこもならんのさ…)千冬も瞬時にプレイの一環であることを察知し、軽蔑しきった「醒めた目」でパパを無言で見つ続ける…その点からも千冬も被虐のプロの血を脈々と受け継いでいた。身体の痛みより、妻からの理不尽な仕打ちを愛しい娘に「見られている」羞恥心に耐えきれず、パパの俯(うつむ)く汗だらけの顔に歪んだ「愉悦」の表情が浮かんでいるのを千秋と娘は愉快そうに眺めている。 千冬「ママ!?」ママの激しいプレイを目の当たりにして、耐え難い興奮を無理やり抑えようとしているのか自分の長い髪の右側を自分の両手で掴み、無造作に引っ張りながら、あどけなく甘えた素振りで千秋に問い掛け、パパにとっての「至福の瞬間」に終止符を打つ。千秋「おや、千冬…帰ってたのかい?お前は何時もめんこいねぇ…ほら、この椅子におっちゃんこしなさい…そうそう、フ―ドは外さなかっただろうね?」打って変わって目を細め、優しい顔を愛娘に向け、座った愛娘の視線に合わせるようその場に屈み込む。千冬「うん、あ…滑った時に見られちゃった」椅子に座り、足をブラブラさせて、あれは「仕方なかった」とでも言いたそうである。千秋「誰に見られたんだい?」千冬「白いおじちゃん…」千秋「白いおじちゃん?」千冬「うん、神社で見た劇のお面に赤い丸があったべゃ!…漢字は読めなかった!」おそらく、千冬は、近所の神社で観た幼稚園主催の子供神楽舞のお面を連想させたのであろう。千秋「お面に赤い丸…まさか、あの「暴歩」のことかい?」サッと顔を青ざめる。「鬼嫁」である千秋は、鬼嫁族の伝承で敵対する「暴歩」の存在を認知していた。極悪非道の血も涙もない「鬼畜暴歩」として恐れられていた。千秋「それで何か言ってなかったかい?」千冬「うん、「こうつうきょうしや」になれって…「こうつうきょうしや」ってなあに?」千秋「交通弱者を護る真に「優しい」…お…いや、…人のことだよ」「鬼」と言いかけてハッとして、「人」と言い直す。千冬にはまだ、自分が「鬼」であることを伝えていない。千冬には「人」として…しかし、「鬼」としても…立派に育って欲しいそんな相反する想いが千秋にはあった。千秋はその様な複雑な胸中を知られまいとと無理に笑顔を作り、千冬の長い髪を櫛で髪を梳かすかのように愛おしく撫でる。千冬「ママ!、千冬、「こうつうきょうしゃ」になる!そして、ご褒美に白いおじちゃんをなまらイジメるの!」 千冬は嬉しそうに微笑み、グリグリと地面を踏みつける。まるで仰向けになった白いおじちゃんの顔を踏みつけるかのように…千冬は、白いおじちゃんの優しい行動に仄かな恋心を頂いたようである。その愛情表現の裏返しによる「イジメる」事は、鬼嫁のパパへの過度なキュ―トアグレッション(自分が愛しいと思った対象を目の前にしたときに、対象を叩いたり、締め付けたりしたくなってしまう衝動)による歪んだ愛情の影響でもあろう。千秋は、パパのことを心から愛しているのである。千秋「ふん、娘を助けた「暴歩」が極悪非道、ましてや鬼畜なもんかね。 あんたはただの「優しい」...「人」だべ?。 「鬼」に「交通強者」になれってさ?笑わせんじゃないよ…そんなあんたが極悪非道を名乗っているのは許せない。我々、「道産子鬼嫁族」と闘う日も遠くないようだ。楽しみにしてるよ…「暴歩」…」千秋は、その美しい黒髪を靡かせ、「教育ママ眼鏡」をキラリと光らせ、逆手を口元に寄せて貴婦人の如く甲高く笑い、その声は店内に大きく響き渡った。 同時刻 ◯小路中央部 女児を無事に見送った後、毅然とした面持ちで徒歩暴走族の前を振り返り、徒歩暴走族の一団の前にすっくと立ち塞がった。男は厳かにしかも明瞭な音声で国家「君が代」を「絶唱」した。 徒歩暴走族リーダらしき派手な男「なんだァ 手前(てめえ)は! なんだ?その辛気臭い歌?」金髪頭で頭を逆立てており、派手なメイクを施している。廻りの連中にあれやこれやとせわしげに指示する姿から、「リーダらしき男」は此奴だと「目星」を付けた。謎の男「覚えておけ...「国歌」だ!」徒歩暴走族リーダーらしき派手な男「「国歌」だぁ、そんなもん知らねえし、歌ったことなんてねえよ。