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2017.08.06
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カテゴリ:邦書

 内田康夫の浅見光彦シリーズ作。


粗筋

 5年前、三井所剛史という男性が加賀の海から他殺体として発見された。彼の住まいは北海道にあった。北海道から遠く離れた加賀へ何の目的で訪れたのか、家族すら知らなかった。この点が事件捜査最大のネックとなり、犯人はおろか、事件の背景すら掴めぬまま、迷宮入りとなった。
 知人からこの事件について知った浅見光彦は、事件捜査を開始。
 浅見は、三井所剛史の娘園子から話を聞く。
 5年前、園子は就職するか、大学に進学するかの岐路に立っていた。進学するにも学費を捻出するのは経済的に難しかったので、諦めていた所、三井所は「何とか工面するから心配するな」と言い出した。園子は、父がどこから工面するのかと不思議に思う。三井所はその直後に家族に何も告げないまま外出。それから間も無く死体となって発見されたのだった。
 園子は、父親が学費を工面する為に何か危ない事に首を突っ込んだ結果、殺されたのではと考えたが、それでも自宅から遠く離れた加賀へ父が向かう理由は思い付かない。
 浅見は、三井所が孤児で、自身の生い立ちを探っていたのを知る。娘の学費の工面するのと同時に自分の生い立ちを探っている内に、何らかの理由で加賀へ出向き、そこで殺されたのでは、と推理する。
 三井所は、孤児院に預けられた時から持っていたという素焼きの人形を残していた。浅見が、三井所が失踪直前に訪れたのが確認されていた松前を訪れた所、その人形とそっくりのものが、資料館に収められていた。人形は、明治時代から昭和初期まで加賀から北海道へ物資を運んで売る商船「北前船」からもたらされたもの、となっていた。
 浅見は、これで北海道と加賀が繋がったと確信し、加賀へ向かう。
 加賀で、浅見は三井所の殺害事件捜査の進展具合について問い合わせる。芳しい答えは返って来なかった。
 北前船は、九州で仕入れた物資を加賀経由で北海道にまで輸送して売り付ける、という商いだった。明治時代は大いに栄え、営んでいた者に莫大な富をもたらした。が、交通網が整備され、通信が発達すると、仕入れ値から大きく上乗せして道民に売り付けるという手法は通用しなくなり、衰退。北前船の運営者は他業種へとシフトしていった。
 北前船の中でも特に栄えていた宇戸家は、商売以外の事でも有名だった。往年の大女優深草千尋の生家だったのだ。
 深草千尋は戦後の映画全盛期時代、大いに活躍していたが、テレビ時代に移行すると徐々に姿を現さなくなり、ある時期から全く姿を現さなくなった。現在、80代になる彼女は加賀で暮らしている事が分かっているが、誰とも会う事を拒否していた。
 浅見は、三井所と宇戸家は何らかの形で繋がっていると考える。
 深草千尋が渡米していたという時期は、三井所が生まれた時期に近かった。深草千尋こそ三井所の母親で、この時期に出産していたのではないか、三井所は実の母親に会いに行き、娘の学費を工面しようとしたのではないか、と浅見は考える。
 浅見は、園子を伴って深草千尋の住まいを訪れる。
 二人は難無く通され、深草千尋と対面する。
 浅見は、三井所の母親はあなたですね、と切り出すと、深草千尋はあっさりと認めた。
 深草千尋は妊娠した頃、女優として絶頂期にあった。子の父親である男性は、彼女との関係を認めなかったので、たった一人で生む羽目に。世間体を考えて、一人で育てるのは無理だと判断した彼女は、知人のつてで北海道の孤児院に生まれたばかりの子を預けた。それから数年後、彼女は孤児院を訪れ、三井所を引き取ろうとしたが、今更母親だと名乗られても困る、と三井所自身から拒否されてしまう。彼女はそれに傷付き、女優業を続ける気を失い、加賀に引き籠る事になった。
 話を聞いた浅見は、指摘する。それだったら、何故自ら母親に会いに来た三井所を殺したのか、と。
 深草千尋は、事件については全く知らなかった。引き籠ってからは、外部とは接触しておらず、新聞もテレビも無い生活を送っていたのだ。会いに来てくれたなら、歓迎した筈だと。息子が殺されていたと知って、彼女は大いに驚く。
 浅見は、この時点で事件の全貌を知る。
 三井所は、実の母親に会いに行く為、加賀を訪れた。母親の生家である宇戸家に、母親の居所を問い合わせた。
 宇戸家当主で、深草千尋の兄である武三は、突然目の前に現れた妹の子に驚き、殺意を抱く。妹が三井所を実の子として認知したら、彼女の財産は三井所が相続する。そうなったら、妹の資金援助で何とか事業を継続していた自分は破産する、と武三は早合点した。
 武三は三井所をその場で殺害し、死体を遺棄したのだった。
 浅見は、武三の下に出向き、警察に真相を全て語る、と告げる。
 武三は、共犯者と共に海へ船出し、遭難を装って自害した。



