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2021.10.24
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カテゴリ:洋画

 007シリーズ第25作目。
 ダニエル・クレイグ演じる6代目ボンドの最終作との事。
 敵役を演じるのはラミ・マレック。
 レア・セドゥが引き続きボンドの恋人マドレーヌを演じる。
 他に、レギュラーとしてベン・ウィショー、ナオミ・ハリス、レイフ・ファインズ、ジェフリー・ライトが出演する。
 ボンドウーマンとして、アナ・デ・アルマスとラシャーナ・リンチも出演。
 監督はキャリー・ジョージ・フクナガ。
 原題は「No Time to Die」。


粗筋

 当時まだ子供だったマドレーヌ・スワンは、母親と暮らしていた。
 母親は酒浸りの廃人で、マドレーヌが世話している状態だった。
 そんな中、覆面を付けた侵入者が訪れる。母親に対し、お前の夫はどこだ、と問いただす。
 その夫とは、国際テロ組織スペクターのメンバーであるミスター・ホワイトだった。
 侵入者はリューツィファー・サフィンという男で、幼い頃ミスター・ホワイトに家族を殺害され、その復讐にやって来たのだった。
 母親は、夫がどこにいるかなんて知らない、興味も無い、と正直に答える。
 サフィンは、母親を殺害した後、マドレーヌを狙う。
 マドレーヌは、子供ながらもサフィンを射殺。
 マドレーヌは、サフィンの死体を氷の張った湖にまで引きずっていき、処分しようする。
 その時、死んでいたと思っていたサフィンが息を吹き返す。
 マドレーヌは氷の張った湖を渡って逃げようとするが、氷が割れ、湖に落ちてしまう。
 サフィンは、どういう訳か、溺れそうになっていたマドレーヌを救った。
 
 それから何年も経った後。
 スペクターとの戦い後、現役を退いたボンド(ダニエル・クレイグ)と、マドレーヌ(レア・セドゥ)は、イタリアにて静かな生活を送っていた。
 ボンドは、マドレーヌに促され、かつて愛したヴェスパー・リンドの墓を訪れる。そこで、スペクターの紋章が描かれた一枚の紙を見付ける。それを確認しようとした直後に墓が爆発し、謎の傭兵プリモに襲撃される。ボンドは何とかその場を逃れ、マドレーヌの下に戻る。プリモらは、尚ボンドを追い続けるが、どうにか相手を撒く。
 ボンドがイタリアにいて、しかもヴェスパーの墓を訪れる事を知っていたのはマドレーヌしかいなかったので、ボンドはマドレーヌが裏切ったと信じ込み、彼女と決別する。

