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非常に適当な本と映画のページ

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2006.11.27
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カテゴリ:邦書

 田中芳樹が大人気作家の地位を築くきっかけとなったスペースオペラ第一巻。


粗筋

 西暦36世紀、宇宙暦8世紀。銀河は三大勢力に分かれていた。
 帝政で、貴族らによって富や権力が独占され、民衆の不満が高まるばかりの銀河帝国。
 銀河帝国の悪政から全人類を解放することを理想と掲げながらも、内部の腐敗で崩れかかっている自由惑星同盟。
 軍事力は殆どないものの圧倒的な経済力で帝国と同盟を手玉にとり、裏から二大勢力を支配しようとするフェザーン自治区。
 三大勢力の戦力は、合計を100とすると帝国が48、同盟が40、そしてフェザーンが12となっていた。フェザーンにとっては丁度都合が良い戦力配分だった。
 帝国と同盟は一世紀にもわたって戦争を繰り広げていたが、フェザーンの裏工作もあってどちらも優勢になれず、ただ惰性で戦い続けていた。
 帝国には、帝国の運命を決定付ける若き英雄が現れる。ラインハルトである。彼は現皇帝を倒し、自らが支配者の座に就き、腐敗し切った貴族体制を改める、という野望を持っていた。
 一方、同盟にも英雄が現れる。ヤン・ウェンリーである。彼は歴史学者志望で、歴史の創造者ではなく傍観者になることを望んでいたが、不利な戦況でも巧みな戦術によって勝利を収める、という数々の功績により、彼の意思とは関係なく歴史の表舞台に出ることを強いられていた。
 ラインハルトが率いる帝国軍は、同盟宙域に侵攻したが、同盟軍は二倍の戦力で待ちかまえていた。同盟軍は三艦隊に分かれ、帝国軍を三方から包囲して攻撃し、殲滅する、という作戦に出る。
 だが、ラインハルトはその作戦を読んでいた。同盟軍は、三艦隊合わせると帝国軍の二倍だったが、各艦隊は帝国軍より規模が小さい。ラインハルトは、同盟軍が集結する前に各個撃破する、という戦法に出た。この作戦は予想以上の成果をもたらした。帝国軍は二艦隊を殲滅し、最後の艦隊も殲滅の一歩手前にまで追い込む。
 が、残った同盟軍艦隊にはヤン・ウェンリーがいた。彼は司令官代理となって艦隊の指揮を執る。奇策により帝国軍を撤退させることに成功した。
 ヤン・ウェンリーに、新たな使命が与えられる。帝国軍の宇宙要塞イゼルローンを奪えと。これまで同盟軍はその要塞を六回にわたって攻略していたが、失敗していた。が、ヤンはまたもや奇策により要塞を陥落させる。
 このイゼルローン要塞は、帝国にとっても同盟にとっても重要拠点。ヤンは、同盟はこの重要拠点を手に入れたことを機に帝国と講和するのでは、帝国も講和に応じるのでは、と甘い期待を抱いた。が、同盟はその期待に反し、要塞を足場に帝国への大規模な侵攻を繰り広げることにした。
 ヤンも軍首脳部も侵攻に反対していたが、政府首脳部の意思に背けず、戦場に向かう。
 ラインハルトは、同盟による侵攻を絶好のチャンスと見た。帝国内への侵入を許し、同盟軍の補給線が伸び切ったところで大艦隊を率いて殲滅する、という作戦に出る。この作戦も予想以上の成果を上げる。ラインハルトは同盟軍をあと一歩のところで殲滅するが、ヤンの奇策によりまたもや殲滅の機会を逃してしまう。
 同盟は、二度にわたる大敗北で政治的・財政的危機に陥る。
 一方、帝国では、皇帝が死ぬ。帝国も次期皇帝を巡る権力闘争が始まる。


