☆現実逃避☆

「この前、電車でチカンに遭っちゃってさぁ」

同僚のSさんは４０代で、１時間かけて電車で通勤している。

「私の隣に座った男が、新聞をこう、ガバッと広げたんだけど、何故か手をクロスにしてるのよ。で、その手で、私の脇のあたりをザワザワって触ってるの」

キモイ話だ。手をクロスにして新聞を広げるとは、悪知恵が働くもんだ。外から見てる人には見えないけど、好き勝手に触れるというわけだ。でも、何もそこまで凝った技を使ってまで、脇に触らなくても・・・。チカンの心理はよく分からん。

「チカンって、会っちゃうとホント、放心状態になっちゃうのよねぇ」同じく４０代のIさんが言う。「私も、この前電車で立ってたら、後ろからおしりを触られてるのに気づいて・・・。怖くて何も言えなかったけど、とりあえず睨んどいた」

「アタシも何回か会ったことがある」とM子。「アタシはねー、触られても別に、気にならないんだよね。そりゃ、パンツの中に手を入れられたらイヤだけど、そうじゃないんなら、そのまま触らせとくんだ」

ま、まじッスか・・・。そんな人もいるとは。ある意味スゴイ。気にならないって、一体どういう心理状態なんだろう。私だって、オーランド・ブルームに触られてるならそのまま放置するだろーが、得体の知れないオッサンだったら、電車の中だろうがブチキレて殴りかかるよ、きっと。

同僚たち「Mizurinは、チカンに遭ったとき、どうしてんの？」

(゜ д ゜)

そういえば・・・・・・。

Mizurin、チカンに遭ったことねぇ。

毎日あんな満員電車に長いこと立って乗ってんのに、一度も会ったことも見たこともないとは、一体どういうことだ。ここにいる私以外全員、一度は遭っているのだ。４０代のSさんとIさんすら、遭っているのだ。なのに何故私はチカンに遭わないのか？？そういえば前の会社で、入社した女の子は全員、セクハラ上司に食事に誘われていた。私以外は。

これは、どう考えても、避けられているとしか思えない。何故チカンは寄ってこないのか。もしかして、私に女としての魅力がないとか・・・・・・。

「いや、そんなことないよ、全然ないって。ホラ、チカンってさ、小さい女の子のほうが遭いやすいらしいよ。小さい子のほうがさ、抵抗したりしないんだって。Mizurin、大きいしさ」

そうかもしれない。それなら、まぁいいだろう。

だがよく考えると、別の意味で恐ろしい可能性が浮かんできた。ひょっとしたら私のほうがチカン行為をしているかも知れない。電車が満員すぎて身動きがとれず、押されているうちに、手がオッサンのマタグラにかかっていることなどザラなのだ。オッサンは、私を痴女だと思ったかも知れない。

世の中にはきっと、触るつもりなんて全然ないのに、ついつい不可抗力によって触ってしまい、変質者扱いされる男性が山のようにいるに違いない。もちろんそうでない、純粋なチカンもいるだろうが、私の想像では４０％くらいのチカンは意図的ではないのではないかと思う。

チカンされる側より、する側の立場の気持ちが理解できる私はかなりヤバイ。