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2015.09.15
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カテゴリ:邦書

 医師から作家に転身した渡辺淳一による医療小説。
 実際にあったロボトミー手術を巡る訴訟をヒントに書かれたという。
 本作は、1974年に雑誌に連載されたものを大幅に加筆している。


粗筋

 週刊誌記者の池谷は、ロボトミー手術によって夫を廃人にさせられた、という訴訟を取り上げる事に。
 悪徳病院が、不要な手術を断行し、手術費を患者の家族や保険当局から不当にせびり取ったのだろう、と池谷は読み、特集する。
 記事は大いに反響を得たので、池谷は更に取材を進める。
 患者の家族を取材すれば、病院の悪徳振りが聞けるだろうと予想したが、患者の妻である相田久子は、弁護士に一任してある、と述べるに留まり、取材に一切応じない。
 患者側の弁護を担当する五十嵐弁護士を取材する。病院がいかに悪徳であるかを唱えるが、池谷はどことなく不自然さを感じる。
 池谷は、相田久子に見覚えがある、と思っていたが、暫くして思い出す。数年前訪れたキャバレーのホステスだった。ホステス上がりの女が、夫が廃人にされたからといって、弁護士の門を叩いて裁判に打って出るか、という疑問が湧く。
 患者の取材も行う。ロボトミー手術を受けて廃人にされたとされる相田義男は、手術前から酒癖が悪く、ロボトミー手術も止むを得ない問題者だった。福祉事務所によると、ろくに働きもせず、妻を困らせていたという。ロボトミー手術も、患者の妻の希望によって実施されたというのだ。
 池谷は、悪徳扱いした病院も取材。院長の河原も、ロボトミー手術は相田久子の希望によって行われたものであり、病院側が勝手に行ったものではない、と主張。手術が行われたのは2年も前で、その時は何も言って来なかったのに、何故今更訴訟を起こされたのか分からない、と言い張る。
 実際に手術を担当した佐伯助教授も取材する。ロボトミー手術は正規の手段で行われており、何の落ち度ないと主張。冷静に見れば、訴訟は言い掛かりに近く、病院側が勝つのは目に見えている、と。
 池谷は、佐伯助教授の秘書が何となく気になった。誰かと雰囲気が似ている、と。そして気付く。五十嵐弁護士の秘書と面影がそっくりだったのだ。調べてみると、二人の女性は姉妹だった。訴えを起こした弁護士の秘書と、訴えられている医者の秘書が姉妹というのは、偶然にしては出来過ぎていた。
 この時点で、池谷は訴訟は単にロボトミー手術の可否を巡っているのではなく、裏がある、と悟った。
 そんな中、佐伯助教授の秘書が自殺する。
 佐伯助教授の秘書は、助教授と不倫関係にあったらしく、それを苦に自殺したらしいが、ロボトミー手術訴訟との関連性があるのか、ないのかは不明だった。
 池谷は、今回の件の鍵を握るのは佐伯助教授だと感じ、周辺を取材。
 すると、佐伯助教授が新たに設立される大学の医療学部教授の有力候補であるのを知る。大学側は、ロボトミー訴訟が結審してから佐伯助教授を教授に指名する予定だった。
 しかし、指名を長引かせるのはまずい、と各方面から声が挙がり、梅沢という対立候補が教授に指名される。佐伯助教授は、医療関係者からの評価は高かったものの、訴訟により左遷された形となった。
 池谷は、五十嵐弁護士の秘書であり、自殺した佐伯助教授の秘書の姉から漸く話を聞く事が出来た。
 そして、一連の件の真相を知る。
 新たに設立される大学の教授は、佐伯助教授でほぼ決まっていた。それを阻止したかった梅沢は、知人である五十嵐弁護士に相談。偶然にも、佐伯助教授の秘書と、五十嵐弁護士の秘書は姉妹だった。その繋がりを利用して、五十嵐弁護士は佐伯助教授に探りを入れる。
 佐伯助教授は、教授に指名されるに当たって、秘書と不倫関係にあるとなっては不利になると考え、秘書との関係を清算するつもりだった。秘書は、それを不満に思っていて、丁度探りを入れてきた五十嵐弁護士に、佐伯助教授が2年前に行ったロボトミー手術の結果を気にしている事実を告げてしまった。
 五十嵐弁護士は、チャンスとばかりに相田夫妻の元に走り、「訴えれば金になるから」と持ち掛け、訴訟を起こさせる。五十嵐弁護士からすれば、訴訟を起こす事自体が目的であり、勝訴を勝ち取れないのは百も承知だった。
 梅沢と五十嵐弁護士の思惑通り、佐伯助教授は訴訟により教授指名の有力候補から外され、代わりに梅沢が教授に指名される。
 佐伯助教授の秘書は、自分の告げ口により佐伯助教授の教授指名がふいになった事を苦に、自殺した。
 池谷は、この事を記事にしようと考えるが、下手に記事にしても自殺した秘書に鞭打つだけだと気付き、思い止まる。