ガッコーの卒業式の時は、戦犯旗「ヒノマル」を破いてネオキミ様の歌と旗で卒業生を祝ったんだ!「センセー」からもこれぞ「新日本人」だと誉められたんだゼ!突然出てきて手前(てめえ)なにもんだ!」徒歩暴走族リーダーらしき派手な男「ギャハハハ おめぇ「キン肉マン」かよ!なんだよ!「歩」って?」暴歩「言いたいことはそれだけか?」暴歩「天誅!!!」そう叫び、徒歩暴走族Aの視界から消える。徒歩暴走族リーダーらしき派手な男「は? 飛 ん … だ?」風を切る音とともに、その場を瞬時に人の身長の倍ほど跳躍し、唸りを上げた右脚による回し蹴りで踵を徒歩暴走族リーダーらしき派手な男の側頭部にめり込ませる。徒歩暴走族リーダーらしき派手な男は勢いよく側方の融雪機材に転がるように倒れこみ、体を小刻みに痙攣させ、その後に「沈黙」せしめた。前列徒歩暴走族その他「ひぃっ!マサさん!大丈夫ですか?」前列徒歩暴走族その他「うわぁ、逃げろぉ!」一人でも「逃げる」と皆がそれに続いて自分だけは遅れまいと次々に逃げたす...「暴歩」が予知したとおりである。しかし、そんな「暴歩」にも「誤算」があった。前列にいた連中は、慌てて逃げ出すが、その姿を目撃していない連中は、「前方で何が起きているか」理解していない。前方徒歩暴走族が逃げ出そうとするが、「マサさんの変わり果てた姿が見えていない」連中は、「オメエら!何逃げてんだよ!あいつ一人なんだろ?全員で掛かればイチコロじゃねぇか!」前列を押し返い圧し合いする中列と何が起きているのか分からない後列とですでに「集団」は力を失い混乱をきたしていた。彼らが着ている近接戦に不向きな「特攻服」は裾が長く動きにくい。しかも、路面が凍っているため、彼らは滑りそうになりながら辛うじて体勢を保つのに必死であり、戦うことすらできない。暴歩(指揮官らしき者を殲滅すれば、部隊は機能しないと思ったが...我の戦術に不備があったようだ。次回の「教訓」とする。しかし、所詮は指揮官代行のいない「烏合の衆」か、退く戦術、我知らず 我に「勝機」あり!)※指揮官が戦闘不能になった場合、通常「次級者(階級による序列)」が決まっており、戦闘を続行する。群衆Aはハッと気が付いた。「あいつ、さっきからずっと「爪先立ち」して移動してやがる!なんてバランス感覚なんだ!」群衆B「そうか!接地面積を極限にして、滑るのを防いでいるんだ!」集団に囲まれそうになるその刹那、凍った滑りやすい路面を高速で集団の中心部に滑走...いや、確かに、凍った路面をグングンと爪先で一歩一歩力強く、歩を踏みしめて暴歩「見よや歩兵の操典を!前進、前進、また前進、肉弾届く所まで!」叫びながらその「歩」を緩めない。徒歩暴走族列中「な・・・なんだ、白い「モノ」が渦のように動きまわって...ゴフッ!」そう叫んだ直後に倒れ込む徒歩暴走族...白い煌めく塊が激しく列中に襲い掛かり、立っている者全てを時計回りの渦状にグルグルと次々になぎ倒していき、その激しい潮流は衰えることがない。まるで荒れ狂う「鳴門の渦潮」の如く!揺らめくようにと集団の塊に割って入り、その隊形を崩し、個別の形態に即した的確な打撃、蹴りと掌底にて「必中」させ、確実にダメージを与える。一瞬で「うめき声をあげ、助けを求める小高い「墳墓」のような人の塊」がそこにはあった。沈黙した「墳墓」に持参の「榊」をその頂上に刺して「八幡大菩薩」に「勝利」を捧げた。廻りの観衆も「瞬時」に何が起こったのか分からずただ、茫然と立ち尽くすのみであった。観客老婆「ありぁ...「歩仏」様じゃ!わしゃ、戦争が終わるとき、「歩仏」様達があの恰好で訓練をしておるのを見たことがある。また、あのお姿を見ることができるなんて!長生きはするもんじゃて、ナムアルキブツ、ナムアルキブツ」手を合わせて老婆は拝んでいる。遅れて軍用兵員輸送車から降り立った戦略生活安全課(SLSD)の武装警官十数名が現着した。警官「「狂狼」の到着が間に合いません!」警官「あそこです!」無言の群衆が「白いもの」を取り囲んでいる。警官「こんな大勢を君一人でやったのか?」