 5年後。
 ボンドはジャマイカで単身で穏やかな日々を過ごしていた。
 そんなある日、旧友のCIA局員フィリックス・ライターがやって来て、誘拐されたロシアの細菌学者ヴァルド・オブルチェフを救い出してほしいと依頼する。
 オブルチェフはイギリス諜報局MI6の管理下にある施設で働いていたが、そこが何者かに襲撃され、オブルチェフが細菌兵器と共に連れ去られたという。
 MI6の管理下にあったのなら、MI6がオブルチェフ救出に動き出すべき、とボンドは言う。
 ライターは、MI6も動いているが、現在CIAとMI6はあまり仲が良い訳ではなく、オブルチェフをMI6から引き離したい、と素直に認める。
 既に引退して何年も経っているボンドからすれば、今更スパイ合戦に巻き込まれたくなかったので、協力を拒否する。
 その直後に、黒人女性がボンドと接触。ボンドが引退した後に「007」の番号を引き継いだノーミ(ラシャーナ・リンチ)だった。ノーミは、オブルチェフはMI6が救出するから手を出すな、とボンドにくぎを刺す。
 そもそもオブルチェフはMI6の為に何をやっていたんだ、とボンドが問いただすと、オブルチェフはプロジェクト・ヘラクレスの為に研究を進めていた、と認める。
 ボンドは、プロジェクト・ヘラクレスが細菌兵器の研究である事を知っていた。当時の上司Mに対し、計画は中止すべきだと進言しており、Mもそれに賛同していた筈だった。
 ノーミが去った後ボンドはライターに対し、協力する、と連絡を入れた。
 ボンドは、オブルチェフがいるとされるキューバへ飛ぶ。そこでスペクターの会合が開かれ、オブルチェフも引き渡される、という情報を得ていたからだ。
 ボンドは、CIAキューバ支局の新人女性工作員のパロマと共に、スペクターの会合が開かれるホテルに潜入する。
 スペクターの指導者であるブロフェルドは、イギリスの監獄にいたが、通信機付きの義眼を経て会合に遠隔で参加していた。ボンドが潜入している事も承知しており、オブルチェフが開発した細菌兵器でボンドを殺そうとする。
 が、細菌兵器はボンドではなく、会合に出席していたスペクターのメンバーらを狙い澄ましたかの様に殺した。
 ホテルは大混乱に陥る。
 ボンドは、自分が何故無傷なのか、誰がどういった理由でスペクターを全滅させたのか分からないまま、オブルチェフを探す。
 そこにノーミが現れ、一旦はオブルチェフを捕らえるものの、ボンドとパロマが奪還。
 ボンドは、パロマに見送られ、オブルチェフを連れてキューバの沖にある船に向かう。
 船で、ライターと、同僚のアッシュが出迎える。
 ボンドはオブルチェフをライターに引き渡す。が、同僚のアッシュは、サフィンの組織に通じていた。アッシュはライターに致命傷を与え、オブルチェフを連れ出して船から逃げる。ボンドは、ライターの死を見取り、命辛々船から脱出した。
 ボンドはイギリスに戻り、元上司のMと対面し、状況の説明を要求する。
 Mは、オブルチェフとプロジェクト・ヘラクレスについて話す。
 プロジェクト・ヘラクレスは、特定の人物だけを殺す様にプログラムされた細菌兵器の開発プロジェクトだった。この細菌兵器を使えば、大勢いる中で散布して殺害したい人物だけを殺す事が可能になる。標的以外の者にとっては無害なので、標的と接触するであろう者を感染させ、後々接触した時点で標的を殺す事も可能になる。
 イギリス政府からすれば、味方の犠牲を最小限に食い止めながら敵には大打撃を与えられる究極の兵器だった。
 オブルチェフは、その研究開発の中心メンバーだった。
 ボンドは、オブルチェフが裏切らないという保証は何も無い、と反論。仮に研究開発が上手く運んだとしても、そこから先の運用が上手くいく訳が無い、だからこそ計画を中止しろと進言したのだ、と。
 Mは、元一諜報員に過ぎないボンドに説教される筋合いは無い、とにべもなく言う。
 ボンドは、ブロフェルドなら何か知っている筈だと主張し、会わせろと要求。
 Mは、その要求を受け入れるしかなかった。ただ、ブロフェルドと正式に会えるのはある一人の人物だけなので、そいつと同行しろ、という。
 その人物とは、精神科医となっていたマドレーヌだった。
 マドレーヌがブロフェルドと会う直前に、サフィンが彼女と接触。
 サフィンは、割れた覆面を見せ、子供の頃、お前の命を救ったのは自分だ、だから自分の言う通りにしろ、と要求。
 マドレーヌは、その要求に応えるしかなかった。
 ボンドは、マドレーヌと久し振りに再会。
