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非常に適当な本と映画のページ

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2006.11.29
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カテゴリ:邦書

 警視庁の吉敷刑事と道警の牛越刑事(斜め屋敷の犯罪にも登場する)が登場する700枚の長編推理小説。島田荘司が得意とする奇怪な事件がこれでもかとでもいうように連続する。


粗筋

 浮浪者の老人が、桜井という中年女性が経営する店に入った。400円の品物を買う。老人は400円を支払って店を出た。しかし導入されたばかりの消費税で、実際の価格は412円。桜井は残りの12円を支払って貰うため、老人を追う。しかし、老人は消費税を理解せず、払おうとしない。喧嘩になった。老人は桜井を刺殺した。
 老人は警察に逮捕される。ボケが進んだ老人の犯行だと思われた。老人が何も喋らず、ヘラヘラ笑うだけだったからだ。
 しかし、吉敷刑事は違うと感じた。この事件には裏があると。事件は解決したと考える上層部を無視して、独自の捜査を開始した。
 被害者の桜井は吉原で花魁として働いていた。現在でいう性風俗店である。花魁道中(着物姿の女郎のパレード。現在は単なる観光者用の儀式と化している)を演じたことが何度もあり、吉原の店を辞めた後も花魁道中を頼まれることがあったという。桜井が経営していた店は、源田という建設業者が所有していた。
 老人の身元が判明する。老人は殺人罪で20年間服役していたというのだ。行川という名だった。吉敷は監獄や元囚人から証言を得る。監獄ではかなりひどい扱いを受けていた。しかし行川は監獄に入った頃は文字さえ読めなかったが、監獄内で勉学に励み、小説まで書けるようになったという。
 吉敷は行川老人が書いた小説を入手した。その中の2編があまりにも奇妙だったので、特に気になった。一編は躍るピエロの話だ。北海道の夜行列車の中でピエロが突然現れ、トイレに閉じこもった。客が何だと思ってトイレの中を覗くと、ピエロの射殺死体があった。車内は大騒ぎになる。しかし、トイレの扉を一旦閉め、また開けると、死体は消えていた。もう一つの話は、ある男が北海道の列車から白い巨人にさらわれて空を飛んだ後、また列車に戻る、という内容のものだ。
 吉敷は、行川老人はこの小説のアイデアをどこから得たのだろうと思う。
 そんなところ、牛越刑事から連絡があった。ピエロの話は、30年前に北海道で実際にあった出来事だと。しかも、小説はほんの一部しか述べていなかった。事件が発生した列車では数時間の間に他にも事件が発生し、最終的には脱線したという。
 吉敷は、30年前の事件と消費税殺人は繋がっていると察した。牛越に更なる捜査を依頼する。吉敷は東京周辺で捜査を続行した。
 牛越刑事の捜査で、30年前の事故の全容が明らかになった。北海道の札沼線で起こった一連の事件は、次の通り:夜行列車が人を轢き、停車する羽目になった。列車は停止し、首なしの轢死体を車内に乗せ、走行を再開した。すると、数十分後、ピエロが突然車内に現れ、死体となって発見されたと思ったら消え失せた。更に数十分後、轢死体が起き上がって動き出した。驚いた乗客が手当たり次第にものを投げ付けていたら、列車が赤い目の白い巨人に持ち上げられて脱線したという。
 また、側を通る函館線では、ほぼ同じ時刻に銃殺事件が発生していたのだ。
 吉敷はこれらの奇怪な事件は繋がっていると確信した。