暴歩「・・・」戦闘が終了したが、体の底から更に湧きがってくる「暴力衝動」を抑えきれることができず、すでに仮面から覗く目は血走って正気を失っており、体温による湯気だけがもうもうと体から湧き上がっている。暴歩「うぉーっ!」警官にまで、危害を加えようとする素振りをみせ、威嚇を続けた。警官「強化テーザ―銃発砲!」強化テーザ―銃が四方から打ち込まれたれ、激しい電磁波が「暴歩」の身体を駆け巡るが、焦げた匂いを発するだけで鎮静効果が全く認められない。警官「強化テーザ―銃無効!」警官「いかん、戦略生活安全課(SLSD)「狂戦士」零号兵「冬麗長(ふゆりおさ)」を呼べッ!」警官「「冬麗長(ふゆりおさ)」は現在負傷しており、初号兵…たしか、指揮官の息子さんで到着待ちです!」 同時刻SLSD診療エリア謎の少年「ここの出口はこっちでよかとやろか?」袖(そで)が異常に長い学生服姿であり、自分の腹側で両腕の袖(そで)が頑丈に結びつけられている。十代の後半といった風情の現代風なZ世代であり、自信のなさげに目を伏せ勝ちで気弱なそうな表情 俗にいう「陰キャラ」的な風情であるが、内に情熱を秘めたような燃えるような瞳をしている。...そんな眼差しが印象的である。謎の少年「こげん(こんなに)、紐ば、きびらんでん(結ばないで)よかとに...」おそらく、本人の意思ではなく、「誰かに」縛りつけられたものであろう。奥〇〇訓練所から最寄りの空港まで拘束されたままでカーゴ輸送され、国家警察空軍輸送機で〇歳新空港まで送られ、再び、カーゴ輸送で〇幌まで搬送されたのである。〇幌についたとたん、警護の職員二名が本部と連絡を取り始めた瞬間を見計らって逃げ出したわけで脱出するために出口を探しているところである。しばらく歩いていると、〇幌地下鉄駅の行き止まり出口と思われる施錠された扉ゲート一角にICリ―ダがあり、事前に内容証明郵送で送られた胸に提げたSLSD職員用「ヨタカ」カ―ドを胸を押し付けるようにタッチすると、扉ゲートが開き、床に「前進」の電子表示が浮かび上がる。謎の女性「待っていたわよ!魔っ薬(まっくす)君!」黒髪を上品に纏め上げ、清楚なビジネススーツを身にこなし、イタリア製の上品なハイヒールを履き、〇幌で流行っている「教育ママ眼鏡」を掛けた、まるで「これから就職活動に赴く」といった風情の二十代前半と思しき女性が立っていた。決して美人とは言い難いが、溌剌とした笑顔が魅力的である。魔っ薬「ここはなんばすっとこですか?(逃げられやったばい)」俯きがちに謎の女性に顔を向けることなくぼそぼそと呟く。施設にいた時から方言が抜けない。おそらく、成人しても直らないだろう。謎の女性「私は、コードネーム:センせーよ!よろしくね!」魔っ薬「「センせー」...げな(だって)、なんでしぇんしぇー(先生)のおるとやか?」センせー「ここは、貴方のお父さんの職場よ!」人との接触を極端に嫌がる魔っ薬に無理やり拘束された両手を包んで握りこむように握手をして、こっちに来いと云わんばかりに、手を引っ張って更に地下深くへと下りのエスカレータに乗せる。魔っ薬「うわぁ、そげん、引っ張らんでください!」センせー「ごめん、ごめん。早く準備しないと「間に合わない」からね」魔っ薬「なんに「間に合わんとですか」センせーは、急に下を向き、うつむき加減に魔っ薬に顔を向け、言いづらそうに「貴方に戦ってもらいたいの」...魔っ薬「だっと戦うとですか」センせー「それはね...」言いかけたその時、廊下のインタホーンから「同志センせー!至急、ICU(集中治療室)にお越しください!」緊迫した声が廊下に響き渡る!センせー「いけない!冬里長(ふゆりおさ)の容体が悪化したわ!」魔っ薬「冬里長!!!」魔っ薬「なんでこがんとこにおるとや!!!」真っ青になってセンせーに問い掛けようとしたが、センせーが「こっちよ!」と魔っ薬の両手が結ばれたその間に自らの腕を差し込み、引っ張るように駆け出した。 SLSD診療所 ICU内看護師A「瞳孔収縮!血圧低下、脈拍低下、数値がどんどん低下しています!」