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非常に適当な本と映画のページ

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洋画

2022.07.08
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カテゴリ:洋画

 2022年公開のアメリカ合衆国のアクション映画。
 1986年公開の『トップガン』の36年振りの続編。
 監督はジョセフ・コシンスキー、脚本はアーレン・クルーガー、エリック・ウォーレン・シンガー、クリストファー・マッカリーが務める。
 トム・クルーズとヴァル・キルマーが前作から続投。
 他に、ジェニファー・コネリー、マイルズ・テラー、ジョン・ハム、グレン・パウエル、ルイス・プルマンらが出演。


粗筋

 ピート・“マーヴェリック”・ミッチェル海軍大佐(トム・クルーズ)は、空中戦で3機の敵機撃墜記録を持つ戦闘機パイロット。
 その輝かしい戦歴とは裏腹に、問題行動で左遷されており、将官に昇進していて当たり前の年齢に達していたにも拘わらず、階級は未だに大佐だった。
 現在は、スクラムジェットエンジン搭載の極超音速試験機「ダークスター」のテストパイロットを務めていた。
 ダークスターは、最高速度の記録を試験飛行の度に塗り替えていて、次のテスト飛行ではマッハ9.5を達成する予定だった。
 しかし、ダークスター計画の予算の権限を握ったケイン海軍少将(エド・ハリス)は、自身が推し進める計画に予算を回したいが為に、「約束された最高速度マッハ10を達成出来ていない」を口実に、ダークスター計画の凍結を一方的に決める。
 マーヴェリックは、ケイン海軍少将が計画凍結を正式に宣言する前に、マッハ10を達成すべく離陸し、成功させる。が、独断でそれ以上に記録を伸ばそうとした結果、ダークスターを空中分解させてしまう。
 無事脱出し帰還したマーヴェリックは、ケイン海軍少将から飛行禁止処分を言い渡されてもおかしくない立場にあったが、かつて戦闘機パイロットとしてマーヴェリックと共に戦った、太平洋艦隊司令官トム・“アイスマン”・カザンスキー海軍大将(ヴァル・キルマー)の強い要望で、ノースアイランド海軍航空基地の「トップガン」に呼び戻された。
 丁度その頃、あるならず者国家がNATO条約に違反するウラン濃縮プラントを建設し稼働させようとしていた為、それを破壊すべく特殊作戦が計画されていた。
 プラント周辺の強力な防空網を避ける為に険しい渓谷を超低空・超高速で飛行して、電磁波妨害に左右されないレーザー誘導爆弾でプラントを破壊するには、米海軍は旧式となりつつあるF/A-18戦闘機を使うしか手が無い。一方で、敵国は最新鋭の第5世代戦闘機を保有してプラント周辺の防衛に当たらせていた。プラント破壊後、F/A-18と敵機との空中戦は必至だった。
 米海軍は、トップガン卒業生から戦闘機パイロットの精鋭を選抜し、任務に当たらせる事になったが、最近は戦闘機といえども爆撃が主体となっていて、選抜されたパイロットらも実戦経験こそ豊富ながらも空中戦を経験した者は殆どいなかった。
 そこで、空中戦の第一人者として、マーヴェリックが教官として抜擢されたのだった。選抜パイロットを訓練し、その中からパイロットを更に絞って任務に当たらせる、と。
 戦闘機乗りとしては絶対の自信を持つマーヴェリックだったが、生還率が低い作戦の為にパイロットを訓練して送り出す事には消極的にならざるを得なかった。しかし、海軍から除隊されるところを何度も救ってくれたアイスマンの直々の御使命とあって、拒否は出来なかった。
 マーヴェリックは、選抜パイロットの中に、かつての友人で事故で亡くなったニック・“グース”・ブラッドショウ海軍中尉の息子、ブラッドリー・“ルースター”・ブラッドショウ海軍大尉がいる事に困惑する。
 マーヴェリックは、夫を失った上に息子まで失いたくない、というルースターの母にせがまれ、ルースターの海軍兵学校への志願書が受理されないよう工作していた過去があった。
 ルースターは、マーヴェリックの工作にもめげずに海軍兵学校へ入学し、パイロットになったものの、マーヴェリックによって大きな回り道をさせられた、と恨んでいた。その上、父親のグースがマーヴェリックの後席に乗っていて事故死した事も知り、マーヴェリックこそ父の死の原因だ、と恨みに恨みを重ねていた。
 マーヴェリックは、乗り気ではなかったものの、教官として訓練を開始。作戦を成功させる為の制限時間と所要練度を割り出し、それに基づく飛行水準を決め、それに向かってパイロットらを訓練する。
 選抜パイロットらは、実戦経験を充分以上に積んでいる自分らは今更マーヴェリックに教わる事等何一つ無い、と当初は思っていた。が、戦闘機の仕様書に記載された範囲内で操縦する事しか学んでこなかった彼らは、仕様書を無視して戦闘機を限界にまで追い込むマーヴェリックの実戦仕込みの飛行技術には全く歯が立たず、マーヴェリックの腕を認めざるを得なかった。
 選抜パイロットらはマーヴェリックが求める水準に達する為の厳しい訓練を続けるものの、誰も達成出来ない。
 また、ルースターは過去の因縁からマーヴェリックに対して反発的な態度を取るばかり。その上、選抜パイロットの一人で、問題児扱いされていたジェイク・“ハングマン”・セレシン海軍大尉が、マーヴェリックとグースの過去をネタに軽口を叩いた事で、パイロット達の間に摩擦が生じる。
 自らの過去が招いたトラブルに悩むマーヴェリックを、アイスマンが自宅に呼び出す。アイスマンは病の末期症状にあったが、その体に鞭打ってマーヴェリックと面談し「いい加減、自分を許したらどうだ」と助言を与える。
 数日後、アイスマンは息を引き取った。
 マーヴェリックを元々疎んでいた海軍上層部は、アイスマンの死去を好機と捉え、マーヴェリックを教官職から解任する。選抜パイロットらを所要練度に到達させられなかった、という理由を付けて。
 海軍上層部は、特殊作戦を練り直し、マーヴェリックが要求していた練度を必要としない水準にまで下げる。しかし、敵側の防空体制に変化が無い以上、新水準では作戦に参加するパイロットらの生還は期待出来ない。
 マーヴェリックが要求する水準では誰も任務を達成出来ないが、新水準では任務を達成出来ても誰も生還出来ない、とパイロットらは絶望する。
 その時、解任された筈のマーヴェリックがF/A-18に搭乗して飛行を開始。作戦をシミュレートした飛行で、自身が選抜パイロットらに課していた水準での飛行を成功させ、要求していた水準が絶対不可能でない事を証明する。
 海軍上層部は、マーヴェリックの飛行技術を認めざるを得なくなり、マーヴェリックを今回の作戦の編隊長に指名する。
 作戦に実際に加わるのではなく、教官として加わるだけ、という状況に不満を持っていたマーヴェリックだったが、いざ編隊長として作戦を指揮しろと命じられると戸惑うしかない。が、希望通りの展開になったではないかと促され、作戦に本腰を入れる。
 選抜パイロットの中から、マーヴェリックは任務を遂行するパイロットを選び出し、編隊を組む。その中にはルースターも含まれていた。ハングマンは予備として待機する事に。
 特殊任務の日。
 マーヴェリックらは空母から発艦し、プラント破壊に成功する。
 が、プラント周囲に配置された大量の対空ミサイルからの攻撃にさらされる。作戦に参加したパイロットらの殆どは、無時帰還出来た。しかし、マーヴェリックとルースターだけは互いをかばって撃墜されてしまい、敵の航空基地近くに降り立つ。
 2人は森で再会し、敵基地に無傷で残っていたF-14を奪い、空母へと向かう。
 が、敵の第5世代戦闘機が追ってきた。
 初期の第4世代戦闘機に位置付けられるF-14は、性能的には不利な立場にあったが、マーヴェリックとルースターの腕前もあり、2機の第5世代戦闘機を撃墜。しかし、最後の3機目を相手にする頃には武装を使い果たしており、しかも脱出装置も故障してしまう。
 撃墜されるのを待つばかりのマーヴェリックらだったが、空母で待機していたハングマンが駆け付けて敵機を撃墜し、窮地を免れる。
 2人は無事空母に帰還すると同時に、和解した。



感想

 1980年代に大ヒットし、トム・クルーズを一躍スターへと押し上げたトップガンの36年振りの続編。
 続編を想定していなかったと思われる作品なので、よく制作に至ったな、と驚く。

 回想シーン以外で前編から引き続き登場するのは主人公のマーヴェリックと、ライバルだったアイスマンのみ、となっている。よって、前編でヒロイン役を演じたケリー・マクギリスは登場しない。
 ケリー・マクギリスは俳優業を引退状態で、容姿も60歳の年齢相応になってしまっていた為、若さを奇跡的に維持しているトム・クルーズとギャップがあり過ぎると考えられた為か、カメオ出演のお声すら掛からなかったという。残酷といえば残酷だが、前編の出演者をあまりにも登場させてしまうと単なる同窓会映画になってしまうので、前編からの登場人物を絞ったのは適切だったといえる。

 ただ、40年余り前の映画の続編とあって、設定には結構強引な部分も。
 最も強引なところが、輝かしい戦績を持つマーヴェリックが40年も経っているのに未だに階級が大佐で、航空機の操縦桿を握り続けている、という点。
 ライバルだったアイスマンが大将にまで昇進し、太平洋艦隊司令官となっているので、ますますそのギャップを感じさせる。
 実際の海軍だったら、「パイロットのままでいたい」という理由で昇進を拒み続ける者をいつまでもパイロットのままにしておく、という措置は取らないと思われる。無理矢理昇進させるか、パイロットの資格を取り消すか、除隊させているだろう。本作ではアイスマンの計らいでマーヴェリックはパイロットのままでいられた、という事になっているが、大将にそこまでの権限があるとも思えない(アイスマンも最終的に大将に上り詰めた訳で、それ以前は当然ながらより低い階級だった筈だし)。
 教官として、作戦の裏方に徹する筈だったマーヴェリックが、いつのまにか作戦の最前線に立っている、というのも有り得ない。いくら飛行技術があったとしても、本来なら退役間近の年齢に達している者が編隊長に指名される事は無い。
 本作で、マーヴェリックは試験機ダークスターを破壊し、後半の作戦ではF/A-18戦闘機を破壊させている。が、操縦していた本人は無事脱出。
 何十億円の航空機も所詮「モノ」に過ぎないから全損したら必要に応じてまた作り直せばいい、命はそうはいかないから助けないと、という発想は消費大国アメリカならでは。どんな高価なものでも使い潰していく。他国だと「操縦士の命は助かったんだから、航空機を失っても問題ナシ」という訳にはいかない。「操縦士も重要だが、航空機の方がもっと大事」となる。

 アイスマンは、癌で喉をやられてしまい、殆ど喋れない、という設定で登場。
 これは、演じていたヴァル・キルマーが癌で喉に手術をせざるを得なくなった、という事実をキャラに反映させたかららしい。
 当然だが、ヴァル・キルマーはアイスマンとは異なり、死んではない。
 作中でアイスマンは声を振り絞ってマーヴェリックに語り掛けているが、アイスマンの声はヴァル・キルマー本人のものではなく、吹き替えだったらしい。
 ヴァル・キルマーが年相応の容姿である一方、トム・クルーズがそこまで老け込んでいない事に、とにかく驚く。

 マーヴェリックの相手役として、酒場を営む女主人のペニー・ベンジャミンが登場。
 前編では名前が述べられるだけで作中では姿を現さないキャラだったが(よって誰も演じていない)、本作では普通に姿を現し、お馴染みのキャラと言わんばかりにマーヴェリックと絡んでいる。
 演じていたのはジェニファー・コネリー。流石に歳を取ったな、とい言った感じ。
 酒場のシーンは、ライトスタッフのパンチョ・バーンズの店を連想させた。
 パイロットの溜まり場は、似た様なものになってしまうのか。

 登場人物の大半がパイロットか、元パイロットという事もあり、ほぼ全員がニックネームを持っている。
 主人公は“マーヴェリック”、彼の元ライバルは“アイスマン”、主人公に恨みを持つパイロットは“ルースター”、選抜パイロットの中の問題児は“ハングマン”。
 本名で呼ばれるキャラは殆どいない。
 実際の海軍もそうなのか。

 主人公の設定には無理があったが、航空シーンは迫力がある。
 トム・クルーズを含め、パイロット役の俳優らは実際に米海軍の戦闘機に搭乗しながら演技したという(シーンによっては俳優にカメラを持たせて撮影と演技を同時にやらせたとか)。
 米海軍の全面協力を得られたハリウッドならではのスケール感ある撮影。

 前編では、敵機の「ミグ」は実際には米軍のF-5で、航空機について少しでも知識がある者だとそれに違和感を抱く羽目になっていた。
 本作の敵機(いわゆる第5世代戦闘機)は、ロシアが開発中のステルス戦闘機Su-57に似た機体が登場。
 前編ではリアルな飛行シーンを映すには実際の米軍戦闘機をロシアの「ミグ」と称して撮影させざるを得なかったが、現在なら架空の戦闘機の飛行シーンもリアルに映せるくらい特撮技術が向上している、という事だったらしい。
 確かに、第5世代戦闘機の飛行シーンに違和感は無かった。

 ラスト辺りでは、にマーヴェリックらがF-14戦闘機に搭乗して飛行するシーンも。
 F-14はとうの昔に米海軍からは退役しており、その上退役したF-14は敵国となってしまったイランに部品が渡る事が無いよう、破壊され捲っていて、飛行可能状態のF-14はアメリカ国内には残っていないので、作中の飛行シーンは全て特撮によるものと思われる。
 それでも、どうやって撮影したんだろうと思う。

 マーヴェリック率いる編隊は、あるならず者国家の軍事施設を攻撃しているが、この「ならず者国家」がどこの何という国なのかは明らかにされない。
 実際の国名を出すと問題になるし、わざわざ仮想の国を想像するのも面倒臭い、と感じたかららしい。
 時折現れた国旗はイランを連想させるものとなっていたが(イランは米国以外でF-14を運営する唯一の国)、積雪があり、第5世代戦闘機を導入出来る程の資金と技術を保有する、となるとロシアっぽい。
 前編も敵国は「ミグ」を運用している国家、となっていて、「ソ連」の明言は避けていたので、敵国をしっかり定めないのは本シリーズの伝統か。

 トム・クルーズがノーヘルメットでオートバイを飛ばすシーンは、本作でも導入。
 40年経っているが、この法律は変わっていないらしい。
 冒頭では前編でも登場した旧車のカワサキGPZ900Rの旧車を乗り回し、それ以降は最新型のカワサキNinja H2を乗り回していた。
 Ninja H2は、1000ccながらも200馬力のエンジンを搭載した高性能バイク。当然ながら、安くは無い。
 海軍大佐の給料、てそこまでいいのか。

 制作発表時は中国資本の会社がスポンサーになっていた事もあり、作品の紹介シーンでは台湾と日本の国旗が縫い付けられている筈のジャケットから国旗が消えていた、と批判が挙がっていたが、本作では台湾と日本の国旗入りジャケットが普通に見られた。
 コロナウィルスの影響で制作から公開まで時間が掛かってしまい、その間に中国の会社の懐事情が変わってスポンサーを降りたからだという。コロナウィルスの怪我の功名といえる。

 前編もアメリカ万歳映画ぽかったが、本作もアメリカ万歳っぽく仕上がっている。
 一時はそればかりで辟易していたが、最近はハリウッドにも中国資本が流れ込んでいる事もあり、中国万歳の映画が増えてしまっているので、逆にここまでアメリカ万歳だと清々しい。
 ハリウッド映画は矢張りアメリカ映画であるべき。

 前編の原作者であるエフド・ヨネイの遺族が、許可無く続編の製作を進めて公開したとして、本作で得られた利益等の損害賠償と、本作や更なる続編の配給中止を求め、ロサンゼルスの連邦地裁に提訴した事を発表している。
 原作があったのか、とびっくりしたが、原作といっても小説ではなく、海軍のトップパイロットについて紹介する記事で、ストーリー性は無いので、この訴訟がどこまで取り上げられるかは不明。
 アメリカは何でも訴訟の材料にするな、と思った。









Last updated  2022.07.09 14:23:52
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2022.05.06
カテゴリ:洋画

 2022年公開の映画。
 DCコミックスのスーパーヒーロー・バットマンの実写版。
 本作品を以て、バットマン・フランチャイズはまたリブートされた事になっている。
 本作でバットマン/ブルース・ウェインを演じるのはロバート・パティンソン。
 他に、ゾーイ・クラヴィッツ、ポール・ダノ、ジェフリー・ライト、コリン・ファレル、アンディ・サーキスが出演。
 原作は「The Batman」。