 桜井と行川老人は、刺殺事件で初対面ではなかった。行川老人は桜井を昔から知っていたらしい。
 吉敷は捜査の結果、桜井と行川老人が30年前、同じサーカス団に属していたのを知った。行川老人はピエロで、桜井は花魁姿で玉乗りをするという芸をやっていたのだ。行川老人(実際は韓国人兄弟の兄呂秦永と判明)は、花魁道中を偶々目にして、30年前に一緒にいた女だと気付いたのである。つまり、殺人は計画的だった。
 吉敷はサーカス団の元メンバーから話を聞く。30年前、まだ20代だった桜井は美人で、ある男が彼女を自分の愛人にしようと考えていた。桜井もサーカスでの生活に飽きていたので、それに応じたかった。しかし、サーカスとしては看板娘を失う訳にはいかず、監視していた。そこで桜井は呂秦永とその弟を利用して、脱出した。愛人にしようとしていた男こそ、桜井が経営していた店の所有者源田だった。当時は暴力団の組長だった。函館線で射殺された男は、源田組に属する組員だった。
 事件は繋がっている、と吉敷はますます確信した。吉敷は上司の反感を無視して北海道へ飛ぶ。
 吉敷は事件が札沼線の轢死事件が起こった辺りと、函館線で射殺事件が発生した辺りを調べ、気付いた。この二本の路線は、その辺りで二キロ程度にまで接近する、と。歩いて移れるほどの距離だったのだ。
 そこで吉敷は30年前の一連の事件と、消費税殺人の真相に気付いた。
 呂秦永は、弟と桜井と共にサーカスを脱出した。桜井は呂兄弟を利用しただけで、迎えに来た源田組員らと去るつもりだった。それに怒った呂の弟との間でもみ合いになり、呂の弟は刺殺された。それを知った呂秦永は、組員を射殺した。どさくさに紛れて桜井は列車から飛び降りた。呂秦永も弟の死体を抱えて列車から飛び降りた。
 呂秦永は歩いている内に札沼線にたどり着いた。そこで札沼線に乗る為のトリックを思い付いた。まず、弟の死体を列車を轢かせた。その際、頭部と手が切断されるようにした。列車が停止して死体を車内に運んでいる最中、呂秦永は弟の頭部と手を持って車内に忍び込んだ。呂秦永はピエロの格好をし、弟の頭部にピエロのメークを施した。ピエロの服に弟の頭部と手を付け、まるで死体全体があるようにしてトイレに残した。呂秦永は車内で躍って乗客の注意を引くと、屋根に移動した。乗客はピエロがトイレに閉じこもったと思ったので、そこを覗き、たった今躍っていた筈のピエロの死体を発見した。扉が閉まった後、呂秦永は頭部や手に取り付けてあった紐を引いて回収した。その直後にまた扉が開けられた為、死体が僅か数秒間で消失したように見えたのだ。
 呂秦永は、弟の死体をまとめてどこかへ埋葬したかった。だから弟の首なし死体を回収しに戻った。弟の死体を列車の外へ出すのに成功した。しかし丁度その頃、車掌が戻ってきた。呂秦永は死体の振りをしたが、車掌が触ろうとしたので、思わず逃げ出した。これが動く死体の真相だ。
 呂秦永は単に逃げ出しただけだが、車内の者は死体が動き出したと驚いた。車内にあったものを投げつけた。その中には小麦粉の袋があった。小麦粉の袋は破れ、粉が車内に充満したところに、線路沿いの火事から火の粉が飛んできて、粉塵爆発が発生し、列車が持ち上がり、脱線した。列車からは煙が発生し、それが白い巨人に見え、まるで巨人が列車を持ち上げられたように見えたのだ。巨人の赤い目は、線路沿いの火事現場を撮影していた航空機からの光だった。
 呂秦永は事故を無傷で脱し、桜井の後を追った。死んだ弟や自分の復讐の為だ。しかし、冤罪で監獄に送られ、20年間も追えなくなった。出獄して浮浪者をしていたところ、偶々花魁道中を見て、その中の花魁が桜井だと知り、凶行に及んだのだ。