 関係はとっくに終わっている、と互いに強がって見せるが、戸惑いは隠せなかった。
 共に、ブロフェルドのいる施設へ向かう。
 が、マドレーヌは、ブロフェルドが姿を現す直前になって、矢張り面会出来ない、と退室。
 ボンドは、ブロフェルドと一対一で対面する。
 ボンドは、キューバでの出来事について問う。
 ブロフェルドは、あそこでボンドを殺す予定だったが予想外の事が起きた、と認める。そして、5年前の事についても語る。
 ヴェスパーの墓を爆破してボンドを殺そうとしたのは事実だが、その後の出来事には関与していない、と言う。また、マドレーヌは裏切っておらず、ただ純粋にお前にヴェスパーの墓を訪れて過去を洗い去ってほしかっただけだった、とも言う。マドレーヌがお前を裏切った様に見えて、その結果関係が破綻したのは自分にとって幸いだった、と。
 ボンドは冷静さを失い、ブロフェルドの首を締め上げる。
 その時点で、ブロフェルドはキューバのスペクターのメンバーらと同様、細菌兵器により死ぬ。
 サフィンは、事前にマドレーヌを細菌兵器に感染させた。マドレーヌがボンドに触れた時点で、ボンドが感染。ボンドがブロフェルドを締め上げる為触れた結果、ブロフェルドを殺す様プログラミングされた細菌兵器が効力を発揮したのだった。
 Mは、ノーミに裏切り者のアッシュを追跡しろと命じ、ボンドにはマドレーヌを探せと命じた。
 ボンドは、マドレーヌがいるノルウェーの家に向かう。
 そこで、マドレーヌが出迎える。
 ボンドは、自分を裏切ったと勘違いしてしまった事を謝罪し、以前の関係に戻れないかと提案するが、そこに幼い少女が現れる。5歳になるマドレーヌの娘マチルドだった。
 マドレーヌは、マチルドはあなたの子供ではない、という。
 ボンドは、失った5年間の大きさを今更思い知る。
 それでも、ボンドとマドレーヌは和解する。
 翌日、ボンドはMI6に連絡を入れる。すると、ノーミがノルウェーに入国したと知らされる。アッシュを追っている筈のノーミが何故ノルウェーに、と疑問に思ったが、その意味に気付いて愕然とする。アッシュが自分らに迫ってきている、と。
 ボンドは、マドレーヌとマチルドを連れて逃げようとするが、アッシュが傭兵らと共に迫ってきた。
 アッシュらを森林に誘い込んだボンドは、アッシュらを始末する事に成功するが、その隙にマドレーヌとマチルドがサフィンに攫われてしまった。
 その時点で、アッシュを追っていたノーミが合流。
 ボンドとノーミは、サフィンが向かったある島へと向かう。
 その島は、日本とロシアが領土権を主張する島だった。サフィンは、そこで生まれ育ったのだった。オブルチェフもここにいる事が判明する。
 ボンドとノーミは、島に潜入。
 島はまるごと細菌兵器の工場となっていた。
 ボンドはノーミにオブルチェフを探させ、自身はマドレーヌとマチルドを探す。
 待ち構えていたサフィンは、自身の野望について語る。ここで製造した細菌兵器を使って人類の大半を殺戮する、と。
 ボンドは隙を狙って、マドレーヌとマチルドを救出。二人をノーミに預け、島から先に脱出するよう、命じる。自分は工場を破壊して、細菌兵器を始末する手続きを取る、と。
 近海に、英国海軍軍艦が接近していた。それに巡航ミサイルを発射させ、工場を爆破させる、という計画を立てる。しかし、工場は地下深くにあるので、外へ通じる扉を開いておく必要があった。
 ボンドは、扉を開閉する制御室へ向かい、扉を開く事に成功。あとは巡航ミサイルに任せるだけとなった。ボンドはMに連絡し、巡航ミサイルを発射させる。
 ボンドは島から脱出しようとするが、扉が遠隔操作で閉じてしまう。
 ボンドは制御室に戻ろうとするが、サフィンが立ち塞がった。
 ボンドは格闘の末サフィンを倒す。が、その前にサフィンはボンドを細菌兵器に感染させてしまう。これにより、ボンドは自身と血の繋がりのある者と接触すると、その者を死なせてしまう体質になってしまった。
 制御室に戻り、扉を再び開く事に成功。
 ボンドは、島から脱出していたノーミとマドレーヌに連絡を入れる。自分が島から脱出するのはもう無理だ、と告げる。
 マドレーヌは、マチルドがボンドの子である事を伝える。
 仮に無事脱出出来、マドレーヌらと再会出来たとしても、マチルドと接触したら死なせてしまう。
 自分は結局普通の幸せな家庭を築く運命ではないと悟ったボンドは、マチルドに別れを告げる。
 その直後、巡航ミサイルが爆発し、島全体を飲み込んだ。

