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JAFの趣味なページ

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戦艦の砲術 第1回 砲撃に必要な装置

飛行機サイトのはずなのに更新が基本船のことってどういうことなの。

 このシリーズでは、前半が戦艦の砲撃に必要な装置の解説、後半で砲術、すなわち当て方の解説をしていきたいと思っています。

今回(次回がいつかは未定)取り上げるのは、第二次世界大戦頃までの戦艦の主砲射撃に重要な装置、その中でも主砲そのものです。予定では前半は一回で終わらせるはずでしたが、書いていたら長くなったので分けます。

予定ではこんな感じかな?

前半
・主砲破壊力編 ← 今ココ
・主砲命中率&照準装置編

後半
・砲の撃ち方編(多分前後に分かれる)
・どうやって当てるか編

今回例として取り上げるのは大日本帝国海軍戦艦「長門」です。長門自身の能力云々を詳しく言うつもりはありませんので、あくまで写真引用くらいですけれど。


戦艦長門 ブルネイ
1944年10月にブルネイで撮影されたといわれている「長門」です。トリミングをしたのでここでは長門しか写っていませんが、原画では左側に大和と武蔵が停泊しています。
長門はこの時期第二艦隊第一遊撃部隊第一部隊(同第二部隊とあわせて通称栗田艦隊)に所属しており、10月18日にリンガ泊地を出航、20日にブルネイに入港、給油後22日に捷一号作戦(レイテ沖海戦)のためブルネイを出航しています。

その後作戦中に爆弾2発を被弾した長門は内地へ帰還後横須賀に繋留、副砲・対空砲・マスト・煙突といった装備を撤去されながらも終戦まで生き延び、最終的に原爆実験の標的として使われ沈没しました。

さて、長門は主砲に連装砲塔4基、副砲はケースメート式の14cm砲、艦首は友軍の連結機雷に引っ掛かっても大丈夫なように設計、と大和に比べてやはり前時代的です。しかし戦艦の主砲の撃ち方というものは第一次世界大戦後の戦艦は大体どれも同じです。


 主砲の射撃に重要な装置は3つ

1、主砲

2、方位盤

3、射撃盤

です。今回は主砲編です。


1、主砲

四十五口径三年式四十糎砲
長門の三年式四十五口径四〇糎砲。40cmと書きながら、実は内径41cm。
長門の主砲は40cmとか、40.6cmとか散見されるけれど本当はピッタリ41cmだぞ!
ちなみに2番砲塔の上についているでかいものは砲塔用10メートル測距儀。
これがついた昭和初期くらいはまだ主砲塔測距儀が有効な交戦距離が想定されていました。

相手を打ち倒すのが目的の戦艦である以上、当然主砲は重要です。主砲がなかったら砲術もへったくれもありません。そして主砲の能力を論ずるに当たって、特に重要なのは、当たり前ですが「仮想敵国の戦艦を倒せること」です。

長門が建造された頃の日本海軍の主な仮想敵国はアメリカとイギリスでした。
特に、元海軍技術少佐の故福井静夫氏はその著作の中で、英海軍クイーンエリザベス級の影響を大きく受けているであろうことを記しています(「日本戦艦物語2」P162)。
クイーンエリザベス級は15インチ(38.1cm)砲を搭載していたことから、これを打ち破り、また近い将来登場するであろうさらなる巨砲搭載艦に勝利するため、当時の技術の限界でもあった41cm45口径砲を採用しました。

一方アメリカも同様に「日本は将来16インチ砲を搭載した艦を建造するに違いない」と踏んでメリーランド級の建造を開始。その建造中のメリーランド級を長門建造中の日本はできる限りリサーチして・・・と戦争になる前から、我が方が勝てるようにお互いに努力を重ねていました。

さて、主砲にも色々と論ずるべき点はありますが、相手を打ち倒せるかという一点に絞ればやはり「威力」が重要です。

戦艦の主砲の徹甲弾は装弾筒付翼安定徹甲弾だとかの金属の特性を利用した洒落た砲弾ではなく、速度と砲弾重量をもって敵装甲を運動エネルギーのみでぶちぬく(とは言え狭義の運動エネルギー弾ではない)漢溢れる代物です。敵の装甲を貫いて大ダメージを与えたいです。大きな破壊力を持った砲弾を打たねばなりません。
その砲弾は敵に当てたいです。少なくとも至近弾くらいには持ち込みたいところ。命中率も必要です。
本当は射撃速度も・・・と言いたいところですが、よっぽど極端な差がない限り砲戦で連射速度は問題になりません。その辺はまた後の機会にお話しましょう。

一つずつ解決していきましょう。


まずは敵装甲をぶちぬく大破壊力砲弾です。

装甲を貫くのには巨大な運動エネルギーが不可欠。それを相手にどれだけ有効に伝えられるか、という問題もありそれが被帽付徹甲弾に繋がったりしますが、ここではごく単純に「速さ^2×質量÷2」の運動エネルギーで考えましょう。

要するに打ち出す速度を速くしてやるか、砲弾を重くするかしてやれば破壊力は上がります。では・・・


1、初速を速くするには?
 