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解説

 渡辺淳一は、現在は中年向けエロ小説作家に成り下がってしまっているが、元はかなりシリアスな医療小説を書いていたんだな、と本作を読んで思い知らされた。

 本作は、ロボトミー手術の有効性を巡る訴訟を描いた社会派小説かと思いきや、実は裏があるとなった時点で全く別方向に展開。最終的にはロボトミー手術を絡めなくても良かった、という内容になってしまっている。
 ロボトミー手術を巡る訴訟以上に重要な「裏」とは何かというと……。
 ……医大の教授の椅子を巡るバトル。
 医療従事者からすれば、医大の教授の椅子を巡るバトルは重要なのかも知れない。が、医療従事者でない者からすれば、熾烈な抗争には見えず、物語が尻すぼみに終わっている。

 物語は、主人公の池谷が関係者を巡ってひたすら話を聞く、という展開になっていて、サスペンスに乏しい。
 何人もの人物が登場するが、禅問答みたいな返答を繰り広げ、情報が小出しにされるだけで、なかなか核心に迫っていかない。
 最後の最後になって、梅沢という、佐伯助教授のライバルが現れ(登場人物の話の中で述べられるだけで、本人は登場しない)、全て彼の仕業ですとなり、終了。
 推理小説だったら反則とされても仕方ない。

 本作は推理小説として書かれたのではないが、その要素が盛り込まれている。
 ただ、著者は推理小説作家ではないので、展開に無理があるというか、ご都合主義的な部分が多い。
 池谷は、訴えを起こした患者の妻の写真を見て、見覚えがある、と感じる。数年前、キャバレーで働いていたホステスだ、と気付くのだが……。たった一度しか会っていない女性を、そこまで鮮明に覚えていられるか。仮に覚えていられたとしても、そんな状況下で顔を合わせた女性が、数年後に訴訟を起こして、池谷の注意を引く事になる、なんて展開は都合が良過ぎ。
 別の場所で会った二人の女性が、何となく雰囲気が似ていると思っていたら、実は姉妹でした、という展開も無理がある。
 舞台となっている東京は、こうも狭い街なのか、と思ってしまう。
 池谷が、佐伯助教授と梅沢の教授の椅子を巡って争っているのを知るのも、丁度上手い具合に投書が送られて来て、その出所を調べ、取材してみたら梅沢側の医療関係者で、内部事情に詳しい者だった、という、これもまた物凄く都合のいい事になっている。

 本作は、始まりから真相に導かれるまで、数ヶ月掛かっている事になっている(ページ数にすると300ページ超)。
 敏腕とされる記者(数年前に一度だけ会ったホステスの顔を覚えている、別の場所で会った二人の女性を姉妹だと見抜く)が、本作程度の「真相」を導き出すまで、何故こんなに掛かってしまったのか。
 執念で真相を暴いたにも拘わらず、「記事にしたいが、それでは死者を鞭打つ事になる」として身を引く事にするラストも、尻すぼみ感を後押しする。

 ロボトミー手術(前側頭部の頭蓋骨に小さい孔を開け、脳の一部を切開し、精神的疾患を治療)は、本作が発表された時点では、アルコール依存症等の精神疾患の治療に効果があるとされていた。が、現在は薬物治療の発達により、実施されなくなっている。本作でも、有効性を疑問視する声が挙がっているのを踏まえつつ、まだまだ正統な治療法であるとされている。
 ロボトミー以外にも、電パチ(電気ショック療法、電気痙攣療法)も、精神疾患の治療において有効な手段、となっている。現在では治療法というより、拷問の手段と認識されているので、これも時代を感じさせる。というか、1970年代の日本でまだこんな「治療法」がまかり通っていたのか、と驚かされる。

 本作を読む限り、著者が何故中年向けエロ小説路線に走ったのかも理解出来る。
 作家に転身した時点では、元医師という肩書きを最大限に活かした小説を書けたが、日進月歩の発展を遂げる医療の世界では、知識も直ぐ古くなる。最先端医療を学びながら小説を執筆するにも、「元医師」では、得る知識は所詮「読んで学んだもの」に過ぎない。実際に医師として勤務して得る実践的な知識には遠く及ばない。
 古い時代の医療の知識や経験しか持ち合わせていない以上、別ジャンルに移行せざるを得ず、それが中年向けエロ小説路線だったらしい。








Last updated  2015.10.03 15:16:44
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