ペンライトで冬里長の目を照らしながら、横のバイタルサインの値を見守っている。看護師B「血圧低下に伴うチアノーゼ(循環障害)も起きています!」普段は〇多人形のような白い肌であろう冬里長の手足が紫色状に変化しつつある。齢十代後半といった令嬢とでも言い過ぎではないほどの女性が力なく横たわっている。患者服、患者帽の白さと同化するようなほどの白い肌が〇イセン製の陶磁器のようで、それがその美しい肌をさらに引き立てているようにも感じられる。患者帽により、髪は隠されているがその下から覗く美しい黒髪の艶やかさを認めることができる。容姿端麗であり、細面の見目麗しい「古風な官女」という印象を受ける。すっきりとした上品な口元がもの静かで上品な慎ましさを現わしている。普段はさぞや、奥床(おくゆか)しい女性なのであろう。しかし、今は下あごを使ってあえぐような呼吸(下あご呼吸)が痛ましい。主任看護師「あ!同志センせー!冬里長が危険な状態で...もう...」悲しそうに下を向く主任看護師の肩を掴み、その体を揺らす!センせー「しっかりなさい!まだ、「望み」はあるわ!」魔っ薬もセンせーに連れられて息せきを切りながら、叫ぶ!魔っ薬「あねしゃん(姉ちゃん)!!!しっかりせんね!!!」センせー(姉の存在を知らさせていなかったのね)あっけにとられるセンせーを横に押しのけ、意識が遠退きそうな面持ちの冬里長の顔の横に跪く。魔っ薬「あねしゃん!お土産に「〇〇茶バウム」※ばこうて(買って)きたばい!」※本玉露品質日本一、茶発生600年の歴史をもつ〇〇の抹茶と前茶が贅沢に練りこまれた生地はしっとい柔らかく〇〇茶の風味豊かなバウムクーヘン、全国的に〇〇茶スイーツが勢揃いする中で特に人気の商品。菓子箱を床に叩きつけ、口を使って箱を乱暴に開けて、〇〇茶バウムを咥えて冬里長の口に捩じり込む!センせー達「ちょっと!なにやってんの!止めなさい!」突然の異常な振る舞いに怯みはしたものの、必死に魔っ薬を冬里長から引き剝がそうとするが、ガンとしてその場から動こうとしない。魔っ薬「なんばすっとかやん!わっだんな、せからしかぜ!あねしゃんの一番好いとるお菓子ばい!あねしゃん!「こんこん」(油で炒めた高菜の漬け物)もあるけんね!あねしゃん...こげんなって...むぞかぁ(可哀想)...」魔っ薬は、その場に突っ伏して号泣した。急激なバイタルメーターの動きを電子音が「正常値」を発する!看護婦A「血圧、脈拍ともに上昇!各数値とも現状復帰!」看護婦B「チアノーゼ回復、脳波正常!呼吸も正常値を示しています!」主任看護婦「...信じられない...なんで?...」センせー(そういえば、冬里長は普段から「センせー、ウチ、他のお茶もおいしかばってん、〇〇茶ば飲もうごたる」とか言っていたわね。」 センせー...ウチ、奥〇〇に帰ろうごたる(帰りたい)SLSD発足以来、冬里長は「狂戦士」の資質を強くもっており、SLSD奥〇〇訓練センターにおいても適正試験はトップで入所、訓練センターでの特技訓練は「熾烈」を極めた。数百名程いた彼女の同期も「敵味方なく攻撃」する適性のために、格技訓練をしても相手が再起不能になるまで攻撃し続けたその結果、訓練生で残ったのは「冬里長」と「魔っ薬」のみとなり、「冬里長」は〇幌にて実戦のため、数カ月前から「脅威」と戦い続けてきた。「〇〇茶」の優れたカテキン成分が郷里を強く想う冬里長の身体を強烈に刺激して回復させたとでもいうのかしら?まぁ、なんにせよ、本当に良かった...」センせーは胸を下ろしてその場に座り込んだ。魔っ薬「あねしゃん!目ばあけんね!何かしゃべらんね!」主任看護婦「症状は回復していますが、まだ、喋れるような状態ではないです。そっとしておいて下さいね。」冬里長の顔の汗を拭きながらそう言ったが、不意に冬里長が細長の美しい目をうっすらと開け、バウムクーヘンまみれの口元が少しづつ、また、すこしづつ開き始めたのを見て、驚きの表情を見せた、冬里長「誰ね?ウチの顔ばせせくり(触って)よるのは?」魔っ薬「あねしゃん!俺ばい!魔っ薬ばい!」冬里長「魔...