「次郎物語」 【監督 森川時久。1987年】
下村湖人の「次郎物語」第1部の映画化。映画にしたくなる気持ちはわかるのだが、無理がある。と思ったら、この映画の前に三度も映画化されているのだった。 青年になった次郎がナレーションを交えて子供時代を振り返るもの。 乳母(泉ピン子)のところから、両親(加藤剛、高橋恵子)のもとに連れ戻されるところから始まる。 祖母からひどい扱いを受けるのは原作通りだが、母親は優しく接するのが原作とは違う。母親もまたわだかまりがあり、何かとひどい接し方をしていたはずなので、そこがないのは物足りない。 父親も立派すぎる。 ただ、映像は美しい。屋外での撮影がほとんどで、画面が明るく広々としている。 映画についてはあまり語ることがないので「次郎物語」にまつわることを書いておく。 「次郎物語」は、小学生の時に、子供向けの文学全集で第1部を読んだ。心引かれるものがあり、何度か読んだ。最後まで読んだのは高校生の時だ。 成長するにつれて感情移入しにくくなったのは不思議だった。 さらに、全く記憶にはないのだが、テレビドラマを見ていた。 NHKで1964年から放送したもの。 かろうじて記憶がある頃、パジャマではなく寝間着を着て寝ていたのだが、その寝間着を「ジロー」と読んでいた。「次郎物語」で次郎が着物を着ていたためだった。母は主題歌も覚えていて、「次郎、次郎、見てごらん、松の根は岩を砕いて生きていく」と歌ってくれたことがある。 松の根の話は、高校生の時に全部読んだら、次郎がかなり成長してからのこととして出てきたので驚いた。 映画について調べるために検索したら、なんとNHKのアーカイブでオープニングを見ることができるのだった。 たしか、母は、次郎が橋の上に立っていたと言っていたはずだが、確かに橋の上に立っている。 検索したら、下村湖人が、小中学生向けに書き直した「次郎物語」があるのだという。 とんなものなのだろう。私が読んだのは編集者が手を入れたものだったはずだ。作者自身が書き直したというのは興味深い。