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解説

 250ページあまりの小説にしては中身が濃い。というか、1000ページの大長編の要約を読んでいる感じ。
 重大なエピソードや戦闘もたった数ページの「説明」で済ませていることが多く、物足りない。
 本編ではラインハルトが天才として描かれている。作者自身もこの人物を人類が稀に見る天才だと思い込んでいるようだ。が、どちらかというと単に周りがあまりにも馬鹿な為、凡人のラインハルトが賢いように見えてしまっているだけ。常識の目で見ると天才というより、非常に幸運な男としか映らない。
 運も実力の内、といってしまえば実力があることになるのだろうが、作者がラインハルトの肩を持ち過ぎている感がなくもなく、読んでいて白けた。
 最初の戦闘では、ラインハルト率いる二万隻の帝国軍艦隊は、四万隻の同盟軍艦隊と戦う。四万の艦隊は三つの小さな艦隊に分かれていた為、帝国軍は各個撃破できたとなっている。ただ、最小の同盟軍艦隊でも一万二千隻あった。二万対一万二千だから、帝国軍が有利なのは事実だが、5:3の比率で有利に立っているだけで、圧倒的とは言い難い。本編のように二万隻の艦隊が殆ど戦力を失わず、一万二千隻の敵艦隊がほぼ全滅してしまう、というのはおかしい。たとえ不意を狙えたとしても。
 もっとおかしいのは、帝国軍が第二の同盟軍艦隊も全滅させられたこと。第二の同盟軍艦隊は二万隻以下だったが、それでもまだ一戦もしていなかった。不意を襲われたとしても、戦闘を終えたばかりで疲弊していた帝国軍と戦って全滅されてしまうのはおかしい。
 もっともっとおかしいのは、帝国軍が第三の同盟軍艦隊も全滅の一歩手前まで追い込めたこと。第三の同盟軍艦隊は味方の二艦隊が全滅させられたことは知っていたので、不意打ちを食らうことはなかった筈。それが二連戦して極端に疲弊していた筈の帝国軍に負けてしまうのは非常識(艦隊には一時間の睡眠で十時間に相当する休憩が得られる装置を搭載していたが、戦闘の疲労は兵に睡眠を与えるだけで回復できるとは思えない)。
 また、三方から帝国軍を襲撃する、という戦法は数十年前に使われたのと同じもの、という設定になっている。ある戦法が過去に大成功したからといって、全く同じ方法をまた使ってみよう、と考えるのはおかしい。敵だって対策を練っているだろう、と通常は考える筈。同盟軍首脳は数十年間にわたって戦闘を繰り広げているにも拘わらず、向上心がなさ過ぎる感じがする。だからこそ数十年もダラダラと戦争していたのか。
 帝国側の処遇の仕方も理解し難い。ラインハルトはこの戦闘で敵艦隊の大部分を殲滅しているが、結局勝利はしていない。それどころか、ヤンの幼稚ともいえる奇策で完勝を妨げられ、致命的ではないがかなりのダメージを受けている。なぜラインハルトはこの戦闘で昇進したのか。戦闘が稀にしか起こらないなら昇進は当然だろうが、この小説のように常に戦闘がある状況では、一度の小さな手柄で将官を一々昇進させるのはおかしい。同盟にも同じことが言える。
 同盟軍の戦闘を続ける理由も不明。大敗北を記したばかりなのに、重要拠点を奪えたからといって更に戦闘を繰り広げよう、と決断する政府首脳は理解し難い。軍もどちらかというと消極的な声が大半を占めていたのだ。好戦的な軍首脳部を政府首脳が押さえ込む、というのは有り得るシナリオでも、好戦的でない軍首脳部にわざわざ戦争させる政府首脳、というシナリオは普通有り得ない。
 戦争を続けるほどの経済的余裕があるならまだしも、都市整備もままならないほど経済状況が悪いのだから、無闇な戦争はまずい、と大抵考えるだろう。
 市民もなぜこのような連中を支持し続けるのか。馬鹿な市民が多過ぎる。
 作者はヤン・ウェンリーをラインハルトにも勝る天才としてしている。が、戦術家としては優れているものの戦略家としては優れているとは言い難く、結局権力者の都合のいい道具として使われているだけ。
 自分は軍人なんかになりたくなかったとぼやきながら任務を次々引き受けて成功させてしまうのはおかしい。軍を辞めたければわざとでもいいから失敗すれば済んだこと。年金が貰えなくなる、と言い訳するが、財政が圧迫されている中、年金が保証されていると考える方が異常。自分が失敗すると部下に多数の死者が出るから良心が許さないというのであれば、自分が最も嫌う政治家を殴り倒すなど、戦闘の失敗以外の理由で退役することになるよう手続きするくらいいくらでもできた。
 帝国への侵攻も首を捻りたくなる部分が多過ぎる。敵側へ深く侵攻すれば補給線が伸び切ってしまうのは素人から見ても明らか。それでも尚侵攻し、補給線を更に伸ばしてしまうのが分からない。普通ならある程度侵攻したら地盤を固め、敵側の侵攻に備えると思うのだが。
 補給線を散々伸ばし切った後、一度襲われたくらいで総崩れするくらいなら最初から侵攻しなければ良かったのである。
 くどいようだが、同盟軍は過去の戦闘から何も学んでいないように感じる。
 本編では、帝国内部での戦闘も描いている(わずか数ページだが)。そこではラインハルト本人ではなく、彼の右腕キルヒアイスが出動する。ある貴族が反乱を起こしたので、討伐する必要があったが、帝国が派遣した討伐軍は二度にもわたって失敗していた。最初の二回の討伐戦が数カ月にも及びながら失敗していたところを、キルヒアイスはたった数日で成功させた。
 この戦闘によりキルヒアイスの名声だけでなく、彼を副官とするラインハルトの評価まで上がった、ということになっているが、これにも首を傾げざるを得ない。三度目の討伐戦となれば敵の行動パターンや戦力が充分に把握できているだろう。敵は所詮一貴族に過ぎず、帝国の方が圧倒的に有利なのだから、三度目の討伐が僅か数日で終わったくらいで「キルヒアイスもラインハルトに劣らぬ天才だ!」と騒ぎ立てるのはおかしい。使われた戦術にも真新しいところはなく、常識を持っている者なら誰でも討伐できただろう。最初の二回の討伐軍指揮官が馬鹿過ぎたのだ。
 思えば帝国も同盟も馬鹿ばかり。政府首脳、軍、そして民衆のいずれもが馬鹿なのである。だからこそお互い決定的な敗北を味わずに済んだようだが、通常ならとっくに自滅しているような感じがする。
 また、万単位の艦船から構成される艦隊も非現実的。作者自身、歴史研究家(主に中国)で、本作品もSFというより、古来の英雄伝を宇宙を舞台に書き直したもの、と見なしている。すなわち古代中国の戦闘で四万人となる軍を本作品で四万隻に置き換えたようだが、あまりにも規模が大き過ぎる。
 現在、最大の規模を誇る米海軍でも700隻あまり。この700隻でも膨大な予算を必要とする。
 たとえ人口数百億分のタックス・ベースを持つ銀河帝国や同盟でも、宇宙を航行できる巨大艦船(アニメ版では600-1000メートル強となっている)を万単位で建造できるとは信じがたい。それほどの国力があるならもう少しまともなことができると思うのだが、一般市民の生活水準が21世紀の現在とあまり変わっていない(帝国においては現在以下)のは奇妙である。
 所詮小説だからいいだろ、という反論もあるだろうが、詰めが甘いと説得力が大幅に低下するので、大問題だと思うが。



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Last updated  2006.11.27 10:01:14
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