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解説

 現在と過去が入り交じった複雑な事件。
 吉原の過去と現在、戦時中の朝鮮人の扱い、昭和時代で当たり前だったでっち上げ捜査……など、本格推理でありながら社会的なテーマも取り扱っている。
 タイトル通り、奇想がてんこ盛り。
 ……列車で突然現れるピエロ。突然消え失せる死体。白い巨人の登場……。最近の推理小説ではまず見られない派手さが最大の特徴といえる。
 それ故に、問題点も多い。
 呂秦永は函館線の列車からの脱出後、偶然に札沼線の線路を見付けてトリックを思い立ち、実行に移したと言っている。いくら何でも上手く行き過ぎでは、という感がなくもない。呂秦永はけっして頭が悪い男ではないが、このようなトリックをぶっつけ本番でできるほどの頭脳があるとは思えないし、乗客などが呂秦永の思い通りに動いてしまう、というのも解せない。そもそも列車に乗るだけの為になぜこんなことをしたのかが理解できない。弟の遺体を埋葬し、桜井を追えばよかった。そうしていれば復讐を遂げるのに30年もかからなかっただろう。
 花魁道中をしていた女を、呂秦永が偶然にも見かけて自分と弟を裏切った女だと気付く……、というのも上手く出来過ぎ。30年も経っているのだから、たとえ同じ花魁姿でもかなり変わっていた筈。
 ストーリーの構造そのものもどうかと思ってしまう。吉敷の上司が言っていたとおり、消費税刺殺事件は、呂秦永の逮捕で解決している。その裏を解明する、というのは吉敷の気まぐれに過ぎない。過去の事件が絡んでいたからよかったものの、何でもなかったらどうしていただろうか。いや、過去の事件そのものも時効を迎えていて、消費税刺殺事件には何の影響もない。上司が怒って当然だろう。
 また、吉敷が呂秦永に最終的には同情してしまうのもどうか。呂秦永は意図的ではないにせよ脱線事故を起こし、かなりの死者を出している。これだけでも「殺人犯」になるのではないか。生存者の中にも精神を侵された者が多い。もし呂秦永が札沼線の列車に乗ろうという考えさえ起こさなければ、列車は何事もなく無事目的地にたどり着いていただろう。吉敷は呂秦永の悲惨な人生ばかりに焦点を当てて、彼の行動により死んだ人々をまるきり無視している。最後に上司に向かって説教するが、蛇足だった。
 牛越は本編でも「斜め屋敷の犯罪」でも名脇役振りを発揮している。なぜ島田荘司は北海道を舞台にすることが多いのか。広島出身なのだが。
 消費税導入直後で、税率が3パーセントとは時代を感じさせる。
 二大本格ミステリ作家といえば島田荘司と綾辻行人。
 島田荘司のミステリ論は、「非現実的な奇怪な事件を描き、それに論理的な説明をつけることで読者を驚愕させる」ということだ。本作品でこれを実践している。
 綾辻行人のミステリ論は、「一見平凡そうな事件を取扱い、それを作中のどんでん返しで作品そのものを根底からひっくり返し、読者を驚愕させる」というもの。
 どちらも読者を驚かすのがミステリだということでは一致しているが、方法論が異なっている。
 島田荘司は、事件のトリックそのものを小説内のトリックとしている。登場人物は、読者と共にトリックを暴こうとする姿勢を重視する。
 綾辻行人は、事件より作品そのものをトリックとしている。文章トリックにより読者を直接驚かせるのだ。登場人物にとってはトリックでも何でもないことが多い。
 どちらも極端になると馬鹿馬鹿しくなるだけだが、程度をわきまえていれば有効だ。
 個人的には島田荘司の方がミステリとしては正しいように感じる。綾辻行人のは良いのでも文章パズルになってしまう。
 本作品のピエロ消失トリックは、少年漫画「金田一少年の事件簿」でパクられている。占星術殺人事件といい、本作品といい、パクられてばかり。作者は金田一少年の事件簿の原作者にトリックを提供しているのだろうか。



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Last updated  2006.11.29 13:50:48
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