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2018.05.07
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カテゴリ:邦書

 サイコセラピスト探偵波田煌子シリーズ第3弾。
 警視庁プロファイラーを務めた事があるサイコセラピスト波田煌子が、新たな勤め先の学習塾で起こる次々起こる事件を解決していく本格推理連作短編集。


粗筋

 教育こそが日本を変える、と希望に燃える波田信人(ハタノブト)は、勢いで学習塾を開く。
 事務員として、波田煌子(ナミダキラコ)を採用。
 信人は、親しみ易い名の学習塾にしたかった為、平仮名にしよう、と考え、自身の名を冠した看板を立てるよう、煌子に命じる。煌子は、自身の苗字と、信人の苗字が偶々同じ漢字だったので、読み方も同じだと勝手に判断し、「なみだ学習塾」の看板を掲げてしまう。それを知った信人は直ちに「はた学習塾」に直そうとするが、「なみだ」を可愛いと思った学生らが次々訪れて来て塾生となった為、そのままになった。
 何とか始まった学習塾だが、一癖も二癖もある塾生ばかりで、奇妙な事件が起こる。
 それらの真相を、煌子が解いていき、信人はその度に感動して涙を流す。

第1限 路線図と涙

 信人は、ある日、授業を受けていた一人の男子生徒に、夢を持て、教室から飛び出して世界を見ろ、といった説教をしてしまう。
 その直後に、その男子生徒は行方をくらます。
 男子生徒の親は、一応連絡があり、広尾にいる、府中にいる、港区にいる、といった情報を伝えてきている、という。それらには親戚がいるので、訪ねたのかと思ったが、そうではなかった。
 信人らは、もしかしたら男子生徒は誘拐されていて、自分の居場所を、誘拐犯が油断している隙を見計らって伝えているのでは、と推測する。
 しかし、煌子は、男子生徒が発する連絡の内容を見て、これは誘拐ではない、と明言。男子生徒の現在地を言い当て、男子生徒と再会を果たす。
 信人らは、広尾、府中、港区といった東京都内の地名が連絡内容にあったので、男子学生は都内にいる、と早合点していたが、実際には北海道や広島等、全く別の地域へ一人旅していた。
 男子生徒は、授業で東京と同じ地名の場所が全国にあると知って、興味を持った。その直後に信人の「教室から飛び出して世界を見ろ」の説教で刺激され、それらを訪れてみよう、と思い立ち、実行に移したのだった。

第2限 相似形と涙

 男子生徒が、試験で低い点数を取る。男子生徒の親が心配し、信人の下へ相談にやって来た。
 信人も、男子生徒はいつもは好成績だったので、不思議に思っていた。
 話を訊くと、男子生徒は塾に通う女子生徒に一目惚れした。その女子生徒は携帯電話を持たせてもらえていなかったので、男子生徒は彼女の自宅へ電話を掛ける。女子生徒本人が電話に出たので、思い切って告白したが、にべも無く断られた。
 男子生徒はフラれたショックで勉強に身が入らず、低い点数を取ってしまったのだった。
 信人は、その女子生徒を呼び出し、交際を断ったのは事実か、と問う。
 女子生徒は、交際を断っていない、と明言。そもそも、電話にすら出ていない、と。
 信人は、どちらかが嘘を吐いている、と思った。
 男子生徒が嘘の言い訳をしているのか、女子生徒が怖じ気付いて嘘を吐いてしまったか。
 が、煌子は女子生徒の自宅に連絡し、彼女の母親と話した時点で、真相は明らかになったと宣言。
 男子生徒が女子生徒の自宅に連絡した際、女子生徒本人が電話に出た、と思ってばかりいた。しかし、実際に電話に出たのは女子生徒の母親だった。親子なので、声が似ていたのだ。母親は、学生の身である娘が異性と付き合っている暇なんてない、と判断。電話で応対しているのは娘だと男子生徒が勘違いしているのをいい事に、娘の振りをして交際を断ったのだった。