砲弾は、砲の中に砲弾本体を装填した後、その後ろ側に装薬と呼ばれる火薬を設置、この火薬を燃焼させて発生するガスの圧力で、砲身内で加速しています。そして燃焼ガスの速度と砲弾速度が等しくなるか、砲弾が砲身から飛び出したら加速終了、後は空気抵抗で減速します。

と、いうことは装薬を増やして圧力を高めてやったり、加速距離そのものを長くしてやればいいわけです。できればどっちもしてやりたい?
いいでしょう。ではここに、主砲の口径は同じでも、砲身が長くなり(口径長が増える)、装薬を増やした大砲を用意しました。

アイオワMk.7
口径変わらず、砲身を長くした大砲の代表格。アイオワ級戦艦のMk.7。

その結果初速は見事に向上、これなら威力の増大も期待できそうです。

が。
 


残念なことに、空気抵抗というものは物体が速ければ速いほど大きくなっていきます。
その結果、長砲身砲から打ち出した弾は近距離では速いままでしたが、20kmは飛んだ中距離以後は短砲身とあまり変わらなくなってしまいました。
戦艦の想定交戦距離は20km~30kmです。これでは今一つ破壊力が増えません。
さらに悪いことに、砲身が長くなったせいで砲が重いです。しかも何発か撃ってみると熱で変形・軟らかくなった砲身が垂れ下がり始めます。見た目には中々わかりませんし、問題なく撃てるレベルですが数十km先では精度が落ちてしまいます。
その上、装薬が多いために砲身へのダメージも大きいようです。砲身命数(砲身の寿命)も落ちてしまいました。

どうやら戦車砲くらいの交戦距離ならともかく、戦艦の交戦距離に高初速化は今一つのようです。近づけば高初速の恩恵は大きいのですが、そうすると戦艦のアドバンテージが・・・では・・・?



2、砲弾重量を大きくするには? 

砲弾重量を大きくするのには2つの道が考えられます。一つは砲弾を長くして同じ口径で重くすること。もう一つが単純に口径を大きくして砲弾も大きくすることです。

前者はアメリカが「超重量砲弾」(スーパーヘビーシェル:SHS)という名前で実用化してますね。超重量砲弾はこの思想の顕著な例で、他国でも大なり小なり砲弾を長くして重量を稼ぐことはしています。日本の九一式徹甲弾なんかもそうですね。
この超重量砲弾は、初速は下がってしまいますが砲弾が重いので空気抵抗による減速が小さく、かなりの遠距離での大落角でとても有利になります。先ほどのMk.7も超重量砲弾のおかげで、20000ヤードから30000ヤードでは大和の装甲は貫けないのに、35000ヤードの距離でなら大落角砲弾になるので大和の甲板装甲を貫ける可能性があったりします。

ただこの砲弾、短所もあります。まず、当然射程距離が短くなります。そして砲弾がの縦横比が長くなると、弾道の安定性が悪くなります。命中率が下がってしまう可能性がある、ということですね。


と、いうわけで残ったのが大口径化です。

戦艦三笠は30cm砲、戦艦金剛は35.6cm、戦艦長門は41cm、そして戦艦大和は46cmと戦艦の主砲は大口径化を進めてきました。大口径砲を作るというのは容易なことではありません。大きな砲身を製造できる工場、質のいい鉄、高品質な鋼鉄を作れる冶金技術、遠距離戦で実用できる精度を生み出す工作技術・・・まあ日本は列強の中ではあまり良くないほうだったのですが・・・研究は他国以上に力を入れ、最終的に46cm砲に到達できました。

主砲弾
大和ミュージアムに展示してある軍艦の主砲弾。手前3つが46cm砲用。
その奥が長門の41cm砲用。一番手前が九一式徹甲弾。二番目が三式弾。

大口径化のいいところは、縦横比を同じままに砲弾を大きく、重くできます。ベストバランスな砲弾の形状を保ったまま、破壊力の絶対量を増すことができます。容積が大きくなるので中の炸薬だって増やせます。

精度の低下は多くの場合起きてしまいますが、砲弾の形状は最適なので超重量砲弾を撃つよりだいぶいい弾道安定を生み出します。砲身命数も小さくなることが多いですが、砲身自体も厚くなっているので装薬だけ増やすより良好です。何かに特化することもなく、とっても「普通」に破壊力を増やすことができる、それが大口径化です。

もちろん短所はあります。砲がとても重く、大きくなるので、搭載するには見合った大きさの船体が必要です。砲の反動も大きいので、安定性も気にしなくてはなりません。船体も重いほうが有利ですね。そうでないと日清戦争の三景艦みたいなことになりかねません。
大口径化が進んでくると、載せる船も大きくなる。大きな船を作るのには高い造船技術が必要です。すると技術的に脱落する国が出たり、そんな船を作る予算を捻り出せなかったり、国が抱えている事情で大きな船を作るのは不都合だったり、といった様々な弊害が出始めます。

そういった弊害を解消するのと、弊害を飲み込んで大口径砲搭載戦艦を作るのとでどちらがいいかとなると、これはもう国によって違います。それぞれ国土と周辺の地理も違えば、敵国と考えている国も違いますし、財政事情も違い、軍隊の基本方針も違います。

歴史の結果から言えば、列強各国は長門と同クラスの戦艦を建造するのは割と楽だったのですが、それ以上となると必要性の問題やらパナマ運河の幅やらお金と敵国的に戦艦2隻より潜水艦つくって嫌がらせしたほうがよくね?といった事情で大和と同格の戦艦はどの国も渋るレベルだったということです。




結論


単純に主砲破壊力を向上させたいなら、

結局大口径化が近道








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