粗筋

 軽重の犯罪が横行するゴッサムシティ。
 それを変えようと、若き大富豪のブルース・ウェイン(ロバート・パティンソン)は、バットマンに扮して自警活動する様になってから2年が経過していた。
 選挙を控えるゴッサムシティ市長ドン・ミッチェルが、自宅で寛いでいたところ、背後から緑のマスクを被った男に襲われ、殺害される。
 ミッチェルの殺害現場でゴードン警部補(ジェフリー・ライト)が現場検証していると、バットマンが現れる。
 バットマンを呼んだゴードン警部補以外の警察関係者は、蝙蝠の格好をして自警ごっこしている変質者を犯罪の現場に招くな、と反発する。
 が、ゴードン警部補にはバットマンを呼ぶ理由があった。何故なら、殺害現場には、バットマンに宛てた封筒があり、その中にはリドラーと名乗る犯人からのメッセージがあったのだ。
 メッセージはなぞなぞだったが、バットマンは即座に解き、一緒に入っていた謎の暗号の書かれた紙を見ようとするが、サベージ本部長により現場から追い出されてしまう。
 が、バットマンはコンタクトレンズ型カメラで暗号の書かれた紙を記録していたので、ウェイン邸の地下にあるバッドケイブで執事のアルフレッド・ペニーワース(アンディ・サーキス)と共に暗号の解読を開始する。
 暗号の答えは「drive」だったので、ゴードンと共にミッチェル邸のガレージを捜査。
 そこにあった一台の車に、事件で使われた鈍器を発見する。その車には、犯人が残したUSBもあった。
 USBにはミッチェルが謎の女性を侍らせサベージ本部長と、マフィア組織を率いるペンギン(コリン・ファレル)と会っている画像が記録されていた。
 ペンギンは、別のマフィアの大ボス・ファルコーネと共にゴッサムシティの裏社会を牛耳る人物。
 市長として犯罪撲滅を訴えていたミッチェルと、犯罪を取り締まる立場にあるゴッサム市警のトップが、マフィアとの繋がりがあった事を証明する決定的な証拠だった。しかし、これだけでは何故ミッチェルが殺されたのか、分からない。
 バットマンは、ペンギンが運営するナイトクラブへ向かう。
 ペンギンは、画像の謎の女性が誰なのか分からない、と白を切るが、ナイトクラブで働いていたセリーナ・カイル(ゾーイ・クラヴィッツ)は、謎の女性について知っていた。
 バットマンは、セリーナの後を付けると、謎の女性が同じくナイトクラブで働くアニカという名の女性である事を知る。バットマンはアニカから話を聞こうとしたが、アニカは何者かに拉致された後だった。
 バットマンは、セリーナにコンタクトレンズ型カメラを装着させ、ナイトクラブに戻る様、要求する。
 セリーナは、バットマンに反発しながらも、ナイトクラブに戻る。
 セリーナが装着したコンタクトレンズ型カメラを経て、バットマンは地方検事のコールソンがナイトクラブを訪れているのを知った。要するに、地方検事もマフィアの影響下にあった。
 その直後、リドラーはコールソンを拉致した。
 数日後、ミッチェル市長の葬儀が営まれる。
 その葬儀場に、自動車が乱入。
 自動車から中から這い出て来たのは、数日前に拉致された地方検事コールソンだった。首には爆弾が巻かれていて、リドラーが持たせたバットマンへのメッセージと、携帯電話を握っていた。
 バットマンが到着すると、携帯電話が鳴り、リドラーと繋がる。
 リドラーは、コールソンに対し、自分が出すなぞなぞに答えろと脅迫する。さもないと首に巻かれた爆弾を起爆する、と。
 バットマンとコールソンは、リドラーが出すなぞなぞを解いていくが、最後のなぞなぞは、少し前にゴッサムシティの司法当局が犯罪撲滅の成果として大々的に挙げたマフィアの大ボス・マローニの逮捕劇に関するものだった。
 マローニが逮捕に至ったのは、ある密告者から協力を得られたからだったが、リドラーはその密告者の名前を皆が見ている前で吐け、と要求する。
 コールソンはこの要求を拒否。言ったら自分は破滅する、と。
 リドラーは爆弾を起爆し、コールソンは死亡する。
 バットマンとゴードンは、密告者とは、マローニの右腕だったペンギンだと推理し、ペンギンの後を追う。
 ペンギンが取り仕切る麻薬取引の現場に踏み込んだ二人は、アニカの死体を発見。また、マローニの犯罪組織がペンギンと共に丸ごとファルコーネに渡っていた事を知る。
 バットマンとゴードンは、お前が密告者だな、とペンギンを追及する。リドラーが出したなぞなぞの答えはお前を指している、と。
 しかし、ペンギンは否定した。確かにマローニの逮捕後、マローニの組織も自分もファルコーネの組織に移らざるを得なかったのは事実だが、マローニの逮捕劇に自分は関与していない、と。そもそもなぞなぞの解き方が間違っているぜ、とも指摘。
 バットマンとゴードンは、リドラーのなぞなぞを最初から洗い出す事を迫られる。
 すると、ウェインの父親が運営していた孤児院とリドラーに関係がある事が分かり、バットマンは廃墟と化した元孤児院に向かう。
 そこに残されたリドラーのなぞなぞにより、リドラーはウェイン家にも憎しみを抱いている事実が明らかになり、ブルース・ウェインも標的の一人だと知る。
 バットマンは、自宅へと戻るが、ブルース・ウェイン宛ての爆弾入り郵便物を開封してしまったアルフレッドが病院に搬送された後だった。
 リドラーが残した情報から、ブルースは、何年も前に殺された自分の父親がファルコーネと関係があった事実を知る。
 ブルース・ウェインとしてファルコーネと対面したところ、ファルコーネは自身とブルースの父親トーマス・ウェインの関係について語る。
 医師で事業家だったトーマス・ウェインは、腐敗し切ったゴッサムシティを正そうと、市長に立候補したが、あるジャーナリストが妻のマーサが精神病を患っている事をネタに強請を掛けてきた。困り果てたトーマスは、自身の元に助けを求めてきた。自分は襲撃されて瀕死の状態だったところを、トーマスに救われた事もあり、借りがあった。どうにかしてくれというトーマスの依頼に応える事にした。その結果、ジャーナリストは非業の死を遂げた。それから間も無く、選挙中にトーマスとマーサは何者かにより殺害された。自分と大富豪のウェイン家との関係が深くなる事を恐れたライバルのマローニが手を下した可能性が高い、とファルコーネは締めくくった。
 自身の父親は善人だと信じ切っていたブルースは、父親もマフィアと関わりを持っていた事実に愕然とする。善良な市民である両親を殺されてしまったからこそ自分はバットマンとして活動していたのに、と。
 ブルースは、意識を回復したアルフレッドに対し、父親の死に関する事実を何故自分に知らせてくれなかったのかと責め立てる。
 アルフレッドは言う。ジャーナリストの強請に困り果てたトーマスがファルコーネの下に駆け込んだのは事実だが、追い払えと頼んだだけで、殺せと頼んではいない、と。ジャーナリストが殺害されたと知ったトーマスは、自首しようとしたが、それを阻止しようとファルコーネがトーマスとマーサを殺害した可能性が高い、と。
 ブルースは、何が真実で、何が嘘なのか、自分が何の為にバットマンとして活動してきたのか、全く分からなくなってきた。
 セリーナは、自分はファルコーネの娘だと、ブルースに打ち明ける。といっても、ファルコーネに親しみは持っていなかった。寧ろ、ファルコーネこそ密告者だ、という事実をミッチェルがアニカにうっかり打ち明けてしまった、という理由だけでアニカを始末する事を決めたファルコーネを恨んでおり、殺すつもりでいた。
 バットマンとゴードンは、ナイトクラブに向かい、セリーナを阻止し、ファルコーネを検挙。
 しかし、護送中にファルコーネはリドラーに狙撃され、死亡する。
 警察がリドラーが狙撃した現場に向かうと、そこはごく普通のアパートだった。
 アパートの住人を探し出したところ、会計士のナッシュトンに行き着く。
 彼こそリドラーだった。
 ナッシュトンは直ちに精神病院に収容される。
 バットマンは、精神病院に向かい、ナッシュトンと面会する。
 リドラーことナッシュトンは、バットマンと面会出来て歓喜。
 リドラーは、バットマンと共にゴッサムシティに巣食う悪(ミッチェル、コールソン、ファルコーネ、ウェイン家)を叩き潰していた、と信じて疑っていなかった。
 バットマン=ブルース・ウェインという真実を知らない相手により一方的に片棒にされていたと知ったバットマンは、戸惑うしかなかった。また、リドラーの正義と、自分の正義で、何が違うのか、とも悩み始める。
 リドラーとの会話により、彼が仕掛けた計画が終わっていない事をバットマンは知る。
 バットマンは、その計画について全て吐けとリドラーに迫るが、バットマンは自分の味方ではない、と知ったリドラーは答える事を拒否。
 バットマンは、リドラーが仕掛けたなぞなぞの練り直しを迫られる。
 バットマンは、リドラーのアパートに戻り、ミッチェルの殺害に利用された凶器の真の意味を知り、リドラーが仕掛けた計画の全貌を掴む。
 ゴッサムシティの至る箇所に爆弾を仕掛けた自動車を配置し、市長選の投票日に爆破させる。爆破の衝撃で堤防を破壊し、市の中心部を水浸しにする。避難する市民を選挙の集会場に集結させ、そこをリドラーの賛同者らが襲い、エリートぶっているだけの新市長と共に虐殺する……、という計画だった。
 バットマンは選挙の集会場に急行するが、爆破により市が水浸しになり、市民が集結するところだった。
 バットマンは武装したリドラーの賛同者らを倒し、新市長と市民を救う。
 精神病院で、リドラーは、自分の計画がバットマンによって阻止された事を知り、絶望感に陥る。
 リドラーの隣の収容者が、お前はお前なりに良くやったじゃないか、と笑いながら慰めた。
 バットマンにとって、これまでの自警活動は市民を救う為というより自己満足の側面が大きかったが、同じく自己満足の正義を振りかざしていたリドラーと立ち向かった事により、市民を救う事こそが自分のやるべき事だと改めて認識する。



感想

 バットマンシリーズの再々々々々リブート。
 展開が行き詰まり易いキャラなので(各バージョンも何だかんだで第1作目が一番出来が良く、それ以降はイマイチになる)、度重なるリブートは仕方ないのかも知れないが、ベン・アフレック演じるバットマンに漸く馴染んできたのにまたリブートする必要があったのか、と思わないでもない。
 全体的な雰囲気は、クリストファー・ノーラン版のバットマン第1弾(バットマン・ビギンズ)のダークでシリアスな世界観。
 作中では一切触れられていないが、ホアキン・フェニックス主演のジョーカーで登場したウェイン一家の15年後を描いたのが本作、と説明されても違和感抱く事無く受け入れられるものになっていた。

 これまでのバットマンシリーズでは、バットマンはヒーローとして初登場し、市民にも警察にもヒーローとして受け入れられていたが、本作のバットマンは警察からは「蝙蝠の格好で自警活動している変質者」と見られていて、市民からも特段ヒーロー視されていない。
 バットマンの世界をよりリアルに描く事にした結果こうなった、と言える。
 本作ではバットマン以外にもリドラー、ペンギン、キャットウーマン等、シリーズではお馴染みのキャラが登場するが、いずれもごく普通の人間として描かれている。やっと素顔で登場した知能犯リドラーがごくごく普通の中年男性だったというのは、シリーズ最大の衝撃だった。
 コスチューム姿で登場するのはバットマンだけ。
 その意味でも「バットマン=変質者」の方程式が強調されている。
 ブルース・ウェインも、本作での年齢設定が若いからか、まだまだ未熟な部分があり、ラストになって漸く市民から支持されるヒーローとして活躍する事に意義を見出す展開になっている。
 ブルースの執事で、サポート役のアルフレッドも登場。これまでのシリーズ作では互いに絶大な信頼感を持つ関係、として描かれていたが、本作では互いに信頼しているものの絶大という訳ではなく、互いの言動に呆れていたり、反発したりする様子も描かれていた。

 バットマンがDCコミックスで初登場したのは、1939年発行の「DETECTIVE COMICS(探偵漫画)」の第27巻。元は蝙蝠の格好をした探偵だった。
 本作は、それに原点回帰させたい、という事もあってか、アクションヒーローとしてというより、探偵としての活動が多い。バットマンは元々こういうキャラだったんだな、と改めて思った。
 ひたすら探偵として活動していたら作品全体が地味になるし、蝙蝠の格好をさせる意味が無くなると製作者側が感じたからか、カーアクションや格闘シーンを便宜的に盛り込んでいた。

 凶悪犯罪を巡る映画とあって、ご都合主義な部分も多い。
 最大の難点が、リドラーの正体が捻じ曲がった正義感を振りかざしているだけの会計士だった、という点。
 一会計士が市長の自宅に忍び込んで市長を殺害したり、警察の追跡を欺いて有力者を拉致したり、爆弾を仕掛けたり、マフィア組織の活動を調べてなぞなぞにしたりする、というのは無理がある。
 そうした思惑を抱いていたり、計画したりしたら、直ちに周囲に知られて警察当局やマフィア組織からも目を向けられていただろう。
 リドラーの言動や計画は派手で、奇怪だが、ミステリ映画で登場する悪党の域は出ておらず、コスチュームド・ヒーローでないと手に負えない、という程でもない。
 その意味でもひたすら「リアル」な悪党だった。

 本作の最大の悪は、ゴッサムシティを数十年も牛耳っていたファルコーネと言える。
 ただ、あくまでもマフィアの大ボスという、現実社会でも有り得る悪党に過ぎない。
 コスチュームヒーローでないと対処出来ない相手ではないというか、コスチュームヒーローの相手にしてはあまりにも地味な悪党。
 バットマンより、マック・ボランが相手にしていた方が適していたかも。

 ゴッサムシティにはファルコーネの他にもう一人マフィアの大ボスがいた、という事になっている。
 ファルコーネの「密告」により検挙され、ゴッサムシティの司法当局による「犯罪撲滅の成果」として吊し上げにされた人物。
 マローニというその人物の名は作中で頻繁に挙げられていて、ストーリー上重要な人物であるにも拘わらず、結局最後まで登場せず、バットマンと絡む事は一切無かった。
 次回作で明らかにされていくのか、このまま全く取り上げられる事無く済まされていくのかは不明だが、本作で散々取り上げていたのだから、次回作で何とか登場させ、バットマンと絡んでほしい。

 本作で登場するゴッサムシティの名士は、全てファルコーネの影響下にあった事になっている。
 主人公ブルースの父親トーマスでさえもファルコーネと関わりがあった。
 アルフレッドは、トーマスは強請を仕掛けてきたジャーナリストを脅して追い払ってくれとファルコーネに頼んだだけで、殺せと頼んではいない、と説明していた。
 が、マフィアの大ボスの下に駆け込んで「どうにかしてくれ」と頼み込んだら、殺しも想定していなければおかしい訳で、「マフィアの大ボスに問題解決を依頼したのは事実だが、まさか殺すとは思っていなかった」という言い訳は通用しない。
 本作のトーマス・ウェインは根っからの悪党では無い様だが、善良な市民、という訳でもなく、トーマスが非業の死を遂げた事が子のブルースがバットマンして自警活動をするきっかけとなった、となるには説得力に欠ける。
 結局、本作には裏表が全く無い「善良な市民」が一人も登場しない。

 バットマンシリーズは、各バージョンとも第1作目はバットマンがバットマンになった背景、そしてバットマンが活動するゴッサムシティを描くのに注力しており、その為バットマンが主役で、ヴィランはその引き立て役に徹している。
 が、それ以降のシリーズ作になると、ゴッサムシティやバットマンの背景について改めて触れる必要が無くなるので、必然的にヴィランの描写がメインとなり、主人公である筈のバットマンが引き立て役に転じてしまう事が多い。
 本作も、新たなバットマン像を描く事に成功したと思えるが、第2作目からはまたヴィランにスポットライトが当てられてしまうんだろうな、と思った。

 あと、上映時間が3時間近く、というのもどうにかならないのか、と思う。









Last updated  2022.07.08 22:48:20
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2022.03.03
カテゴリ:洋画

 マーベルスタジオによるスパイダーマンシリーズ第3弾。
 大人の事情から、マーベル・スタジオ単独の制作ではなく、コロンビア ピクチャーズと共同で制作し、ソニー・ピクチャーズ リリーシングが配給するという、複雑な経緯をたどる。
 主演は引き続きトム・ホランド。
 MCUのキャラであるドクター・ストレンジも登場。演じるのは引き続きベネディクト・カンバーバッチ。
 第2弾直後の出来事を描く。
 原題は「Spider-Man: No Way Home」。


粗筋

 前作(スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム)の直後。
 クエンティン・ベック/ミステリオの策略で、スパイダーマン(トム・ホランド)の正体はピーター・パーカーだと全世界に明かされてしまった。
 ミステリオの真の姿はただの大掛かりな詐欺師だったが、世間では並行世界からの脅威の犠牲となった英雄として見られていた(並行世界もミステリオの戯言だった)。その殺害の容疑を問われたピーターは、ダメージ・コントロール局に拘束される。他に、親友のネッド、恋人のMJ、そして叔母のメイまでもが尋問を受けた。
 弁護士マット・マードック/デアデビル(チャーリー・コックス)の弁護により不起訴となるが、スパイダーマンの評価は世間で二分されてしまう。
 ピーター、MJ、ネッドはマサチューセッツ工科大学(MIT)を受験していたが、この騒動により不合格とされてしまった。
 責任を感じたピーターは、以前(アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー、エンドゲーム)共に戦ったスティーブン・ストレンジ/ドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)に助けを求める。
 ストレンジは魔術を使ってピーターが抱える問題を解決する事には消極的だったが、拒否も出来ず、全ての人々からピーターの正体を忘れさせる呪文を行使する。しかし、呪文の詠唱の途中、ピーターがMJやネッドやメイまでも自分の正体を忘れてしまっては困る、等と言い出して邪魔をしてしまい、呪文は失敗に終わる。
 その時点で、ストレンジはピーターに訊く。この件に関してMITと直接掛け合ってみたのか、と。
 ピーターは、その手もあったか、と今更の様に気付く。
 ストレンジは、魔術に頼るのではなく直接MITに掛け合って来い、とピーターを追い出す。
 ピーターは、車中のMIT副学長を探し出して、説得を試みる。
 が、その最中に機械仕掛けのアームを装備した謎の男の襲撃を受ける。
 オットー・オクタビアス/ドック・オック(アルフレッド・モリーナ)だった。
 ピーターは、スパイダーマンに変身して、ドック・オックと対峙する。
 ピーターからすると、初めて戦う相手だったが、ドック・オックはスパイダーマンをピーターと知りながら攻撃に打って出た。
 ドック・オックは、アイアンスパイダースーツからナノマシンを奪って自身のアームと結合させ、ピーターを追い詰める。しかしナノマシンを奪った事が仇となり、アームの主導権を奪われてしまう。
 ピーターが素顔を見せると、ドック・オックは戸惑いの表情を見せる。お前は俺が知っているピーター・パーカーではない、と。
 ピーターも、ドック・オックの発言に対し、戸惑うしかなかった。
 その直後、グライダーに乗った緑色の怪人ノーマン・オズボーン/グリーンゴブリン(ウィレム・デフォー)が姿を現す。彼も、スパイダーマンを見るや否や攻撃に打って出るが、ピーターからすると何故初対面の相手に執拗に攻撃されなければならないのか、さっぱり分からなかった。
 その直後、ストレンジの魔術でサンクタムに転移する。
 ストレンジは、ピーターに説明する。
 魔術の失敗によって、他の並行世界から、ピーターがスパイダーマンだと知る者を呼び寄せてしまった、と。
 ミステリオが詐欺の一環として創作しただけの筈の並行世界が実在すると知って、ピーターは驚くしかなかった。
 ピーターは、MJとネッドと共に、並行世界から呼び寄せられた他の訪問者らを探し出して元の世界に帰す為の作業を開始。
 電気を自在に操るマックス・ディロン/エレクトロ(ジェイミー・フォックス)を発見し、同時に全身が砂で出来たフリント・マルコ/サンドマン(トーマス・ヘイデン・チャーチ)と、カート・コナーズ / リザード(リス・エヴァンス)の捕縛にも成功する。
 残りはグリーンゴブリンだけとなった。
 グリーンゴブリンから本来の人格を取り戻していたノーマンが、メイを通じてピーターに接触する。ノーマンは、元の世界では一大企業オズコープの経営者だったのに、この世界ではオズコープという会社が存在していない事に驚いていた。彼も、サンクタムへと移送される。
 全員が揃ったと満足したストレンジは、呪文を逆転させ、彼らをそれぞれの世界に戻す準備をする。
 しかし、ピーターは、訪問者ら同士の会話から、全員がそれぞれの世界のスパイダーマンと戦って死亡する直前に転送された事に気付く。帰還させて直ぐ死なせるより、善人に戻して人生を何とかやり直させる機会を与えるべきだ、とストレンジに急遽提案する。
 ストレンジは今更そんな事は出来ない、と拒否する。全員を元の世界にさっさと戻すのが正しい、戻った瞬間に死ぬのもそれが彼らの運命だ、と。
 反発するピーターは、ストレンジの阻止を試みて、戦いを挑む。
 ストレンジは、ミラー・ディメンションを展開して戦闘を有利に進めるも、ピーターの策略によりミラー・ディメンション内のグランドキャニオンに閉じ込められ、更にスリング・リングも奪われてしまう。
 ストレンジとの戦いに勝利したピーターは、訪問者らを治療する為に、メイと共にハッピーのアパートを訪れる。
 ノーマンの助力もあって、オクタビアスのアームの制御チップを作り直して彼の狂気を取り払う事に成功する。が、ディロンの治療の途中で、ノーマンの中のグリーンゴブリンの人格が再び覚醒してしまう。
 グリーンゴブリンの発言で反旗を翻したディロン、フリント、コナーズは逃走してしまった。
 ピーターは、メイを危険から逃がそうとしたが、ノーマンが彼女に致命傷を与えてしまう。
 一方、MJとネッドは、偶然にもスリング・リングを用いてポータルを開く事に成功していた。
 ピーターを呼び寄せようとするものの、現れたのはオクタビアスらの世界(『スパイダーマン』三部作)から来たピーター(ピーター2、トビー・マグワイヤ)と、ディロンらの世界(『アメイジング・スパイダーマン』シリーズ)から来たピーター(ピーター3、アンドリュー・ガーフィールド)であった。
 ピーター2とピーター3は、並行世界が実在し、それぞれに異なるピーター/スパイダーマンが存在する事に驚くが、その事実をあっさりと受け入れる。
 2人のピーターの助言によって、行方をくらましたピーター(ピーター1)を発見。メイを亡くし、戦意を失っていたピーター1だったが、別の世界を生きるピーターらとそれぞれが愛する者と離別した事について語り合う事で、訪問者らを治療して元の世界に帰そうと決意する。
 3人のピーターと、MJとネッドは、改装中の自由の女神にディロン、フリント、コナーズを誘い込んだ。
 オクタビアスが現れてピーター側に加勢した事で、ディロン、フリント、コナーズを元の姿に戻す事に成功した。残るのはノーマンだけとなった。
 その時点でネッドがポータルを開き、ストレンジがミラー・ディメンションから帰還するが、同時に様々な並行世界から「ピーターを知る者」が現れ始める。
 ストレンジは、並行世界の扉を閉じる呪文を開始した。
 ピーター1は挑発してくるノーマンを攻撃し、殺害しようとするが、それを止めたのはかつてノーマンと戦ったピーター2であった。ピーター2はノーマンに刺されながらも彼をかばい、その姿を見たピーター1はピーター3が投げた治療薬を受け取ってノーマンに注射し、正気を取り戻させる事に成功する。
 ピーター1は、制御不能に陥った並行世界の侵蝕を止める為、自身に関する記憶を全ての人々から消し去ってほしい、とストレンジに伝える。最初からそうしていれば、一連の問題は起きていなかっただろうに、と今更悔みながら。
 共に戦ったピーターたち、そしてMJとネッドに別れを告げ、再び出会おうと約束した直後、ストレンジの魔術が行使される。
 訪問者らは各々の並行世界へと帰還し、そしてあらゆる人がピーターに関する記憶を失った。

