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非常に適当な本と映画のページ

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2009.04.02
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カテゴリ:邦書

 特命武装検事黒木豹介シリーズ。
 前作「黒豹ラッシュ・ダンシング」の最後で瀕死の状況に陥った黒豹こと黒木豹介のその後を描いた作品。


粗筋

 大阪にある高級レストランで、女性が食事していた男性四名を射殺した。
 一方、東京では、男性が政財界の重鎮らを日本刀で斬殺した。
 大阪府警と警視庁は、それぞれ殺戮魔を追う。
 双方の犯人は、間もなく見付かった。
 死体として。
 殺戮魔の遺体を解剖してみると、いずれも脳がドロドロ状態だった。検査の結果、脳が何らかのウィルスによって犯され、正常な精神状態ではなかったことが判明。
 問題は、この二人の男女はどこでどうやってウィルスに感染したのか。なぜ何人もの人間を拳銃や日本刀などの凶器で殺戮するに至ったのか。
 警視庁の本郷幸介警部が捜査を開始。
 銃殺犯と斬殺犯は、いずれも同じ場所で観測船を見学していたのが判明。日本政府が最高の技術を結集して建造した深海巡航探査艇である。遺品には、謎の外国人と共に写った写真もあった。本郷がその外国人を調べたところ、国際的な犯罪組織デストラクションと繋がりがある者と判明。
 そうこうしている間に、深海巡航探査艇の設計者伊端が何者かに拉致される。
 本郷は、国際テロ事件に巻き込まれてしまったのである。
 本来は一警察官の手に負える事件ではないが、警察官の意地で捜査を続ける。
 無論、政府はただ見守っている訳にもいかず、ある人物の復活を要請。
 過去に数々の国際的な事件を解決してきた黒木豹介……。


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解説

 本作は、タイトルに「黒豹」の二文字があり、帯にも「黒木豹介 遂に動く!」となっているので、黒木豹介が大活躍してくれるのかと思いきや……。
 黒木豹介が登場するのは下巻から。
 上巻(340ページにも及ぶ)には、作中に黒木豹介のクの字も出てこない。カバーだけである。
 本郷警部が謎の組織を追い続ける模様をひたすら描いているだけなのだ。
 下巻で黒木豹介がようやく登場するので、主役が本郷から黒豹へバトンタッチするのかと思いきや、本郷は主役の座を降りない。
 結局、黒豹は人質事件の犯人7名を一気に射殺するだけ(凄い技であるのは事実だが)。その後も登場するが、本郷の捜査の合間に助手の高浜沙霧とひたすら会話するシーンが挿入されているだけで、全く動かない(最後の最後まで)。アクションシーンにおいては、むしろ沙霧の方が色々やっている。
 本作では、黒豹は脇役。全く登場しなかったとしても何とか成立したような。
 ……作者が国際テロに関する小説を書き始め、出版社に見せたところ、「黒豹作品として出した方が売れるので、黒木豹介が登場するものに書き直せないか?」と言われてしまった。作者としては、半分以上書き上げてしまったので、今更最初から書き直す訳にはいかない。が、出版社の要望には応えなければならないので、仕方なく残りの部分で黒木豹介が登場するよう、ストーリーに手を加えた……。
 ……そんな感じ。
 したがって、何となくちぐはぐな部分が見受けられる。