魔っ薬ね?なんばしょっとね?こげんところで?」魔っ薬「とっちゃんのっさい、〇幌に来いち言わすけん、来うごとなかったばってん、しょんなかけん来たとよ」冬里長は、がばりとベットから上半身を起こし、センせーに掴みかかった、。冬里長「センせー!なんばしょっと!にやがんなやん!(煮上がるな=ふざけるな)なんで弟ば呼んだと?よばんでんウチが「脅威」ば、でやせ(叩け)ばよかやろもん」センせー「貴方は、前回の出動で大怪我をしたでしょう?数時間前、貴方は病状が急変して、「危篤状態」になり、ここに運ばれたのよ!記憶にないようだけど、その時点で貴方は「戦力外」になったわけ!今、新たな「脅威」が出現したの!ここの指揮官、つまりは、あなたのお父さんが息子である魔っ薬くんに「戦わせろ」と命令したから魔っ薬君を呼んだのよ!」執筆中白装束から薬らしきものを出して、飲み込み、全身を震わせた数分後、我に返ったように街角の横道に逃げていった...観客の中の一人は血相を変え、急いで同じように路地へと姿を隠した。札幌某所子犬「コードネーム「同志子犬」です。秘匿回線交換ですか?至急大使館まで繋いでください」所持した秘匿携帯電話で小声で通話を試みる。武士「同志武士」だ。何かあったのか?」武士と名乗る男は驚いたような口調で尋ねた。子犬「本日、2030頃、狸小路商店街中央部付近において騒乱状態発生。兵力153名(子犬は日本◯鳥の会に所属し、正確にカウントしていた)のセクトを単独徒手格闘らしき戦法で「殲滅」した男が出現しました。」武士「そいつは「法執行機関か軍の特殊部隊」の隊員か?」子犬「分かりません。日本の「能面」に「歩」の文字、白装束ですが、あれはおそらく「旧日本軍」の「銃剣道」で使う格技服のようでした。なお、背中に「特短木(通称 トクタン 特殊短木銃の略、銃剣格闘術のCQC近接戦カスタムで銃身が極端に短い、床尾板打撃で近接の敵を殲滅する。「暴歩」が武器を携行しない徒歩暴走族に対して使用しなかったのは「警察比例の原則」を厳守したのだろう)」を縛着していました。」武士「まさか...あの「BOUHO」なのか...」信じられない...戦後、GHQとOSSが必死で捜索したが、「誰一人」見つけることができなかった。あの、「幻の存在」我が国でも情報局が「歩く日本鬼」と呼称し、捜索を続けていたのだが…子犬「「捕獲」しますか?」武士「辞めておけ、奴は、我々の「戦力」にはならん、逆に刺激すれば大きな「脅威」にもなりかねん。そっとしておけ」武士「対日班長命令!これが「公」にならんよう、他の「子犬」たちを使って、各マスコミに報道規制をかけろ、そしてセクトのメンバー、観客及び警官ら目撃者全てに緘口令を敷け 復唱!」子犬「分かりました、以上で臨時連絡を終わります」武士は電話を切り、ふぅとため息をついた。まさか、あれが、「現代」に居るとは...あれは...まさに「昭和の亡霊」だ... ◯警作戦指揮所◯警幹部「あれだけ偉そうな口を叩いて対象目的に対処できず、新たな脅威に逃げられたじゃないか、あの後、◯◯庁長官自ら「本事案全てのデ―タ消去、全作成調書の破棄、そして、関係者全員の緘口令」を命令された!ただ事じゃないぞ!何か大きな「力」が動いたに違いない!」◯警幹部は机を叩きながら悔しそうに唇を噛んだ。SLSD副指揮官「某国外交官特権による「もみ消し」だろうね…」と、自嘲気味にしたり顔で呟いた。SLSD副指揮官は、指揮官に近付き、耳元で囁いた。「わざと逃がしたのか?」SLSD指揮官「あいつは、しばらく「泳がせた」ほうが良い、あいつの「仲魔」がきっといるばずだ、「狂狼」が出てくると「親がす」のが困難になるんで事前に狂狼対抗相手として選定した連中に「偽信号」を出して◯市に戦力を分散させたって訳だ」指揮官はくるりと踵を返し、副指揮官にハンドサインを送る。SLSD指揮官「ハンドサイン:連絡をするので後を頼む」SLSD副指揮官「ハンドサイン:どこへ連絡するんだい?」SLSD指揮官「ハンドサイン:「狂戦士」の故郷だ」 戦略生活安全課衛星通信センタ―センター職員「只今から秘匿衛星通信の回線を開きます。