 2週間後のクリスマス。
 ピーターは、MJとネッドの元を訪れる。
 二人はピーターの記憶を完全に失っていた。
 ピーターは、二人に何とか自分の事を思い出させようとしたが、戦いで負った傷が残るMJを見て、断念する。これ以上二人を危険に晒したくない、と。
 ピーターは、新しく借りたアパートの一室に越し、スパイダーマンとしての自警活動を再開する。

 一方、ひっそりとこの世界に呼び寄せられていたエディ・ブロック/ヴェノム。
 ストレンジの魔術によってエディは元の世界に戻っていくが、彼がいた場所には、ヴェノムのシンビオートの一部が残っていた。



感想

 本作は、トム・ホランド版スパイダーマンシリーズの集大成であるが、それと同時にこれまでの劇場版(トビー・マグワイヤ版、アンドリュー・ガーフィールド版)の集大成にもなっている。
 公開前の情報で、ドック・オックが再び登場する事は知らされており、トビー・マグワイヤ版の敵役がどうやって絡んでくるんだろう、と思っていたが、ドック・オックだけでなく、過去シリーズの敵役全てが再登場。
 物凄い事になっているなと思っていたら、過去シリーズのスパイダーマンまで登場。
 こんな事が出来るのか、と驚かされた。
 トビー・マグワイヤ版、アンドリュー・ガーフィールド版はマーベルスタジオではなく、マーベルから映像権を取得していたソニーが制作したもので、映像権がマーベルスタジオに戻った後に制作されたトム・ホランド版とは全く別の物扱いだった(トム・ホランド版第1弾の副題が「ホームカミング=帰還」だったのも、マーベルコミックスの人気キャラが親元に戻って来たという意味合いも込めていた)。
 しかし、どういう訳か映像権がまたソニーに渡る事になってしまい、マーベルとソニーが揉め、トム・ホランド版は2作で打ち切りになってしまうとの報道が。危機感を抱いたトム・ホランド自身がマーベルとソニーと直接掛け合った結果、トム・ホランド版第3弾は共同制作という流れに。
 共同制作という事で、これまでの劇場版全てが一堂に介せる、という思わぬ効果が得られる運びとなった。
 MCUには、以前のシリーズ作を「並行世界」として扱って登場させられる下地を、意図せず作り上げていた事になる。

 以前の作品では、スパイダーマン1人が1作品1敵役を相手に死闘を繰り広げていたが、本作では前半で1人のスパイダーマンが何人もの敵役を相手にする。
 ピーター1のスパイダーマンが意外と万能で、しかも魔術の助けもあり、敵役を次々捕縛出来てしまうのは、拍子抜けする。
 最強の敵と思われたグリーンゴブリンも、あっさりと捕縛出来てしまった。
 これでもう終わりか、やけに簡単に進んだな、上映時間の残りはどうするのか、と思っていたらピーター自身が横槍を入れて事を複雑にし、折角捕縛した敵役を逃走させ、ピーター2とピーター3を招く事に。
 ピーター1は、年齢設定(18歳前後)の割には言動が小学生レベル。にも拘わらずMITを志望校に出来る程頭脳明晰という事になっている。結局ピーター1は優秀なのか、馬鹿なのか。

 これまでのシリーズ作が登場した敵役がガンガン登場するが、どれも根っからの悪人というより、事情により悪と見なされる方へと歩まざるを得なかった普通の人間ばかり。
 悪である事を自認した上で悪行に手を染める敵と戦うバットマンと比較すると、迫力不足の感は否めない。
 これも、主人公がまだ未成年、という事が関係しているのか。

 トビー・マグワイヤ版が公開されたのは20年近く前になるが、本作で登場した姿が3部作とあまり変わっていない事に驚く。
 アンドリュー・ガーフィールドも、年を食った印象はあるが、老け込んではいない。
 若さの秘訣は何か。

 ウィレム・デフォーがグリーンゴブリンを再演したのは興味深かった。
 デフォーはアクアマンにも出演しているので、マーベル/DCの2大アメコミ実写映画に出演している事になる。
 昔は娯楽映画に出演する俳優のイメージがあまり無かったが、今では欠かせない存在に。
 本人は自身の俳優人生をどう思っているのか。

 ドクター・ストレンジは、魔術を扱える優秀な人物と思いきや、意外と間の抜けた部分がある事を証明。
 ドクター・ストレンジの続編も制作される予定なので、本作はその下地作り、という側面もあった様である。

 ベノムも、エンドクレジットで登場。
 既に2作公開されているが、本作でどういう流れになっていくのか、知りたい様な、知りたくない様な。

 どちらかというとシリアスでダークな作品が多いMCUの中で、スパイダーマンシリーズだけは軽いノリで、底抜けに明るい雰囲気だったが、トビー・マグワイヤ版、アンドリュー・ガーフィールド版が絡んできた事でダークな方向へ。
 シリーズのレギュラーキャラだったメイが死んでしまう。
 トビー・マグワイヤ版の共通テーマである「大いなる力には大いなる責任が伴う」が本作で適用される事に。
 何故ここまでダークな方向へ持っていったのか、分からない。
 このまま続編が制作されると、ひたすらダークな方へと転落するだけの気がするので、トム・ホランド版は本作で打ち止めにするのが適切と思われる。

 マグワイヤもそうだが、他の過去シリーズ出演者からの了解をどうやって得たんだろう、と不思議に思う。
 この手のロングランのシリーズになると、「自分はお子様映画からは足を洗った。もう歳だし、関わりたくない」として、1人くらい拒否する者がいても不思議ではないと思うのだが。
 いずれにせよ、制作会社が異なるヒーローとヴィランが1作で集結出来たのは、凄い事。
 スパイダーマンは今後も制作され続けると思われるが、過去シリーズを集結させるのはほぼ不可能と思われる。流石に出演者らも歳を取っていくし。









Last updated  2022.05.06 20:07:40
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2022.02.20
カテゴリ:洋画

 キングスマン・シリーズ第3弾。
 第1弾と第2弾で登場した独立スパイ機関「キングスマン」の誕生の秘話を描いている。
 舞台は第1次世界大戦の時代なので、第1弾と第2弾の登場人物は一切登場しない。
 主人公を演じるのは、007シリーズにも出演していたレイフ・ファインズ。
 女執事のポリー・ワトキンズを演じるのはジェマ・アータートン。彼女も007シリーズに出演経験がある(007 慰めの報酬のストロベリー・フィールズ役)。
 また、ファインズとアータートンは、2010年に公開された「タイタンの戦い」で共演している。
 原題は「The King's Man」。


粗筋

 1902年。
 英国貴族オーランド・オックスフォード公(レイフ・ファインズ)は、軍人であったが、戦いの日々に嫌気が差し、退役後は赤十字の活動に従事していた。
 オックスフォード公は、第二次ボーア戦争の最中の南アフリカを、赤十字活動の一環として妻エミリー、息子のコンラッド、そして執事のショーラ(ジャイモン・フンスー)と共に訪問。
 訪問先の英国軍基地で、旧友の指揮官キッチナー(チャールズ・ダンス)と、その副官のモートン(マシュー・グード)と面会する。が、敵側のボーア人兵士が放ったライフルの凶弾により、エミリーは命を落としてしまう。

 1914年。
「羊飼い」と名乗る男が、とある断崖絶壁の小屋で会議を開いていた。
 そこではロシアの怪僧ラスプーチン、女スパイのマタ・ハリ、セルビアのテロリストのプリンツィプ、ロシアの革命家レーニン、ドイツのニセ預言者ハヌッセン等、世界を揺り動かす事になる悪名高い人物らが一堂に介していた。
「羊飼い」の目的は、従弟同士となるイギリス国王ジョージ5世、ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世、ロシア皇帝ニコライ2世を反目させ、世界規模の戦争を引き起こす事だった。
「羊飼い」は、集まった各人に、その目的の為に行動を起こす様命じる。

 一方、オックスフォード公はキッチナーの依頼を受け、成人した息子のコンラッド(ハリス・ディキンソン)と共にオーストリア=ハンガリー帝国の皇位継承者フランツ・フェルディナンド大公を護衛する。何者かが大公を狙っている、との情報があったのだ。オックスフォード公は一度は暗殺を未然に防ぐものの、最終的に大公はプリンツィプに射殺されてしまう。
 この事件を引き金に、世界は瞬く間に後に第一次世界大戦と呼ばれるようになる、これまでに無い規模の戦争に突入。戦局はイギリスに不利な方へ、そして敵対するドイツに有利な方へと傾いていく。
 大公の暗殺は単発的な事件ではない、と悟ったオックスフォード公は、女執事のポリー・ワトキンズ(ジェマ・アータートン)に命じて、国家権力に頼らない諜報網の構築を開始した。
 キッチナーは、戦線からの離脱を思い留まる様にと説得する為ロシアに向かっていたが、乗船していた巡洋艦ハンプシャーが何者かが放った魚雷により撃沈されてしまった。
 ラスプーチンが裏で手を引いてニコライ2世に戦線からの離脱を強要していると知ったオックスフォード公は、コンラッド、ポリー、ショーラを引き連れてロシアに潜入。激闘の末、ラスプーチンを始末する事に成功する。これで、ロシアは戦線に踏み留まる事になり、大戦はイギリスにとって有利に運ぶと思われた。
 コンラッドは英国軍に入隊し、ドイツと戦う事を強く希望する様になる。妻を戦闘で失っているオックスフォード公は、息子の考えに難色を示した。結局、コンラッドは父の反対を振り切り英国軍に入隊。
 オックスフォード公の裏からの根回しにより、前線に向かう直前のコンラッドは上官から帰還を命じられる。父の露骨な根回しに反発したコンラッドは、下士官のアーチーと入れ替わり、最前線へと向かう。最前線で、ドイツ側の重要な情報を入手する活躍を見せたが、アーチーと入れ替わった事が仇となり、別の上官からドイツ軍のスパイと誤認され、射殺されてしまった。
 妻エミリーに続き、息子のコンラッドにも先立たれてしまったオックスフォード公は悲嘆に暮れ、酒に溺れるようになってしまう。
 しかし、「羊飼い」率いる組織が動き続けていると知ったオックスフォード公は立ち直り、世界中の諜報ネットワークを駆使してドイツ軍の暗号を読み解く。
 オックスフォード公はアメリカにドイツの陰謀を伝えるが、アメリカのウィルソン大統領はマタ・ハリによる淫行を盗撮され、それをネタに脅迫されていたので、身動き出来なかった。
 オックスフォード公は盗撮フィルムを取り返すべく、ポリーとショーラと共に断崖絶壁にある「羊飼い」の本拠に乗り込む。
「羊飼い」は、キッチナーと共に死んだと思われた副官モートンだった。モートンはイギリス人ではあったが、イングランドを恨んでいて、大英帝国を潰す為に世界戦争を引き起こしたのだった。
 オックスフォード公はモートンを倒し、盗撮フィルムを取り返す。
 盗撮フィルムはウィルソン大統領の元に送られる。脅迫から解放された大統領は、イギリス側に付く形で、第一次世界大戦に参戦。
 その結果、大戦はイギリス側の勝利に終わった。
 しかし、結果的にイギリスは国力が弱まり、ドイツはヴィルヘルム2世が退位して共和制となり、ロシアは革命によりニコライ2世が家族と共に殺害されて共産国となってしまった。
 凶悪な「羊飼い」との死闘を終えたオックスフォード公は、ポリー、ショーラ、アーチーらと共に、サヴィル・ロウにある高級テーラーに、国家権力から独立した諜報機関を新たに設立する。それが「キングスマン」となる。

 一方、モートン亡き後もその組織は死に絶えていなかった。
 組織の生き残りである偽預言者ハヌッセンが前任者の意向を引き継ぐべく新たに「羊飼い」となり、同じく生き残りのレーニンと、新規メンバーの若者を引き合わせる。
 その若者とは、アドルフ・ヒトラーだった。



感想

 人気シリーズとなったキングスマンの第3弾。
 といっても、組織の誕生秘話を描いていて、時系列的には第1弾と第2弾より一世紀近く前の話となる。

 キングスマン・シリーズは、良い意味でも悪い意味でも観る側の期待というか、予測を裏切る。
 第1弾では、キングスマンのベテランメンバーが颯爽と登場し、そのまま最後まで引っ張ってくれるのかと思いきや、中盤で殺されて退場。後半は新規メンバーが引き継ぐ形でクライマックスになだれ込む。
 第2弾では、第1弾で殺されたと思われたベテランメンバーが実は生きていた事が明らかにされる。主人公の座に戻って大活躍するのかと思いきや、以前程の精彩は無く、第1弾の新規メンバーが主人公のままクライマックスになだれ込む。
 今回の第3弾は、父がいかにしてキングスマンという組織を設立し、子に引き継がせたのかを描くのかと思いきや、子は殺されて途中退場。組織は子がいない中で設立される。
 期待や予想をここまで裏切らなくても、と思わないでもない。

 本作の主人公は、結局オックスフォード公、という事になるが、言動に100%共感出来る人物なのか、というとそうでもない。
 戦いばかりの日々に嫌気が指して赤十字の活動に従事する様になった、との事だが、それはあくまでも隠れ蓑で、実は戦いを裏で支える活動をしていた。
 祖国イギリスにとって有利な方向へ運ぶように、と。
 ドイツと敵対するロシア帝国の戦線離脱を阻止する為、オックスフォード公は皇帝に戦線離脱を説いていたラスプーチンを始末。結果ロシアは戦線に居残り、国が疲弊し、革命が勃発して帝政が崩壊し、レーニンにより共産国ソビエト連邦へと移行してしまう。
 アメリカは第一次世界大戦を「欧州の内輪揉め」と見なして参戦に反対する声が大勢を占めていたが、ウィルソン大統領自身は参戦には前向きだった。しかしマタ・ハリによる脅迫で身動きが取れなかった。そこでオックスフォード公はマタ・ハリから情報を絞り出して脅迫の材料となっていた淫行フィルムを奪取。よってアメリカは大統領の望み通り参戦し、多数の若者がアメリカから遠く離れた欧州で血を流す事になる。
 こうして見ると、オックスフォード公が全く行動を起こさなかった方が無駄な血が流れずに済んだのでは、と思ってしまう。 
「羊飼い」の動機も、捻じれた部分はあったが、完全に間違っていた訳ではない、と。
 味方より敵側の動機に何となく共感してしまう点は、キングスマン・シリーズならでは。
 オックスフォード公が最終的に何を狙っていたのかも分かり辛い。
 イギリスの国益の為に動いていた、という割には長引いた大戦でイギリスの世界的地位は落ちていき、その後の第二次世界大戦で決定的に没落するので、オックスフォード公の活動は全くの無駄だった事になる。
 オックスフォード家の名を守る為、にしては、自身の失態で妻も子も亡くしてしまっている。
 戦争の最中の南アフリカを妻子を伴って訪れるなんて、何を考えていたのか、としか言い様が無い。
 残された子に関しては、戦争の最前線に向かわすのを阻止する為に浅かな裏工作で逆に子の反発を買ってしまい、子が自ら最前線に向かう道を選んで命を落としてしまっている。
 オックスフォード公は、結局祖国も家族も守れなかった。

 レーニン、ラスプーチン、マタ・ハリ、プリンツィプ、ヒトラー等、歴史上で悪役扱いされている人物らは実は裏で繋がっていて、組織の指示の下で動いていた、というのは発想としては面白いが、一堂に介して互いと顔見知りだった、というのは無理がある。
 国籍や人種が異なり、母国語も違うので、作中の様に共通語となる英語で会話しているのは違和感しか抱かない。
 それぞれが個々の思惑で対等の立場で協力し合っていた、というのならともかく、「羊飼い」という独裁的な人物の指揮の下で手足となって動いていた、というのもおかしい。
「羊飼い」の動機が全世界を対象としたものだったならともかく、個人的なものに留まっているのだから。
 レーニンらは、「何故お前の個人的な恨みの為に命を懸けて動かなければならないのだ」と疑問に思わなかったのか。

