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非常に適当な本と映画のページ

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2015.07.07
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カテゴリ:邦書

 直木賞作家唯川恵による恋愛小説。

楽天ブックス(large)

解説

 薄い恋愛ドラマのノベライズ、といった感じ。
 実際に、テレビドラマ化されたらしい。
 男性社員を主人公とし、男性視点で描いていれば、重厚な企業小説に成り得たかも知れない。が、女性社員を主人公とし、女性視点で描いているので、結局は薄っぺらの恋愛ドラマに成り下がっている。
 大企業で勤務した経歴の無い女性作家なので、仕方ないと言えば仕方ないのだが。

 舞台となるM物産(会社名を省略してイニシャルで済ませている点からも、著者の真剣度が分かる)は、どうやって存在し続けているんだろう、と不思議に思ってしまう程のポンコツ会社。管理職からOLに至る社員までもがポンコツ。
 そもそも、同じ会社の販売部二部門が、互いの足を引っ張り合うどころか、妨害工作に出る、という展開自体異常。販売部同士の不毛な争いで、M物産は未来の自動車産業分野に進出し、事業を拡大するきっかけを失った。一部門(正確には、一部門の長)のエゴで、会社全体の利益を損ねてどうするのか。そんな状況で「有利」を保ったところで他社にやられるだけになるだろうに。

 何故第一販売部の早坂部長が、第二販売部に対し露骨に妨害対策に打って出たのかが不明。
 第一販売部は花形部署とされ、真面目に勤め上げていれば、重役になるのはほぼ確実だった。にも拘わらずつまらない工作に打って出た為、重役の椅子をふいにした上、会社に損害を与えた。下手すると、経営不振に陥る可能性も。そんな会社の重役になったところで、甘い汁が吸えるとでも思っているのか。
 今回の件か、株主の耳に入ったらどうなるのか。経営責任を問われかねない。

 第二販売部の須崎部長も、相当無能。
 ライバル視する早坂部長よりも先に重役のポストに就きたい、という考えが先走りし過ぎ。早坂部長をとにかく出し抜きたいが故に、社運を賭けるべく大プロジェクトを極秘に進めてしまい(手柄を独り占めにする為)、ライバルに妨害されてしまう。もし須崎部長がエタノール車計画を社内で大々的に発表し、進めていれば、早坂部長も妨害工作には出られなかっただろう。エタノール車計画を成功に導き、第二販売部を花形部署に昇格させ、早坂部長には遅れを取るものの「やり手」として重役のポストに就いた方が、長期的に見れば社内での影響力を高められる、と考えられなかったのか。
 極秘にプロジェクトを進めると言いながら、専門外の瑞子をメンバーに加えたり、経歴不明の男が自身の部署に配属されるのを許す等、詰めが甘い。人を読む眼力が無いとしか言い様が無い。同期をライバル視する暇はあるのに。

 本書で描かれているエタノール車計画、というのも、検証してみればおかしい。
 ガソリン車に替わる次世代自動車なのだから、中堅燃料会社のM物産1社だけで進められる事業では無い。
 国家レベルのプロジェクトになるだろう。
 複数の企業(M物産より規模の大きな企業)が絡む筈で、中堅会社の一部門の工作で全てが失敗する、といった流れになるとは思えないし、それ以前に失敗させよう、という発想すら生まれない筈。
 著者が、ちょっと齧った未来技術の情報を、その重大性を理解しないまま執筆中の小説に盛り込んだだけの感じ。そんな事もあり、「エタノール車」といった言葉は作中に何度も登場するが、詳細は描かれていない。本当にそんな事業を進めていたのかね、と疑ってしまう。「エタノール車」は単なる社内暗号で、実際にはもっと小規模(中堅会社1社だけでも進められる)なプロジェクトだったのかも知れない。

 本書の主人公は、35歳のお局OL瑞子と、23歳の腰掛OL千絵。
 いずれも共感に値しない盆暗女。
 瑞子は適齢期を逃した事を、同じ会社の男性と不倫する事で紛らわせているとんでもない尻軽女。
 千絵は、ヒモ男の言いなりになっている事実、そして会社では後輩が続々入社してきている為以前程チヤホヤされなくなっている事を人生の最大の悩みとする阿婆擦れ。
 いずれも世界で悩みを抱えているのは自分らだけで、他を自分より格下だと見下している。
 そんな中、沢木という、ちょっと格好いいエリートっぽい男が配属されただけで、色めき立つ。経歴や背景等全く知らないにも拘わらず、である。
 瑞子も千絵も、大して無い魅力を前面に押し出して、沢木と親交を深める。
 沢木が実はライバル部署からの回し者で、二人を利用していただけで、しかも別に婚約者がいた、という事実を知って、二人とも怒り狂い、共謀して彼を陥れる。
 瑞子は自身は別の男と不倫していて、千絵も別の男(ヒモ)と付き合いながら沢木に接近した事を棚に上げて。
 何故二股を掛けていた女が、相手の男に二股(三股)を掛けられていたくらいで怒るのか。
 自分勝手も甚だしい。

