・・・戦艦百隻?1991年の湾岸戦争のときです。 この時ペルシャ湾とベンガル湾に多数のアメリカ海軍艦艇が集結しました。 そして当時のマスコミはこう報道しています。 「ペルシャ湾にアメリカ軍の戦艦百隻が集結」 普通の新聞の読者は「へえ」で読み流しますし、ニュースで言っていても「百隻」のところだけ聞いて流すと思います。が、実はこの報道には重大な誤りがあるのです。どこだと思いますか?念のため言っておきますと「百隻」のところではありません。 「戦艦」 これです。 ここで「戦艦」というものがどういう物なのか。ちょっと手元の電子辞書を引いてみましょう。 1、戦争用の船。軍艦。 2、軍艦の一種。船体・砲力の大きな軍艦。戦闘艦。 1の意味で見れば間違っていないようにも見えますが、この1の意味の「戦艦」というのははるか昔それこそローマ帝国や三国志の時代で使われている意味です。現在の艦艇には通常適用されません。 また近代的な「戦艦」も日清戦争の頃、日露戦争の頃、第一次世界大戦の頃、第二次世界大戦以降とうつり変わっていきますが、今回は現代の話をしているので第二次世界大戦以降ということで良いでしょう。 では第二次世界大戦以降の戦艦の定義とは何か。実はかなり曖昧なんです。とりあえず言えることとして ・主砲が大きい(内口径28cm以上位からと思われます) ・自分の主砲の直撃に耐えられる装甲を持っている(対応防御と言います) といったところです。曖昧でしょう?しかし両方を持つと必然的に「大和」や「アイオワ」のような艦になるのだから不思議です。 分かりやすく写真を出すとこれです。 兵器は相手に勝たなければならないので、相手が強力な戦艦をつくれば自分はもっと強力な戦艦、それをみて相手がもっと強力な・・・と、モロボシダンが見れば「血を吐きながら続けるマラソンですよ」と言うようなことが続いてどんどん巨大化していくわけです。その終点が「大和」だったわけですね。 少し話がそれました、戻します。 では湾岸戦争に参加したこの意味での「戦艦」は何隻だったのかといいますと、なんと2隻だけです。アイオワ級戦艦「ミズーリ」と「ウィスコンシン」、これだけです。他は「航空母艦」を除くと「巡洋艦」「駆逐艦」「フリゲート」「コルベット」といった類のもっと小さい船なのです。 きっとマスコミは「軍艦」の意味で「戦艦」という言葉を使ったのだと思いますが、「戦艦」と「軍艦」は全く違う意味の言葉なのです。英語にすると「戦艦」は"Battleship"、「軍艦」は"Warship"とはっきり区別されています。 以上でマスコミの報道が誤りであったことは納得いただけたと思います。 私個人としてはマスコミは報道を正確にすべきだ、と考えております。 確かにニュースや新聞はそんな軍事関係に詳しい人あてだけにするものではないのですから、一般の方々にとっては「どうでもいい」ことかもしれません。それにニュースを作っている人だって全知全能の神ではないのですから間違いがあるというのも分かります。しかしやはり「マスコミ」という責任ある組織である以上、責任を持って正確な報道を心がけていただきたいものです。 おまけ 2001年11月15日、国会の参議院予算委員会で福島瑞穂参院議員はこう発言しました。 「B-52が、実際に艦船から飛び立ち、攻撃をするわけです。」 これを実現させるとこんなことになります。ぜひご覧ください。 艦載戦略爆撃機 政治家の方々にもちゃんとした知識を持っていただきたいものです。 ジャンル別一覧
人気のクチコミテーマ
|