94 パートナーシップで目標を達成しよう (恩田原の風82)
94 パートナーシップで目標を達成しよう (恩田原の風82) 1995(平成7)1.17.5:46に阪神淡路大震災が起こりました。今から29年前の1月のことです。震源は淡路島北部で、マグニチュード7.3で、最大震度は7でした。死者・行方不明者は、6437名でした。負傷者43,792名で、住宅被害は639,689棟でした。神戸市中心部で大きな火事がいくつも発生しました。高速道路が折れ曲がり、そこに観光バスが宙ぶらりんで止まっていた映像が、強く印象に残っています。 東日本大震災(2011.11.1.14:46)の時の死者22,212名に比べて死者行方不明者は少なかったです。最大震度は同じ7でしたが、あの大津波のせいで死者数が増えたのでしょう。 阪神淡路大震災が起こった時、自宅におりました。寝ているときに、地面の底の方から何か経験したことのないような地響きを感じていると、大きな地震が起こってきました。京都で震度5でした。少し驚きましたが、神戸の方であれほどの惨事が起こっているとも知りませんでした。 当日は、毎週一回行っている大阪の方の大学の講義の日でしたので、朝からそこへ行きました。大阪方面へ行く電車のホームで待っていると、時々大きな余震が起こりました。目の前の線路が波打ち、架線が大きく揺れました。すごいなあと思いました。不規則になったダイヤで、ようやく来た電車に乗りましたが、所々で止まり、いつもの倍以上の時間をかけてようやく目的の駅に着きました。非常勤に行っている大学の正門に着くと、本日は休校という掲示が張ってありました。何のために来たのだろうと思いながら帰宅しました。 帰宅してからテレビを見て初めて阪神の方で大震災が起こったことを知りました。これほど大きな地震とは思っていなかったのです。神戸での大火災の映像を見て、初めて恐ろしいことが起こったと自覚しました。 本年1月1日午後1時ころには、平成6年能登半島地震が起こりました。マグニチュード7.6でした。亡くなった方は、231名、安否不明者が22名で、住宅被害は27,952棟でした。能登半島中心の地震でした。能登半島は海岸まで山が迫っているところが多く、広い平地が少ないです。集落は山間に点在していました。そこへ地震が起こり、道路が寸断されました。被害集落に近づくこともできず、いまだに被害の全体像が見えないようです。犠牲者の数や被害家屋の数はもっと増える見込みです。 日本列島は、何時何処で、大震災が起こっても不思議でないところにあるのです。常に、震災に備える準備を怠ってはならないと、肝に銘じておきたいです。SDGs(Sustainable Development Goals・持続可能な開発目標)の目標17には、<17パートナーシップで目標を達成しよう>が挙げられています。『実施手段を強化し、「持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップ」を活性化する』という表現の目標です。[資金] ターゲット17.1では、税金・その他の歳入を徴収する国内の能力を向上させるため、開発途上国への国際支援などを通じて、国内の資金調達を強化する、としています。 ターゲット17.2では、開発途上国に対する政府開発援助(ODA)をGNI(国民総所得)比0.7%、後発発展途上国に対するODAをGNI比0.15%~0.20 %にするという目標を達成するとした多くの先進国による公約を含め、先進国はODAに関する公約を完全に実施する。ODA供与国は、少なくともGNI比0.20%のODAを後発開発途上国に供与するという目標の設定を検討するように奨励される、としています。 ターゲット17.3では、開発途上国のための追加的な資金を複数の財源から調達する、としています。 ターゲット17.4では、必要に応じて、負債による資金調達、債務救済、債務再編などの促進を目的とした協調的な政策を通じ、開発途上国の長期的な債務の持続可能性の実現を支援し、債務リスクを軽減するために重債務貧困国(HIPC)の対外債務に対処する、としています。 ターゲット17.5では、後発発展途上国のための投資促進枠組みを導入・実施する、としています。 [技術] ターゲット17.6では、科学技術イノベーション(STI)に関する南北協力や南南協力、地域的・国際的な三角協力、および科学技術イノベーションへのアクセスを強化する。国連レベルをはじめとする既存のメカニズム間の調整を改善することや、全世界的な技術促進メカニズムなどを通じて、相互に合意した条件で知識の共有を進める、としています。 