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非常に適当な本と映画のページ

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2006.11.23
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カテゴリ:洋書

 ニューヨークタイムズ紙でナンバーワンベストセラーを出したこともあるサスペンス小説家ケン・フォレットの著作。カバーには「#1 Bestselling Author」となっていて、「#1 Bestseller」とはなっていない為、本作品そのものはナンバーワンにはならなかったらしい。


粗筋

 ルーク、アンソニー、ベルン、ビリー(女性)、そしてエルスペス(女性)は、ハーバード時代からの親友である。しかし、ふとしたことから大学をやめる。第二次世界大戦が始まったのだ。五人はCIAの前身であるOSSの工作員となって、欧米で活躍する。
 大戦後、ルークとエルスペスは結婚した。ベルンとビリーも結婚するが、後に離婚する。
 ルークはNASAのロケット科学者となる。エルスペスもNASAで勤務する。ベルンは作家、そしてビリーは精神学者となる。アンソニーはOSSに留まり、後のCIAの幹部となる。
 ルークはある日、目を覚ました。公衆便所にいた。過去の記憶が全てなくなっていた。彼は町の中を駆けずり回る。ルークは過去の記憶を全て失っていたが、元工作員としての本能は失っていなかった。誰かが自分の後を付けているのに気付く。彼は追跡者に自分が誰で、なぜ後を付けているのかと問う。追跡者はルークを振り切り、逃走した。
 追跡者はCIAだった。アンソニーの命令でルークの後を追っていたのだ。ルークの記憶を消し去ったのはアンソニーだったのである。
 ルークは、自分がロケット開発に携わっていることを知ると、大学に向かう。自分を知っている者を見付けた。妻や友人のビリーやベルンと連絡を取ることができた。その過程で旧友のアンソニーが今回の事件に関わっていることを掴んだルークは、なぜ自分の記憶が消されたのかを解明する為、必死に米国東部を駆け回る……。


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解説

 本作は、1958年に初の米国産ロケットとして実際に打ち上げられたエキスプローラー1号の打ち上げがなぜ二度も延期されたのかを「解明」するフィクションである。
 舞台が1958年なので、コンピュータやネットや携帯電話などのハイテク機器や技術は一切登場しない。その意味では物足りないが、ハイテクのなさが逆にテンションを上げている面もある。はっきり言って、ルークが直面する問題は、現在だったら数時間で解決しそうなものなのである。
 この小説の最大の問題は、出来過ぎな部分が多過ぎて、いかにも小説、といった感じであることか。
 最初に、十数年の付き合いがある五人が今回の事件で集結して善と悪に分かれて関わる、というのも偶然にしては出来過ぎ。
 記憶を失ったルークが、元工作員とはいえ、一日ほどで自分が誰であるか探し出してしまうもの出来過ぎ。ルークは出会う知人全てに自分が記憶を失ったことを告げるのだが、知人全てがそれを疑うことなく受け入れてしまうのも出来過ぎ。
 また、CIAの優秀な工作員・幹部である筈のアンソニーは、友人に対する情があったらしく、本人は勿論、彼の部下も初歩的なエラーを連発する。最初のエラーが、記憶を失ったルークのお目付役がいとも簡単にルークの自由行動を許してしまうことだ。これがなければアンソニーの計画が破綻することはなかっただろう。
 アンソニーみたいなヘマを犯しているばかりの奴がどうやってCIAの幹部クラスになれたのかが不思議である。この事がルークにとって有利に動いたのは、やはり出来過ぎ。
 また、結末も出来過ぎ。ルークとエルスペスの夫婦関係は悪化していたが、エルスペスが実はソ連の為に働くスパイで、死ぬ。ルークは昔の恋人で、今も好意を寄せていたビリーとゴールインすることになるのである。
 エピローグでは、夫婦として幸せな家族を築いたルークとビリーが、1969年のアポロ計画でアームストロング宇宙飛行士が月面に降り立つ場面、つまり宇宙開発戦争が米国の勝利に終わる瞬間をテレビで見て、涙を流す。これも出来過ぎ。
 アンソニーがルークの記憶を失わせたのは、アンソニーがロケット開発に関する情報をソ連に流していたこと、そしてエキスプローラー1号を打ち上げ直後に自爆させる陰謀を知ったからである。
 疑問に思うのは、なぜアンソニーがルークの記憶を失わせる、という手の込んだ方法を選んだのか。なぜ殺さなかったのか。旧友を殺せなかった、ということもあったのかも知れないが、それなら監禁することも出来た筈。ロケット打ち上げが失敗するまでの期間、つまり長くて数日間監禁していればよかったのだ。
 そうすると、リークは解放後にアンソニーがソ連の為に働く二重スパイであることをばらしてしまうではないか、との指摘もあるだろうが、作中でアンソニー(そしてエルスペス)は、いざという時はソ連に亡命する手立てができていたので、ばれてもさほど問題にはならなかった筈。
 作中では、ルークは失った記憶を生涯取り戻せない、ということになっていた。これが事実だとすると、アンソニーはルークに対し情が働いた為殺せなかった、というのもおかしく思える。情が働いていたなら、過去の記憶を全て消してしまうという、ある意味では殺すより残酷な運命を課すことはできなかった筈。
 計画通りに事が進み、ロケット打ち上げが失敗に終わった後、アンソニーはルークをどうするつもりだったのか。そのまま記憶を失った浮浪者にさせる、となると、手が込み過ぎている。証拠隠滅には殺した方が確実、と思う筈。ルークに何気なく接触して元の生活に戻すのも危険過ぎるだろう。とにかくアンソニーの計画は理解し難かった 。
 記憶を失った男が自分の過去を取り戻す為に奔走する……という小説を生み出す為に、著者が強引に状況を設定した感じがなくもない。いわばストーリーの為のストーリー、トリックの為のトリックである。
 本作は450ページ。ちょっと長い感がなくもない。途中でモタモタしている箇所がある。最後まで読めたのだから、つまらなくはなかったが。
 結論としては、何もかも出来過ぎた小説。実際の出来事を下書きにしていた割には、リアリティが感じられない。
 ハッピーエンドで終わるところは、いかにもアメリカ向け。クーンツの「ベストセラーの書き方」をなぞったような小説だ。ま、クーンツなら「敵が馬鹿過ぎる」と批判するかも知れないが。
 読んでいる最中はそれなりに楽しめたが、読み終わって本を置くと「?」がいくつも浮かび上がってくる感じである。



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Last updated  2006.11.23 14:02:02
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