 謎の組織を率いる「羊飼い」の正体が、キッチナーの副官モートンだった、というのも、意外ではあるのと同時に、難点にもなってしまっている。
 組織はレーニン、ラスプーチン、ヒトラー等、歴史に名を連ねる者で構成されているのに、その指導者が歴史上の人物ではない、というのはしょぼ過ぎる。
 動機も、一スコットランド人として、我が物顔で自分らを支配するイングランドやイングランド人を許せなかったという、連合王国イギリス内の揉め事に過ぎなかった。その程度で世界を混乱に陥れるのは、遠回しにやり過ぎ。もっと単刀直入にイングランド内でテロ事件でも起こしていた方が効果的だっただろうに、と思ってしまう。
 キッチナーの副官を務めながら時折イギリス国外の断崖絶壁の小屋に足を運び、メンバーを集めて世界を混乱に陥れる為の会合を開いていた(現在だったらオンライン会議も可能だが)、というのもおかしい。
 キッチナーは、頻繁に休暇(だろう)を申し出る副官を、不審に思わなかったのか。
 モートンがいかにして国籍豊かなメンバーを掻き集めて悪事を働かせていたのか、その資金的バッキングはどうしていたのか等の説明も全くなされていない。
 これくらいの悪事を展開出来る組織となると、相当な資金力が無ければならない(資金力が無かったら人材が集まらない)。となると、「世界中の誰もが知らない悪の秘密組織」として存在する事も出来ない筈。
 その面で、矛盾が生じている。

 本作は、第一次世界大戦前後の史実をベースにしているが、当然ながら史実を捻じ曲げている部分も多い。
 フェルディナンド大公が暗殺された自動車に同乗していた人物が、ラスプーチンの暗殺に加わっていて、しかもマタ・ハリとも直接対決した、というのはいくら何でも無理がある。
 イギリス国王ジョージ5世、ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世、ロシア皇帝ニコライ2世が家系で見ると従弟同士だったのは事実だが、3人が幼少期に一カ所に集まって顔を合わせていた、というのは有り得ない。また、本作の様にあからさまに互いを意識して牽制し合っていたとも思えない。

 キッチナーが乗船していたハンプシャーは実在した軍艦だが、本作の様に魚雷で撃沈されておらず、ドイツ帝国海軍が敷設した機雷に触れて沈没している。

 ラスプーチンは史実でも最終的に暗殺されるが、暗殺したのはイギリスからやって来た貴族ではなく、皇帝ニコライ2世の親族。
 作中と同様、暗殺者らは毒入りの菓子を食べさせて毒殺を試みたが、ラスプーチンがいくら食べても死ぬ兆しが見えなかったので、銃で射殺しようと計画を変更。ラスプーチンは被弾しながらもその場から逃走し、川に転落。間も無く死体となって発見されるが、死因は溺死だったという。
 史実のラスプーチンは本作で描かれた以上の怪人だった。

 マタ・ハリは終始ヨーロッパで活動しており、アメリカ大統領との接点は無い。
 第一次世界大戦中の活動も果たしてどの程度戦況に与えていたのかは不明確で、そもそもスパイだったのかも不明。

 本作では、「一匹狼のテロリスト・プリンツィプは実は「羊飼い」率いる秘密組織の下で動いていた」という風に描かれているが、史実のプリンツィプは一匹狼ではなく、セルビア独立を掲げる組織に属していた。
 その組織はフェルディナンド大公の暗殺を何度も試みており、プリンツィプが偶々というか漸く成功したに過ぎない。プリンツィプより前に別の者が成功していた可能性もあったし、プリンツィプが失敗してもその後に別の人物が成功していた可能性もあった。
 フェルディナンド大公はどっち道何者かに暗殺される運命にあったといえる。
 プリンツィプは犯行時まだ二十歳前とあって、死刑は免れるが、衛生状態の悪い監獄に収監された為、数年後に病死している。
 本作での描かれ方は、狂気に満ちたテロリストだが、セルビアでは第一次世界大戦を引き起こした罪人と評する者がいる一方、セルビア独立のきっかけを作った英雄と評する者もいるという。

 オックスフォード公の情報収集は、世界中の召使を駆使した結果、という事になっている。
 当時は有力者が召使や家政婦や執事を雇うのが当たり前で、そういう者なら外部から潜入するより怪しまれずに正確な情報を得られる、という発想かららしい。
 現在も召使等は起用されているが、昔程ではないし、有力者も滅多やたらに召使を採用しないから、現在のキングスマンはどうやって情報収集しているのか。

 本作は、キングスマンの誕生秘話を描いているが……。
 第1弾ではキングスマンのリーダーが敵側に通じていた事になっているし(だからこそベテランメンバーは内部の裏切りにあって死亡[した事に])。
 第2弾では、麻薬組織によるミサイル攻撃で壊滅状態に陥る。
 キングスマンは創立当初の目標から逸脱している。
 オックスフォード公は、自分が誕生させた組織の行く末をどこまで予見していたのか。
 国を守れず、家族も守れず、設立した組織もレガシーにはなっていない。
 やる事成す事全てが無駄だった、という主人公も珍しい。









Last updated  2022.03.02 23:49:48
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2021.10.24
カテゴリ:洋画

 007シリーズ第25作目。
 ダニエル・クレイグ演じる6代目ボンドの最終作との事。
 敵役を演じるのはラミ・マレック。
 レア・セドゥが引き続きボンドの恋人マドレーヌを演じる。
 他に、レギュラーとしてベン・ウィショー、ナオミ・ハリス、レイフ・ファインズ、ジェフリー・ライトが出演する。
 ボンドウーマンとして、アナ・デ・アルマスとラシャーナ・リンチも出演。
 監督はキャリー・ジョージ・フクナガ。
 原題は「No Time to Die」。


粗筋

 当時まだ子供だったマドレーヌ・スワンは、母親と暮らしていた。
 母親は酒浸りの廃人で、マドレーヌが世話している状態だった。
 そんな中、覆面を付けた侵入者が訪れる。母親に対し、お前の夫はどこだ、と問いただす。
 その夫とは、国際テロ組織スペクターのメンバーであるミスター・ホワイトだった。
 侵入者はリューツィファー・サフィンという男で、幼い頃ミスター・ホワイトに家族を殺害され、その復讐にやって来たのだった。
 母親は、夫がどこにいるかなんて知らない、興味も無い、と正直に答える。
 サフィンは、母親を殺害した後、マドレーヌを狙う。
 マドレーヌは、子供ながらもサフィンを射殺。
 マドレーヌは、サフィンの死体を氷の張った湖にまで引きずっていき、処分しようする。
 その時、死んでいたと思っていたサフィンが息を吹き返す。
 マドレーヌは氷の張った湖を渡って逃げようとするが、氷が割れ、湖に落ちてしまう。
 サフィンは、どういう訳か、溺れそうになっていたマドレーヌを救った。
 
 それから何年も経った後。
 スペクターとの戦い後、現役を退いたボンド(ダニエル・クレイグ)と、マドレーヌ(レア・セドゥ)は、イタリアにて静かな生活を送っていた。
 ボンドは、マドレーヌに促され、かつて愛したヴェスパー・リンドの墓を訪れる。そこで、スペクターの紋章が描かれた一枚の紙を見付ける。それを確認しようとした直後に墓が爆発し、謎の傭兵プリモに襲撃される。ボンドは何とかその場を逃れ、マドレーヌの下に戻る。プリモらは、尚ボンドを追い続けるが、どうにか相手を撒く。
 ボンドがイタリアにいて、しかもヴェスパーの墓を訪れる事を知っていたのはマドレーヌしかいなかったので、ボンドはマドレーヌが裏切ったと信じ込み、彼女と決別する。

 5年後。
 ボンドはジャマイカで単身で穏やかな日々を過ごしていた。
 そんなある日、旧友のCIA局員フィリックス・ライターがやって来て、誘拐されたロシアの細菌学者ヴァルド・オブルチェフを救い出してほしいと依頼する。
 オブルチェフはイギリス諜報局MI6の管理下にある施設で働いていたが、そこが何者かに襲撃され、オブルチェフが細菌兵器と共に連れ去られたという。
 MI6の管理下にあったのなら、MI6がオブルチェフ救出に動き出すべき、とボンドは言う。
 ライターは、MI6も動いているが、現在CIAとMI6はあまり仲が良い訳ではなく、オブルチェフをMI6から引き離したい、と素直に認める。
 既に引退して何年も経っているボンドからすれば、今更スパイ合戦に巻き込まれたくなかったので、協力を拒否する。
 その直後に、黒人女性がボンドと接触。ボンドが引退した後に「007」の番号を引き継いだノーミ(ラシャーナ・リンチ)だった。ノーミは、オブルチェフはMI6が救出するから手を出すな、とボンドにくぎを刺す。
 そもそもオブルチェフはMI6の為に何をやっていたんだ、とボンドが問いただすと、オブルチェフはプロジェクト・ヘラクレスの為に研究を進めていた、と認める。
 ボンドは、プロジェクト・ヘラクレスが細菌兵器の研究である事を知っていた。当時の上司Mに対し、計画は中止すべきだと進言しており、Mもそれに賛同していた筈だった。
 ノーミが去った後ボンドはライターに対し、協力する、と連絡を入れた。
 ボンドは、オブルチェフがいるとされるキューバへ飛ぶ。そこでスペクターの会合が開かれ、オブルチェフも引き渡される、という情報を得ていたからだ。
 ボンドは、CIAキューバ支局の新人女性工作員のパロマと共に、スペクターの会合が開かれるホテルに潜入する。
 スペクターの指導者であるブロフェルドは、イギリスの監獄にいたが、通信機付きの義眼を経て会合に遠隔で参加していた。ボンドが潜入している事も承知しており、オブルチェフが開発した細菌兵器でボンドを殺そうとする。
 が、細菌兵器はボンドではなく、会合に出席していたスペクターのメンバーらを狙い澄ましたかの様に殺した。
 ホテルは大混乱に陥る。
 ボンドは、自分が何故無傷なのか、誰がどういった理由でスペクターを全滅させたのか分からないまま、オブルチェフを探す。
 そこにノーミが現れ、一旦はオブルチェフを捕らえるものの、ボンドとパロマが奪還。
 ボンドは、パロマに見送られ、オブルチェフを連れてキューバの沖にある船に向かう。
 船で、ライターと、同僚のアッシュが出迎える。
 ボンドはオブルチェフをライターに引き渡す。が、同僚のアッシュは、サフィンの組織に通じていた。アッシュはライターに致命傷を与え、オブルチェフを連れ出して船から逃げる。ボンドは、ライターの死を見取り、命辛々船から脱出した。
 ボンドはイギリスに戻り、元上司のMと対面し、状況の説明を要求する。
 Mは、オブルチェフとプロジェクト・ヘラクレスについて話す。
 プロジェクト・ヘラクレスは、特定の人物だけを殺す様にプログラムされた細菌兵器の開発プロジェクトだった。この細菌兵器を使えば、大勢いる中で散布して殺害したい人物だけを殺す事が可能になる。標的以外の者にとっては無害なので、標的と接触するであろう者を感染させ、後々接触した時点で標的を殺す事も可能になる。
 イギリス政府からすれば、味方の犠牲を最小限に食い止めながら敵には大打撃を与えられる究極の兵器だった。
 オブルチェフは、その研究開発の中心メンバーだった。
 ボンドは、オブルチェフが裏切らないという保証は何も無い、と反論。仮に研究開発が上手く運んだとしても、そこから先の運用が上手くいく訳が無い、だからこそ計画を中止しろと進言したのだ、と。
 Mは、元一諜報員に過ぎないボンドに説教される筋合いは無い、とにべもなく言う。
 ボンドは、ブロフェルドなら何か知っている筈だと主張し、会わせろと要求。
 Mは、その要求を受け入れるしかなかった。ただ、ブロフェルドと正式に会えるのはある一人の人物だけなので、そいつと同行しろ、という。
 その人物とは、精神科医となっていたマドレーヌだった。
 マドレーヌがブロフェルドと会う直前に、サフィンが彼女と接触。
 サフィンは、割れた覆面を見せ、子供の頃、お前の命を救ったのは自分だ、だから自分の言う通りにしろ、と要求。
 マドレーヌは、その要求に応えるしかなかった。
 ボンドは、マドレーヌと久し振りに再会。
 関係はとっくに終わっている、と互いに強がって見せるが、戸惑いは隠せなかった。
 共に、ブロフェルドのいる施設へ向かう。
 が、マドレーヌは、ブロフェルドが姿を現す直前になって、矢張り面会出来ない、と退室。
 ボンドは、ブロフェルドと一対一で対面する。
 ボンドは、キューバでの出来事について問う。
 ブロフェルドは、あそこでボンドを殺す予定だったが予想外の事が起きた、と認める。そして、5年前の事についても語る。
 ヴェスパーの墓を爆破してボンドを殺そうとしたのは事実だが、その後の出来事には関与していない、と言う。また、マドレーヌは裏切っておらず、ただ純粋にお前にヴェスパーの墓を訪れて過去を洗い去ってほしかっただけだった、とも言う。マドレーヌがお前を裏切った様に見えて、その結果関係が破綻したのは自分にとって幸いだった、と。
 ボンドは冷静さを失い、ブロフェルドの首を締め上げる。
 その時点で、ブロフェルドはキューバのスペクターのメンバーらと同様、細菌兵器により死ぬ。
 サフィンは、事前にマドレーヌを細菌兵器に感染させた。マドレーヌがボンドに触れた時点で、ボンドが感染。ボンドがブロフェルドを締め上げる為触れた結果、ブロフェルドを殺す様プログラミングされた細菌兵器が効力を発揮したのだった。
 Mは、ノーミに裏切り者のアッシュを追跡しろと命じ、ボンドにはマドレーヌを探せと命じた。
 ボンドは、マドレーヌがいるノルウェーの家に向かう。
 そこで、マドレーヌが出迎える。
 ボンドは、自分を裏切ったと勘違いしてしまった事を謝罪し、以前の関係に戻れないかと提案するが、そこに幼い少女が現れる。5歳になるマドレーヌの娘マチルドだった。
 マドレーヌは、マチルドはあなたの子供ではない、という。
 ボンドは、失った5年間の大きさを今更思い知る。
 それでも、ボンドとマドレーヌは和解する。
 翌日、ボンドはMI6に連絡を入れる。すると、ノーミがノルウェーに入国したと知らされる。アッシュを追っている筈のノーミが何故ノルウェーに、と疑問に思ったが、その意味に気付いて愕然とする。アッシュが自分らに迫ってきている、と。
 ボンドは、マドレーヌとマチルドを連れて逃げようとするが、アッシュが傭兵らと共に迫ってきた。
 アッシュらを森林に誘い込んだボンドは、アッシュらを始末する事に成功するが、その隙にマドレーヌとマチルドがサフィンに攫われてしまった。
 その時点で、アッシュを追っていたノーミが合流。
 ボンドとノーミは、サフィンが向かったある島へと向かう。
 その島は、日本とロシアが領土権を主張する島だった。サフィンは、そこで生まれ育ったのだった。オブルチェフもここにいる事が判明する。
 ボンドとノーミは、島に潜入。
 島はまるごと細菌兵器の工場となっていた。
 ボンドはノーミにオブルチェフを探させ、自身はマドレーヌとマチルドを探す。
 待ち構えていたサフィンは、自身の野望について語る。ここで製造した細菌兵器を使って人類の大半を殺戮する、と。
 ボンドは隙を狙って、マドレーヌとマチルドを救出。二人をノーミに預け、島から先に脱出するよう、命じる。自分は工場を破壊して、細菌兵器を始末する手続きを取る、と。
 近海に、英国海軍軍艦が接近していた。それに巡航ミサイルを発射させ、工場を爆破させる、という計画を立てる。しかし、工場は地下深くにあるので、外へ通じる扉を開いておく必要があった。
 ボンドは、扉を開閉する制御室へ向かい、扉を開く事に成功。あとは巡航ミサイルに任せるだけとなった。ボンドはMに連絡し、巡航ミサイルを発射させる。
 ボンドは島から脱出しようとするが、扉が遠隔操作で閉じてしまう。
 ボンドは制御室に戻ろうとするが、サフィンが立ち塞がった。
 ボンドは格闘の末サフィンを倒す。が、その前にサフィンはボンドを細菌兵器に感染させてしまう。これにより、ボンドは自身と血の繋がりのある者と接触すると、その者を死なせてしまう体質になってしまった。
 制御室に戻り、扉を再び開く事に成功。
 ボンドは、島から脱出していたノーミとマドレーヌに連絡を入れる。自分が島から脱出するのはもう無理だ、と告げる。
 マドレーヌは、マチルドがボンドの子である事を伝える。
 仮に無事脱出出来、マドレーヌらと再会出来たとしても、マチルドと接触したら死なせてしまう。
 自分は結局普通の幸せな家庭を築く運命ではないと悟ったボンドは、マチルドに別れを告げる。
 その直後、巡航ミサイルが爆発し、島全体を飲み込んだ。

 数日後、MI6でM、Q、マネーペニー、そしてノーミは、死んだボンドを悼む。

 マドレーヌは、車中で、マチルドに対し、父親であるボンドについて語り始めた。



感想

 15年間という、歴代の中で最も長い間ボンド役を務めたダニエル・クレイグの007の最終作(15年間にもなってしまったのは、作品の公開の間隔が開いてしまったり、本作の様に作品自体は完成したもののコロナウィルスにより公開が延期され続けた、という事情もあるが)。
 クレイグ出演の007シリーズ作は、ボンドが007に成り立ての頃から最期までを描くという、これまでに無い試みとなった。
 ただ、本作を機にクレイグが降板するだけにも拘わらず、007シリーズそのものの最終作の様になってしまっているのはどうかね、と思わないでもない。
 クレジット後のメッセージ「JAMES BOND WILL RETURN」を観て、どう思えばいいのか分からなくなってしまった。

 制作側の事情も複雑。
 ダニエル・クレイグの007が制作される直前に007シリーズを長年手掛けてきたMGMがソニーに買収され、クレイグの007シリーズ作はソニーの映画として制作されてきた。
 が、ソニーがMGMをユニバーサルに売却し、暫く続いていたライセンス契約も切れてしまった為、本作は完全にユニバーサルの映画として制作されている。
 何故ソニーがMGMを手放したのか、よく分からないし、冒頭でMGMの他にユニバーサルのロゴが現れたので、訳が分からなかった。
 ユニバーサル傘下となった007シリーズが、今後どう展開するのかも心配である。オープニングシークエンスが、ここ数作は無かったガンバレルのものだったので(クレイグ007シリーズでは初だと思う)、原点回帰も期待させるが。

 本作は、ボンドがMI6を引退した後の出来事が得られている。
 MI6もボンドという一諜報員に関わっている訳にもいかないので、別の人物(黒人女性)に「007」のコードナンバーを与えてしまっている。
 そんな訳で、本作のボンドは、正式には「007」ではない事になっている。
 