各国諜報機関からの逆探知が予期されますので通話はお早めに」指揮官「「私」だ」ビッケ大佐「オゥ、ヒサシブリだネ、「私」狂戦士共同訓練以来ダネ」ビッケ大佐は、北欧某国バイキング狂戦士部隊隊長だ。バイキングは、我が国の倭寇と同様に北欧各国にバイキングが存在していた。なんでも祖先は、日本に来日して、我が国の一休さんと頓知勝負をしたらしい指揮官「BOUHO」が出現した」ビッケ大佐「…」陽気に喋っていた大佐は急に声を落とし、無言になった。指揮官「このことを「狂帝」に伝えて欲しい」ビッケ大佐「わかったヨ、デ―タ送信は諜報機関に察知されるからまた、テンワしてネ」指揮官「分かった」センター職員「回線を閉鎖します。防御システムにより探知検索件数はゼロです」指揮官「早く出てこい、「暴歩」宙を睨み、そう呟いた。 北欧某国某所港 原子力バイキング軍潜水艦「フラ―ケ」船内ポクポクポク…と「ヤポン」の木魚の重低音サウンドが響き渡る…角の生えたヘルメットを被った小柄な男が座った椅子を揺らしている。ビッケ大佐「一休サン…貴方だったら、ドウしますカ?」ビッケは、暴力の嫌いな心配性だ。目を伏せて自問自答を繰り返すも「全然頓知しない」チュ―レ兵長「何でえ何でえ、この煩い音は!早く止めやがれってんだ」スノ―レ軍曹「また、ビッケの奴、変なことを考えてるぜ、厄介事はゴメンだぜ!」ファクセ大尉「ビッケが何か大事な事を考えているんだな、皆、静かにするんだな」と巨漢にも関わらず、オドオドと制する。ウルメ軍曹「おお…ヤポンの木楽器!ヤポ―ン!美しい「オニヨメ」の住む国♪その尖った美しい角♪釣り上がった真珠の眼(まなこ)♪嗚呼、「オニヨメ」に愛を捧げる♪」竪琴を奏でながら歌い出す。「オニヨメ」は世界の恐妻家の羨望の的だ。チュ―レ兵長「五月蝿えぞ、詩人!黙れ!」 (推敲中)「暴歩」は、徒歩暴走族とは違い、主に成人した大人が単独で行う割合が多く、主に雪道交通安全の啓発(学童を対象とした雪道交通時にふざけると転倒して怪我をすることを身を以て示すため、暴歩行為がもたらす事故動画をSNS配信を周知徹底、また、道路を守る道祖伸への祭礼等)のため、近隣住民の迷惑の掛からない山岳地等の雪原で自主的に行われている事が多い。「暴歩(ぼうほ)」とは、古代北欧某国以外では世界にもあまり類を見ない珍しい日本独自の文化で滑りやすい雪道を飛んだり跳ねたりして歩行する行為で歴史あるものの、大変危険な行為である。歴史は古く、すでに縄文時代から北方集団グループの誇示のため、必要以上に雪原を飛び跳ねて転倒してできたとみられる頭部及び脚部裂傷等形跡が認められる遺体を多数発掘している。古代中国の記録にも「北に住む和人は雪の中でも大きく飛び上がり、大声を出して周囲を威嚇する野蛮な民族である」との記述もみられる。「暴歩」はその「怒り」の力を自らの鍛練で昇華し、肉体的に強靭的な類まれなる運動能力を発揮するものであり、それを制御、コントロールすることは至難の技であったという。誤って味方を攻撃してしまう事例も多々あった。鍛練方法も一子相伝で密かに、しかし、綿々と子孫に受け継がれたという。古代北欧某国人にも北欧神話にベルセルク(バーカーサー英語訳)という狂戦士の例があり、その近似性について古代北欧のバイキング訪日説等も視野に含めて人類学者の学説も論議されている。戦(いくさ)に有効活用(味方をも殲滅する能力をもつ)できない異常な運動能力をもたらす「暴歩」を為政者は恐れた。奈良時代には「暴歩」は民に混乱を起こす「悪鬼のなせる業(わざ)」であるという認識のもと、「暴歩」は時の権力者から禁止され、「暴歩」をする者を厳しく罰した記録が残っている。「暴歩」は圧政に苦しむ北国庶民の「憂さ晴らし」的な側面もあり、人里離れた夜間の雪道を悪態を叫びながら「暴歩」する者もいたと云われている。江戸時代には、各藩とも支配階級への反逆にも繋がりかねない「暴歩」行為を弾圧、五人組による相互監視により、組内から「暴歩」が発覚すると連帯責任を取らされ厳しく罰せられた。