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JAFの趣味なページ

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日本のMD


スタンダードSM-3
発射されるスタンダードSM-3 米海軍公式サイトより転載

MDもしくはミサイルディフェンス・ミサイル防衛(以下MD)。
最近のニュースや新聞でよく耳や目にしたりする言葉です。
簡単な説明は紙面などでもされていますが、今回は少し詳しくやろうと思います。

まずMDは何かというと、簡単に言えば敵が撃ってきた弾道ミサイルがまだ着弾しないうちに
こっちの対空ミサイルで撃墜して地上の損害を防ごうという構想です。また発射前に敵の弾道ミサイル基地を航空攻撃などで破壊してしまうのもこれに含みます。
もちろん自衛隊は専守防衛を建前としている以上後者の方式は取れません(可能・不可能の論争はつづいています)ので必然的に前者を採ることになります。
ただし防衛庁の頭脳である防衛研究所は発射準備段階の弾道ミサイル基地攻撃も法的には可能であると発表しており「法理上、武力を行使して相手国のミサイル基地を破壊することができる」と結論付けています。自衛隊による敵基地攻撃についての発表はこれが初めてではなく1956年「座して自滅を待つべしというのが、憲法の趣旨とするとは考えられない」との政府答弁があり、また1965年2月に「我が国へのミサイル攻撃を受けた際の相手基地撃を自衛権の範囲として認める」という政府見解が出されています。自衛隊には現在のところ北朝鮮の基地を攻撃できるような装備はありません(支援戦闘機の航続距離が足りません)が、空中給油機導入も決定しているので10年後にやろうと思えば敵基地への攻撃も可能になっているでしょう(それでもF-2の対地攻撃能力を考えるとやや不安ですが)。
そして現在自衛隊が進めているMDは二段構えの対空網で弾道ミサイル(主に北朝鮮のノドン・テポドンを想定しているものと思われます)
を撃墜しようとするものです。
一段目は「こんごう」型イージス艦(正確にはイージスシステム搭載ミサイル護衛艦)を改修してRIM-161 SM-3を搭載可能にし、そのSM-3を使って撃墜します。
具体的にはまずアメリカの監視衛星などのアメリカ系情報筋からミサイルの発射警報を受け、海上にいるこんごう型イージス艦からSM-3を発射、多段式のSM-3は最終的にキネティック弾頭と呼ばれる部分だけになって、大気圏外で弾道ミサイルに直撃し破壊します。

こんごう

二段目はMIM-104パトリオットPAC3を使ったものです。一段目で撃墜されず地上の目標に向かって落下し始めた弾道ミサイルに対して発射し、これを撃墜します。
これだけだととても簡単そうに思えるのですが、こんなに上手くいくとは中々考えられません。

まず最初に弾道ミサイルの速度は落下時にはマッハ20に達するほど速く、戦闘機を撃墜したりするのとはわけが違います。この速度で動く物体に正確に命中させるのは困難です。
次によく言われるように発射から着弾まで10分程度、迅速な行動がなければ稼動する前に着弾してしまいます。もう一つ、それはパトリオットPAC3は射程が短く、重要都市や基地の周りしか防衛できないこと。つまり自衛隊基地の他には東京・大阪・名古屋・広島・福岡・札幌などの大都市の周りにしか配備されず他はカバーできない可能性があります。
そして何よりも莫大な予算を必要とします。最終的には1兆円を軽く超える予算が必要になると言われており、そのため各自衛隊でも戦車・護衛艦・戦闘機などを削減することとなりました。自衛隊からしてみればMD導入を決めたのは政府の政治的な話で、それで装備削減などえらい迷惑なのだそうですが真偽は不明です(笑)


さて、何故日本が最近になってMDを急に導入し始めるようになったかと言うと、数年前に起きたある事件が原因です(アメリカの輸出戦略もあるでしょうが…)
1998年8月31日、北朝鮮が「テポドン一号」とみられる弾道ミサイルを日本上空を通過するルートで発射しました。当時相当な話題になっていましたので覚えている方も多いと思います。
第一段目は日本海に着水、第二段と第三段目は東北地方を飛び越え、太平洋上に着水しました。これを北朝鮮側は人工衛星の打ち上げだと言い張っていますが、防衛庁の発表ではその弾道をこんごう型イージス艦「みょうこう」が追跡したところ地球の引力圏を脱出する速度ではないとのことで、弾道ミサイルだとされています。
日本の上空を飛び越えて太平洋上に着水したのですから当然政府や自衛隊の衝撃は大きく、MD導入の大きなきっかけとなりました。
政府は1999年11月に日本初の偵察衛星(他国の弾道ミサイル発射基地監視が目的と思われます)打ち上げを閣議決定、12月25日に安全保障会議においてアメリカのMDを導入するための基礎研究を行うことが決定して予算もつけられて急ピッチで話は進んでいきました。そして2003年12月19日にMD導入を閣議決定し日米それにオーストラリアを加えた共通防衛システムが構築されることになりました。

