星見当番、アンの誕生日を推測する。前編
こんばんは、星見当番です。常夜の占い系ブログと銘打っておきながら、定番の新月予報とカレンダー以外で占い系の話題を書くことが少なくなっていました。たまには占い系の話もしようじゃないか、ということでこんな話。【その1 あなたはよき星のもとに生まれ】当番、最近『赤毛のアン』原書に挑戦していて、二週間くらい前からちょこちょこ読み進めています。買ったのはちょうど、会社の行き帰りに読む本をきらしてしまって自分の本棚を眺めても「今読みたい本」がない、新刊本の広告を見ても心動く本がない、という危機的状況でした(笑)。当番は「ぼのぼの」のように常に脇の下のポケット(本当はバッグの中)に「何か読むもの」を入れておかないと、血中活字濃度が低下して出先で行き倒れてしまうのです。おかーさーん、お腹すいたよー、と台所を徘徊する子供のようなうつろな目で本屋をさ迷っていたところ、ペーパーバックの棚に‘Anne of Green Gables’と‘Anne of Avonlea’の二冊が置いてあったのでふらふらと買いました。日本語じゃない分、噛み応えもお腹もちもよさそうだったし(^^;)☆\(--;)で、‘Anne of Green Gables’のどこが占い系の話なのかと言うと。これ、表紙をぺらっとめくったところにこういう言葉が書いてあるのです。‘The good stars met in your horoscope,Made you of spirit and fire and dew.’豊富な注釈つきの松本侑子訳『赤毛のアン』によれば、この言葉は十九世紀イギリスの詩人、ロバート・ブラウニングの詩‘Evelyn Hope’の一部。同じく松本侑子訳によるこの言葉の意味は「あなたはよき星のもとに生まれ、精と火と露より創られた」。日本における『赤毛のアン』最初の翻訳者、村岡花子による訳では「活気と火と露」となっていた記憶があります。この「精(活気)と火と露」については、巻頭だけではなく作中にもアンの気質を描写する言葉として引用されていたので当番もこの言葉(の日本語訳)には馴染みがあったのですが、元の英語に接したのはこれが初めてです。「よき星のもとに生まれ」が‘The good stars met in your horoscope’だったとは。starsと複数形ですから直訳すると「よき星(たち)がホロスコープにつどって」なんですね。【その2 よき星「たち」って何なのか】「精と火と露」うんぬんは、元の詩では十六歳で死んだ美しい少女、イヴリンについて言われた言葉です。『赤毛のアン』ではこの言葉を、そっくりアンの性質を指すものとして使っています。第22章に、村岡花子訳に従えば「全身これ活気と火と露」でできているアンは喜びも悲しみも人の三倍も強く感じる、と書かれている箇所があります。いかにも瞬間湯沸かし器搭載のロマンチスト、アンに相応しい感じがします。しかし今、当番の興味を引いているのは後半の「精と火と露」ではなく前半「よき星々がホロスコープにつどい」の部分です。この詩が書かれた十九世紀イギリスで占星術の知識がどれだけ一般市民に浸透していたか当番にはわかりませんが、占星術で「よき星」と言ったら、特に‘The good stars’とわざわざ複数形で定冠詞までつけて書かれたらそれがどの星とどの星を指すかは決まっています。木星と金星です。伝統的な占星術では、木星と金星を吉星(ベネフィック benefic)、土星と火星を凶星(マレフィック malefic)としています。太陽・月・水星は中立です(なお土星以遠の天王星・海王星・冥王星は強いて分類するなら「準マレフィック」とされることが多いです)。元になった詩では、「よき星々がホロスコープに‘つどい’」となっています。これは「木星と金星の合(角度差5度以内で隣り合うこと)」を思わせます。もしもこれら二つの星が吉角とされる60度や120度を作っていたとしたら、‘meet(つどう)’という感じはしませんものね。木星と金星の合というのは、実に華やかな取り合わせです。両方とも、とても明るく輝く星ですからね。もし、出生図にこの配置があって、その人が生まれたのが夜明け直前か日没直後だったとしたら、生まれた瞬間の空に二つの吉星が輝くのが見えてとても美しいことでしょう(ただし、この合が日光に邪魔されない程度に、太陽から離れているというのが条件ですが)。【その3 アン・シャーリーのホロスコープを想像する】「よき星々がホロスコープにつどい」と謳われたのは実際はアン本人ではなくイヴリンという少女ですが、この「よき星々」を木星と金星の合と考えるとまさにアン・シャーリーのホロスコープとしてお似合いの配置のように思えます。木星は最大の幸運星、「拡大」「ひろがり」を表す星。金星は美や芸術を司る星。木星と金星の合は「美」が「拡大する」と読めます。木星には「際限がない」「歯止めが効かない」という短所もあるので(笑)、ほとばしる想像力や「美しさを求める心」の暴走にストップのかけられないアン・シャーリーの短所にもこの配置はぴたり当て嵌まります。(美しさを求める心の暴走→黒髪に染めようとして結局緑色に染めてしまう。大人になってからも、そばかすを薄くする塗り薬と間違えて羊のマーキングに使う真っ赤なインクを鼻に塗りつけて大事なお客様の前に出たことあり。)占星術の本をひもといてみると、木星と金星の合にはこんな解説が。(松村潔 著 『完全マスター 西洋占星術』より)(木星と金星の)【合】は、木星が公的な場での強さを表すので、結婚式などセレモニーや社交的な場で大変に目立つ、見せるための魅力に通じてきます。