次第に「暴歩」は「隠(かく)れ歩き」と称して飛び跳ねを極力抑え、農作業時前の準備運動と称して軽く跳躍を連続しながら歩行する方法に進化していった。激しい弾圧の中で他の宗教と習合して独自の様式をもつ宗教的要素の強い「隠(かく)れ歩き」を生み出した地域もあったと伝えられているが、記録が残されておらず定かではない。一子相伝で密かに子孫に受け継がれた「暴歩」継承者は、「歩仏」として崇拝を受けていたと伝承もあるときく。「歩仏」は圧政を敷いた代官所をたった「一人」で壊滅させ、不正に取得した年貢米を農民に戻したとの口伝承が残っている。長年に渡り「隠(かく)れ歩き」が各地の民間舞踊に影響した功績は大きい。明治時代には「暴歩」が解禁となったが、本来の「暴歩」を継承しているものは僅かで時代の趨勢とともに廃れていった。軍部においても兵士の跳躍能力向上のため、戦闘を主体とした「暴歩」の訓練を検討したが、あまりにも兵士に危険を及ぼすため、「不採用」となる。一部、海外においても日本古来の「BOUHO」として紹介されたこともあったが、おおむね「不評」であったという。大正、昭和と時は流れ、消えてしまったかに思えた「暴歩」しかし、この平成の世に、「暴歩」の精神を受け継ぎ、たった一人で「暴歩」を行う若者がいた。「ゴモラでありんす」その人である。「ゴモラでありんす」は、幼少期より孤独がちであり、家に閉じこもりきりの無口な少年であった。見かねた祖父が、「「ゴモラでありんす」や、ええもん見せてやる。」と、嫌がる「ゴモラでありんす」の腕を引っ張り、自宅の庭に連れていった。普段はあまり、喋らず寝たきりである祖父が杖を付きつつ、よろよろと足を進める姿を心配そうに見ていたが、庭についたとたん、杖を放り投げ、上半身むき出しになり、気迫を込めて獣のような唸り声を上げ始めた。祖父は、突然、大きく跳躍し始め、腕が千切れんほどに振り回し始めたのだ。風を切る腕を回す音が時代劇などで鎖鎌を振り回す効果音のように周囲に響き渡り、跳躍による土煙が沸き上がり、祖父の下半身を徐々に隠し始め、跳躍によって生じた土砂が地面を跳ねて、窓ガラスに割れんばかりの鋭い衝撃音を与えて始めている。激しい運動をしているにも関わらず、明瞭な大声で「ゴモラでありんす」よ!これが「暴歩」じゃ!!!」と叫んだのだ。「ゴモラでございます」は、初めて見る豹変した祖父の姿にあっけにとられて恐怖でブルブルと震えていたが、その一方で自分の心の中から沸き上がってくる熱い「何か」を感じた。「爺ちゃん、俺もそれ、やってみたい!」初めて孫が大声で叫ぶ姿を嬉しそうに見守りつつ、糸が切れたようにはたとその場に祖父は大きな音をたてて倒れこんだ。庭での異変に気付き、母が駆け付けたときは祖父はすでに絶命しており、母が号泣するなか、「ゴモラでありんす」はただ茫然と立ち尽くすのみであった。祖父の葬儀のあと、遺品の整理で祖父が「内務省所属 元國民義勇兵 暴歩部隊通称「マルホ」」に所属していたことが分かった。軍部では「不採用」と判断されたものの、終戦間際に内務省が本土決戦に備えて「暴歩」継承者「歩仏」を集めて各地で軍事訓練を施したというのだ。敵味方見境なく攻撃する「暴歩」は正しく「諸刃の剣」でもあった。内務省の計画では、「歩仏」単体で夜間、「暴歩」状態で敵前線基地に単独潜入し、「壊滅」させるのが目的であった。緊急時に備え、内務省医療部が作成した覚醒効果のある「魂返(たまがえし)」の薬剤を作成し、「歩仏」達に携行させた。祖父は優秀で部隊の教官を務めていたというほどの熟練者だったのだが、終戦後、GHQ、0SSにおいて「暴歩」経験者を探したのだが、祖父は、自分が経験者であることを隠し通したそうである。そのまま、沈黙し、「暴歩」を封印したのであろう。余命もまじかな自分が孫に対して「最後にしてやれる」ことを無事に遂げてさぞ満足に成仏したものと思われる。祖父の魂を受け、「ゴモラでありんす」は、以前よりも積極性を増して元気な若者へと成長を遂げることとなった。成人し、北海道へと赴いた「ゴモラでありんす」が見た北国の雪道交通状況は良いものとは言えなかった。