ターゲット17.7では、譲許的、特恵的条件を含め、相互に合意した有利な条件のもとで、開発途上国に対して、環境に配慮した技術の開発、移転、普及、拡散を促進する、としています。 ターゲット17.8では、2017年までに、後発開発途上国のための技術バンクや科学技術イノベーション能力構築メカニズムの本格的な運用を開始し、実現技術、特に情報通信技術(ICT)の活用を強化する、としています。 [能力構築] ターゲット17.9では、「持続可能な開発目標(SDGs)」をすべて実施するための国家計画を支援するために、南北協力、南南協力、三角協力などを通じて、開発途上国における、効果的で対象を絞った能力構築の実施に対する国際的な支援を強化する、としています。 [貿易] ターゲット17.10では、ドーハ・ラウンド(ドーハ開発アジェンダ=DDA)の交渉結果などを通じ、世界貿易機関(WTO)のもと、普遍的でルールに基づいた、オープンで差別的でない、公平な多角的貿易体制を促進する、としています。 ターゲット17.11では、2020年までに世界の貿易に占める後発開発途上国のシェアを倍にすることを特に視野に入れて、開発途上国の輸出を大幅に増やす、としています。 ターゲット17.12では、世界貿易機関「WTO」の決定に矛盾しない形で、後発開発途上国からの輸入に対する特恵的な原産地規則が、透明・簡略的で、市場アクセスの円滑化に寄与するものであると保障することなどにより、すべての後発開発途上国に対して、永続的な無税・無枠の市場アクセスをタイムリーに導入する、としています。 [システム上の課題] [政策・制度的整合性] ターゲット17.13 政策協調や首尾一貫した政策などを通じて、世界的なマクロ経済の安定性を高める、としています。ターゲット17.14では、持続可能な開発のための政策の一貫性を強める、としています。 ターゲット17.15では、貧困解消と持続可能な開発のための政策を確立・実施するために、各国が政策を決定する余地と各国のリーダーシップを尊重する、としています。 [マルチステークホルダー・パートナーシップ] ターゲット17.16では、すべての国々、特に開発途上国において「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成を支援するために、知識、専門的知見、技術、資金源を動員・共有するマルチステークホルダー・パートナーシップによって補完される、「持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップ」を強化する、としています。 ターゲット17.17では、さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略にもとづき、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励し、推進する、としています。 [データ、モニタリング、説明責任] ターゲット17.18では、2020年までに、所得、ジェンダー、年齢、人種、民族、在留資格、障害、地理的位置、各国事情に関連するその他の特性によって細分化された、質が高くタイムリーで信頼性のあるデータを大幅に入手しやすくするために、後発開発途上国や小島嶼開発途上国を含む開発途上国に対する能力構築の支援を強化する、としています。 ターゲット17.19では、2030年までに、持続可能な開発の進捗状況を測る、GDPを補完する尺度の開発に向けた既存の取り組みをさらに強化し、開発途上国における統計に関する能力構築を支援する、としています。 今まで述べたSDGs16のそれぞれの目標と同じように、最後のSDGs17のターゲットも、すべて述べました。非常に長文ですので、それぞれについてさらに述べるのは控えたいと思います。とにかく、全世界すべての人々が、力を合わせてSDGs目標の達成のために力を合わせなくてはならないということになります。国連総会で、十分に議論され全会一致で採択されたものですから、当たり前のことといえますが、そのことが締めくくりのところで述べられているようです。 以上で、SDGsそれぞれの目標についての紹介を終えさせていただきます。まとめの代わりに、最後にSDGsについての思いを述べさせていただきます。 今、いろいろなところで、SDGsへの取り組みがなされています。このSDGsは、持続可能な発展についての目標です。発展は、精神的な発展ではなく、経済的な発展を意味しています。今までのように、地球のために持続的な生活をしなくてはならないということだけであれば、人々は見向きもしませんでした。発展という言葉とセットになると、人々は注目し始めたのです。