 前作のSPECTREで事実上終わったダニエル・クレイグの007シリーズを、無理矢理続行させたのが本作。
 したがって、倒した筈のテロ組織SPECTREは健在で、主導者のブロフェルドも再登場。
 といっても、ボンドが再びSPECTREと戦わせるのはおかしいと判断されたからか、SPECTREを壊滅に追い込む別のテロ組織を登場させている。
 本作の最大の問題がここ。
 SPECTREを上回る極悪テロ組織の筈なのに、存在感がまるで無い。
 ボンドを苦しめるのは確かだが、薄っぺらく見えてしまう。
 主導者のサフィンも、ストーリーの流れからするとブロフェルドをも上回るヴィランの筈なのに、その凄さが伝わってこない。
 細菌兵器をバラまいて人類を滅亡させると豪語するが、その動機も特に説明されず、「出来そうだからやってみた」という程度になってしまっている。
 サフィンを演じたラミ・マレックは、ボヘミアンラプソディーで主人公のフレディ・マーキュリーを演じ、アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞しているから、007シリーズのヴィランにするには勿体無いくらいの輝かしい経歴を持つ俳優。しかし、本作ではその演技力が活かされた感じがしなく、残念。
 折角ブロフェルドを再登場させているのだから(すなわち演じる俳優のスケジュールを押さえる事が出来た)、全く新しい敵役や組織を登場させるのではなく、ブロフェルドが脱獄してSPECTREに復帰し、ボンドに襲い掛かる、という展開にした方が良かった様に思えるが(襲い掛かる実行部隊のリーダーとしてラミ・マレックを起用するとか)。

 本作では、ボンドウーマンともいえる女性が3人登場(「ボンドガール」は、政治的に正しくない事になっている)。
 メインが、前作にも登場したマドレーヌ。
 2作続けて登場し、重大な役割を果たすのは、50年間にも及ぶシリーズの中で、初かも。
 ただ、引退したボンドが結婚を真剣に考えるくらい魅力的な女性という設定の割には、観ている方からするとそこまで惚れ込むかね、というレベル。
 冒頭で、ボンドは自分を裏切ったと勝手に信じ込み、彼女をあっさり捨てている。が、見方によっては、そもそも飽きていて別れようかどうか迷っていた所、事件が発生したので、それを口実に別れた、という風にも映る。

 その次に登場するボンドウーマンが、CIAのキューバ支局の工作員パロマ。
 クレイグ007シリーズにしては場違いに感じる程能天気なキャラ。ブロスナン007シリーズや、その前の前のムーア007シリーズに登場していても不思議ではない。何故シリアス一辺倒のクレイグ007シリーズで、こんなキャラが登場する事になったのか、不思議に思う(これも、配給会社がソニーからユニバーサルに移った影響か)。
 しかも、ボンドの足手纏いになるのではと思いきや、戦闘力があり、機転も効く、非常に優秀な工作員である事を示す。
 新007のノーミを出し抜き、オブルチェフとボンドをキューバから脱出させる、というミッションを見事に完遂。
 もしかしたら007シリーズでは当たり前になっている「犠牲者の女性」になってしまうのではと恐れていたが、そんな事は無く、「私の役目はここまで。じゃ、さようなら」とボンドを送り出して元気に退場。以後、再登場しない(映画ポスターではかなりしっかりと描かれているので、前半でしか登場しないキャラだと思っていなかった)。
 ストーリー的には「犠牲の女性」にならなかったが、「再登場してもらいたいのに結局再登場しない」という、製作上の「犠牲の女性」になってしまった。

 3人目のボンドウーマンが、MI6で「007」のコードナンバーを引き継いだノーミ。
「00」局員だから、ボンド程でないにせよ優秀な工作員なんだろうなと期待させるが、その優秀さが全く見られない。
 パロマが痒い所に手が届く面白いキャラだとすると、ノーミはひたすら痒い所に手が届かない残念なキャラ。
「00」局員になったばかりで、まだ不慣れな部分があり、それを自分も認めている、というキャラ設定にしていれば、まだ同情出来たのに、何故か「自分はボンド同様に優秀」という自意識過剰さが目立ってしまい、鼻につく。
「何故この程度の工作員が『007』を引き継げたんだろう」と疑問に思ってしまった。
 彼女こそ「犠牲の女性」になってくれればスッキリするのに、と思ったが、それも叶わず、最後まで生き延びる。

 仮に本作でスピンオフの制作が決まり、パロマかノーミのどちらかを主人公とするとなったら、自分は迷わずパロマを主人公にしたものが観たい、と思うだろう。
 スピンオフの可能性は無いだろうけど(過去にも何度か可能性が探られた様だが、結局制作には至っていない)。

 本作では、「犠牲」になるのは女性ではなく、セミレギュラーキャラのフェリックスだった。
 クレイグ007シリーズで、ボンドは「身近な女性を守り切れない」と敵に揶揄されてきたが、本作では登場するボンドウーマン全てが最後まで生き残る。
 本作でボンド本人が命を落とすのは、皮肉と言える。

 ヴィランはサフィン、という事になっていて、ボンドも彼を阻止する為に行動するが、一番のヴィランはMだった様な。
 Mがボンドの進言通り細菌兵器開発を止めていれば、今回の出来事は無かったと思われ、人類が存亡の危機に瀕する事も無かった。
 少なくとも、ボンドが引退生活から借り出されて命を落とす事は無かっただろう。
 にも拘らず、責任を取って辞任等するのかと思いきや、ラストでボンドを悼んだ後、「さ、次の仕事だ」と何事も無かったかの様にMI6長官の座に居座るのは、納得がいかない。
 自分の失態をボンドに尻拭いさせ、ボンドを見殺しにして全てを隠滅する様、手続したとしか映らない。
 最近の映画の傾向は「世界征服を企む極悪組織より、世界の秩序を守るという名目で暴走してしまう政府組織が人類にとって最大の敵」となっていて、本作も例外ではない。

 007シリーズはブロスナンの頃からプロダクトプレイスメントが顕著だったが、本作はアストンマーチンの広告か、と思ってしまう程アストンマーチンがこれでもか、と登場する。
 冒頭では兵器満載のDB5が登場。
 走行する場面は無いが、ヴァルハラがMI6の装備として登場する。
 また、作中中頃で、ボンドは旧型のV8ヴァンテージを乗り回している。
 ノーミは、DBSスーパーレッジェーラを乗り回していた。
 アストンマーチンがここまで登場させるのにどれだけの制作費を負担したのかね、と思ってしまう。
 MI6を引退した筈のボンドが、兵器満載のDB5を乗り回し、搭載されたマシンガンでバンバン敵を倒して大丈夫なのかね、と後々考えて思った。
 DB5やDBSスーパーレッジェーラも悪くないが、何だかんだでV8ヴァンテージが一番格好良く映った。

 本作の監督を務めたのはキャリー・ジョージ・フクナガ。
 日本では、「初の日系人007監督!」として話題に。
 ただ、フクナガ氏は日系4世。イギリス人、ドイツ人、スウェーデン人の血も受け継いでいるとの事なので、家系的に偶々日本人の名字になった、というだけであって、「自分は日系人」の意識は薄いと思われる。
 ……と、言いたくなるが、本作は最後の舞台が日本とロシアが領有権を主張している島となっている。日本人キャラこそ登場しないが、日本的な要素がここぞと盛り込まれている。
 サフィンとボンドが対面する部屋には、何故か畳が敷かれていたし。
 監督の意向というより、これまでの007の集大成として歴代のシリーズ作を連想させる要素が随所に盛り込まれる事になった結果、敵役の基地が「007は二度死ぬ」のオマージュになった可能性が高いが。

 過去作品のオマージュを盛り込んだせいか、上映時間は2時間43分と、シリーズ最長になってしまっている。
 当然ながら中だるみする場面も。
 もう少し短く出来なかったのかね、と思った。

 007シリーズは50年間にも亘って制作されているので、その時代や流行を反映させる事で生き延びてきた。
 クレイグ007シリーズでは、Qが同性愛者という設定になったり、CIA局員のフェリックス・ライターが黒人になったり、ボンドの後を引き継いだ007が黒人でしかも女性になったりしているが、それらも時代を反映した為。
 シリアス路線一辺倒なのも、それ以外が求められていない時代になってしまったからといえる。
 時代に沿うのは仕方ないかも知れないが、クレイグ007シリーズの様に、過去のシリーズ作を完全否定してまで時代に寄り添うようになると、それはどうかね、と思ってしまう。

 クレイグ007シリーズ作は、世間的には評価が高かった様だが、個人的にはひたすらイマイチだった。
 やっと終わってくれた、とホッとするのと同時に、今後はどうなるんだろうと心配してしまう。
 原点回帰を期待させる部分も観られるが、世間がそれを許すかも不明だし。
 次の作品によっては、「ダニエル・クレイグも何だかんだで悪くはなかった」と思う様になるかも。










Last updated  2021.10.24 15:34:38
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2021.10.23
カテゴリ:洋画

 1984年に公開されたSFアクション映画『ターミネーター』の続編で、「ターミネーター」シリーズの第2作目。
 第1作と同じくジェームズ・キャメロンが監督を務めた。
 出演は、アーノルド・シュワルツェネッガー、リンダ・ハミルトン、ロバート・パトリック、エドワード・ファーロング。
 原題は「Terminator 2: Judgment Day」。


粗筋

 1990年代中頃のロサンゼルス。
 サラ・コナー(リンダ・ハミルトン)は、1997年に人工知能スカイネットと人類間の核戦争「審判の日」を阻止する為と称して、後にスカイネットを開発する事になるサイバーダイン社への爆破未遂事件を起こした罪で、精神病患者として警察病院へ収監されていた。
 サラとカイル・リースとの間に生まれた息子のジョン(エドワード・ファーロング)は、養父母に引き取られていた。
 ある日、2体のターミネーターが未来から送り込まれる。
 1体はT-800モデル101型(アーノルド・シュワルツェネッガー)、もう1体は変形自在の液体金属で構成されたT-1000型(ロバート・パトリック)だった。
 2体はそれぞれ共通の目標であるジョンを捜索し、ショッピングモールにいた彼を同時に発見する。T-1000の襲撃からジョンを救ったのは、かつてサラを襲ったT-800だった。T-1000の追撃を振り切った後、T-800は未来のジョンが過去の自分を守る為、鹵獲したT-800を再プログラムしてこの時代へ送り込んだ、と告げる。
 T-800やT-1000の出現により、与太話だと思っていた母親の話が全て真実だったと知ったジョンは、母親の下へ向かおうとするが、T-800は反対する。T-1000はその行動を当て込んでサラの下へ向かっているだろう、と。T-800は、このまま逃走するよう、進言する。ジョンは、T-800が自分の命令を聞くよう、再プログラミングされていると知り、T-800に対し、母親の下へ向かうよう、命じた。T-800はその命令に応じるしかなかった。
 その頃、警察病院では刑事がやって来て、サラにショッピングモールで撮影されたT-800の写真を見せた。こいつは1984年に警察署で十数人の警察官を殺戮した奴とそっくりだ、何か知っているだろう、と。サラは、息子と自分に危機が迫っていると悟りながらも、白を切る。彼女が病室を抜け出して脱走を図っていたところで、ジョンとT-800、そしてT-1000が現れる。
 サラを保護してT-1000から逃れたジョン一行は、メキシコへの逃亡を図る。
 かつて自身を襲ったターミネーターと同型であるT-800を信用出来ないサラだったが、ジョンがT-800と交流する様子を眺めている内に、このT-800こそジョンの保護者として相応しい、と考えを改める。
 T-800から、サラは、後のスカイネットとなるシステムを開発するサイバーダイン社の技術者マイルズ・ダイソンの存在を知らされる。
 ダイソンさえ殺害すれば、「審判の日」は起こらなくなると思い込んだサラは、単身でダイソン宅に侵入し、彼の殺害を試みる。
 しかしダイソンは、未来の事は何も知らずに家族と平和に暮らす一技術者に過ぎず、サラは殺害を躊躇する。
 母を追って来たジョンは、サラに殺害を断念させると、ダイソンに対しこれまでの経緯を説明する。
 ダイソンは、ジョン一行の話を信じられなかったが、目の前のT-800が、勤務先の研究所で残骸として保管されているターミネータと同じである事を見せ付けられ、信じざるを得なくなった。
 その時点で、ジョン一行は、ダイソンの研究がかつてサラの命を狙いながらも破壊された最初のターミネーターの残骸に基づいている事を知る。
 ジョン一行は、ダイソンに研究を放棄するよう、説得した。
 ダイソンは、自分の研究が全人類に悲劇をもたらすくらいなら放棄するのは構わない、とあっさりと同意する。
 あとは、最初のターミネータの残骸を処分すれば「審判の日」は確実にやって来ない、と考えたジョン一行は、ダイソンを伴ってサイバーダイン社へ侵入。警官隊に包囲される中、一行は研究の全てを破壊し、保管されていた最初のターミネーターの部品を持ち出す事に成功。しかし、ダイソンは命を落としてしまった。
 サイバーダイン社から逃走するジョン一行に、T-1000が迫っていた。カーチェイスの末、一行は製鉄所へ逃げ込む。
 T-1000は、ジョン一行を追い詰めるものの、最後の力を振り絞ったT-800により溶鉱炉へ突き落とされる。T-1000は溶解し最期を迎えた。
 ジョンは、サイバーダイン社で奪った最初のターミネータの右腕とマイクロチップを溶鉱炉に放り込んで始末する。これで全て終わった、「審判の日」はやって来ない、と。
 が、T-800は言う。それだけでは終わりにはならない、なぜなら自分にも同じマイクロチップが内蔵されている、それも始末しなければならない、と。
 それは、ジョンとT-800の別れを意味した。
 ジョンは拒むが、やるべき事はやらなければならない、とT-800は彼を説得。
 ジョンとサラは、T-800を溶鉱炉に下ろしていく。
 T-800は、ジョンに対し最後の挨拶をした後、溶鉱炉の中に消えた。
「審判の日」を回避出来たサラは、将来は一切不明になったものの、希望の光を見出す。



感想

 本来は第1作で完結していたターミネーターだったが、出演していたアーノルド・シュワルツェネッガーの人気上昇に伴い、続編が制作され、いつしかシリーズ化。
 未来から殺人ロボットを当たり前の様に過去にガンガン送り込める様になってしまい、第1作の有難味が薄れてしまった。

 無敵の殺人ロボットを演じていたシュワルツェネッガーは人気俳優になり、善の役を演じる事が多くなってしまった為か、「今更悪役はやりたくない」と言い出したらしい。本作では同型のロボットを味方が再プログラミングして過去に送り込んだ、という捻り技を講じる事を強いられている。
 続編にも拘わらず役柄が逆転。
 シュワルツェネッガー演じるアクションが観られるなら、第1作の設定なんてどうでもいい、という事かも知れないが、通してみると違和感を抱かずにはいられない。
 ただ、感情の無いロボット、という役柄なので、シュワルツェネッガーの演技は自然に映る。

 第1作では悪役を演じていた俳優が善の役に回ってしまった為、悪役をどうするかとして捻り出したのが、前作の殺人ロボットの進化版。
 演じるのはロバート・パトリック。
 ボディビルダーだったシュワルツェネッガーと同じ様な体格の俳優を確保するのが困難だった為か、あえて痩躯の俳優を起用。
 体格に劣る分、シュワルツェネッガー演じるロボット以上に危険な存在、という事に説得力を持たせる為、ロバート・パトリックはひたすら目線だけで演技。この演技がはまり役になってしまい、以後似た様な役柄を演じる羽目になってしまった。
 ロバート・パトリックにとって、本作に出演した事が良かったのか、悪かったのか、分からない。

 リンダ・ハミルトン演じるサラ・コナーは、第1作ではこれといった才能の無い芋娘だったが、本作では暴力的な「戦う女」に。
 第1作で死闘を繰り広げたのは事実だが、ここまで変わるか、という変貌振り。
 個人的には、サラが相も変わらず無力な芋娘だった、となっていた方が良かった気がする。

 サラ・コナーの息子で、将来スカイネットと対抗する人類を率いるジョン・コナーを演じるのは、エドワード・ファーロング。
 将来人類を率いるとされる人物も、この時点ではただの不良少年。
 悪ぶっているものの、所詮子供なので、言動が幼稚。
 本当に人類を救うリーダーになるのか、と思ってしまう。
 演じたエドワード・ファーロングは、他の数多くの子役と同様、成人してからは廃人同然になってしまう。
 キャメロンが自ら築いたシリーズをリセットする目的で2019年に公開した「ターミネーター:ニュー・フェイト」では、ファーロングの若い頃の顔をCGで別の俳優に張り付けて、ほんの数カット登場するだけに留まる。ニュー・フェイトではジョン・コナーはあっさりと殺され、「将来人類を率いるリーダー」という展開も無かった事になってしまう。
 第1作が完全に否定された事になる。
 ファーロングが漸く大人になって、「将来人類を率いるリーダー」を説得力ある形で演じられる状況が整っていたというのに、残念。

 スカイネットを開発する事になるマイルズ・ダイソンは、ジョン一行に説得され、研究を放棄する。
 研究を全て始末して、「審判の日」の阻止に貢献するが、爆死する。
 家族を残して。
 ダイソン一家からすれば、ジョン一行はひたすら迷惑な存在だった。
 ジョン一行に協力する事を拒否していれば、もう少し幸福な暮らしが出来ていたかも知れない、と思ってしまう。

 観た後、改めて振り返ると、ストーリー上に問題点が。
 一番目立つ問題点が、折角最初のターミネーターの残骸を処分したのに、今回のT-800を完全に処分していない事。
 T-800とT-1000は製鉄所で最後の戦いを繰り広げるが、その際、T-800は腕を機械に挟まれ、動けなくなってしまう。そこで、T-800は機械に挟まれた腕を残して戦いを続ける。残された腕は、結局処分されていない。
 サイバーダインは、最初のターミネーターの腕は失ってしまうが、またまた新たな腕を得た事になる。
 腕だけでどこまで技術を抽出出来るかは不明だが、全く手立てが無い、という訳でもない事になってしまった。

 当時のCG技術では最先端だった液体金属のロボットを誕生させる等、最新技術を惜しげも無く投入して撮影された映画らしいが、一方でアナログな撮影技法も多かったらしい。
 ラストで、サラと、サラに変形したT-1000が1カットで同時に現れる、というシーンがあったが、合成でサラを二人登場させたのではなく、リンダ・ハミルトンの双子の姉を起用して演じさせている。
 また、別のシーンで精神病院の警備員が、自分とそっくりの姿になったT-1000を見て驚く、というのがあったが、ここでも合成ではなく、双子に演じさせたという。
 SFXとアナログを上手く組み合わせた、古き良き時代の映画、と言えなくもない。

 第1作が制作された1984年の時点では、審判の日が起こるとされた1997年はまだまだ先の話だったが、今となってはとうの昔の日付になってしまっている。
 現実の「未来」の世界が、映画通りにならなかったのは幸いだが、一気に時代を感じさせる要因になっている。
 そもそも、コンピュータが人型ロボットを生産させて人類を壊滅に持ち込む、というのも「未来」ぽさを感じさせない。
 何もかもオンラインで済ませるのが当たり前の現在では、機械は最早アナログの象徴。
 人類がコンピュータ制御された機械と戦い合うという発想が古くなる、なんて1984年の時点では想像も出来なかったと思われる。

「ターミネーター:ニュー・フェイト」により、第1作の制作者であるキャメロンがシリーズをリブートというか、リセットしてしまっているので、本作で繰り広げられた死闘は意味の無いものになってしまっているのが、最大の不満。
 元のクリエイターがシリーズを必ずしも良い方向に持って行ってくれる訳ではないという、数ある例の一つになってしまった。
 リンダ・ハミルトンもシュワルツェネッガーも結構歳がいっているので、シリーズは打ち止めでいいと思う。


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Last updated  2021.10.23 13:49:10
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2021.09.02
カテゴリ:洋画

