|
カテゴリ:おすすめの小説
石田衣良/著 講談社/刊
「あるところにリストラされた男がいました その男がいつも通っている公園のベンチに 本が置いてあります その本がおいでおいでをしてように感じて 男はその本を手に取り、ページを開きます はじめのほうは、何も書いてありませんでした めくっていくうちに、段々文字が浮かび上がってきました そこには、リストラされた男が主人公の物語が載っていました 男は、自分と同じ身の上の話に引きこまれるように 夢中で読み続けます そして、その本を読み終わるころには 男の心は晴れやかになっていました 翌日から男は、積極的に就職活動を始めます まるで別人のようにエネルギッシュな表情 颯爽とした動作 すぐに就職が決まります それから、1ヶ月ほどして男は 拾ったその本を、男は通勤途中の木の枝に挟み ありがとうの言葉とともに置いて行きます ある日、その枝の前に小さい男の子が通りかかります 男の子は、つい最近、大好きな飼い犬を亡くしていました 悲しみに沈む毎日を送っていました その木の前を通ったときに、男の子は 木の間に挟まっている本が、自分に向かっておいでおいでを しているように思い、近寄り、恐る恐る手に取ります その本は、きれいな表紙の絵本でした 開いてみると、ついこの前亡くしたばかりの 犬にそっくりな絵が描かれています その絵本には、男の子と同じような経験をする 男の子が主人公でした 大好きな犬が死んで、悲しみに沈む主人公が 寂しさに負けずに元気に立ち直る物語でした 男の子は、夢中で読み続けます 読み終わったときに、男の子の表情は 以前の元気なころに戻っていました 男の子は、その絵本を、そのまま家に持ち帰り 何度も何度も読み返しました 1週間がたちました あれほど他の犬なんか絶対に要らないと 言っていた男の子の気持ちが変わります そして次の犬が家に届けられます 男の子は、また以前のように犬と元気に 遊び始めます 1ヵ月後、男の子は、犬と散歩している途中で ふっと目についた木の枝の間にその絵本を挟みます ありがとうの言葉とともに それからしばらくして、どうしようもない不誠実な男に 失恋した若い女性が、その木の前を通ります なんとなく気になった彼女は、歩み寄りその本を 手に取ります 表紙はピンクや赤の縁取りがされ、中央には とてもエレガンスな女性が描かれていました ページを開らくと そこには、とてもたちの悪い男に振り回されている 女性が主人公の物語が書かれていました 彼女は夢中で読み続けます・・・・・。」 以上の物語は 石田衣良さんのシュートショート短編集 「てのひらの迷路」の中の「旅する本」というものを ほとんどなぞって書いたものです ある1冊の本が人の手から人の手へ、形を変え、次々と旅をしていく というストーリーになっています 昔、自分が20代30代のころ、仕事帰りによく本屋さんに立ち寄っていました 何か1~2冊買って帰るときもありましたが 何も買わずに帰るときもありました でも、いつも本屋さんを出たときは 入る前より元気になっている自分がいました 『そう、本屋は私の親友であり、先生であり、そして彼女でもあった』 そんなことを思い出させてくれた本でした 人生の断片を切り取った、たくさんの短い物語が入っています この本自体も「旅する本」のようにも思えます 寝る前のひとときに、この中の一編の物語を読むことで 疲れた頭を癒しながら 穏やかな眠りにつけるような気もします 「ちょっとアホ!理論」もいいですけど たまには、“ちょっとファンタジック” も いかがでしょうか? てのひらの迷路 人気blogランキングはじめました ↓↓↓よろしくお願いします クリック↓ ↓ ↓ ★本の越後屋 最新情報 ★ツイてる古本・元気の出る古本 ★いっぱいあります!! クリック↓ ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006.06.05 18:25:46
コメント(0) | コメントを書く |
|