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JAFの趣味なページ

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行け行け!攻撃ヘリコプター!

行け行け!攻撃ヘリコプター!
AH-1
MASDFより転載 ぐり様撮影


AH-1、AH-64、Mi-24、マングスタ、タイガー・・・現在世界には様々な攻撃ヘリコプターと呼ばれるものがありますが、今回はそれに関してです。

攻撃ヘリコプター(以下攻撃ヘリ)の誕生はベトナム戦争に遡ります。ヘリコプター自体が第二次世界大戦後にできた新しい機種であるということもありますが、意外と新しい分類なのです。対戦車ヘリコプター、戦闘ヘリコプターと呼ばれることもありますね。

ベトナム戦争においてアメリカ軍は、航空支援が地上部隊と比較すると少なくてすみ、小回りも効いて迅速で大量に輸送できる手段(ヘリボーン)としてヘリを多用していました。撃墜されたパイロットなどの救出を行うCSAR(Combat Search And Rescue 戦闘捜索救難)も担当しています。
ベトナム戦においてのアメリカ軍の基本作戦はサーチアンドデストロイ、すなわち斥候を敵のいると思われる周辺に多数配置し、どれかが敵と接触したらすぐに本隊がヘリで文字通り飛んでくるという作戦が使われました。これにはアメリカ軍も損害を出しますが、北ベトナム軍に極めて大きな損害を強要させることができました。
ところがヘリはヘリボーンやCSARのためにはホバリングを行わなければならず、その間は完全に無防備になってしまいます。そこにつけ込まれて北ベトナム軍の持つ携帯対空ミサイルSA-7や、待ち伏せされての一斉射撃などで大きな損害を出してしまっています。アメリカ軍の損害は1961~1971年の間に4500機以上と言われます。なのでヘリボーンを成功させるには一時的にでも周りの敵兵を高火力で制圧することが不可欠となりました。
当初はUH-1やOH-58・CH-47(ガンシップ型の通称バンバンバードw 65~67年の間のみ運用)といった既存の輸送ヘリや観測ヘリに重機関銃・ミニガン(バルカン砲を小型化したもの)・ロケット弾などを搭載してそれで制圧を行っていました。限定した地域への持続的な支援射撃は固定翼機では不向きで、また陸軍が自由に使えかつ陸上部隊に密接でき、そして開けた土地ならどこでも使えるヘリが支援の任務に選ばれたのです。低空からのヘリによる制圧射撃は非常に有効でその結果サーチアンドデストロイは大きな戦果を挙げるのですが、既存の輸送ヘリに大重量の銃火器を搭載したヘリでは性能に限界があり、火力支援専用のヘリの実戦投入が望まれました。

そこで誕生したのがAH-56シャイアンとそれが実戦投入されるまでの繋ぎとして位置づけられた、UH-1の再設計機AH-1です。結局のところはAH-56は開発遅延からキャンセルされたのでAH-1一本に絞られるのですが、それはまたAH-1を語る機会があればお話しすることにしましょう。
AH-1は1967年からベトナム戦争に投入され、空から強力な火力支援を行いました。改造輸送ヘリよりも重武装で性能もよく被弾にも比較的強い攻撃ヘリは期待通りの働きを見せました。


さて、ベトナム戦争が終結し攻撃ヘリはヘリボーン作戦への火力支援という任務を終えることになりました。もちろん現在でも火力支援は重要な任務の1つですが、それ1本というわけではなくなったのです。
代わって浮上してきた西側、NATOに対しての脅威がありました。それがソ連の支援を受けたワルシャワ条約機構機甲(戦車など)部隊です。NATOはワルシャワ条約機構に比べて戦車の保有数が少なく、質も悪く、また集結にも時間がかかると考えられました。
そこで攻撃ヘリに新たな任務が課せられました。「空からの素早い展開と、戦車に対する圧倒的な航空攻撃で進撃を阻むこと」それが攻撃ヘリの新たな任務でした。攻撃ヘリが対空戦力の貧弱な戦車や装甲車を攻撃して進撃を阻んでいるうちに、NATOの機甲部隊を集結させようという考えです。またNATOの戦車はワルシャワ条約機構の戦車に比べ、繰り返しになりますが数で劣り、また質でも劣っていると考えられたため、その差を埋めるという意味もありました。そこで攻撃ヘリは対戦車ミサイルを搭載するようになり、「対戦車ヘリコプター」と呼ばれることもある所以はここにあります。