 1980年に公開されたホラー映画。
 スティーブン・キング原作の同名小説をスタンリー・キューブリックが映画化。
 ジャック・ニコルソン、シェリー・デュヴァル、ダニー・ロイドが出演する。
 原作者からは酷評されてしまい、公開時は必ずしも高い評価を得てはいなかったが、徐々に世間での評価は高まり、現在ではホラー映画の傑作と見なされている。
 ただ、原作者の評価は相変わらず低い。
 原題は「The Shining」。


粗筋

 コロラド州のロッキー山上にあるリゾートホテルのオーバールック・ホテル。
 営業は春から秋までで、冬季は閉鎖される。最寄りの都市まで道が1本しかなく、40キロにも及ぶその道を冬季も通行可能な様、定期的に除雪するとなると採算が取れなくなってしまうからだ。
 完全に無人にする訳にはいかなかったので、管理人を雇い、住まわせていた。豪雪で一本道が通行不能になる為、管理人は場合によっては数カ月間孤立状態での生活を強いられる事となる。
 元教師のジャック・トランス(ジャック・ニコルソン)は、管理人の仕事の面接を受ける。
 ホテル支配人は、「管理人の仕事は難しいものではないが、人によっては孤立状態が精神的苦痛になる事もあるので、大丈夫か」と問いただす。過去に、管理人として採用したグレイディという男が、孤独により精神に異常をきたし、家族を斧で惨殺し、自殺する、といういわく付きの物件でもあったからだ。
 が、ジャックは自分は小説家志望であり、執筆には寧ろ孤立状態が望ましいので、ぜひとも採用してほしい、と告げる。
 よって、ジャックは管理人として採用された。
 ホテル閉鎖の日、ジャックは妻のウェンディ(シェリー・デュヴァル)、一人息子のダニー(ダニー・ロイド)を引き連れてオーバールック・ホテルを訪れる。
 ダニーは、特殊能力「シャイニング」の持ち主で、ホテルの異様な雰囲気を察した。
 ホテルの料理長ハロランはダニーとウェンディを伴って、ホテルの中を案内する。ダニーと同じく「シャイニング」の能力を持つハロランは、ダニーに対し、「このホテルには何かが存在するから気を付けろ」と警告する。
 そして、オーバールック・ホテルで、3人だけの生活が始まる。
 閉鎖されたホテルなら、誰にも邪魔される事無く執筆に注力出来ると意気込んでいたジャックだが、いざその生活が始まると早くもスランプに陥り、作業は一向に進まない。
 暇を持て余したウェンディは、夫の機嫌を頻繁に窺う。
 そんな妻を、ジャックは疎ましく感じる様になった。
 閉鎖から間も無く、一帯は近年稀に見る猛吹雪となり、3人は孤立状態になった。
 電話も通じなくなり、外部との接触は無線のみとなった。
 元々アルコール依存症だったジャックは、酒の無い生活は苦痛だった。執筆も思うようにいかず、妻や息子も疎ましく感じ、酒が欲しくなった。ホテルのバンケットホールに足を踏み入れると、無人の筈のバーカウンターに、当たり前の様にバーテンダーがいた。ジャックは、そのバーテンダーと旧知の間柄の如く会話すると、勧められるまま酒を飲む。
 別の日にジャックがバンケットホールを訪れると、舞踏会が開かれていた。ジャックは、そこの給仕と会話する。
 給仕はグレイディという名前の男だった。
 ジャックは、グレイディに対し言う。お前はここの管理人を務めていて、家族を殺した後に自殺しただろう、と。
 グレイディは、記憶に無い、とはぐらかす一方で、ジャックに言う。お前の息子はシャイニングという特殊能力で料理長を無断でこちらに呼び寄せようとしているから、躾が必要だ、と。ジャックは、今の生活を脅かされる真似はさせない、とダニーを躾ける事を約束する。
 ウェンディは、夫の様子がおかしいと感じ始めていた。そんな彼女は、ジャックが数週間タイプライターで打っていた原稿を手に取る。同じ文言が繰り返し、数十枚にも亘って打たれているだけだった。
 夫の精神異常を確信したウェンディは、ジャックを食料倉庫に閉じ込め、息子を連れてホテルから脱出しようとする。ホテルには緊急用に雪上車が用意され、それを使えば町まで出られる、と考えたのだ。
 が、ジャックは事前に雪上車や無線機を破壊していた。
 脱出も、救助を求めるのも不可。
 ウェンディは、夫を倉庫に閉じ込めた状態で、吹雪が過ぎ去るのを待つしかなかった。
 倉庫に閉じ込められたジャックの元に、グレイディが訪れる。躾に失敗したな、駄目な奴だ、とグレイディは蔑む。ジャックは、もう一度機会をくれたら、きちんと躾ける、と約束する。グレイディは、倉庫の扉を開けた。
 ウェンディとダニーがいる寝室に、ジャックがやって来る。
 ドアには鍵が掛かっていたが、ジャックは斧でドアを破壊し始めた。
 夫がどうやって倉庫から出たのか見当も付かないウェンディは、パニックに陥りながらも、息子を窓から逃す。
 ダニーは外に出ると、ホテルの庭にある巨大迷路に身を隠した。
 ジャックがドアを開ける寸前に、外から自動車のエンジン音が響いた。
「シャイニング」により助けを求めるダニーの声を聞いたハロランが、雪上車で駆け付けて来たのだった。
 ジャックはホテルのロビーに向かい、斧でハロランを惨殺する。
 その間に、ウェンディは寝室から逃れ、ダニーを探し回る。ホテルの至る箇所で、過去の亡霊を目の当たりにし、ホテル自体が異常である事を思い知った。
 ダニーが迷路に逃げ込んだと知ったジャックは、迷路へ向かい、雪に残ったダニーの足跡を頼りに追う。
 ダニーは、足跡を偽装すると、迷路から脱出する。
 その時点で、ウェンディとダニーは再会する。二人は、ハロランが乗って来た雪上車で、ホテルから逃れる。
 迷路から出られなくなったジャックは、彷徨い続けた結果、凍死する。
 生きている者がいなくなった筈のホテルのバンケットホールから、音楽が鳴り響く。
 壁に飾れた五十年前の舞踏会の様子を写す写真に、ジャックと瓜二つの男が中央で笑顔を見せていた。



感想

 アメリカのモダンホラー作家スティーブン・キングの初期の作品を下敷きにしている。
 原作では、ダニーやハロランの持つ特殊能力「シャイニング」が重大な役割を果たし(だからこそタイトルになっている)、「敵」は邪悪な意思を持ったホテル、という、アメリカ人好みの設定になっている。
 が、アメリカ出身ながらも人生の大半をイギリスで過ごしていたキューブリックにとっては、そうした要素を取り入れて実写化すると「お子様向けホラー」になってしまうと理解していたらしい。
「孤立状態のホテルで、男が精神に異常をきたして家族を殺そうとする」という設定だけ取り入れ、超能力の部分は軽く触れる程度に留められ、タイトルの意味を無視した、完全オリジナルの作品に仕上げている。
 ホラー映画を制作してみないかと持ち掛けられたキューブリックは、ホラー小説を何冊か手渡された。殆どはほんの数ページ読み進んだだけで壁に叩き付けていたが、「シャイニング」だけは異様に興味を持ち、最後まで読み、映画化を決めたという。そこまで興味を持ったのなら、原作に忠実なものにすると思いきや、殆どの要素を切り捨てているので、結局原作のどの部分に興味を持って映画化する事にしたんだろう、と疑ってしまう。

 原作では、ホテルこそが「悪」で、ジャックもその被害者、という風に描かれているが、本作ではジャックこそが「悪」で、彼が目にしたと思われる数々の出来事が幻想なのか、怪奇現象なのかは明確にされていない。
 観方によっては、ホラーというより、サイコスリラーに属する作品になっている。
 ラスト辺りで、ウェンディも亡霊を目の当たりにしているので、怪奇現象っぽくもあるが、彼女も精神が不安定な状態に追い詰められているので、幻想とも受け取れるようになっている。

 ジャックは、原作では至って普通の男性で、ホテルの「邪悪な意思」によって徐々に精神に異常をきたす、となっている。
 本作では、ジャックは元々アルコール依存症があり、妻や子供に暴力を振るった過去も明らかにされる。元々精神が不安定で、ホテルでの孤立状態が始まってから早々と異常をきたしている。孤立状態に置かれたのが事の発端で、ホテルそのものが「邪悪な意思」を持っている様には描かれていない(原作者が映画に不満に持った理由の一つ)。
 原作に忠実なキャラにした場合、妻や子供を殺そうとするまでの豹変が説明し難くなるので、設定変更は止むを得なかったし、映画単体で観ると無理が無い。

 ジャックの妻ウェンディも、原作とは異なる人物設定になっている。
 原作では、アメリカ人らしく、独り立ちした女性で、夫との立場も対等と描かれている。
 一方、本作では夫に頼り切りで、その為夫の暴力やアルコール依存症にも意見出来ず、弱い女性として描かれている。
 原作は、原作者自身の家族を下敷きにしていた事もあり、「自分が描いたウェンディはあんなひ弱で自己意思が無く、ヒステリックな女じゃない」と最大の不満を述べている。
 ただ、原作通り毅然とした態度の女性だったら、ジャックの凶行も早々と食い止められてしまい、話にならなかっただろう(それ以前に、とっと息子を連れて家を出ていただろう)。
 シェリー・デュヴァルによるヒステリックな演技は、ジャック・ニコルソンの狂気の演技より怖い、と揶揄されたが、ストーリーの流れからすると寧ろ自然というか、違和感が無い。
 ウェンディがジャックをバットで殴って気絶させるまでのシーンは、キューブリックが100回以上撮り直ししたという。シェリー・デュヴァルを実際に精神的に追い込み、ヒステリックな演技にリアリティを持たせる為だったという。となると、ヒステリックな演技は最早演技でなく、本当にヒステリックになっていた状況を撮影していた事になる。現在では有り得ない撮影手法。無論、時間も予算も掛かる(期限も予算もきっちりと守って映画作りする事を理想とするクリント・イーストウッドはこうした「演出」には批判的で、だからこそ自分で映画を制作するようになったという)。
 シェリー・デュヴァルは撮影のストレスで髪が抜けていき、それを集めて嫌味としてキューブリックにプレゼントしたという(怪演が売りのジャック・ニコルソンも、後にキューブリックについて「変わった男だった」と回想しているくらいだから、キューブリックは相当異常性を持った映画監督だったといえる)。
 本作の撮影中に、シェリー・デュヴァルはポパイの実写版で主人公の恋人オリーブ・オイルの役をオファーされ、撮影に参加。公開は、シャイニングと同じく1980年だった為、ホラー映画でヒステリックな演技をしていた女優を、すぐさまコミック実写版でコミカルな演技を披露するのを観れるという、奇妙な現象に。本作での演技がオーバーで漫画っぽい、と酷評されたのも、これが起因している。
 原作者は、本作のウェンディを「ひ弱で、自己意思が無く、ヒステリックに泣き叫んでいるだけの女」と酷評したが、本作の設定からするとヒステリックになるのは止むを得なかったとして、酷評に値する程「自己意思が無くてひ弱」とも思えない。
 本作で、ウェンディはジャックをバットで殴って気絶させ、倉庫に閉じ込める部分は結構行動的に映るし、最終的にジャックを置いてきぼりにして息子と共にホテルからさっさと脱出するので、自己意思が無い訳でもない。
 現在の基準では行動的でないと映ってしまうのかも知れないが、当時としてはそれなりに行動的だった様に映る。

 キューブリックは俳優を精神的に追い詰めて、極限状態の演技を引き出すというか、極限状態になった俳優の姿を撮影して作品作りに活かす、という乱暴な手法を取る事が多い(この後制作したベトナム戦争映画の「フルメタルジャケット」でも、元海兵隊教練官を起用し、実際の海兵隊訓練と同様に俳優らに罵声を浴びせるよう仕向け、俳優らを精神的に追い詰めていったという)。
 その一方で、本作で主人公の息子を演じた子役のダニー・ロイドは、ホラー映画ではなく、ファミリー映画の撮影だと終始思っていたという。
 子をホラー映画の撮影なんかに参加させたら精神的苦痛を受けてしまう、と否定的に捉える親が多かった為、子役が決まらず、キューブリックがホラー映画である事を子役には気付かれぬよう撮影する、と約束して漸くダニー・ロイドの起用にこぎ着けたからだとか。
 ジャック・ニコルソンに「変わった男」と言わしめ、シェリー・デュヴァルを脱毛させる程追い込む一方で、子役には徹底的に配慮していたところを見ると、キューブリックは硬軟の付け方が極端だったと思われる。
 よくよく観返してみると一家が同時に登場しているシーンが少ないのも、撮影現場に子役がいないで済む様にしたかったからか。
 ダニー・ロイドも、他の多くの子役と同様、成長するにつれ映画界は自分には合わないと実感し、早々と引退。芸能界とは全く異なる職に就き、成功を収めたという。廃人にならなかったのが、せめての救い。

 ラストで、カメラがホテルの壁に飾られた写真に徐々にクローズアップすると、そこに先程凍死したジャックらしき写っており、その下の日付により50年も前に撮影されたものだった、というのが明らかにされる。
 一連の出来事が幻想なのか怪奇現象だったのか全く説明されないというのに、ジャックと瓜二つの男が50年前にもこのホテルにいた、という説明だけはやけにくどい。
 何故この場面だけくどいと思ってしまう程説明的なのか。
 といっても、50年前の男と、ジャックとの関係は説明されてはいないが。

 原作では、ホテルがボイラーの大爆発で全壊するという、まさにアメリカらしい結末になっているが、本作ではそうした場面は無く、ホテルはそのまま残る。
 悪役のジャックが迷路を彷徨った上に凍死するという、派手さに欠ける地味な結末も、「観る人によって幻想とも怪奇現象とも受け取れる作品」にしたかった以上、相応しい終わり方といえる。
 原作通りにしていたら、まさにお子様向けになってしまっていただろう。

 冒頭で、上空からジャックが運転する車に近付いて追っていく、という長回しのシーンがあるが、現在みたいにドローン撮影の技術が無い時代、どうやって撮影したんだろう、と不思議に思った。
 キューブリックは実験的な手法を積極的に採用し、撮影技術の発展には大きく貢献していたらしい。

 キューブリックは、「2001年宇宙の旅」や「時計仕掛けのオレンジ」で批評的にも興行的にも成功していたが、それ以降は芸術性に偏り過ぎた為か批評的・興行的失敗作が続き、「過去の人」に成りつつあった。
 その状況を打破しようと挑んだのが初というか唯一のホラー作品である本作だった。
 批評はイマイチな部分もあったが、興行的には成功し、キューブリックは復活する。 
 原作小説より評価が高いという、稀な存在になった。


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Last updated  2021.10.21 13:24:12
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2021.07.27
カテゴリ:洋画

「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」シリーズの第24作目。
 S.H.I.E.L.D.の工作員ブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフの過去を描く。
 ナターシャを演じるのは、これまで通りスカーレット・ヨハンソン。
 原題は「Black Widow」。


粗筋

 1995年。
 アレクセイ(デヴィッド・ハーバー)とメリーナ(レイチェル・ワイズ)は、スパイとしてアメリカに潜入していた。
 ナターシャとエレーナの娘二人を持つごく普通の夫婦を装いながら、S.H.I.E.L.D.の情報を盗んでいた。
 盗める情報を全て盗んだ二人は、ナターシャとエレーナを連れてロシアに逃亡。
 上官であるドレイコフに迎えられる。
 ドレイコフは、ナターシャとエレーナを暗殺者養成学校のレッドルーム行きとし、用済みのアレクセイを監獄送りにする。メリーナは逃亡の際に負傷してしまい、生死不明となった。
 時は流れ、ナターシャはドレイコフとその娘を爆殺してS.H.I.E.L.D.に亡命し、アベンジャーズの一員として活動するようになっていた。

 2016年。
 アベンジャーズは内部分裂し[キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー]、ナターシャ(スカーレット・ヨハンソン)はノルウェーへの逃亡を余儀なくされる。
 一方、エレーナ(フローレンス・ピュー)は、レッドルームの暗殺部隊「ウィドウ」の一員として、裏切り者の元同僚を殺害。その過程で、彼女は元同僚が持ち逃げしたガスを吸い込む。ガスは、レッドルームによるマインドコントロールの解毒剤だった。正気を取り戻したエレーナは、残りの解毒剤を「姉」のナターシャに送り付ける。アベンジャーズの一員であるナターシャなら、何とかしてくれるだろう、と期待して。
 解毒剤を何か知らずに受け取ったナターシャは、いきなりレッドルーム最強の暗殺者タスクマスターに襲撃される。
 何とかタスクマスターから逃れたナターシャは、解毒剤がエレーナから送り付けられたものだと知り、エレーナの住まいがあるブタペストに向かう。
 ブタペストで、ナターシャは「妹」のエレーナと再会。その直後に「ウィドウ」に襲撃される。二人は命辛々その場から逃げた。
 エレーナの証言により、ナターシャは爆殺したと思っていたドレイコフがまだ生きていて、レッドルームも彼の元で活動中である事を知る。
 ナターシャは、ドレイコフを探し出して今度こそ始末しなければならない、と悟る。ただ、エレーナの期待に反して、アベンジャーズは内部分裂しているので、支援は得られない。二人でドレイコフを始末しなければならなかった。
 問題は、ナターシャは勿論、ほんの数日前までドレイコフの支配下にあったエレーナですらドレイコフの居所を知らない事だった。
 ナターシャは、「父親」のアレクセイなら知っていると考え、アレクセイが収監されている監獄へ向かう。
 二人は、アレクセイを脱獄させ、ドレイコフの居所を教えろと迫る。
 アレクセイは、自分は知らないが、メリーナなら知っているだろう、と答える。
 ナターシャとエレーナは、「母親」のメリーナは負傷が原因でロシアへの逃亡直後に死亡したと思っていたので、驚く。
 ナターシャ、エレーナ、アレクセイの3人は、メリーナの住まいへと向かう。
 20数年振りに、血の繋がりの無い4人は「家族」として再開。
 ナターシャは、メリーナに対し、レッドルームがどこにあるのか教えろと迫る。
 メリーナは、彼女に対し、自分が通報したので、探しに行く必要は無い、と答える。
 その時点で「ウィドウ」が強襲し、ナターシャらを倒し、レッドルームへと連れて行く。
 レッドルームは、空中に浮かぶ基地にあった。だからこそドレイコフの居所は誰も掴めなかったのである。
 ただ、メリーナはドレイコフに反旗を翻していた。
 ナターシャらが捕まる直前に、フェイスマスクによってナターシャとメリーナは互いに入れ替わっていた。
 メリーナに成りすましたナターシャは、ドレイコフと対面する。
 が、ドレイコフも、ナターシャの変装を見抜いていた。彼はナターシャに対し、レッドルームがいかにして世界を裏から支配してきた事を説明すると、タスクマスターを差し向ける。
 タスクマスターの正体は、ドレイコフの娘アントニア(オルガ・キュリレンコ)だった。ナターシャは、ドレイコフを爆殺した際、アントニアも巻き込んでしまい、それについて苦悩していたが、アントニアは生きていた。ただ、脳へのダメージが大きく、ドレイコフはマイクロチップを脳に埋め込む事を強いられた。更に、ドレイコフは無情にも実の娘に改造を施し、最強の戦士に仕立て上げて手足の様に使っていたのだった。
 ドレイコフは、ナターシャの始末を娘に任せると、その場を離れた。
 一方、ナターシャに成りすましていたメリーナと、エレーナと、アレクセイは、囚われの身から脱すると、レッドルームの破壊工作を実施。
 レッドルームはエンジンが破壊され、落下し始める。
 ドレイコフの影響下にあった「ウィドウ」のメンバーらは、エレーナが解毒剤を散布した事で正気を取り戻し、脱出する。
 ドレイコフも脱出を試みるが、エレーナにより航空機もろとも爆死する。
 ナターシャは、再びタスクマスターと対峙し、解毒剤でタスクマスターの正気を戻す。
 ナターシャ、エレーナ、メリーナ、アレクセイは、再び再開。生還を喜ぶ。
 しかし、そこへS.H.I.E.L.D.がやって来る。本来ならナターシャにとって味方の筈だが、今はそうでない。
 ナターシャは、「家族」の3人と、脱出した「ウィドウ」らとタスクマスターに、この場から去るよう促す。S.H.I.E.L.D.は自分が食い止めておく、と。

