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非常に適当な本と映画のページ

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2007.04.01
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カテゴリ:邦書

 本格推理短編を一般公募した結果出版された短編集。9編収録されている。
 編者が鮎川哲也から二階堂黎人に交代した際、「本格推理」から「新・本格推理」にリニューアル。残りはこちら


粗筋

「暗黒の海を漂う黄金の林檎」:七河迦南
 宇宙空間に浮かぶ宇宙ステーションで、ある博士がテレポーション技術を開発していた。ようやく完成した装置はまだ不安定な部分が多く、成功率は3分の1とされていた。実験体として、博士の三人の娘が申し出る。博士は彼女らを使ってテレポーション実験を行うことに。そんなところ、一人の娘が早々と実験を強行。テレポーションした場所に急ぐと、その娘は死亡していた。ただし、実験が失敗したからではなく、首を切り落とされ、殺されたからだった。ここで疑問が。殺害が成立するには、テレポーションが完璧だった、というのが大前提となってしまうのだ。動揺している間もなく、第二、第三の殺人が発生する。
 ……テレポーションの概念そのものが失敗だった、テレポーションは実現しようがない、と気付いた博士が自らの命を絶つ、という理由で起こした犯罪だった。博士は娘らを道連れにしたのだった。
 ストーリーの探偵役として登場する人物が、実は宇宙ステーションのコンピュータだった、というのは何となく読めてしまったので、驚きは少ない。
「このコンピュータは、人間を生きていようと死んでいようと「1人」と数えるので、元々死んだ状態で運ばれてきた博士の妻も「乗員」の一人してカウントしていて、それが文章トリックに使われた」というのは、ストーリー成立の為にこじつけた道具に過ぎず、不自然な印象を残してしまった。
 とにかく、「〇〇だと思われていた人物は実は××だった」という文章トリック(読者を引っ掛けようとするトリックで、登場人物らを引っ掛けようとしていない)は、綾辻行人のでうんざりしているので、特に感心しない。

「床屋の源さん、探偵になる―生首村殺人事件―」:青山蘭堂
 ある村で、首と指を切り落とされた死体が見つかる。身元は比較的簡単に判明したが、村の床屋、推理小説マニアのの源さんは、推理を展開。これはすり替え死体ではないか、と。この被害者は、以前犯罪を犯していて、恨まれていたのだ。被害者と思われている者が実は犯人で、犯人と思われている人物が実は今回の死体なのではないのか、と。
 そんなところ、推理作家が現れ、事件は急展開を見せる……。
 ……実は源さんが犯人だった。源さんは、犯人でありながら探偵役を演じて、事件捜査を混乱させようとしたのだった。発見された死体はやはり当初から被害者と思われていた人物のもので、すり替え死体ではなかった。
 編集者二階堂黎人は本編に二重丸を与えていたが……。
 ストーリー構成が江戸川乱歩の蜘蛛男そっくりで、新鮮味が全くない。
 問題の床屋が実は被害者がいた場所から程近い場所にあったことが「真相」が語られる部分で明らかにされるなど、フェアとは言い難い。
 作者は本シリーズで数回採用されているが、下手に手馴れてしまったような感じ。

「黄金に沈む、魔術師の助手」:如月妃
 他人の死を予知する能力を持つ占い師を、マジシャンとその助手が訪れる。そのマジシャンは、ショーで実際に人を殺しているのでは、と噂されていた。自分はいつ死ぬのか、とそのマジシャンが尋ねたので、占い師は答える。近々死ぬだろう、と……。
 ……魔術師は単なる操り人形的な存在で、助手こそ本物のマジシャンだった。ショーで人を殺していたのも事実だった。
 ゴシック的な雰囲気のある、奇妙な短編。編集者二階堂黎人は、「本編がいつ、どこで起きたのかきちんと説明すべき」と指摘していたが……。所詮短編なのだから、何もかも説明しなければならない、というのはおかしい。あえて時代や地域が分からない小説、というのもあっていいのだと思うが。
 後味があまり良くないのが難点か。

「くるまれて」:葦原崇貴
 病弱な少女が、見知らぬ男性と文通する。その中で、彼女は自分が目撃したと思う使用人の殺人事件について告白する……。
 ……文通していた相手こそ、使用人殺人の犯人だった。犯人は少女の運転手だった。問題の使用人が少女の下着を盗むなどしていたので、殺害したのだった。
 本編の最大の「トリック」の問題点は、虫によってくるまれた葉を開いてみたら血が付いていて、それが殺害現場特定の決め手となっていること。葉に血液が付着し、虫がその葉を丸め、人がそれを発見して葉を開くのがほんの数分だったら、「葉に付いているのは血液だ」と一目で分かっても不思議ではないが、そうではないようである。葉を広げた人物が乾燥して変色している筈の血液を見て「これは血液だ」とどうして分かったのか分からない。文章やストーリー構成について細々と指摘する編集者二階堂黎人がなぜこの「トリック」の不自然さに気付かなかったのか、よく分からない。

「密室の石棒」:藤原遊子
 考古学者が密室の中で死んでいた。警察は事故死だろう、と推測したが、考古学者の助手だった女性はそうでないのは知っていた。彼女は数時間前、不倫相手でもある考古学者と会っていたのだ。考古学者の妻が訪ねることを知ったので、急遽その場を後にした。その直後に死んだのだった。
 ……新・本格推理05で初採用されている作者の作品。編集者二階堂黎人は、「プロの域に達している」と絶賛しているが、前回を含めて、そこまでべた褒めするほどのものではない。プロだとしたら、毎月本棚に並べられては読み捨てられていく、印象に残らない小説を出版社の事情で書き飛ばさなければならないプロのような感じ。あえて読みたい、というものではない。
「警察が死体が発見された部屋の検分に終始し、他の部屋の検分はしなかったので、不倫の証拠となる弁当箱をゴミ箱から回収して持ち帰ることができた」というのは有り得なさそう。警察がそこまで無能とは思えない。
 問題の密室トリックも、山村美紗のを拝借したようなもので、特に感心させられるものではなかった。犯人がとっさにこのトリックを考え付いた、というのもストーリーを不自然にしている。いっそ密室殺人事件にしない方がよかったかも。ま、それだと編集者の採用ストライクゾーンからそれていたかも知れないが。



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Last updated  2007.04.01 14:19:50
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