日本の防衛構想の簡単なことは先ほど書きました。なのでもう少し詳しく書くことにします。専門用語が出てきますがお許しください。
2003年3月28日、日本初の情報収集(偵察)衛星が種子島宇宙センターからH2ロケットで打ち上げられ、これによって独自の監視の目を持つことになりました。これによって発射の兆候をつかみ事前に準備しておくことや、外交努力を行うことによって発射を阻止することなども可能になりました。なお防衛庁では弾道ミサイルへの燃料注入段階で日本への攻撃意思ありと判断することにしています。
発射された弾道ミサイルの加速段階が終了した時点でコンピューターで弾道を計算して着弾地点を算出し、その着弾地点が日本の領域にあるかどうかで防衛出動の有無が決まります。政府は憲法第9条見解として集団的自衛権の行使を禁止していますので、現在の憲法を遵守するとなればこれは妥当な判断といえるでしょう。しかしこれは現在大きな争点になっており、例えば北朝鮮から米軍の戦略拠点であるグアムに対して弾道ミサイルが発射された場合日本の上空を通過しますが、これを「我が国を狙っていないから」で迎撃しないのでは日米関係に影響があるのではないかと言う意見もあります。
日本領域内に着弾すると判明した場合は自衛隊法第76条1項(内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃(以下「武力攻撃」という。)が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至つた事態に際して、我が国を防衛するため必要があると認める場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。この場合においては、武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成15年法律第79号)第9条の定めるところにより、国会の承認を得なければならない)に基づき防衛出動が行われMDが稼動します。
現在弾道ミサイルに関しては、国会の承認や内閣への報告がなくても事前に命令を与えておけば部隊独自に迎撃ができるように法整備が進んでいます。目標が数分で日本上空に到達する弾道ミサイルであることを考えればこれは当然の処置と言えますが、一部では『軍の暴走を招く』といった反対意見もあります。
(2010年追記 既に事前命令があればいつでも撃てるようになっています)



ここから直接の防衛手段について書いていきます。

前述のようにMDの第一段目となる「こんごう」型改修型、便宜上「改こんごう」としておきます。
改こんごうは弾道ミサイルが第一段目の加速を終えた段階で行動を開始、このとき自らのレーダーで弾道ミサイルを捉えていれば問題ありませんが、捉えられない場合もおそらくはデータリンクを使って位置を特定、データの入力を行うでしょう。
データの入力が終わったところで搭載されているスタンダードSM-3を発射、中間誘導は改こんごうからデータを送って行い、終端誘導はミサイル自らが赤外線誘導をします。
ミサイルは3段式のロケットモーターと弾頭、誘導装置一式でなり、そのロケットモーターを順次点火・加速後投棄していき最終的には赤外線誘導装置のついたキネティック弾頭のみが残ります。このキネティック弾頭が弾道ミサイルを直撃し破壊するのです。
現在SM-3は開発中で、初期型はアメリカ海軍タイコンデロガ級イージス巡洋艦「レイク・エリー」を改修してテストを行い迎撃に成功していますが、未だその能力は限定的なものです。
そのために日米の共同で射程延長・囮識別能力強化をおこなったSM-3ブロック2の開発が行われています。日本の担当は赤外線シーカーとその保護をするノーズコーン・キネティック弾頭・2段目のロケットモーターです。
現在海上自衛隊が配備を予定している7700t級新型イージス艦はこのSM-3ブロック2運用能力を最初から付加される予定です。(2010年追記 この記事を書いた時点ではまだ進水もしていなかったのですが、「あたご」型のことです。蓋を開けてみればあたご型はSM-3に対応していませんでした。代わりにこんごう型が順次改修を受けています。)

次に二段目のパトリオットPAC-3。日本に配備予定のPAC-3はMIM-104PAC-3/Conf.3と呼ばれるもので、それまではシルクワームやスカッドと言った短距離ミサイルしか迎撃できなかったパトリオットを改修して長距離弾道ミサイル迎撃能力を与え、弾数も4発だったのを16発に増やして迎撃能力を高めたものです。ただし射程はうんと短くなってしまい、それが現在問題になっています。(2010年追記 このPAC3の射程の短さなどを改良したものをTHAADと呼び、アメリカ・欧州で開発中です。)
ちなみにこの前の航空機迎撃型であるパトリオットPAC-2は航空自衛隊に配備されていて、航空祭などにいけば見ることもできます。(2010年追記 2010年6月、予定されていた全高射部隊にPAC3の配備が完了しました。きっと今年の航空祭で見られるでしょう。)
パトリオットPAC-3
パトリオットPAC-3。但しConf.3ではありません。


これらの迎撃体勢の鍵となるのが、航空自衛隊のバッジ(BADGE)システムです。
バッジシステムはごく簡単に書くと本来、日本の防空識別圏に進入した国籍不明機や不審機などの航空活動に対する、警戒監視・識別・兵器割当や要撃管制上のデータ処理を行う全国規模の自動化されたオンラインかつリアルタイムシステムです。
航空自衛隊の早期警戒機E-2Cや早期警戒管制機(AWACS)E-767、全国28ヶ所のレーダーサイトで24時間365日日本周辺の空を監視し、何か以上があれば即急に航空自衛隊にスクランブルをかけさせるものです。
つまりもともとは敵の戦闘機やふらふらと迷い込んだ旅客機などの航空機専用のシステムだったのですが、MD導入に伴って弾道ミサイルに対しても早期警戒任務にあたる事になり、そのためのシステム改修とレーダーの更新(FSP-XX 現在開発中)が施されます。
前述した発射警報・着弾点算出などはこのシステムによって行われ、まさに日本MDの肝といっても良いでしょう。

米軍方面では衛星からの情報の他に日本海にアーレイバーグ級イージス駆逐艦を常駐させて警戒に当る予定もあります。
まだ改こんごうもパトリオットPAC-3も新型バッジシステムもできていない現在はもっぱら米軍に頼る他はありません。
(2010年追記 6月時点で「こんごう」「みょうこう」「ちょうかい」はMDに対応完了、残る「きりしま」も今年中に改修が完了する予定です。また、PAC-3は前述したように予定されていた全部隊への配備を完了しました。 軍事は日進月歩ですね。)


以上です。
お付き合いありがとうございました。



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