 数日後、MI6でM、Q、マネーペニー、そしてノーミは、死んだボンドを悼む。

 マドレーヌは、車中で、マチルドに対し、父親であるボンドについて語り始めた。



感想

 15年間という、歴代の中で最も長い間ボンド役を務めたダニエル・クレイグの007の最終作(15年間にもなってしまったのは、作品の公開の間隔が開いてしまったり、本作の様に作品自体は完成したもののコロナウィルスにより公開が延期され続けた、という事情もあるが)。
 クレイグ出演の007シリーズ作は、ボンドが007に成り立ての頃から最期までを描くという、これまでに無い試みとなった。
 ただ、本作を機にクレイグが降板するだけにも拘わらず、007シリーズそのものの最終作の様になってしまっているのはどうかね、と思わないでもない。
 クレジット後のメッセージ「JAMES BOND WILL RETURN」を観て、どう思えばいいのか分からなくなってしまった。

 制作側の事情も複雑。
 ダニエル・クレイグの007が制作される直前に007シリーズを長年手掛けてきたMGMがソニーに買収され、クレイグの007シリーズ作はソニーの映画として制作されてきた。
 が、ソニーがMGMをユニバーサルに売却し、暫く続いていたライセンス契約も切れてしまった為、本作は完全にユニバーサルの映画として制作されている。
 何故ソニーがMGMを手放したのか、よく分からないし、冒頭でMGMの他にユニバーサルのロゴが現れたので、訳が分からなかった。
 ユニバーサル傘下となった007シリーズが、今後どう展開するのかも心配である。オープニングシークエンスが、ここ数作は無かったガンバレルのものだったので(クレイグ007シリーズでは初だと思う)、原点回帰も期待させるが。

 本作は、ボンドがMI6を引退した後の出来事が得られている。
 MI6もボンドという一諜報員に関わっている訳にもいかないので、別の人物(黒人女性)に「007」のコードナンバーを与えてしまっている。
 そんな訳で、本作のボンドは、正式には「007」ではない事になっている。
 
 前作のSPECTREで事実上終わったダニエル・クレイグの007シリーズを、無理矢理続行させたのが本作。
 したがって、倒した筈のテロ組織SPECTREは健在で、主導者のブロフェルドも再登場。
 といっても、ボンドが再びSPECTREと戦わせるのはおかしいと判断されたからか、SPECTREを壊滅に追い込む別のテロ組織を登場させている。
 本作の最大の問題がここ。
 SPECTREを上回る極悪テロ組織の筈なのに、存在感がまるで無い。
 ボンドを苦しめるのは確かだが、薄っぺらく見えてしまう。
 主導者のサフィンも、ストーリーの流れからするとブロフェルドをも上回るヴィランの筈なのに、その凄さが伝わってこない。
 細菌兵器をバラまいて人類を滅亡させると豪語するが、その動機も特に説明されず、「出来そうだからやってみた」という程度になってしまっている。
 サフィンを演じたラミ・マレックは、ボヘミアンラプソディーで主人公のフレディ・マーキュリーを演じ、アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞しているから、007シリーズのヴィランにするには勿体無いくらいの輝かしい経歴を持つ俳優。しかし、本作ではその演技力が活かされた感じがしなく、残念。
 折角ブロフェルドを再登場させているのだから(すなわち演じる俳優のスケジュールを押さえる事が出来た)、全く新しい敵役や組織を登場させるのではなく、ブロフェルドが脱獄してSPECTREに復帰し、ボンドに襲い掛かる、という展開にした方が良かった様に思えるが(襲い掛かる実行部隊のリーダーとしてラミ・マレックを起用するとか)。