 また、作者は外国語(特に英語)を作中に盛り込むのが好きなようだが……。
 英語には不自由しない自分だが、それでも読み易いとは言い難い。
 日本語の小説なのだから、日本語で書いてほしいものである。
 作者は、英単語を多用することによって、自身の英語力を誇示したかったようだ。が、ネイティブからすると、作者の英語のセンスには首を捻りたくなる部分が多い。
 今回登場する国際的テロ組織の名はデストラクション(DESTRUCTION)。「破壊」を意味する単語だが……。テロ組織の名前としては、違和感があるというか、センスがないというか、微妙なズレがあるというか。そもそも、国際的テロ組織となれば、英語圏より中東系やアフリカ系が一般的。テロ組織の名も中東系になる筈(実在するテロ組織アルカイダはアラビア語で「基地・基盤・座」を意味し、英訳すると「The Base」になる)。犯罪組織が英語名を持つのは有り得ない。英語圏にある犯罪組織も、英単語をそのまま組織名にするのはあまりない(「マフィア」はイタリア系。「クー・クラックス・クラン」もいずれも一般的な英単語ではない)。
 ようするに、作者は英和辞書でカタカナ表記すると格好いい響きになる単語をピックアップし、そのまま使ったような。ネイティブ・スピーカーの意見を聞くことなく。仮に自分がこの作者から「国際テロ組織の名前として『デストラクション』はふさわしいと思うか?」と訊かれたなら、「あまりセンスが良くないからやめた方がいい」と教えてやっただろう。
 この作者、こういうことが多い。
 別の作品では「Q」という攻撃ヘリを登場させている。「攻撃ヘリQ」というのは謎めいていていいじゃないか、と思っていたら、「このQとはquick(素早い)の意味である」と完全に蛇足的な説明を付けてしまった。「quick」というのは、ヘリの名としては正直みっともない。無駄な説明を付けない方が良かったのに、とその時は思った。

 ストーリーの流れもよく分からない。
 本編は、何名もの人間を殺戮した男女が、脳味噌がドロドロになった死体として発見される。
 脳味噌をドロドロにしたのはウィルスだった。他人が行動を自由に操ることを可能にするウィルス。
 この衝撃的な事件はどうなるのかと思って読み進んでいたら、捜査はいつしか探査艇の技官を巡るものになっていて、冒頭の殺戮事件はすっかり忘れ去られていた。
 デストラクションがウィルスを使って殺戮を繰り広げたらしいのだが、なぜそんな手の込んだことをやったのか、そもそも何の為に殺戮を繰り広げたのか、結局分からないままなのである。

 デストラクションは実はロシアの軍事諜報組織GRUと繋がっていて、技官の妻は実はGRUの工作員だった、という事実が判明する。が、それが探査艇とどういう関係があるのか、よく分からないまま終わってしまう。
 無論、冒頭の殺戮とどう繋がるかも分からなかった。

 ストーリーに問題があっても、登場人物に魅力があれば、少しは面白く感じるのだが……。
 登場人物も、これといった魅力というか、個性がない。
 本郷警部はずっと登場するので何となく区別できるのだが、他の捜査官はどれも似たり寄ったりで、区別が付かない。どれも正義感が強く、誠実で、優秀なのである。実際の警察官が正義感がなく、誠実でもなく、優秀でもなかったら大問題だが、ここは小説なのだから、そういった要素に多少強弱を付けてもいいと思うのだが。
 それができないというのなら、登場人物の数を減らすべきだろう。

 作風にも違和感が。
 とにかく説教臭い部分が多い。
 作者が日本の政治家や一般市民の平和ボケに憤りを感じているのは理解できるし、共感できるが、それを作中に何度も何度も述べられるといい加減腹が立つ。共感もしたくなくなる。
 そうした説教は1回で充分なのである。
 小説は、作者の持論を読者に押し付ける媒体ではない。
 読者にも作者の持論を受け流す権利があるし、そもそも読者は説教を受ける為に小説を手にする訳ではない。
 もう少し淡々とストーリーを進めてほしい。

 もう一つ作風で気になるのが、どの視点で書かれているのか分かり難いこと。
 第三者の視点で書かれているようなのだが、やけに無能というか、何が起こっているのか分かっていないような部分が所々に見受けられる。
 戦前の江戸川乱歩作品のように、「さあ、読者諸君!」という風に読者に直接語りかけるようなことはしないが、何となく古臭い。

 本作は、面白くなる要素がいくらでもあったものの、作者の文体、作者の持論展開、ストーリー構成、登場人物の書き分けができていないことなどで、イマイチになってしまった。
 初期の黒豹シリーズのように単純明快なれなかったのだろうか。
 本作は、黒木豹介の復活の模様を描いたものだが、本作が事実上最終作となっている。
 作者はこのキャラクターというか、分野に興味を失ったらしく、2009年現在では時代小説を発表している。



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Last updated  2009.04.02 20:06:45
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