両方ともが同時に達成できると思い始めたのです。しかし、人類という種が、今後も生き続けなければならないという究極的な目標からすると、持続と発展とは、絶対に相容れないものです。 経済的に発展するには、必ず何らかの資源・エネルギーを使わなくてはならないです。資源・エネルギーを使わないで発展することは不可能です。これは、物理学の基本である熱力学の第一法則のエネルギー保存の法則からきています。私たちの生活では避けられないことです。 熱力学第二法則にエントロピー増大の法則といわれるものがあります。資源・エネルギーを使うと必ず廃物・廃熱は出ます。これがエントロピーです。資源・エネルギーを使い続けなければ生き続けらないですから、エントロピーは増え続けるのです。 しかしながら、この地球上がエントロピーで埋め尽くされるということは起こってきませんでした。増えたエントロピーは地球の大循環にのって大気圏に放出され、エントロピーが少ない姿で地上に戻ってくるからです。 この循環にのらないような資源・エネルギーの使い方をするから、地球温暖化が起こり、地球生態系が破壊されているのです。CO2を排出するから地球温暖化が起こったのではないのです。CO2はすべての生物が出し続けています。それでも、今まで、温暖化にはならなかったのです。人類が、大昔に生成された化石燃料などを使うから地球温暖化が起こったのです。大昔のCO2 が現在の地球に排出されても、それを処理する能力は現代の地球にはないのです。だからCO2 が大気中に残り続けて、その結果、地球温暖化が起こり、今日では地球灼熱化といわれるようにまでになりました。2023年は、人類が統計を取り始め以来、最高の気温になりました。今後、下がりそうもないようです。人類が地球に負荷をかけながら、快適な生活を送るからなのです。 化石燃料を現代の地球の大循環にのせることはかなわないのですから、化石燃料などを使わなくするしかないのです。出てきたCO2 を何とかしたいといっても、そこでは、必ず何らかの資源・エネルギーを使わなくてはならないです。そこで出てくるエントロピーも地球の大循環にのせられないです。 電気に使うのであれば、再生可能エネルギーはありえないのです。発電時にはCO2が排出されないとしても、太陽光パネルや風力発電などの設備を作るときや廃棄するときには必ず資源・エネルギーを使わなくてはならないです。それらを地球の大循環にのせるようにすることもかなわないです。快適な生活をしたいのですから、大循環にのせるための、とてつもない手間は使えないのです。 電気は、人間の生活を非常に快適にさせてくれますが、それは必ず地球に負担をかけることを意味しているのです。ですから、電気を使わない生活をしなくては、人類は地上で持続的な生活は続けられないのです。昨今のデジタル中心の生活の風潮は、誠に恐ろしいといわざるを得ないです。 水素ガスも同様なことがいえます。地球上にある水素ガスを使えるようにするには必ず資源・エネルギーが必要です。それらを地球の大循環にのるように使うことはできないことです。 徐々にこういうことが分かってきたとしても、今更このような快適な生活はやめられないでしょう。その結果、何年か先には、必ず電気を作るための資源が無くなり、電気は非常に高価なものになります。忘れてはならないのは地球の広さは、有限なのです。資源は有限なのです。電気が容易に使えなくなった時、どうすれば生き続けることができるか、を考えることができる知恵ある人類を育て上げていくことが、今の教育者の使命なのです。 今一つ忘れてはならないことは、人間が循環型の生活を続けるかぎり、人間自身も循環型の資源なのです。循環型の生活をしている人間が、汗水流して働き続けると、地球にはそれほど負荷をかけないのです。 セミナーレポート第199号(2022.5.)で述べましたように、知識だけではなく、知恵ある人間を育てる教育は、“読み書きそろばん”なのです。それからもしっかりとIMそろばんに取り組んでいきましょう。顧問 荒木 光(京都教育大学名誉教授)(2024. 2.)NPO法人 Global SOROBAN Institute(IMそろばん)セミナーレポートSeminar Report第220号所収 これまで書かせていたものは、ほとんどIMそろばんのセミナーレポートに掲載していたものです。1年半くらい前から、毎月掲載していましたが、2024.2.号で、掲載を終わりました。これからは、IMそろばんのセミナーレポートに掲載しませんが、この楽天ブログにのみ掲載します。また、これからは3か月に一度の間隔で楽天ブログに“環境教育を本気で”を書かせていただきます。よろしくお願いいたします。