2007/02/11(日)11:54
松本清張:「偽狂人の犯罪」
(ネタばれあります。ご注意ください。)
■短編集『死の枝』からの1編で、主人公は経師屋。
経師屋というのは、掛け軸、屏風、額、衝立、襖などを
仕上げたり修理したりするのが仕事のようだ。
■ある日主人公のところに、突然重要な急ぎの仕事がやってくる。
しかしそれは、あちこちで断られた仕事だった。
それでも仕事が欲しい主人公は引き受けるが、
うっかりミスで、大事な品物を傷つけてしまう。
■弁償金を支払うため高利貸しで借金をし、
やがて首が回らなくなり、
高利貸しを接待しているうちに、
自分の女まで獲られてしまう──。
■そこで彼が計画したのは、高利貸しの殺害である。
つまり、このミステリは「倒叙」形式で書かれている。
彼の思考はまず、いかに完全犯罪を果たすかをめぐり、
ついで、犯罪後にいかに精神病者を装うのか、に至る。
タイトルの「偽狂人の犯罪」とはそれを指す。
■結果的に彼の嘘の精神病は見破られるのだが、
それを見破った検察官の作戦とは、
拘置所の彼の隣の部屋で、ひとりの検察官が、
エロ小説を感情込めて読む、というものだった(^_^;)。
やがて主人公もそれに聞き耳を立てるようになり、
嘘の精神病が見破られてしまう、と──。
しかしこのミステリの結末は予想外!
なんと!
(ネタばれしちゃいますよ。気をつけてください。)
エロ小説の朗読にはまった検察官が、
エロ小説の朗読で女性を誘惑し、逮捕される、
という、オチで終わるのだ。
■いやはや(^_^;)。この短編集はどうやら、
物語の長い語りのあとで別のオチをつける、
という短編を集めたものなのかもしれない(^-^)。
とにかくストーリー・テリングの面白みを味わえる(^-^)。