第3限 清少納言と涙

 ある中学校で、クラス全体の国語の成績が上がっていた。
 教師としては喜ばしい事なのかも知れないが、上がり方が異常だった。しかも、上がっているのはそのクラスだけで、同じ学年の別のクラスは、国語の成績は寧ろ下がっていた。
 クラスの成績が上がっている理由の一つが、問題児だった男性生徒の成績が上がっている事だった。
 問題児の成績がいきなり向上するのは有り得ない、何か不正があるのでは、と教師は疑い始めた。
 問題児とされていた男子生徒は、なみだ学習塾の塾生でもあった。
 中学校での異様な成績向上のニュースは、信人の耳にも入っていた。
 信人としては、男子生徒が不正を働いているとは思いたくなかったが、状況からすると、何らかの不正を疑わざるを得ない。
 信人は、男子生徒に不正を働いていないか問う。男子生徒は否定した。
 話を聞いた煌子は、推理を展開。
 男子生徒は不正は働いておらず、信人の授業に触発されて純粋に勉学に励み、成績を向上させた。問題児だった男子生徒の変貌振りに、クラス全員が影響され、その結果成績が向上した。
 他のクラスの成績が下がっていたのは、時間割が原因、と煌子は論じる。
 国語の授業を担当する教師は声が小さく、生徒らからすると何を言っているのか聞き取り難かった。そんな事もあり、国語はとにかく退屈な授業だった。それに、給食後の午後という、最も睡魔に見舞われる時間帯が国語の授業に割り当てられていた為、クラス全員が居眠りしてしまっていた。
 一方、問題児のクラスでは、国語の授業は午前に割り当てられていたので、退屈しながらも、居眠りする生徒はいなかったのである。

第4限 疑問詞と涙

 なみだ学習塾に通う女子生徒が、自分は虐めに遭っている、と悩んでいた。
 女子生徒は、教師から、テストがある事を掲示板に書き込んでくれと頼まれたので、そうした。
 翌日、掲示板で書いてあった通り、テストを実施する、と教師は宣言。
 掲示板にそんな事は書かれていなかったと、一部の生徒は反論するが、教師は耳を貸さず、テストを実施した。
 テストについて知らされていなかった生徒らは、女子生徒を仲間外れにした。
 仲間外れにした生徒も、信人の塾に通っていたので、何故仲間外れにするのだ、と彼は問う。
 生徒は、掲示板にはテストについて全く触れておらず、お蔭でテストで低い点を取ってしまった、と答える。
 女子生徒は、掲示板にテストについて書き込んだ、と言い張った。
 どちらかが嘘を吐いている、と信人は思った。
 話を聞いていた煌子は、どちらも嘘は吐いていない、と指摘。
 テストを実施した教師はパソコンにはまっていて、今時パソコンを所有していない学生なんていない、と信じ込んでいた。
 しかし、女子生徒はパソコンを所有していなかった。「掲示板に書き込んでくれ」と教師に頼まれた時、ネット上の掲示板だとは思わず、自分が住む団地の掲示板の事だと勘違いし、そこにテストについて書き込んでしまったのだ。

第5限 月の満ち欠けと涙

 男子生徒が、マンションのエレベータから消えるという、マジックを披露すると宣言。
 学校の同級生や教師らは、そんな事が出来るものかと疑っていたが、男子生徒は乗った筈のマンションのエレベータから消えていた。
 別の階で降りたのか、と単純に考えたが、階と階の間の移動や停止時間を考えると、エレベータが途中の階で停止したのは有り得ない。
 どこに消えたのだ同級生らが探し回っていると、携帯電話に連絡が入り、自分は宇宙空間にいる、という。
 そんな馬鹿な事がある訳無い、と思いつつも、携帯電話の指示通り動く。
 そうこうしている内に、男子生徒から学校にいる、という連絡が入り、同級生らは男子生徒と再会する。
 このマジックはナミダ塾でも話題に。
 信人は、そもそも何故男子生徒はこんなマジックを披露したのかと不思議に思う。
 男子生徒の動機を読み切った煌子が、真相を明かす。
 男子生徒は勉強のストレスから、学校にあった問題用紙を盗んだ。が、考えを改め、元に戻そうとしたが、人がいるので戻したくても戻せなくなってしまった。そこで、マジックを披露して、同級生や教師らを学校の外に誘い出し、その隙に問題用紙を元に戻したのだった。
 エレベータには、担架で横になった者を収容可能にする為のスペースが奥に設けられていた。男子生徒は通常は塞がれている空間に隠れ、エレベータが空になった様に装ったのだった。

