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2016.02.05
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カテゴリ:邦書


  元警察庁外事捜査官の経歴を持つという著者による警察小説。


粗筋

  新米警察官の島村は横浜市内勤務から、津久井署への転勤を命じられる。「国境警備隊」と揶揄される程辺鄙な地域だった。
 転勤から間もなく、医療ミスに端を発した病院立て籠もり事件に遭遇。犯人の檜山は、手榴弾を自ら爆発させて死亡した。
 島村は、津久井署の主的な存在である熊井係長と共に、死亡した檜山が訴えた内容を調べる。檜山の幼い娘は津久井湖総合病院で手術を受けたが、夜になって様態が急変。看護師が担当医の菊地原医師を直ちに呼び出したが、菊地原は朝まで姿を現さなかった。檜山の娘は死亡した。檜山の妻は病院の不正を訴えた後に自殺。娘と妻を失った事から、檜山は立て籠もり事件を起こす、という凶行に走ったのだった。
 檜山の訴えが全て事実だとすると、津久井湖総合病院の落ち度は重大だが、医療ミスの捜査は一筋縄でいかないのが常であり、しかも当直の看護師だった梨本千恵子が病院を辞めた事もあり、捜査は暗礁に乗り上げる。
 それから暫く経った後、若い女性の全裸遺体が発見された。津久井署は、久し振りの殺人事件で大騒ぎする。遺体には身元を確認出来るものは無かったが、島村と熊井の粘り強い捜査の結果、女性暴走族のメンバー佐野恵子である事が判明。女性暴走族はヤクザとの繋がりがあったので、ヤクザ絡みの事件かと思われた。
 すると、隣の山梨県でも身元不明の女性の全裸死体が発見された、との情報が入った。偶然にしては出来過ぎているので、2つの殺人事件は繋がっているのでは、と島村と熊井は考える様に。
 佐野恵子が行方不明になる前後について、再度聞き込み捜査をする。急に羽振りが良くなった、という証言が得られた。誰かから金を貰っている様だが、誰かからは分からなかった。
 山梨の殺人事件にも進展があった。身元が津久井湖総合病院を辞めた筈の梨本千恵子と判明したのだ。
 島村と熊井は真相に行き着く。
 菊地原医師は、医療ミスを隠滅する為、証言者に成り得る梨本千恵子を山奥で殺害した。が、その場面を女性暴走族に目撃されてしまった。菊地原は、顔こそ見られたが、互いに名前を知っている訳ではないので、問題無いと高をくくっていた。が、佐野恵子は、偶々津久井湖総合病院を何度も訪れていて、菊地原の顔も名前も知っていた。
 佐野恵子は病院にやって来て、口止め料として現金を要求。無論、1回では済まず、要求額も増えていった。
 堪り兼ねた菊地原は、自分を可愛がってくれている祖母に打ち明ける。すると、その祖母は佐野恵子を誘い出して睡眠薬で眠らせた上で絞殺。死体の処理を別の男に押し付けたのだった。
 島村と熊井は、菊地原医師とその祖母の逮捕に動く。
 菊地原医師の立件まで持ち込めたものの、祖母の方は自供に応じず、物的証拠も無い為釈放となる。



解説

 元警察庁外事捜査官という肩書を持つ著者にしては、国際性が全く見受けられない小説に仕上がっている。
 一方で、警察組織や、警察官の日常に関する描写は当然ながら説得力がある。
 ただ、あまりにも長々と描かれているので、退屈してきて、最終的にはどうにもよくなってしまう。

 事件そのものは大したものではない。
 医療ミスを犯したとされる、悪徳と思われる医師が、本当に悪徳だった、というだけ。
 どんでん返しも捻りも無く、真相が明らかになっても驚きは無い。
 主人公と同様、読者も淡々と事件を追う事を強いられる。
 全裸死体だからといって、身元の特定にこんなに手こずるのかね、と不思議に思わないでもない。

 島村は若手警察官、熊井は師となる熟練警察官、という、テレビドラマみたいな設定になっている(作中では、「当直時間の関係で、実際には同じ刑事がずっとペアを組んで捜査に当たる事はまず無い」と何度か述べられているにも拘わらず」)。
 いずれも物凄く優秀には見えない。
 菊地原医師は胡散臭い人物だ、と医療ミスの件で判明していたのだから、ずっと監視していれば良かったのに、そうしなかったから梨本千恵子が殺され、佐野恵子も殺されるという大失態を犯すが、これについては特に言及されていない。

 本作は、日本の警察捜査や検察の公判の進め方の問題点を浮き彫りにしている(著者が意識していたのかどうかは不明だが)。
 要するに、犯人の自供が無いと何も出来ない、という事。
 島村と熊井は、菊地原医師の祖母を佐野恵子殺害の容疑で逮捕し、取り調べするのだが、祖母が頑として認めず、代りに容疑が掛っていない梨本千恵子の殺害を認める。梨本千恵子殺害は菊地原医師の犯行であるのは疑いようが無いので、調書を作っても意味が無い。必要な調書が得られない為に証拠不充分として釈放せざるを得なくなる、というラストになっている。
 日本の警察は科学捜査のレベルが世界屈指とされるので、物的証拠はいくらでも得られそうだが、何故か自白や自供を「決定的な証拠」というか、「信頼に値する唯一の証拠」と見なす傾向が未だに強い。時代劇で悪人の自白を「証拠」と見なして裁くのと全く変わらない。
 20日間も拘留された上での自白調書なんて、まともな法事国家では「信頼に値しない」として証拠に成り得ず、検察も受け付けない。が、日本では何故か検察が率先して採用したがる。
 いい加減、自白が無くても立件出来る捜査体制・公判体制を整えたらどうか。
 それでなくても最高裁で死刑判決が下されたケースが、再審で冤罪として覆されるケースが多いのに。

 元警察庁捜査官(という事になっている)の著者として、実情から離れ過ぎた警察の捜査は描けないらしい。
 警察の無能振りや、不効率さが目立つだけの小説になってしまった。
 内情を知り過ぎる著者というのも、困りものである。








Last updated  2016.04.01 22:15:41
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