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非常に適当な本と映画のページ

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2016.06.21
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カテゴリ:邦書

 推理小説家島田一男による長編推理小説。
 1994年に、単行本書下ろしとして出版。


粗筋

 会合に出席していた科学警察研究所の岩谷警視と、八島技官は、伊豆で発生した変死事件捜査に加わるよう、要請される。
 岩谷は以前伊豆の警察署に赴任していた経歴があり、適任だと思われたからだ。
 地元の警察と接触した岩谷は、変死したのが美人で知られていた旅館の女将杉野真美と知って、驚く。旧知の間柄だったからだ。
 遺体の状況から、事件性が高い、と岩谷は判断。薬物が検出された事から、殺人事件である事はほぼ確定的となった。
 岩谷は、何故真美が殺されたのか、と不思議に思う。
 殺されるとしたら、真美より、その夫だろう、と思ったのだ。真美の夫杉野正夫は、様々な女を連れ込んでは肉体関係を結んでいた。レイプも当たり前の様にしており、それらの後始末は決まって真美に押し付けていたのだ。
 岩谷は、杉野正夫が5年前に亡くなっていた事を知らされる。妻との情事中の腹上死だったという。レイプ魔らしい死に方だ、と妙に納得する。
 真美の葬式が営まれる。
 それに出席していた芸者百々子が、突然死亡。毒を仕込まれていた。百々子も、杉野正夫にレイプされた経験があった。百々子はそれを良い事に、金を搾り取るだけ搾り取ったという。真美はこれについて怒るどころか、同情し、二人は姉妹の様な仲だった。
 それから間も無く、近くの病院の婦長三沢良子が死亡する。良子も、杉野正夫とは旧知の間柄だった。
 更に、杉野正夫の顧問弁護士だった大屋勝美も死亡。
 5年前に死去している杉野正夫と関わりのあった女性が、何故短期間の内に次々死亡しているのだ、と岩谷は不思議に思っている内に、20年前のある事件を思い出した。
 20年前、杉野正夫は旅芸人の女性をレイプした。女性はその際現場に居合わせた百々子に助けを求めたが、彼女は助けるどころか扉を閉じて、女性が逃げられないようにしてしまった。事が終わった後、真美は女性に金を渡して追い出した。この時代では、女性の旅芸人は売春しているのも多かったので、真美は女性をその類として扱ったのだった。女性は病院に駆け込むが、婦長の三沢良子に適切な処置をしてもらえず、妊娠してしまう。女性は弁護士の大屋勝美に相談するが、取り合ってもらえないどころか、勝美はそれをネタに杉野正夫を強請って顧問弁護士の座に収まった。
 この旅芸人の女性が、どういう訳か20年後の今になって復讐として殺し捲っている、と岩谷は考える。恨みの最大の対象となる杉野正夫はとっくに死去しているから、他の4人に矛先を向けたのでは、と。
 岩谷は、旅芸人の女性の身元を突き止める。中川万喜子という女性だった。記録を頼りに彼女の住まいを訪ねる。すると、万喜子はかなり前に死去していたのを知る。これで捜査の糸が途切れたと思ったが、万喜子が双子の娘を産んでいた事実を掴む。杉野正夫の子だった。
 生前、万喜子は双子の娘に父親について恨み節を聞かせていたという。
 岩谷は、二人の娘が母の代わりに人を殺しているのでは、と考えを改める。
 二人の娘は、現在20歳前後になっている筈。
 そこで、岩谷は旅館で水中バレーのショーを披露している一行を思い出す。20歳前後の女性が多数いた。その中に双子の娘がいても不思議ではない、と。
 岩谷は、水中バレーの一行を調べると、万喜子の双子の娘の一人が紛れ込んでいたのを知り、事情聴取するが、彼女は殺人に加わっていない、と言い張る。
 実際に殺人に手を染めていたのは、万喜子の妹だった。双子の娘を母親に代わって育てた彼女は、姉をレイプした杉野正夫や、レイプを手助けしたも同然の女性4人を許せず、双子の娘が成人し、独り立ち出来たのを機に殺し捲ったのだった。