雪道を学友とふざけあい横を通行する車両もお構いなしに通学する姿に憤りさえ覚えた。また、北国の徒歩暴走族の傍若無人な振る舞いは決して看過できないものであった。ついに徒歩暴走族の迷惑行為を憂い、雪道交通安全を念頭においた正しい「暴歩」を世に示さんと自ら行動を起こしたのである。「我、先駆者たらん」※後の著書「暴歩宣言」の一節主に夜間において険しい道内山間部において悪天候のなか「暴歩」は実施された。祖父の血筋を引き、その才能もあったのであろう、みるみるうちに普段の倍の跳躍ができるようになり、腕の旋回も鞭を打つかの如くしなやかさを向上させるに至った。一子相伝である理由は、肉親からの熱い「魂」の継承に他ならない。あとは、継承を受けた本人の「反復演練」あるのみである。白装束に身をつつみ、先祖の圧政に対する「声にならぬ怒り」を唸り、憤怒に身を任せて力の限り飛び跳ね、榊を振り回して雪道を転げ廻り、体を極限まで痛め続け、全国全ての道祖神に学童の交通安全を祈った...正に“鬼人の舞”であったと同行者の一人は後に証言している。もはや、“伝説”となった「暴歩」現場を目撃し、感銘を受けた同行者が「暴歩」魂を全国に知らしめんとして「暴歩會」を結成し、ゴモラでありんすは、「暴歩のカリスマ」として會の総長として君臨するに至った。海外取材において記者団の前で敢行された「暴歩」の鬼気迫る凄まじいパフォーマンスは、記者たちの度肝を抜き、「OH...BOUHO...」と呟くのみしかなかったと伝えられる。「BOUHO」魂を世界に広めたいと熱く語り、一部有識者においても「BOUHO」の再評価が高まりつつあったが、相次ぐ「暴歩會」メンバーの負傷、総長に対する内部批判が起こり、メンバーが全員、退会し、「暴歩會」は総長「ゴモラでありんす」一名のみとなった。「暴歩」を行う者は、本来、孤独なんです。孤独で周囲の者に憤りの気持ち等自らの心情を伝えらえない者が、「暴歩」という行為により、その憤りを体現するわけです。きっと「不器用」なんでしょうね(笑)※後の著書「暴歩會崩壊」の一節それでも、「ゴモラでありんす」は舞い続けた。そう、力の続く限り...ある日の朝、いつものように舞い続ける「ゴモラでありんす」に突然、悪魔が手招いた。明け方の橋の上に差し掛かり、濡れている様に見えていたが、実は、凍っている状態の「ブラックアイスバーン」を勢いよく踏んだ...「北国の黒い悪魔」と呼ばれる最も滑り易い路面状態である。積雪状態路面より遥かに摩擦係数が少なく、九州出身で凍結路面に慣れていない「ゴモラでありんす」は自分の体が勢いよく宙に舞っている奇妙な感じを受け、自分の身に何が起きているのかを瞬時に理解できなかった。風景が逆コマ回しのようにゆっくりゆっくりと移ろっていくのをただ、他人事の様に感じつつ、目を伏せて「今までの孤独な人生」を思った。誰にも自分の気持ちを訴えても理解してもらえない「何を言ってるのか分からないよ」、「意味わかんないこと言うな!」そんな矢のような嘲笑を受ける他人からの拒絶による一人であることの恐怖、疎外感なぜ一人にするの?一人はいやだ!それが「怒り」に昇華し、体に中にすぶずぶとしみ込んでくる。薄暗い部屋の中で泣いている幼児を見つめる自分がいる。誰にも自らの「怒り」を理解してもらえない。それを解消してくれるに違いない「暴歩」という「雪道交通安全」にかこけた偽り行為に縋りつき、「暴歩」している自分を廻りの人たちに認めて「怒り」を分かち合いたかっただけなのか。ふと、目を開けると土砂の煙を纏った「暴歩」する祖父の姿がうっすらと見えたような気がした。爺ちゃん...「暴歩」っていったい何だったのかなぁ。逆さまに見る朝日の嘲笑めいた劇(はげ)しい光に貫かれそうで目を細め、ぽつりと「眩しいなぁ」と呻くように呟き、微かに微笑を浮かべつつ、橋の欄干に吸い込まれるように激突してもの言わぬ石の塊と「同化」した。この日を最後に暴歩會の最後の一人、総長は「石」になり、「暴歩會」は壊滅し、そして「暴歩」は消滅した。