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2016.04.01
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カテゴリ:邦書


 高田崇史の代表的シリーズ作「QED」の第17弾。
 漢方薬剤師桑原崇と棚旗奈々のコンビが、古代の神話が絡んだ奇妙な事件に巻き込まれ、真相を暴いていく。


粗筋

 奈良のマンションで、OLの八刀良子が殺害される。刀で首をほぼ切り落とされるという、惨い殺され方だった。
 警察が駆け付け、現場を検証。壁に奇妙な模様が描かれていた。それを見た警察は、ただの殺人事件でない事を察する。何故なら、それとそっくりの模様が、2週間前に発生した轢き逃げ事件の現場にも残されていたからだ。模様が残されていた事実は公にされておらず、限られた者しか知らない。したがって、連続殺人の様相を見せてきたのである。その上、今回の事件現場は密室状態だった。
 死体の発見者の一人である五十嵐彩子に、模様について訊く。何も知らない、と彼女は答えたが、何か隠しているのは明らかだった。
 殺人現場は、被害者の自宅ではなかった。フィアンセとされる野川達夫が所有していたマンションだった。問題の模様を見せると、野川は知っていると認める。出雲神流という、神話の時代に存在していたとされる忍び集団の紋章だという。警察は、何故そんな模様が2つの現場に残されていたのか、さっぱり分からなかった。
 2週間前に轢き逃げされて死亡した黒坂洋は歴史研究家だった。殺人現場のマンションの所有者である野川達夫も歴史研究家。紋章以外にもこの二つの事件は繋がりはある、と警察は見て、捜査を進める。
 同じ頃、雑誌記者の小松崎も、この事件について調べていた。出雲神流という謎の集団が関わっている事を知り、知人で、古代の歴史に詳しい漢方薬剤師桑原崇を加わらせ、取材を進める。
 第二の事件の被害者八刀良子は、発見者の五十嵐彩子と、別の友人の雲居麻也と共に、出雲神流に興味を持ち、それについて詳しいとされる占い師稲瀬葵の元を頻繁に訪れていた。警察は稲瀬葵に事情聴取するが、彼女はこれといった証言はしなかった。
 警察は、雲居麻也からも事情聴取しようとする。そもそも五十嵐彩子と八刀良子が出雲神流に興味を持ったのも、歴史研究家を父に持つ麻也が、友人である二人を誘ったからだった。が、彼女は失踪していた。第二の事件前後から行方が分からなくなっていたのが判明したので、行方を捜す。
 それから数日後、麻也の死体が発見される。側には、例の模様が描かれていた。
 更に、野川達夫と稲瀬葵が、それぞれ自殺する。模様を残して。
 警察は、一連の事件が単なる殺人事件なのか、組織ぐるみの犯行なのか、判断が付かなくなっていた。
 そんなところ、事件現場をうろついていた桑原崇と棚旗奈々と遭遇。
 桑原崇は、事件の真相を暴く。
 黒坂洋は、轢き逃げに見せかけられて殺されるが、即死でなかった為、犯人である野川達夫の名を残せた。現場に戻った野川は、自分の名前が、出雲神流の模様となるよう書き足し、現場を後に。
 八刀良子は、野川達夫が轢き逃げの犯人であるという真相を掴み、脅迫する。その内、野川は良子の知人である麻也と知り合う。麻也は野川に好意を抱いていたが、野川は彼女に興味が無かったので、男性とも女性とも付き合える良子に押し付ける事に。
 第二の事件が起こった日、麻也は野川がいると思って現場となるマンションを訪れたが、いたのは良子だった。良子は自分の思いを麻也に伝えるが、麻也は受け入れず、口論になってしまった。その際、良子は、麻也の出生の事実を告げてしまう。麻也は雲居家の実の子ではなく、稲瀬葵の娘だった、と。これにより口論は激化し、麻也は現場にあった刀で良子を殺害してしまう。
 我に返った麻也は、彩子に連絡した後、窓から飛び降り自殺する。マンションに急行した彩子は、自殺した麻也の死体を発見。それを隠すと、管理人と共に野川のマンションに入り、良子の惨殺死体を発見。管理人が警察に連絡を入れている間に、密室を完成させ、壁に書かれてあった麻也本人の名前が入った血文字に書き込みし、出雲神流の模様にした。
 若い時に生んだ実の娘である麻也が死んだのは、野川のせいだと知った稲瀬葵は、彼を毒殺し、自ら命を絶った。
 これで一連の事件は解決したように見えたが、桑原は、更に黒幕がいる事を指摘する。雲居麻也の育ての父親雲居泰治がその黒幕だと。彼は、「出雲」は元々現在の奈良県内にある地名で、そこの住民が大和朝廷との戦いに敗れ、現在の島根県に移動し、新たに「出雲」を築き直した、という説を唱えていた。その説が話題になるよう、「出雲神流」を利用して、一連の事件と結び付けたのだった。