粗筋

 島田一男というと、本書が書かれた時点で半世紀近くに亘って小説を発表してきたベテラン作家。
 ノーベル文学賞受賞者の川端康成氏の代表作である「伊豆の踊り子」にインスパイアされて本書は書かれたと聞いて、どんな深みのある物語に仕上がっているのかと期待していたのだが……。
「伊豆の踊り子」を下敷きに執筆されたのは分かるが、ストーリー展開や、登場人物の描写がやけにお粗末。
 全体的に薄い。
 締め切りに迫られて、苦し紛れに書き飛ばしてしまい、推敲を重ねられる前に出版されてしまった代物としか映らない。

 ストーリー展開に、合理性が見受けられないのが最大の問題点。

 犯人は、警察が殺人事件の捜査をしている最中に次々と人を殺している。
 目と鼻の先で犯行が次々と重ねられるのを見て、警察関係者は相当悔しがり、犯人の特定に躍起になるのかと思いきや、「あ、また事件か。何故こんなに事件が続くんだろうねえ」くらいにしか思わない。捜査ものんびりと進められる。この程度の緊張感だから、犯人も甘く見たのか、次の犯行を躊躇い無く実行に移す。警察という存在がありながら、何の抑止力にもなっていない。
 一方、警察が大勢ウロウロしているのにも拘わらず尚犯行を繰り広げなければならなかった犯人の心理も充分説明されていない。
 テレビのサスペンスドラマでも、もう少し掘り下げて描写していると思うのだが。

 4件の殺人は、小説の最初の1/3くらいで一気に描かれる。
 一連の事件が、20年前のレイプ事件と関わりがある、というのも直ぐ判明。
 この段階で事件は一気に解決になだれ込んでも良さそうなのだが、4人の遺体を解剖したり、レイプ事件の被害者の身元を掴んで現住所を訪れるのに相当時間を食ったり、主人公が旅館で飲み食い入浴して「伊豆の踊り子」に関する考察を述べたりと、無駄な描写が続く。
 読者からすれば真相はほぼ分かっているのに、このダラダラした展開は何なのかと思ってしまう。
 主人公は、被害者全てを知っていて、20年前のレイプ事件についても知っていた。
 にも拘わらず4人が殺されるまで真相に行き着かない。
 今回の事件は、より賢明で、より行動力のある探偵だったら、最初の2件くらいで真相に気付いていただろうし、機動力を活かして更なる犯行が起こる前に犯人を検挙していただろう。小説そのものが中編で済んでいたかも知れない。

 作中で描かれた社会情勢もよく分からない。
 川端康成氏が「伊豆の踊り子」を執筆した時代は、伊豆の旅芸人や踊り子が売春めいた事もしていた、というのは有り得そうだが、本作の「20年前のレイプ事件」が起こったとされるのは、1970年代。
 旅芸人の女が営業先でついでに売春もしていたり、旅館の主人が女をレイプし捲っても何のお咎めも受けず、その妻が「仕方ない」と後処理に徹していたりしていたとは思えない。
 それとも、1970年代の伊豆はそこまで時代に取り残されていたのか。

 主人公の岩谷は科学警察研究所の特捜部長で、警視という階級にある。優秀な捜査官の筈なのに、才能を発揮しない。
 よくこの程度の人物が警察官になれるな、と呆れる。
 そんなものだから、キャラとして魅力的に映らず、小説を面白くしていない。

 岩谷の補佐役として、女性捜査官の八島技官が登場するが、存在感がまるで無く、何の為に登場していたのかがさっぱり分からない。

 推理小説というからには、驚愕の真相や、物凄く大胆なトリックや、ラストで全てが覆されるどんでん返しを期待するのだが、そういうのは無く、「20年前のレイプ事件が発端でした」という中盤で提示される推理のままラストを迎える。
 著者からすれば、杉野正夫の腹上死は妻が仕組んだ、双子のすり替えがあった、双子ではなくそれらの叔母が犯行を繰り広げていた、というのが驚愕の真相や、大胆なトリックや、どんでん返しに相当するのかも知れない。が、推理小説を既に何冊も読んでいる者からすれば、それら程度は最早驚愕の真相でも、トリックでも、どんでん返しでもない。

 本作は、1990年代に書き下ろされた。
 この時代はこの程度のものでも「推理小説」として成り立ったのかと驚かされる。
 そう古い作品でもないのに。









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Last updated  2016.10.21 17:52:19
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