第6限 確率と涙

 なみだ学習塾のある男子生徒は、嘘を連発していた。
 日本からアメリカまで1時間で行ける、老人ホームに女子大生が入居している、等々。
 見え透いた嘘ばかり吐くから、周囲から嫌われる羽目に。
 しまいには、自分は空を飛んで宇宙旅行へ行く、と言い出した。
 その話を聞いた煌子は、顔色を変える。ビルから飛び降りるつもりだ、と。
 煌子と信人は、問題のビルを特定し、男子生徒の自殺を未然に防ぐ。
 男子生徒は嘘を吐いていたのではなく、変わった視点で物事を見ていただけ、と煌子は指摘。
 小笠原諸島からアメリカ領のマリアナ諸島までは、300キロ程度しか離れておらず、ヘリを使えば1時間で行けるので、「日本からアメリカまで1時間で行ける」というのはあながち嘘ではない。
 また、老人ホームの入居者に、放送大学に通っているのがいた。それなら、老人ホームの入居者に女子大生がいる、というのも嘘ではない。
 宇宙旅行に行く、と聞いた煌子が顔色を変えたのは、地球も宇宙にある以上、どこからか飛び降りれば「宇宙旅行した」事になる、と読んだからだった。

第7限 基本的人権と涙

 卒業シーズンを迎えたなみだ学習塾では、塾生に対し、テストをする事にした。
 信人は、テストに載る問題について講義し、後にテストを実施。
 すると、塾生は全て同じ点数を取った。
 成績があまり良くない塾生らは通常以上の点数を取る一方で、成績が良い筈の塾生らは、何故か凡ミスを犯し満点を取っていなかったのだ。
 偶然にしては出来過ぎている、と信人は思った。塾生らの不正を疑う。
 テストを確認した煌子は、塾生らは不正等していない、と論じる。
 成績があまり良くない塾生らは、講義の通りに解答し、通常より高い点を取った。
 一方、成績が良い塾生らは、問題を深読みし過ぎて、信人が想定していた解答以外の答えを記入したので、いくつかの問題が「不正解」とされてしまっていたのだ。
 その結果、偶然にも全ての生徒が同じ点数を取る羽目になった。
 煌子は、塾生らに対する誤解を解いた時点で、塾を退職する。



解説

 推理小説というと、殺人等の重大な犯罪を取り扱い、警察が関わってくるのが当たり前。
 本書は、それを否定するかの様に、警察が関わらない、重大な犯罪も起こらない謎を描いている。
 試みとしては面白いが、こうして連作短編集として1冊の本に纏められ、それをぶっ通しで読むと、どれも小粒過ぎて、物足りなく感じてしまう。
 いくつかの「謎」は、一々謎として取り扱うべきだったのか、といった内容。
「塾が舞台だから」という事で、本編に端的に関係している豆知識を延々と取り上げ(しかも図解入りで)、それが終わった後に漸く核心の「謎」の部分に入る、といったストーリー構成になっていて、間延び感がある。
 豆知識の部分を完全に省くか、省略すれば、本の厚みは半分以下になっていただろう。
 執筆した時点での流行や著名人を「最新情報」として取り上げている為、現在読むと古臭く感じるどころか、何の事だがさっぱり分からない読者もいると思われる。