解説

 大和朝廷の誕生の謎に絡む謎の忍び集団「出雲神流」が現在も存在していて、事件を起こした……。
 ……という膨大なスケールのストーリーになると思いきや、結局事件は過去の「出雲神流」とは全く無関係。
 密室事件そのものは、発見者の一人が、別の発見者が警察を通報している隙を狙って現場に踏み込み、密室を完成させた、という単純なもの。
 ストーリーの内容はシンプルなのに、ストーリーとは間接的にしか関係していない(事件の真相を暴くのに特に必要とされない)神話の情報を満載している為、ノベルス版で350pという長さになってしまっている。
 神話について物凄く興味がある、という読者からすれば楽しい情報なのかも知れない。が、ミステリー小説として単純に読みたい読者からすれば、興味の無い情報を散々読まされた後で「事件解決には特に関係していません」では、脱力感しか味わえない。

 本書で描かれている警察は、現場に残された模様(実は雲居泰治の創作で、実際の出雲神流とは無関係)を過大解釈し、振り回されただけの感じ。
 模様は、一連の事件に関連性がある、という点だけを認識する為の証拠として取り扱うだけに、何故留められなかったのか。模様の件を排除し、密室現場を冷静に検証すれば「これは発見者による工作だ」という結論に至っていただろうに。

 雲居泰治の思惑も理解出来ない。
 出雲は奈良県が起源だ、という持論を世間に広める為、事件を利用したというが、仮にその説が大々的に取り上げられ、検証されるようになったら、出雲神流の模様は自分の創作でした、といずれ認めざるを得なくなる。そうなった場合「偽考古学者」の汚名を着せられ、持論の「出雲奈良県起源説」も完全に否定される事になってしまう。

 主人公(というか著者)は、事件には特に興味が無く、あくまでも出雲神話について調べたかった(述べたかった)だけの様である。現に、事件が解決した後、エピローグとして主人公らが出雲大社等を訪れる場面が延々と描かれる。
 何故著者が、小説の形を取ったのか、分からない。そこまで神話について述べたいのなら、ミステリー小説仕立てにせず、論文として書けば良かったのに、と思ってしまう。

 シリーズ作とあって、最初の部分はレギュラーキャラとされる人物の日常が延々と描かれる。が、いずれも魅力に乏しいキャラなので、初めて本シリーズを手に取った者からすれば、内輪で勝手に楽しんでいるだけの様に感じる。キャラの日常を描いている余裕があるなら、ストーリーをさっさと進めてほしい。
 キャラの近況や、神話のレクチャー等、無駄な部分を省き、純粋なミステリー小説にしていれば、厚みも半分で済んだだろうし、より読み易いものになっていただろうに。

 著者の取材力は買うが、その取材力が面白い小説に繋がっているかというとそうでなく、寧ろつまらなくしている。
 やり方によっては面白い小説になっていたと思うのに、残念な結果に。


QED出雲神伝説 [ 高田崇史 ]

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Last updated  2016.04.02 08:57:08
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