攻撃ヘリは輸送ヘリより増しとはいえ被弾に弱く、最近のハイテク化でかなり改善されたとはいえ以前と悪天候に弱く、地上部隊には攻撃ヘリの天敵である対空ミサイル車両が随伴するようになり、また空から地上部隊は発見しにくくその逆は発見しやすいという攻撃ヘリの不利な条件は多々ありますが、空軍の攻撃機よりも遥かに友軍地上部隊と連携の取れた、密接な航空支援を提供できる攻撃ヘリは世界各国で開発され配備されています。
まず観測ヘリが偵察を行い敵部隊を発見して通報、それに応じて敵に見つからないように地面を這うような飛行(匍匐飛行)をして接近し、発見次第攻撃、攻撃後すぐさま移動して匍匐飛行を行い隠れる、そして観測ヘリから攻撃効果判定を受けるという戦術が基本です。観測ヘリの存在は攻撃ヘリを使う上では欠かせません。繰り返すように被弾には弱いので、車載機関銃でも落とされる危険性はあります。対空車両が随伴していればなおさらです。
航空支援は強力ですが、無敵ではないことを忘れてはいけません。

具体的に書けば、現在のアメリカ陸軍では攻撃ヘリ(AH-64)4機に観測ヘリ(OH-58D)2機で1個小隊を編成しており、これが1回の攻撃での1単位として機能します。基本的にこの小隊3つで1つの飛行隊が編成されており、その3つの小隊が、ちょうど長篠での鉄砲三段撃ちのように入れ替わり立ち代り攻撃を行います。仮にこのそれぞれの小隊をα・β・γ小隊とします。1回の出撃では1小隊をさらに2分して観測ヘリ1機と攻撃ヘリ2機のチームとなります。
攻撃ヘリの運用される戦域では前線から50km前後くらいの地点に設置された整備補給などを行う展開地(要するに前線基地)、そこから進出して待機する待機域、実際に攻撃を行う攻撃位置に分かれています。

まず最初にどこか1小隊の観測ヘリが偵察のため攻撃位置付近に展開します。ここでは仮にα小隊の観測ヘリを出撃させましょう。α小隊の観測ヘリが敵機甲部隊を発見、展開地に攻撃要請を行います。
この場合γ小隊は手持ちのヘリの中から指揮用の指揮官機である観測ヘリ1機と攻撃ヘリ2機を選び、待機域へと進出させます。この待機域は敵機甲部隊の状況や地形から適宜設定します。同時にα小隊と交代するためβ小隊から観測ヘリが出動します。これらは低空飛行で進出します。
この間にγ小隊指揮官は攻撃目標がダブらないように事前に攻撃目標を割り振りしておき、それからγ小隊が攻撃位置へと移動します。最初は地形追随飛行(地形に沿って障害物を回避しながら飛ぶこと)、最後には匍匐飛行で接敵します。
攻撃位置につくと、攻撃ヘリは指揮官の管制の下機甲部隊に対して攻撃を行います。当たり前ですね(笑)
弾薬が尽きるか燃料が危なくなってくるかしてγ小隊が引き上げる際、偵察を終えたα小隊の観測ヘリは一緒に帰還、γ小隊の観測ヘリは攻撃が終わった後にやってくるβ小隊の観測ヘリに情報を引き継ぐために一時的にその場に留まります。後はβ小隊観測ヘリが敵を発見、α小隊攻撃ヘリと観測ヘリ、それにγ小隊観測ヘリ出撃、攻撃、交代・・・といったローテーションを繰り返していきます。

Mi-24
チェコ陸軍のソ連製Mi-24ハインド


ところで湾岸戦争でのA-10攻撃機やAH-64攻撃ヘリの圧倒的な戦果から、「A-10とAH-64があれば戦車なんていらん」という意見が出たことがありましたが、それは間違っています。航空機は戦車などに比べて遥かに被弾に弱く、また持続的な戦闘ができないためにそれだけで戦線を維持することはできません。イラク戦争でのけっこうな損害をA-10やAH-64が出していることからもそれが分かります。


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