解説

 他の著作の例に漏れず、低予算ドラマの原作本の域を超えていない。
 本作は文庫本で600ページにも及ぶが、内容は薄い。
 浅見光彦が偶然見付けた証拠を基にあちこち出向き、最後に初対面した人物が犯人、という、これまでのシリーズ作の流れを踏襲していて、新鮮味は無い。
 ただ、ダラダラと長い。

 警察が事件の全貌を掴めなかった為に迷宮入りした、という割には、事件の真相も動機も平凡で、驚きが無い。この程度で殺すか、と思ってしまう。
 計画的とは言い難い犯行にも拘わらず、迷宮入りさせてしまう警察は、ひたすら無能。
 素人探偵を煙たがる余裕があるなら、その素人探偵の出番を無くす程度の捜査をしたらどうか、と思ってしまう。

 本作の世界では、浅見光彦は警察本部が一目を置く優秀な名探偵、という事になっている。
 ただ、読んでいる側からすると優秀さが全く伝わらない。
 あちこち出向いては、著者が用意していた証拠を偶然を装って見付け、次の場所へと移動する、を繰り返すだけ。
「名探偵」を名乗るには直観力や閃きが必要だと思うのだが、浅見光彦にはそうしたものは見られず、素人探偵に過ぎない。
「名探偵」だったら直ぐ思い付くであろう事実を何十ページも割かないと思い付かない。

 本作では、何十年も前から隠匿生活をしている伝説的な女優深草千尋を取り上げている。
 何十年も外界と接触していない、という奇妙な設定になっているので、読んでいる側は「もしかして深草千尋はとっくの昔に死んでいて、その事実を何が何でも隠したい関係者が、彼女について探りを入れていた三井所を殺害したのでは?」と想像を膨らませるのだが、本作後半で「誰とも会わない」という設定だった筈の大女優はあっさりと姿を現す。
 事件の真相も、もっと平凡なのであるのが分かり、肩透かしを食らう。

 生死すら不明であるかの様に語られていた謎の大女優深草千尋をあっさり登場させてしまうのだから、もしかしたら三井所は実は彼女と血の繋がりは無く、彼女がそう臭わせていただけで、武三は完全な勘違いで殺す必要が無い者を殺してしまった、という皮肉な結末を期待した。
 が、本作の著者はその程度のどんでん返しすら用意出来ないというか、思い付かないらしい。
 推理小説を名乗っている割には、読者が読みながら頭の中で巡らせる推理を常に下回っていて、意外性が見受けられない。読んで得した、という気分にはなれない。
 仕掛けが無いのが最大の仕掛け、意表を突かない事自体が意表を突いている、という事か。

 他の著作と同様、著者が自ら後書きで本作が苦労の末に生み出された大傑作であるかの様に綴っているのも異様に映る。

 本とは文字で埋め尽くされた紙を束ねた商品。
 小説家とは本という商品の為にひたすら原稿用紙を埋めるだけの作業者。
 出版社とは本という商品をひたすら乱造するだけの業者。
 書店とは本という商品をひたすら陳列するだけの商店。
 小説家は原稿料さえ支払われれば問題無しと見なし、出版社は本という商品が書店に陳列されれば問題無しと見なし、書店は本という商品が売れさえすれば問題無しと見なす。
 本を買った者が実際に本を読み、批評する事は全く想定していない。
 ……この認識で日本の出版業界は回っているのか。
 出版業界が斜陽と見なされているのも当然。









Last updated  2017.11.18 15:09:30
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