そぞろある記

2004/05/05(水)17:38

野鳥の始鳴調査

今から30年前、どの鳥が何時から鳴くか知りたくて、始鳴調査をしたことがある。 提案をしたら5人ぐらい集まった。 御殿場線駿河小山駅を夜9時過ぎに降りて、西丹沢の山から明神峠、三国峠を経て山中湖までを夜通し歩きながら鳥の鳴き声聞き分けていくのである。 前年に野鳥の会に入り、レコードやラジオ、テレビの「自然のアルバム」などで鳥の鳴き声の勉強をし、各地に鳥を見に行ったりしていたので、聞き分けには多少の自信はあった。 全行程15キロ位の内、3分の2が上りである。 昼間だったら冨士スピードウエイを見下ろす尾根道を、遠くの夜景を見ながら上る。 夜行性のヨタカやトラツグミが近くで遠くで鳴く。 フクロウ、アオバズク、コノハズクの鳴き声を聞きながら、木の間越しに星を見て歩く。 砂利道の比較的広い道で途中に朽ち果てたバス停がある。明神峠付近は狭くくねった道になり、こんな峠道を昔、乗り合いバスが通っていたことに驚く。 最初に鳴いた鳥は、ミソサザイかキビタキだと思う。でも地鳴きのような声でよく分からなかった。一応記録ではミソサザイにしたような気がする。 後は順番をつけるのが無意味なくらい一斉に鳴き始めた。 三国峠付近では斜面の草地にオオジシギの繁殖地があるようで、まだ空を見上げても鳥の姿が識別できないような暗いうちから、頭の上に落ちてくるのではないかと思えるようなオオジシギのディスプレイフライトが始まっていた。 山中湖の東岸の山の上にある三国峠のパノラマ展望台付近で夜が明けてきた。 昇る朝日を背に受けて、山中湖越しに見える朝日を浴びた富士山を見た。いろいろな場所でいろんな時間の富士山を見たが、あの時の富士山は忘れられない。 G.W.には珍しいぐらいの寒気が訪れていて、夜明けの寒さは厳しかった。 道路を外れて、遅霜の立つ斜面を一気に湖畔まで下った。 平野付近の湖畔のベンチで持参したおにぎりを食べたが、近くのヨシの中で鳴くオオヨシキリのギョギョシ、ギョギョシの鳴き声に合わせるように震えながら食べた。 もう一頑張りで旭が丘付近の水場あたりで鳥の姿を堪能し、旭が丘のバス停のレストランが開くのを待って暖かいラーメンを食べた。 後年車やオフロードバイクで何度か同じ道を通ったが、あの夜間行軍が一番きつくて一番楽しかった。 学生時代に鳥を見に行くのはほとんど夜間行軍ののりだった。 軽井沢では、夜中に軽井沢の駅に着き、鹿島の森から離れ山、星野温泉、千ヶ滝まで歩き 最後は草原の鳥を見るため浅間山の麓の草原を歩き回り、終着地が信濃追分駅。 奥日光や、三宅島なども夜中や明け方から最低8時間は歩き続ける。 新入会員の女の子などは、こんなはずではなかったと泣きそうな顔をしてついてくる。疲れて動けなくなった女の子を交代でおんぶしながら鳥を見続けたこともある。 よく冗談で体育会野鳥の会なんて言っていたが、またあの時のようなハードな探鳥会も経験してみたい。

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