 登場人物の設定も、読んでいる側からすると理解し難い。

 主人公である波田煌子は、作中では物凄く魅力的な人物で、人が何故か彼女の周りに集まる、という事になっている。
 読んでいる側からすると、そこまで魅力的な人物として映らない。
 発想や言動も、常人と同じではないが、奇人・変人のレベルに達している訳ではなく、極めて普通で、地味な存在。
 彼女が展開する「名推理」も、単に周囲の者が無能過ぎて鮮やかに見えるだけ。
 大抵の人間ならそれくらいの推測は出来る、というレベル。
「サイコセラピスト探偵」といった看板を大々的に掲げる程ではない。

 ストーリーも強引に「謎」を演出しているものが多く、真相が明かされても、登場人物らが受ける程の感動は無い。
 
第1限 路線図と涙
 東京都内の地名と同じ地名の場所が全国にある、というのは、大抵の人間なら知っている事なので、特に驚きは少ない。
 また、東京都在住の者でないと、東京都内の特定に地名を述べられても、イマイチぴんと来ないし、それらと同じ名前の地が全国にあると教えられても、その地域の者でないと矢張りぴんと来ない。
 東京都内の地名も、地方の地名も、本作の為の創作ではないかと疑ってしまう。
 一方で、地方の地名を知っていた者からすれば、それと同じ地名の場所が実は東京にもある、と教えられても感動は無い。地方に住んでいる者からすれば、東京も一地方に過ぎないのだから。
 本作では、男子学生は北海道や広島まで飛行機を使って移動し捲っていた、という事になっている。が、背が高くて大人っぽかったという設定になっていたとしても、中学生が親の承諾抜きで飛行機の切符を買って搭乗した、というのは無理がある。
 
第2限 相似形と涙
 携帯電話やスマートフォンの普及率が高い現在では、時代を感じさせる一遍になってしまっている。
 女子生徒とその親の声を区別出来なかった、というのも強引。

第3限 清少納言と涙
 給食後の退屈な授業だったからといって、クラス全員が居眠りし、成績が下がってしまう、というのは無理があり過ぎ。
 一方で、問題児が勉学に励む様になった事でクラス全体の成績が上がった、というのも都合が良過ぎる。

第4限 疑問詞と涙
 パソコンの掲示板と、団地の掲示板を勘違いする、というのも、時代を感じさせる。
 パソコンも、今となっては古くなっているが。
 今ならタブレットか。

第5限 月の満ち欠けと涙
 エレベータからの消失トリックで、漸く本格っぽい一遍になるのかと思いきや、「このエレベータには偶々隠し部屋がありました」という肩透かしの真相。
 動機も、アッと驚かされるものではない。

第6限 確率と涙
 日本とアメリカは、実は1時間で行ける程近い、との事だが……。
 マリアナ諸島はアメリカの領土ではあるが、アメリカそのものではないので(アメリカの州ではない)、「日本からアメリカまで1時間で行ける」というのは正確ではない気がする。
 それを言ったら、日本国内にある大使館も「日本国内にある外国」だから、東京都内ならどの国も1時間程度で行ける、という事になってしまうだろう。

第7限 基本的人権と涙
 成績が良い方は問題を深読みし過ぎて不正解となり、成績が悪い方は講義通りに回答した結果、全員点数が同じになってしまった、というのは偶然にしては出来過ぎ。
 また、「最後の晩餐」はキリスト教において重大な出来事。ダ・ビンチ以外にも様々な画家が描いているというのは、西洋美術を少しでもかじった事がある者なら誰でも知っている。
 塾長たる者が、「最後の晩餐」を描いたのはダ・ビンチが最初で最後と信じて疑っておらず、その間違いを塾生らから指摘される、というのはおかしい。
「今でしょ」の台詞で全国的に有名になった塾講師からすれば、教育者の資格は無い、て事になりそう。

 本作を読む限りでは、本格推理小説は矢張り重大犯罪が起こらないと、成り立たないようである。









Last updated  2018.05.07 22:46:03
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