 2週間後。
 ナターシャは、拘束されているアベンジャーズを救う為に飛んでいく。

 ポストクレジットで、サノスとの戦い[アベンジャーズ/エンドゲーム]で命を落としたナターシャの墓を、エレーナが訪れる。
 そこで、エレーナは、ナターシャを死なせたホークアイを始末する依頼を受ける。



感想

 制作・公開時期はアベンジャーズ/エンドゲーム(MCU第22作目)の後だが、時系列的にはキャプテン・アメリカ/シビル・ウォー(MCU第13作目)とアベンジャーズ/インフィニティウォー(MCU第19作)の間の出来事、という事になっている。
 ナターシャはアベンジャーズ/エンドゲームで死に、演じていたスカーレット・ヨハンソンもそれを機にマーベル・シネマティック・ユニバースから降板したと思ってばかりいたので、意外な展開だった。
 既に最期が分かっているキャラが大活躍する姿を観るのは、ある意味空しい。
 MCUの事だから、要望があれば何らかの形で生還させそうだが。というか、流石に生還させてシリーズ本流に戻すと混乱が生じるので、死んでしまったが人気のあるキャラは、今回の様にこれまでのシリーズ作の「空白期間」を埋める作品で登場させるのかも知れない。

 ナターシャは、レッドルームにより訓練された事もあり、身体能力は常人をはるかに上回るが、キャプテンアメリカやブラックパンサーとは異なり、超人ではなく、不死身でもない。
 そんな事もあり、ナターシャが単独で立ち向かう敵となると、超人だと釣り合わなくなるので、本作の様に普通の人間にするしかない。
 アベンジャーズの一員として活躍している時は宇宙からやって来た征服者と対峙するので、本作の敵であるドレイコフはシリーズ全体を観ている者からすると雑魚としか映らないのは残念。
 これが007シリーズだったら、ドレイコフも主人公の手に余る強敵に成り得ただろうに。
 
 当然だが、突っ込みどころも多い。
 アベンジャーズ加入前のナターシャによって、レッドルームは壊滅状態に追い込まれたと思われていたが、実際にはドレイコフは生きていて、裏から世界を支配していた、という事になっているが、レッドルームという組織は本作で初めてその存在が知らされ、これまでのMCUシリーズ作ではその片鱗すら見せていない。
 レッドルームも、流石に超人揃いのアベンジャーズと直接対決する訳にはいかなかったので、目立たぬ様、裏で活動していた、という事だが、空中基地を持つ程の規模に成長したにも拘らず、その存在が本作までナターシャにも、情報収集能力がある筈のアベンジャーズにも知られていなかった、というシリーズ上の矛盾が生じてしまっている。
 制作者側も、レッドルームを何度も登場させる訳にもいかないと判断したらしく、本作のラストで呆気無く瓦解。本作の為だけに急遽こしらえられた「凶悪な超巨大悪徳組織」となってしまった。
 MCUシリーズの1作という考えで観るからこの矛盾が気になってしまうが、MCUシリーズを殆ど観ておらず、独立した1本のアクション映画として観ていれば、違和感は抱かないのかも。MCUシリーズの他のキャラをほぼ登場させていないのも、そういう思惑があったからか。

 MCUシリーズの例に漏れず、最新の特撮技術を使った派手な作品に仕上がっている。
 劇場を出た後に思い返してみるとかなり非現実的なアクションシーンだらけだった、という事に気付くが、観ている最中はそれを意識する事は無かった。
 ハリウッド映画は、そういう部分に長けている、と改めて感じる。

 スカーレット・ヨハンソンは、これまで通りナターシャ・ロマノフことブラック・ウィドウを演じていた。
 MCUシリーズではお馴染みのキャラなだが、単独作品は今回が初。
 超人揃いのMCUだと、そうでないキャラは単独作品を作り辛いらしい。
 本作では、ナターシャの過去がテーマになっているが、幼少期が明らかにされるだけで、レッドルーム時代の活動や、S.H.I.E.L.D.に亡命する経緯は殆ど触れておらず、結局ナターシャは謎の人物のまま。
 掘り下げ方が浅い。
 1作で全てを描くのは無理なので、初めからそうしない事にしたらしい。
 彼女を中心としたアクションシーンが満載されているが、非現実感があり、普通だったら即死だろう、というシーンでも観ていて緊張はしない。あくまでも「ブラック・ウィドウが格好良く動くのを観てね」というアクション。
 作中でも、エレーナがナターシャに対し「どうして格好付けて登場するの?」と指摘するシーンがあったが、まさにそんな感じ。後にエレーナがナターシャを真似してみて「気持ち悪い」と後悔するが、アクションシーンそのものがギャグというか、マンガになってしまっている。
 少し前に見たシャーリーズ・セロン主演のアトミックブロンドのアクションシーン方が「痛そう」でリアルだった。そちらも結局「格好付けたシーン」満載の作品だが。
 
 ナターシャの「妹」として、エレーナが登場。
 フローレンス・ピューが演じている。
 MCUシリーズ作としては初登場だが、今後MCUを土台としたテレビシリーズ「ホークアイ」でレギュラーキャラとして登場するらしい。
 そんな事もあり、ポストクレジットが挿入され、「ホークアイ」の導入部になっている。
 本作は単独でも楽しめるが、あくまでもMCUシリーズである、という事を表している。
 エレーナも様々なアクションを見せるが、ナターシャのと同様、マンガっぽい。

 ナターシャとエレーナの「母親」としてメリーナが登場。
 演じているのはレイチェル・ワイズ。
 これまで数々のハリウッド大作に出演してきたが、スーパーヒーロー系は本作が初らしい。
 それにしては、堂々と、違和感無く演じている。
 50代でこの手の映画に出演しても違和感が無いのは、ハリウッドならでは。50代の日本人女優だったら、違和感しかなかっただろう。

 タスクマスターを演じていたのは、オルガ・キュリレンコ(顔を見せていたシーンは僅かなので、実際にはスーツアクターが演じていたのだろうが)。
 オルガ・キュリレンコは007シリーズ、ジョニー・イングリッシュ・シリーズでヒロインを演じていたので、マイナーな役でほんの僅か顔を見せる程度の出演を何故快諾したのか、不思議に思う。
 タスクマスターというキャラで、今後MCUで出演し続けたい、という思惑か。

 MCUは、アベンジャーズ/エンドゲームで一段落していて、今後どう展開させるか、制作者側も色々模索している様子。
 本作は、アベンジャーズ/エンドゲーム後のMCUの先鞭を付ける作品というより、アベンジャーズ/エンドゲームまでに制作し切れなかった作品を、漸く手掛けられた、といったもので、やり方によってはアベンジャーズ/エンドゲーム前に公開されていても不自然ではなかった。
 観ていてもMCUの展望が分からず、今後が少々不安になった。









Last updated  2021.09.02 21:26:21
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2021.04.16
カテゴリ:洋画

 ショーン・コネリーとニコラス・ケイジが主演するアクション映画。
 1996年公開。
 敵役として、エド・ハリスが出演する。
 また、SEAL部隊の隊長として、マイケル・ビーンが出演。
 日本ではPG12指定となっているが、観る限りではそう残酷なシーンは無く、何故PG12指定になったのか、よく分からない。
 原題は「THE ROCK」。舞台となったアルカトラズ島の別名でもある。


粗筋

 アメリカ海兵隊のハメル准将(エド・ハリス)は、政府に憤りを感じていた。
 ハメルはこれまで数多くの非合法作戦に従事し、多くの部下を失っていた。非合法活動であるが故に、作戦が失敗すると見殺しにされ、公にされる事も無い。また、見殺しにされても遺族に恩給が支払われないのも当たり前だった。
 ハメルは上層部や政府に、せめて遺族に恩給を与えるべきだと訴えてきたが、ことごとく無視されてきた。
 事態を打開する為に、ハメルは強硬手段に出る。部下と共に化学兵器VXガスを奪取し、サンフランシスコ湾に浮かぶ元刑務所アルカトラズ島(通称「ザ・ロック」)に観光客81人を人質に立て籠もり、遺族へ渡す補償金として現金1億ドルを要求する。要求が受け入れられない場合はVXガスを搭載したロケットをサンフランシスコに撃ち込む、と。ロケットが撃ち込まれた場合、サンフランシスコに居住する90万人は全滅してしまう。
 事態を重く見た政府は、海軍特殊部隊SEALをアルカトラズに送り込む事を決める。ただ、SEALも、相手に気付かれず侵入する方法が必要だった。アルカトラズからの脱走に成功した者なら、侵入に利用出来るルートを知っているのでは、と考えたが、アルカトラズは脱走不可能とされた刑務所。脱走を試みた者は何人かいたが、成功した者は一人もいない、というのが公式記録だった。
 が、FBI長官は知っていた。実はアルカトラズからの脱走に成功した者が一人いる事を。その人物は存在しない事になっていたので、公式記録には載っていなかった。
 FBI長官は、その人物が収監されている場所へ向かう。アルカトラズからの脱出は成功したものの、後に捕まり、30年間裁判すら行われず収監されていたのだ。
 FBI長官は、その人物―ジョン・メイソン(ショーン・コネリー)―に、協力を求める。
 メイソンは、恩赦を条件に、協力する事に。図面を見せられ、脱出の際に利用したルートを示す様、命じられるが、脱出は三十年以上前の事で、しかも暗がりの中で数日間掛けて行ったので、現地に行ってみないと記憶がよみがえって来ない、と言う。
 FBI長官は、それは許可出来ないと主張するが、SEALは作戦成功の為に同行させるのが必要ならそうすべきだと主張。メイソンは、SEALと同行する事になった。
 VXガスを安全に処理するには、化学の専門家が不可欠だった。FBI捜査官スタンリー・グッドスピード(ニコラス・ケイジ)がサンフランシスコに派遣される。研究所で毒ガスを処理するのが仕事なので、戦闘が起り得る現場には送り込まれないだろう、と思っていたが、現場に行ってVXガスを処理しなければならないと説得され、SEALに同行する事になってしまう。
 アンダーソン中佐(マイケル・ビーン)率いるSEALは、メイソンの案内で、アルカトラズに侵入する事に成功する。
 が、ハメルは政府が特殊部隊を送り込んで来る事は想定していた。
 SEAL部隊は、ハメルの部下に包囲され、銃撃戦で全滅する。
 銃撃戦の場に居合わせなかったメイソンとグッドスピードだけが生き残った。
 メイソンは、自分の役割は終わったと判断し、逃走しようとする。
 が、グッドスピードは、逃走しても無駄だ、とメイソンを説得する。VXガスを搭載したロケットが発射されたら、サンフランシスコが全滅するので、お前も死ぬぞ、と。
 メイソンは、嫌々ながらもグッドスピードに協力する事に。
 グッドスピードは、アルカトラズ各所に配備されたロケットを発射不能にする作戦に出る。発射出来なければ、仮にVXガスが放出されても、アルカトラズに留まり、犠牲は最小限に留まる、と。
 メイソンとグッドスピードは、ロケットを次々と発見し、内蔵された基盤を取り外して破壊し、発射出来ない様にした。
 ハメルらは、侵入者が全滅していないのを知り、メイソンとグッドスピードを執拗に追う。
 多勢に無勢のメイソンとグッドスピードは、捕まってしまう。
 独房に入れられている最中に、グッドスピードはメイソンの素性を知らされる。
 メイソンはイギリスの工作員で、アメリカに潜入し、様々な機密情報を記録したマイクロフィルムを盗み出したが、出国する直前にアメリカ当局に拘束された。イギリス政府は、同盟国に対しスパイ活動を行っていたと認める訳にはいかなかったので、メイソンの存在を関知しなかった。アメリカ政府は、盗んだマイクロフィルムの在処を教えろとメイソンを責め立てる。が、イギリス政府が自分の存在を関知しないとした以上、マイクロフィルムの在処を教えたら人知れず葬られるだけと読んだメイソンは、頑として教えなかった。そこで、アメリカ当局はメイソンを「身元不明者」としてアルカトラズに収監したのだった。
 メイソンは、30年前と同じ手法で独房から脱出。グッドスピードと共にロケットの無効化作戦を続行する。
 一方、ハメルは残ったロケットで脅迫を続ける。
 政府はテロリストの要求には応じられない、と拒否。
 ハメルは、ロケットを計画通り発射すべきと主張する強硬派の部下らに押され、ロケットを1発発射。
 ロケットは、数万人の観客がいる競技場を標的とし、向かっていたが、到達直前にハメルが標的を変更。ロケットは海に落下する。VXガスは誰も傷付ける事無く海に沈む。
 ロケットが競技場ではなく海に落下したと知った強硬派の部下らは、何故ハメルがそんな事をしたのか、と問い詰める。脅迫の意味が無いではないか、と。
 ハメルは、あくまでも政府から譲歩を引き出したかっただけで、民間人を殺す気は無かった。譲歩を引き出せなかった以上、計画は失敗したと宣言し、部下らに自分を残して逃げる様、指示する。
 が、強硬派の部下は、その指示に納得できなかった。金の為に今回の計画に参加したのに、何の報酬も得られず、しかもアメリカ政府に追われる立場となっては、骨折り損のくたびれ儲けではないか、と。
 ハメルの部下の間で銃撃戦が起り、ハメルは致命傷を負う。
 ハメルは、最後のロケットの場所をメイソンらに教えると、息を引き取った。
 メイソンとグッドスピードは、最後のロケットが設置された灯台に向かう。
 一方、アメリカ政府は、SEAL部隊が全滅し、VXガスの脅威がそのままである以上、強硬策に出るしかない、と判断。
 戦闘機でアルカトラズに爆弾を投下して島を丸ごと破壊し、VXガスを無害化する、という作戦を実行に移す。これにより人質に取られた80人の観光客は犠牲になるが、90万人を救うにはそれしかない、と。
 爆弾を搭載した戦闘機が、サンフランシスコへ向かった。
 メイソンとグッドスピードは、ハメルの部下の生き残りを始末し、ロケットを無効化する。
 グッドスピードは、事態が解決した事を示す合図である発煙筒を焚く。
 それを確認した政府は、爆弾投下直前の戦闘機に作戦中止を命じる。
 グッドスピードは、FBI長官に連絡。メイソンは死んだ、と嘘を吐いた。FBI長官がメイソンに恩赦を与える約束を反故にする事を知っていたからだ。
 メイソンは、グッドスピードにマイクロフィルムの在処を教えた後、その場を去る。
 グッドスピードは、その後メイソンに教えられた教会に向かい、マイクロフィルムを回収した。



感想

 ハリウッドらしいアクション映画。
 主演が60代のコネリーと、3枚目っぽいケイジという組み合わせも、いかにもハリウッドらしい。
 検証すると、ストーリーが穴だらけ、というのも、まさにハリウッド。

 SEALは、メイソンの脱出ルートを逆になぞって、アルカトラズに侵入する事に成功。
 島に上陸する事に成功したのだから、それから先はメイソンの脱出ルートにこだわらずに、臨機応変に動いて制圧すれば良かったのだが、どういう訳かメイソンの脱出ルートを逆になぞる事にこだわる。
 メイソンは、収監者用のシャワールームの排水溝から脱出していた。SEALは、何故かそのシャワールームを経て館内に侵入する事に。
 ハメルは、アルカトラズ内の至る箇所に感知センサーを設置していて、シャワールームにも設置されていた。
「SEALは感知センサーを発見出来ず、運悪く作動させてしまい、ハメルらに包囲され、全滅した……」という展開ならまだ分かるが、SEALは光ファイバーを使って感知センサーを発見している。その時点で「ここには罠が仕掛けられている可能性があるから、別ルートを探して侵入しよう」と考えるのかと思いきや、SEALは感知センサーを少しずらして、排水溝からシャワールームまで上がろう、と何故か決めてしまう。
 シャワールームは、収監者が大勢で利用しても看守が見下ろして状況を把握出来る設計になっていた。ハメルの部下らは、SEALの頭上から銃撃して、全滅させる事に成功。
 SEALが全滅した事で、「この危機を打開出来るのはメイソンとグッドスピードの二人だけ!」という状況を作り出し、映画の緊迫度を上げる事に成功しているが、何故SEALをここまで無能にしたのか、制作者の意図が分からない。
 SEALを一人くらい生存させ、後に死亡する、という展開にすれば良かったのに。

 VXガスは、ガラス容器に入れられた状態で保管されていた。
 ガラス製なので、落として割るとガスが四散し、周囲にいる者を殺す。
 そこまで危険なガスを、何故破損し易いガラス容器に収めたのか、分からない。衝撃に耐えられる容器に収めるのが常識だろう。
 冒頭シーンでは、ハメルの部下の1人が誤って落としてしまう。その結果、VXガスを吸い込んで死んでしまっている。
 ここまで壊れ易いものだと、取り扱いで事故が発生し捲っているだろうし、ロケットに搭載したら、発射の衝撃や振動で破損してしまい、標的に辿り着く頃にはガス残っていない可能性もあるのではないか。
 といっても、映画のクライマックスでは、グッドスピードが容器を胸ポケットに突っ込んで取っ組み合いをするシーンもある。その時だけはやけに頑丈だった(これもハリウッド的)。
 本作が公開されてから数年後、イギリス政府はイラクが化学兵器を大量に生産している証拠を掴んだと発表し、それを口実にアメリカ主導のイラク侵攻に参加し、当時のフセイン・イラク大統領の排除に貢献した。
 ただ、口実となった証拠は、後に偽物と発覚。化学兵器がガラス容器に入れられて保管されているという証言が記されている等、本作と酷似していたという。
 この件に関しては、本作の制作者も驚いたらしい。
「化学兵器をガラス容器で保管したのはあくまでも映画上の演出。化学兵器をガラス容器に入れて保管するなんて有り得ないと専門家なら気付く筈」とコメントしている。
 制作者も充分理解していた以上、本作で「VXガスをガラス容器で保管するのはおかしい」と指摘するのは野暮か。