 本作では、ボンドウーマンともいえる女性が3人登場(「ボンドガール」は、政治的に正しくない事になっている)。
 メインが、前作にも登場したマドレーヌ。
 2作続けて登場し、重大な役割を果たすのは、50年間にも及ぶシリーズの中で、初かも。
 ただ、引退したボンドが結婚を真剣に考えるくらい魅力的な女性という設定の割には、観ている方からするとそこまで惚れ込むかね、というレベル。
 冒頭で、ボンドは自分を裏切ったと勝手に信じ込み、彼女をあっさり捨てている。が、見方によっては、そもそも飽きていて別れようかどうか迷っていた所、事件が発生したので、それを口実に別れた、という風にも映る。

 その次に登場するボンドウーマンが、CIAのキューバ支局の工作員パロマ。
 クレイグ007シリーズにしては場違いに感じる程能天気なキャラ。ブロスナン007シリーズや、その前の前のムーア007シリーズに登場していても不思議ではない。何故シリアス一辺倒のクレイグ007シリーズで、こんなキャラが登場する事になったのか、不思議に思う(これも、配給会社がソニーからユニバーサルに移った影響か)。
 しかも、ボンドの足手纏いになるのではと思いきや、戦闘力があり、機転も効く、非常に優秀な工作員である事を示す。
 新007のノーミを出し抜き、オブルチェフとボンドをキューバから脱出させる、というミッションを見事に完遂。
 もしかしたら007シリーズでは当たり前になっている「犠牲者の女性」になってしまうのではと恐れていたが、そんな事は無く、「私の役目はここまで。じゃ、さようなら」とボンドを送り出して元気に退場。以後、再登場しない(映画ポスターではかなりしっかりと描かれているので、前半でしか登場しないキャラだと思っていなかった)。
 ストーリー的には「犠牲の女性」にならなかったが、「再登場してもらいたいのに結局再登場しない」という、製作上の「犠牲の女性」になってしまった。

 3人目のボンドウーマンが、MI6で「007」のコードナンバーを引き継いだノーミ。
「00」局員だから、ボンド程でないにせよ優秀な工作員なんだろうなと期待させるが、その優秀さが全く見られない。
 パロマが痒い所に手が届く面白いキャラだとすると、ノーミはひたすら痒い所に手が届かない残念なキャラ。
「00」局員になったばかりで、まだ不慣れな部分があり、それを自分も認めている、というキャラ設定にしていれば、まだ同情出来たのに、何故か「自分はボンド同様に優秀」という自意識過剰さが目立ってしまい、鼻につく。
「何故この程度の工作員が『007』を引き継げたんだろう」と疑問に思ってしまった。
 彼女こそ「犠牲の女性」になってくれればスッキリするのに、と思ったが、それも叶わず、最後まで生き延びる。

 仮に本作でスピンオフの制作が決まり、パロマかノーミのどちらかを主人公とするとなったら、自分は迷わずパロマを主人公にしたものが観たい、と思うだろう。
 スピンオフの可能性は無いだろうけど(過去にも何度か可能性が探られた様だが、結局制作には至っていない)。

 本作では、「犠牲」になるのは女性ではなく、セミレギュラーキャラのフェリックスだった。
 クレイグ007シリーズで、ボンドは「身近な女性を守り切れない」と敵に揶揄されてきたが、本作では登場するボンドウーマン全てが最後まで生き残る。
 本作でボンド本人が命を落とすのは、皮肉と言える。