豪奢な趣味になりやすく、何かと大げさなところがあります(当番註:笑)。もし、ひねった魅力に関心がある人ならば、このような金星と木星のアスペクトを持つタイプを嫌うかもしれません(当番註:でしょうねえ…)。しかし、木星の示す派手さがストレートに出ているだけで裏はありません。家族関係や近所づきあいは良好でしょう。当番、アン・ブックスを読みながらときどきアンの出生図について空想することがあります。アン・シャーリーの正確な生年月日や出生時刻は作中では明らかにされていません。唯一の情報は第一巻でアン自身が言う「この三月で十一歳になったの」という言葉だけです。生まれた年についてはとあるマニアの人が試みに作成した年表によると、どうやら1866年らしいです。(その年表を見たいという、当番同様の「お好きな皆様」はこちらのリンクから赤毛のアンツッコミ研究会に行って「赤毛のアンと世界の動き」をご覧ください)「三月生まれ」ということはアンのサン・サイン(太陽のあったサイン)は魚座か牡羊座のどちらかです。とめどのない想像力は魚座を思わせ、短気で早とちりなところ、負けず嫌いなところは牡羊座を思わせます。まあどちらのサインであっても「地に足がついてない」ところは同じです(笑)。「よき星々がホロスコープにつどい」だから、これでアンの生まれた時に本当に木星と金星の合があったりしたら当番喜んじゃうんだけどな、とStargazerで1866年3月の星空を出してみたりしたのですが。アンが生まれたとされるこの年、木星は山羊座を運行中。金星はというと3月前半は魚座、後半は牡羊座を運行していてどう転んだってアンのホロスコープで二つが合になる可能性はないみたいなんでした。ちとがっかり(^^;)。さて題辞の引用どおりではないにしても、西洋占星術の見地から言って「精と火と露」なアンに相応しい星の配置になる誕生日はいつになるでしょう。1866年3月、動きの遅い天体から順に言うと土星が蠍座で逆行中、木星は前述の通り山羊座(順行)。火星は3月26日の途中まで水瓶座でそれ以降は魚座に移動。太陽は3月20日までが魚座、21日に牡羊座入り。金星は前半は魚座で3月16日に牡羊座へ移動。水星は上旬が魚座、11日から牡羊座に入ります。動きの速い月はというと、3月1日~2日は乙女座、3日~4日は天秤座、5日~8日は蠍座、9日10日は射手座(3月10日が下弦の月)。11日~13日が山羊座、14、15日が水瓶座、16、17日が魚座(17日が新月)。18、19日が牡羊座、20、21日が牡牛座(21日が春分で太陽が牡羊座入り)。22、23日前半が双子座、23日後半~25日が蟹座(23日夜が上弦の月)。26日~28日の朝までが獅子座、28日の午前~30日夕方までが乙女座、30日の夜と31日は天秤座です。当番といたしましては、アンの火星サインは水瓶座であってほしいところです。女性のホロスコープにおいて火星は「恋愛対象としての男性の好み」を表します。アンの子供の頃のライバルで後に恋人・夫となったギルバートを見る限り、魚座か水瓶座どちらか、と言えば水瓶座的かなと思われるので(笑)。そうすると、アンの誕生日は3月26日以前ということになります。金星は3月前半が魚座で後半が牡羊座ですが、どちらがアンに相応しいでしょう。美しいものを愛し、想像力豊かなアンには金星魚座が(内面的には)合うような気がしますが、魚座は金星が「高揚」するサイン。金星がパワーアップしているのにもかかわらず、あの強烈な赤毛と雀斑、やせっぽちな外見(初登場時)というのはいかがなものか(笑)。ちょっと繊細さに欠け、がさつな雰囲気も出てしまうのですがやはりアンの金星サインは牡羊座の方が似合いそうです。少なくともアンは初登場時から大きな灰緑色の目が印象的だと描写されているので、「目」を支配する牡羊座にあった金星がその目に影響を与えている、と言い張ることもできそうです。水星は魚座か牡羊座のどちらかです。牡羊座の水星なら新鮮なもの、新しいものに興味を持つ好奇心旺盛なタイプになるし、魚座の水星なら想像の世界を言語化する能力に長じます。どちらになっても、アンに合いそうです。もし水星が魚座であれば11日以前生まれなので太陽も魚座、火星が水瓶座で金星は魚座、月サインは乙女座・天秤座・蠍座・射手座のいずれかになります。さて、話が前後しますが、26日以前生まれで火星が水瓶座ということになると月サインが獅子座である可能性が消えます。アンに似合いそうな月サインは当番の偏見では火か風、ひょっとして水はあり得るかもしれないけれどあの性格からして月が地のサインということはないだろうと踏んでいます(笑)。なので、とても魅力的な候補日であった「春分の日生まれ」は消去となります。太陽が魚と牡羊の境目生まれというのはとても似合っている気がするのですが、この日は月が牡牛座にあるからです。3月の初め生まれで月が乙女座、というのもあり得ない気がします。これは当番自身の月サインが乙女座であるためで、どう考えても当番の中の「月サイン乙女座像」とアン・シャーリーの人物像が一致しないためです。なお、アン・ブックスの著者であるL.M.モンゴメリ自身は出生時の月が乙女座で太陽が射手座です(実は当番と同じ取り合わせ)。(なお当番は、モンゴメリ自身の持つ月サイン乙女座の性質が、そっくりアン・ブックスのマリラ・クスバートに出ているのではないかと見ています。マリラはある種の乙女座の性質を実によく体現しています。)この後、もうちょっと続くのですが熱くなりすぎて久々に字数制限をばくらってしまいましたので、後編へ続く(えー)!