 元イギリス諜報員メイソンを、ショーン・コネリーが演じている。
 007を引き継いだ感のあるキャラで、よくコネリーが出演を承諾したな、と思う。
 もしくは、コネリー自身が色々提案した結果、007寄りになってしまったのか。
 初代007でありながら、降板後は007嫌いを公言していたコネリーだが、何だかんだで007から逃れられない運命にあったらしい。
 30年間収監されていた、という設定の割には、よく動ける。イギリス諜報員だったとしても、動き過ぎだろう。

 FBI所属の化学専門家を演じるのは、ニコラス・ケイジ。
 本作では、少々頼りない役を演じている。 
 悪役も善役も、二枚目も三枚目も演じられるのは、ケイジならでは。
 ただ、コネリーとハリスに挟まれ、存在感が薄れてしまっていた。
 流石のケイジも、コネリーと同時出演だと、個性が活きないらしい。

 勿体無いのが、SEAL部隊長を演じたマイケル・ビーン。
 ターミネーターではヒーローを演じる等、数々の大作に起用されていて、1980年代から2000年代までは、特殊部隊員=マイケル・ビーンというくらい当たり前に登場していたが、何故か主役には起用されない。本作でも、途中であっさりと退場。
 最後までまともに生きている、という役を演じたのを観た事が無い気がする。
 ハリウッド大作の俳優としては大成はしていない様だが、その後も数々の映画やテレビ番組に出演しているので、本人はそれなりに満足しているのかも知れないが。

 敵役のハメル准将を演じるのが、エド・ハリス。
 当初彼の役柄はひたすら残酷なテロリスト、という設定だったらしいが、ハリスの意見を取り入れ、ハメルを人格者にしている。
 ただ、あまりにも人格者にしてしまった為、そもそも何故ハメルはこんな行動を起こしたのか、という矛盾を生み出している。
 ハメルは数々の非合法活動に従事したものの(アメリカによる交戦記録が正式に無い中国にも潜入して戦闘を繰り広げた、という事になっている)、それが政府に全く認められなかった事が、動機とされる。
 一方で、VXガスを奪う際は警備隊員を気絶させるだけで一人も殺さず奪っているし(部下の一人がVXガスで死んでいるが)、アルカトラズを乗っ取る直前に学校行事で観光に来ていた子供らに対しツアーを切り上げてさっさと帰れと促しているし、VXガスを搭載したロケットを発射するものの標的を変えて海に落下させて誰も死なせずに済ませている。SEALとの銃撃戦も彼の命令で始まったのではなく、部下が勝手に始めたもので、彼はSEALをあくまで生け捕りにしたかった様子を見せている。
 ハメルは、VXガスを盾にアメリカ政府を脅迫したものの、誰も死なせずに済ませたかった様である。
 それだったら、こんな強硬手段に打って出るより、さっさと退役し、回想録でも出版し、その中で自分が指揮した非合法活動を洗いざらい語る、という手段に出た方が、誰も犠牲にせず済んだだろうに、と思う。
 そんな回想録を出版したら機密保持に違反したと見なされ、軍法会議に掛けられるだろうが、VXガスを奪って脅迫するのと比べたらまだまだ「合法的」と言えるだろうし、世間の共感も得られただろう。
 ハメルが起こしたテロ活動は、公にはされていなかったので、結局事件そのものが無かったという事で処理される可能性が高い。ハメルやその部下は事故死した、等。当然ながら、ハメルの訴えもそのまま葬られ、遺族に恩給が支払われる事は無い。
 ただただ無駄死にした、という事になる。
 それも全て踏まえて今回の強硬手段に出たのだとしたら、何の為に、という疑問が拭えない。
 また、ハメルの部下は、ハメル追従派と強硬派に分かれてしまい、内輪で揉めた結果銃撃戦になり、半減。ハメルも死亡する。
 人格者の筈のハメルが、何故自分の考えを理解してくれる者で固められなかったのかも、理解に苦しむ。

 本作の撮影は、実際にアルカトラズ島で行われたという。
 国立公園なので、撮影の為に貸切る事は出来ず、観光客が歩き回っている中で撮影が行われたとか。
 観る限りではそうした状況下で撮影された事は感じられないので、どうやって撮影したんだと不思議に思う。

 ラストシーンで、マイクロフィルムを入れていた像をグッドスピードが教会から盗み出す。
 この教会は、数々の映画で利用されてきた有名な建物らしいが、後に火災で全焼してしまい、現在は残っていない。
 アメリカでも文化財の喪失は頻発している様である。

 アーノルド・シュワルツェネッガーは、オファーを断った事を後悔している映画として、本作を挙げているらしい。
 シュワルツェネッガーが主演していたら、全く違う映画になっていただろう。誰の訳をオファーされていたのか。
 そのバージョンも観てみたかった気がしないでもないが、興行的にはどうなっていただろう、とも思ってしまう。

 本作の続編も検討されたが(メイソンのその後を描く)、立ち消えになったという。
 体力的にコネリーが出演出来るとは思えないので、立ち消えになったのは当然といえる。


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Last updated  2021.04.16 23:18:45
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2021.01.15
カテゴリ:洋画

 アメコミの2大大手の一つDCコミックスを代表するスーパーヒーロー・ワンダーウーマンの実写映画第2弾。
 DCエクステンデッド・ユニバースでワンダーウーマンを演じてきたガル・ガドットが引き続き主演を演じる。
 監督も、前作と同じくパティ・ジェンキンス。
 製作には、主演のガル・ガドットも名を連ねる。
 タイトル通り、舞台は1984年。
 原題は「Wonder Woman 1984」。「WW84」と略される。


粗筋

 前作での戦いから66年。
 1984年のアメリカ合衆国首都ワシントンDC。
 ダイアナ・プリンス(ガル・ガドット)は、スミソニアン博物館で勤務しながら、正体不明のヒーロー・ワンダーウーマンとして悪と戦う日々を送っていた。
 FBIに摘発された密輸業者の盗品がスミソニアンへ届けられる。数々の盗品の中に、奇妙な石の置物があった。
 ダイアナの同僚である鉱物学者バーバラ・ミネルバ(クリステン・ウィグ)の鑑定では、シトリンで出来た無価値な紛い物と見なされた。台座にはラテン語で「一つだけ願いを何でも叶える」と彫られてあったので、ダイアナは思わず66年前に亡くした恋人スティーブが戻って来てほしい、と願ってしまう。
 バーバラも、ダイアナの様な格好いい女性になって、うだつが上がらない自分自身を脱したい、と石に何気無く願った。
 テレビコマーシャルで自身の石油事業を宣伝してちょっとした著名人になっていたマックス・ロード(ペドロ・パスカル)が、スミソニアンに現れ、ダイアナ達に接近。バーバラを誘惑し、石の置物を借りる事に成功する。実は彼は、石の置物を長年探し求めていた。石の置物を漸く手に入れたマックスは、その仕組みを逆手に取り、願い事を叶える力を自らのものとする。
 マックスの石油事業は、実は破綻寸前のネズミ講だったが、石の置物の力を手に入れた事で急展開。石油が出ない筈の所有地全てから石油が湧き出す様になる。
 石油事業を大成功させたマックスの元に、様々な投資家らが押し寄せる。マックスは、彼らの願い事を叶えるのと引き換えに、あらゆる権力を手に入れていく。
 ダイアナは、石の置物がこれまで歴史上の様々な文明で姿を現していた事を突き止める。それらの文明は、石の置物の力で短期の内に強大になっていったものの、同じく短期の内に滅亡していた。石の置物は、悪魔の化身だったのだ。
 ダイアナは、石の置物を処分しようとするが、バーバラがマックスに貸し出してしまった事を知る。
 マックスにより石の置物が悪用されている事を知ったダイアナは、彼の阻止に動き始める。
 そんな中、ダイアナはある男性と出会う。スティーブ・トレバー(クリス・パイン)の記憶があった。ダイアナの願いは、別の男性にスティーブの魂が宿る、という形で叶えられたのだった。ダイアナは、スティーブの魂を宿す男性(ダイアナにはスティーブの姿に見える)と共にマックスの追跡を開始。
 ダイアナの住まいで、スティーブは古い鎧らしきものを見付ける。これは何だと訊くと、ダイアナの故郷のセミッシラ島の戦士アステリアが着用していた鎧だと答える。古代の時代にこちらの世界とセミッシラ島との間で戦いがあった時、アステリアは自身を犠牲にしてセミッシラ島の結界を復活させる時間稼ぎをした。こちらの世界に留まる事になったアステリアの消息は不明となり、セミッシラ島ではアステリアは伝説の戦士として崇められていた。ダイアナは、こちらの世界にやって来た直後に、アステリアを探し求めたが、発見出来たのはその鎧だけだったと説明した。
 ダイアナとスティーブは、マックスを追ってエジプトへ飛び、マックスと対峙。しかし、願いの代償で、ダイアナは以前の様な超人的な戦いが出来ない事が発覚。その結果、マックスを取り逃してしまった。
 ダイアナとスティーブはアメリカに戻り、マックスを再び追い詰めてゆく。しかし、二人の前に、バーバラが立ちはだかる。
 バーバラは、ダイアナの様な格好いい女性になりたいと願った事で、意図せずにワンダーウーマンと同等の戦闘力を会得していた。折角叶った願いを失う事を拒否した彼女は、マックスと手を組み、彼の逃走を手助けする。
 スティーブは、ダイアナがワンダーウーマンとしての力を復活させない限り、マックスやバーバラを相手に戦うのは無理だと悟る。その為にはダイアナに自身の願いを撤回させなければならなかった。それは、スティーブを再び失う事を意味するのを知っていたダイアナは、願い事の撤回を拒否する。スティーブは、自分は既に死んだ人間だとダイアナを説得する。ダイアナは悲しみに満ちながらも願い事を撤回し、スティーブと別れ、ワンダーウーマンとして復活する。
 マックスは、アメリカ大統領に接近出来るまでの力を得ていた。軍の通信施設を経て、世界中の人々と接触して願い事を叶え、更なる権力を手に入れようと画策。
 ダイアナはその施設に向かった。
 バーバラが再び立ちはだかるが、戦いの末彼女を倒し、マックスと対峙。
 しかしマックスは、通信施設を悪用し、世界中の人々の欲望を叶えていた。
 核兵器をより多く配備しなければ、というアメリカ大統領の欲望まで叶えていた事から、アメリカの核兵器の数が一気に増加。
 それに反応したソ連が、核戦争を仕掛ける。
 ダイアナは、マックスに対し、願い事を撤回しないと、愛する息子まで失う事になる、と説得。同時に、通信施設を経て、世界中の人々に願い事を撤回させる。
 その結果、世界は以前の状態に戻っていく。
 世界を危機から救ったダイアナは、平和にクリスマスを迎える人々の中を歩いて行った。

 別の場所で、子供が命の危機にさらされるが、偶々側を歩いていた黒髪の女性が救う。
 子供の母親は、黒髪の女性に感謝の意を述べ、相手の名を訊く。
 その女性(リンダ・カーター)は、「自分の名はアステリア」と答えると、その場を去った。



感想

 実写映画版第1弾で、ワンダーウーマンは悪の化身である神で、自身の兄でもあった敵と戦った。
 第2弾ではどういう強大な敵と戦うのか、と思っていたが……。
 小さく纏まってしまった感じ。
 本作の一番の敵といえるマックス・ロードは、一旗揚げたいが故に無謀な事業に手を染めてしまっただけのペテン師で、根っからの悪人という訳ではなく、ラストで溺愛する息子が危機にさらされていると知ると何もかも放棄して自分がペテン師だった事を息子に打ち明けて詫びる程度の小悪党。
「ワンダーウーマンと同じ超人的な力を持つ凶悪な敵」とされたミネルバも、元は冴えない学者で、ふとした事で強大な能力を得てしまっただけ。汚い言葉を使う様になるが、イマイチ様になっておらず、本気を出したワンダーウーマンにあっさりと倒されてしまう。
 人類滅亡の危機に発展するが、悪人らしき悪人は一人も出ない。ここまでの危機だから、死者は出ていたと思われるが、具体的には描写されない。マックスもミネルバも、人を傷め付ける事はするものの、直接殺すまでは至っていない。
 前作では人を殺めたワンダーウーマンも、本作では誰も直接殺める事無く世界を救っている。
 胸糞悪い登場人物、ストーリー展開、結末は無く、安心して観られ、その意味では、非常に「優しい映画」。
 女性が監督を務めたからか。
 同じDCエクステンデッド・ユニバースのスーパーマンが、本来の善の塊なヒーローから、ダークヒーローっぽい要素も取り入れる様になってしまい、やっつける対象となる筈の悪の側と大差が無くなり、観ていてがっかりした経験があるので、善をひたすら貫き続けるヒーローが描かれるのは喜ばしい。
 ただ、本作の様にヒーローは勿論、敵側も何と無く優しくなってしまうと、物足りなさを抱いてしまう。
 マックスの欲が限りなく増幅していき、溺愛する筈の息子ですら犠牲にしてしまう、ミネルバもガンガン人を殺すくらいになるまで性格が歪んでいく、といった展開にした方が、ワンダーウーマンももう少し容赦無く戦う事が出来、最終的にワンダーウーマンが勝利する事によって爽快感が得られただろうに。

 ワンダーウーマンことダイアナ・プリンスは、前作から66年後の1984年は、スミソニアンで研究員として勤務している。
 その職にどうやって漕ぎ付いたのか、66年もの間何をやっていたのか、に関する説明は一切なされていない。
 観ている側は、その状況をただただ受け入れるだけ。
 ダイアナ・プリンスがどういった人物なのかに関してはあまり深く掘り下げておらず、あくまでも「主人公として動き回っている女性」でしかないのは、残念。
「スーパーマンvsバットマン」で颯爽と登場したワンダーウーマンは、スーパーマンに劣らぬ力を持っていて、スーパーマンを驚かせた程だった(同時に、主役の座をさらっていった)。が、続編の「ジャスティスリーグ」ではそこまで強い訳ではない、という設定に格下げされている。その続編の「ワンダーウーマン」では、強い事には強いが、無敵でもない、という設定になっている。本作では、石の置物の効力により能力が低下していたという事情があったにせよ、「常人より身体能力が高い」というレベルに落ちてしまっている。
 何故作品を重ねるごとに弱くなっていくのか。
 あまりにも無敵にすると敵もそれに合わせて強力にしなければならず、脚本が書き難くなる、という問題もあるのだろうけど、それだったら脚本を練りに練れば言い訳で。時間も予算もあるのだから。

 前作で壮絶な犠牲を払ったスティーブ・トレバーは、思いがけない形で復活。
 といっても、死亡した事に変わりはなく、ラスト辺りで退場(退場する瞬間は観れない)。
 次回作でまたまた復活するのは有り得なさそう。

 ワンダーウーマンのライバルとして、ミネルバことチーターが登場するが、元は中年に差し掛かった、冴えない女性とあって、迫力不足。
 作中では、ワンダーウーマンの能力をふとした事で手にしてしまった事で、「イケる女」になった、という風に描かれているが、眼鏡を取る以外に容貌が激変する訳ではない(ラストでチーターそのものになるが)。
 ミネルバを演じるクリステン・ウィグは、不美人ではないが、ミス・イスラエルだったガル・ガドットの横に並ぶと、顔も身体付きも終始「ただのオバサン」に過ぎなかった。
 もう少し若い女優を起用し、変身前は肥満で不細工だったのが、変身後は痩せて美人、といった演出は出来なかったのか。ハリウッド映画では俳優が役作りの為に体重を激増させたり、激減させたりする事がよくあるので、撮影中にそうする事も出来たと思うのだが。

 マックス・ロードは、強大な力を手に入れるが、元々気の弱いペテン師に過ぎず、悪に染まり切れず自滅。
 バットマン・シリーズで登場する、悪である事に何の躊躇も見せず、寧ろ楽しんで悪行に手を染めるジョーカーと比べると、ただの雑魚。ジョーカーが登場していたら、あっという間に手下にされ、利用され捲っていたと思われる。
 演じていたペドロ・パスカルは、優男というか、童顔の俳優で、気の弱いペテン師、という役柄には適していたが、終始その顔のまま。「悪」には相応しくない。
 奇妙な事に、ペドロ・パスカルはこれまで自分が観て来た数作品(イコライザー2、キングスマン・ゴールデンサークル)でも悪役を演じている。いずれでも最終的には呆気無く倒されてしまう。何故優男っぽい顔にも拘わらず、悪役で起用されるのかは不明。
 顔に似合う役柄で登場するのを観てみたい気がしないでもない。

 クレジット前に、1970年代のテレビシリーズでワンダーウーマンを演じたリンガ・カーターがカメオ出演。
 何故登場したんだと思ったら、アステリア役だった。
 こういうやり方があったか、と納得。
 DCエクステンデッド・ユニバースは、当初は過去のDCコミックス関連の実写版を否定するか、そもそも無かったかの様なぞんざいな扱いをしていた。
 それが原因からか、マーベルスタジオより先立って実写版を製作していたのに、興行的にも、批評的にも、マーベルに後塵を拝す結果になってしまっている。
 その反省からか、ここ数作からは過去の作品にそれなりの経緯を払うようになってきている。「ジャスティスリーグ」では、スーパーマンが再登場した際、1970年代に公開されたスーパーマン(故クリストファー・リーブス主演)の音楽を使ったし、本作ではリンダ・カーターを起用。
 これによりDCエクステンデッド・ユニバースの興行収入が大幅アップするとは思えないが、過去の作品のファンにも受け入れられ易くなっているのはいい事である。
 本作でリンガ・カーターがアステリアとして登場してしまった為、次回作ではもう少し活躍が観られるのか、という期待を持たせてしまっているが(新旧のワンダーウーマンが起用するとなると、脚本がますます難しくなるし、リンダ・カーターも70代というから、多分無いと思う)。

 ワンダーウーマンは、早くも更なる次回作が決定しているが、もう少し強力な敵と戦ってもらいたい。
 監督も、そろそろ変えた方がいいと思う。
 制作も、早めに進めた方が。
「スーパーマンvsバットマン」ではまだ30代を迎えていなかったガル・ガドットも、既に30代半ばに差し掛かっている。
 男性のコスチュームドヒーローは、男優が40代、50代になっても支障は無いが(オッサンなのに頑張ってるな、とは思うが)、女性の場合、40代、50代の女優が露出度の高いコスチューム姿で暴れ捲るのを見せられるのはきつい。10代の鑑賞者からすれば、自分らの母親の世代が演じている事になってしまう。それでは高い興行収入は見込めない。美人だろうと、スタイルが良かろうと、オバサンは結局オバサンなのだから。

 劇場の回転率を重視する最近の映画にしては、上映時間が151分と長い。
 間延び感があるので、もう少し編集して、短くしても良かったのでは、と思わないでもない。

 本作は、2020年前半に公開が予定されていたが、コロナウィルス感染拡大により公開が夏に延期され、夏にも収束する気配が無かった為年末に延期。
 アメリカでは年末でも収束の気配は見せていなかったが、これ以上延期出来ないとの判断からか、日本ではアメリカに先駆けて公開された。
 007最新作も2020年の公開が翌年にまで延期される等、コロナウィルスは映画界に多大な影響を及ぼしている。









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