 ヴィランはサフィン、という事になっていて、ボンドも彼を阻止する為に行動するが、一番のヴィランはMだった様な。
 Mがボンドの進言通り細菌兵器開発を止めていれば、今回の出来事は無かったと思われ、人類が存亡の危機に瀕する事も無かった。
 少なくとも、ボンドが引退生活から借り出されて命を落とす事は無かっただろう。
 にも拘らず、責任を取って辞任等するのかと思いきや、ラストでボンドを悼んだ後、「さ、次の仕事だ」と何事も無かったかの様にMI6長官の座に居座るのは、納得がいかない。
 自分の失態をボンドに尻拭いさせ、ボンドを見殺しにして全てを隠滅する様、手続したとしか映らない。
 最近の映画の傾向は「世界征服を企む極悪組織より、世界の秩序を守るという名目で暴走してしまう政府組織が人類にとって最大の敵」となっていて、本作も例外ではない。

 007シリーズはブロスナンの頃からプロダクトプレイスメントが顕著だったが、本作はアストンマーチンの広告か、と思ってしまう程アストンマーチンがこれでもか、と登場する。
 冒頭では兵器満載のDB5が登場。
 走行する場面は無いが、ヴァルハラがMI6の装備として登場する。
 また、作中中頃で、ボンドは旧型のV8ヴァンテージを乗り回している。
 ノーミは、DBSスーパーレッジェーラを乗り回していた。
 アストンマーチンがここまで登場させるのにどれだけの制作費を負担したのかね、と思ってしまう。
 MI6を引退した筈のボンドが、兵器満載のDB5を乗り回し、搭載されたマシンガンでバンバン敵を倒して大丈夫なのかね、と後々考えて思った。
 DB5やDBSスーパーレッジェーラも悪くないが、何だかんだでV8ヴァンテージが一番格好良く映った。

 本作の監督を務めたのはキャリー・ジョージ・フクナガ。
 日本では、「初の日系人007監督!」として話題に。
 ただ、フクナガ氏は日系4世。イギリス人、ドイツ人、スウェーデン人の血も受け継いでいるとの事なので、家系的に偶々日本人の名字になった、というだけであって、「自分は日系人」の意識は薄いと思われる。
 ……と、言いたくなるが、本作は最後の舞台が日本とロシアが領有権を主張している島となっている。日本人キャラこそ登場しないが、日本的な要素がここぞと盛り込まれている。
 サフィンとボンドが対面する部屋には、何故か畳が敷かれていたし。
 監督の意向というより、これまでの007の集大成として歴代のシリーズ作を連想させる要素が随所に盛り込まれる事になった結果、敵役の基地が「007は二度死ぬ」のオマージュになった可能性が高いが。

 過去作品のオマージュを盛り込んだせいか、上映時間は2時間43分と、シリーズ最長になってしまっている。
 当然ながら中だるみする場面も。
 もう少し短く出来なかったのかね、と思った。

 007シリーズは50年間にも亘って制作されているので、その時代や流行を反映させる事で生き延びてきた。
 クレイグ007シリーズでは、Qが同性愛者という設定になったり、CIA局員のフェリックス・ライターが黒人になったり、ボンドの後を引き継いだ007が黒人でしかも女性になったりしているが、それらも時代を反映した為。
 シリアス路線一辺倒なのも、それ以外が求められていない時代になってしまったからといえる。
 時代に沿うのは仕方ないかも知れないが、クレイグ007シリーズの様に、過去のシリーズ作を完全否定してまで時代に寄り添うようになると、それはどうかね、と思ってしまう。

 クレイグ007シリーズ作は、世間的には評価が高かった様だが、個人的にはひたすらイマイチだった。
 やっと終わってくれた、とホッとするのと同時に、今後はどうなるんだろうと心配してしまう。
 原点回帰を期待させる部分も観られるが、世間がそれを許すかも不明だし。
 次の作品によっては、「ダニエル・クレイグも何だかんだで悪くはなかった」と思う様になるかも。









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Last updated  2021.10.24 15:34:38
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