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テーマ:中国関係の本(57)
カテゴリ:中国関係(漢字・中国文学)の本
漢字を語る(著者:水上静夫|出版社:大修館書店)
漢字については、目次にも「字音」が先行、とあるように、字形よりも音を重視している。 漢字の成立に関して、「単なる仮借(かしゃ)の使用である」(p55)とあって驚いたが、後で、六書の説明を説明しており、転注については、今までに読んだ本の中で最もわかりやすかった。 それによれば、「転注」とは、意味は変わっていないのに異なる発音が生まれたときに、新しい字形が作られる、ということで、字形は違っても意味は同じである、ということだ。 わかりやすいところもあれば、わかりにくいところもある。 踊り字のところで、『詩経』の「適彼楽土」という句は、それぞれの字の後に踊り字があったと考えれば詩意が明らかになる、と述べているのだが(p196)、この部分、なぜそうなるのか理解できない。 また、枕詞の「あおによし」の考察で、「ナラ」が朝鮮語で都や国を表す語だったためだ、と述べているのだが、これは、上代や中古の文学の専門家ならずとも、知っていることではなかろうか。 さらに、ハングルで表記しているところが、そこだけ横書きになっている。ハングルは縦書きもできるのだから、縦書きのままの方がわかりやすかった。 「北辰」は「北極」であって「北極星」ではない(p94)など、総じて、漢学というものにたいしては否定的で、きちんと字義や正しい解釈をわきまえていない、と嘆くことが多い。 説得力のある本ではあるのだが、すべて著者が正しいかどうかは疑問が残る。 「文」という字の字源として、「本義は襟元で衣服が交錯して美しい意である」と述べているが、胸の入れ墨と説く本もある。 漢字に興味のある人は、阿辻哲次などの本もあわせて読んだ方がいい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.12.29 16:52:55
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