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非常に適当な本と映画のページ

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2017.05.27
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カテゴリ:邦書

「今夜は眠れない」の続編。
 緒方雅男と島崎俊彦の中学生コンビが、クラスメイトが絡む殺人事件の捜査に挑む。


粗筋

 僕(緒方雅男)と友人の島崎が住む町には広大な公園があり、そこでは毎年秋の夜にある催しが行われていた。前から気になっていたクラスメイトのクドウさんがその催しに参加すると耳に挟んだ僕は、催し自体には特に興味の無かったものの、行く事に。
 公園に入ると、女性の死体が発見されたとの報が。
 僕がその死体を確認すると、クドウさんだった。
 警察がやって来て、大事になる。
 翌日、学校に行ってみると、クドウさんは生きていた。前日殺されたのはクドウさんではなく、クドウさんの従姉だった。歳は離れていたものの、姿恰好が何となく似ていたので、僕が勘違いしてしまったのだった。
 警察は既に死体の正しい身元は掴んでいて、捜査を開始していた。
 被害者の亜紀子は、まだ二十歳という若さにも拘わらず、カンパニーと称される売春組織に属していて、少女を組織に勧誘する役割を果たしていた。
 カンパニーは、元は堅気の人間が売春婦を使ってケチな小遣い稼ぎする目的で設立した組織だったが、暴力団が絡むようになってからは体質が変わり、警察に目を付けられていた。
 警察は、カンパニー絡みの動機で亜紀子は殺されたのではないか、という推論を立て、捜査を進める。
 亜紀子は、従妹のクドウさんも組織に勧誘していたという。当然ながらクドウさんは嫌がっていた。警察は、クドウさんにも亜紀子を殺害する動機があると見なすようになった。
 クドウさんに好意を寄せている僕は、嫌疑を晴らす為に、島崎と共に独自の捜査を開始。
 ただ、警察は徐々に事件の全貌を掴みつつあった。犯人はどうやらカンパニーに属していた畑山という男性だった、と。
 畑山はカンパニーから脱退したがっていた。亜紀子に好意を寄せていた彼は、彼女にも脱退を促していた。しかし、カンパニーにどっぷりと浸かっていた彼女は、そんな気は毛頭無かった。その絡みで、畑山は亜紀子を殺すに至ったらしい。
 警察は、カンパニーに属する者を殆ど検挙。しかし、検挙から逃れた者もいた。残党は、行方をくらました畑山を執拗に追う。カンパニーの重要情報を持ち出して姿を消したからだった。
 そうこうしている内に、畑山の死体が発見される。自殺の様だったが、カンパニーの残党によって殺害された可能性も充分あった。
 カンパニーの残党は、畑山が持ち出した重要情報が見付けられないと知ると、僕と島崎に牙を向ける。畑山が何らかの理由で二人に託したのでは、と思い込んだのだ。
 僕と島崎はその危機をどうにか乗り越え、残党の検挙に貢献する。
 しかし、僕は重大な事実を知る。
 カンパニーが作っていたチラシには様々な少女の顔写真が載っていた。その中の一部は、クドウさんが亜紀子に提供したものだった。畑山が亜紀子を殺すに至ったのも、その顔写真に写っていた少女を巡る勘違いからだった。
 僕が、クドウさんに対しこの事を問い詰めると、クドウさんは言う。自分に執拗に迫ってくる亜紀子が怖かったので、知人の写真の中から売春に手を出しそうな顔立ちの子を選んで渡さざるを得なかった、と。
 これを聞いて、クドウさんに対する僕の思いは一気に冷めた。



解説

 典型的な宮部みゆきの小説。
 小さな、どうでもいい事が、実は小説そのものの鍵を握っているかの様に延々と描くのだが、真相が全て明らかにされると、矢張り小さな、どうでもいい事であったのが判明し、肩透かしを食らう。

 他の宮部みゆきの小説と同様、事件の犯人探しそのものは警察に任しており、主人公は事件の背景にある真相を掴む事に終始している。二人の主人公は中学生なので、「警察を出し抜いて何もかも解決」ではリアリティに乏しくなってしまうので、当然のストーリー構成である。
 本作では、亜紀子を殺した張本人が誰で、どこに行方をくらましたのかの捜査は警察に任されていて、主人公らはその犯人(畑山)が何故亜紀子を殺さざるを得なかったのかの究明に力を注いでいる。
 が、いざ全てが究明されると、犯人の正体も、犯人の動機も、結局は大したもので無かった事が判明。
 これが50ページ程度の短編ならまだ許せるが、300ページにも及ぶ長編を読まされた上でこの結末では、頭にくるというか、呆れてしまう。
 もう一捻り、二捻り出来なかったのか。

 今回の事件被害者は、亜紀子という女性。
 二十歳にも満たない女性が殺されたのだから、本来だったら悲劇の人となる筈。
 しかし、売春組織に属し、少女を斡旋し、組織が警察に目を付けられていて終わりも近かったにも拘わらず甘い汁を吸い続けたかったが故に脱退を拒否していた。
 不幸な家庭で育ったという事情はあるものの、早かれ遅かれ殺されるか、それに準じる目に遭っていただろうと思ってしまい、関心が湧かない。
 真相がラストで明らかにされても、「はい、そうでしたか」で終わってしまう。
 推理小説の被害者は善人でなければ成立しない、という訳ではないが、少なくともある程度共感出来、捜査の展開に興味を持たせてくれる人物でないと。

 本作が最も強調したかったのは、「主人公が好意を寄せていたクドウさんが、自己保身の為に売春を斡旋する亜紀子に対し、別の少女を押し付けるという、残酷な一面を持っていた」の点らしい。清純に見えていたクドウさんは、実はそうでなかった、と。
 主人公の僕は、この事実を知ってクドウさんとの交際を諦める、という結末で本作は終わる。
 残念ながら、その事については読み進む内に何となく分かってしまうので、真相が明らかにされた所で「衝撃な事実」にはなっていない。夢にも思っていなかったのは主人公だけ。
 どんでん返しにしては力不足。
 主人公がクドウさんに電話し、この事実を彼女の口から引き出そうとする下りも、蛇足の感が。
 寧ろ、電話する前の時点で主人公はクドウさんがやらかした事は知っていたのだから、何故わざわざ電話をかけたのか、分からない。
 クドウさんに自分が犯した罪を思い知ってもらいたかった、という事なのかも知れないが……。彼女が犯した「罪」は、作中ではまるで彼女自身が殺人に手を出したかの様な追及の仕方だが、彼女はあくまでも暴力団の影をちらつかせながら迫って来る従姉の接近を遮断したかっただけ。自身の行為が、後々殺人事件に発展する等、と予想すらしていなかっただろう。
 主人公は、黙っていればいいものを、幼稚な正義感を振りかざして、勝手に落ち込んでいるだけの感じ。
 読後感がひたすら悪い。著者が意図していなかったであろう意味で。


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Last updated  2017.05.27 14:18:55
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