 もう一人の主役である沢木も、作中では「エリート」と連呼されるが、それを全く感じさせない。
 ただの欲馬鹿。
 彼は、ライバル部署の内情を知る為に送り込まれた筈。
 瑞子や千絵の売り込みを受け入れたのも、部署で働くOLなら、内情に詳しいだろう、と判断したから。千絵はただの無能OLで、大した情報は得られなかったが、瑞子は重要な情報を入手出来る立場にいた。
 この時点で千絵とは距離を置き、瑞子に集中すべきだったのに、「肉体関係なら年増の瑞子よりまだ若い千絵の方が良い」と言わんばかりに、千絵と瑞子を二股に掛ける。
 その結果、千絵は彼には別の婚約者がいる事を知り、怒って本来は反目し合っていた瑞子と手を結んで彼を陥れる。
 何故部長の娘という婚約者がいながら、盆暗OLと肉体関係を持つ事に固執したのか、全く分からない。
 婚約者の存在と、スパイ目的で第二販売部に配属された事が千絵にばれた時の対応も、理解出来ない。
 沢木は、千絵に対し、自分に婚約者がいる事、スパイ目的で第二販売部に配属されたのは全て事実だと認めた上で、お前みたいな盆暗OLがそれを知ってどうなる、と開き直るのである。自分には早坂部長という後ろ盾がいるので、千絵が二股を掛けられたと騒いだところで全て千絵の言い掛かりだと突っ撥ねられる。重役選は間近に迫っているので、第二販売部が動こうにも手遅れ。早坂部長の勝利は確実で、自分のスパイ行為が公になっても、その頃には海外部署に栄転しているので問題ない、と。
 千絵は何の手も打てないだろう、瑞子は自分が早坂部長からの回し者である事に気付いていないだろう、と心底から信じていた様である。
 だからこそ千絵と瑞子が仕掛けた策略にコロッと填まり、破滅する。
 何故早坂部長はこんな欲馬鹿に自身の娘と婚約させ、ライバル部署へスパイとして送り込んだのか。人選を誤った為、重役の椅子をふいにし、自身の会社に損害を与え、自身の花形部署の地位も危うくしてしまった。

 本作の登場人物で、得したのは誰か。
 瑞子は、退社を余儀無くされる。
 千絵は、ヒモ男と寄りを戻す羽目になる。
 沢木は左遷。
 早坂部長と須崎部長はいずれも念願の重役のポストをふいにする。
 誰も得していない。
 ……と思っていたら、一人いた。
 瑞子の浮気相手の史郎。
 彼は、そろそろ手を切るべきだと考えていた瑞子と、手を切る事に成功。彼から別れを切り出していたら、瑞子に訴えられ、浮気が妻にばれ、大問題に発展していただろう。しかし、瑞子から別れを切り出させている。彼は、身銭を切る事無く、次の就職先を紹介してやるだけで、「良い人」の印象を瑞子に植え付け、浮気関係に終止符を打っているのだ。作中で、史郎は瑞子に対し、沢木は怪しいから気を付けろと忠告しているが、これも瑞子が自ら別れを切り出させる為の布石だったのでは、と思ってしまう。
 もしそうだとすると、史郎は早崎部長を遥かに上回る策士、という事になる。

 本作は、ストーリー構成が弱い。

 ……反目するOL二人。
 会社がプロジェクトを立ち上げるのと同時に、登場した時点で怪しいと分かるエリート男が配属される。
 OL二人は会社の事情や、自身らのプライベートはそっちのけで、エリート男にぞっこんになるものの、裏切られる。
 そこで、OL二人は手を組んで、エリート男を成敗。
 めでたしめでたし……。

 裏表紙の説明だけで結末が想像出来てしまう、何の捻りも無いストーリー。
 流石にそこまで単純なものではないだろう、最後の最後でどんでん返しがあるのでは、と思って最後まで読んでみたが、そんな期待は裏切られた。
 こんなのでも小説として成り立つとは驚き。
 所詮恋愛小説。

 文章に読み辛さは無いが、所々に読んでいてウンザリさせる部分が。
 本書は、テレビドラマ化を意識してか、もしくは著者がテレビドラマに感化されたのかは不明だが、OLらが長々と互いについて非難したり反省したりする下りがある。
 女性の本音を描く事で、小説に「厚み」を持たせる目論見なのだろうが……。
 野郎からすれば、女性の自分勝手な退屈な主張(愚痴)を延々と聞かされている気分。
 共感出来る部分が無い。
 本書は、あくまでも「女性の、女性による、女性の為だけの小説」と言える。
 この程度に共感出来る女性という連中は、本人らが思っている程賢くは無い。


あらすじはこちら






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Last updated  2015.07.10 19:01:12
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