星見当番の三角テント

今夜は12サインと支配星のお話です。

現在、西洋占星術で主に使われる天体は10個あります。
動きが速い順に月・水星・金星・太陽・火星・木星・土星・天王星・海王星・冥王星。
セレス・パラス・ジュノー・ヴェスタなどの小惑星を使って占う占星術師もいますが、
大抵は支配星としてサインを受け持っている10天体を使います。

主要天体が10個なのに対して、サインは12あります。
どこかで支配星がダブっているということですね。
おさらいの意味で12サインとそれを支配している天体を並べてみます。

牡羊座…火星　牡牛座…金星　双子座…水星　蟹座…月　獅子座…太陽　乙女座…水星
天秤座…金星　蠍座…冥王星　射手座…木星　山羊座…土星　水瓶座…天王星　魚座…海王星

水星と金星が、サインをふたつずつ受け持っていますね。
水星が支配しているのは双子座と乙女座、金星が支配しているのは牡牛座と天秤座です。

この割り当ては、占星術の歴史の中では割と最近に定着したものです。
18世紀の前半あたりまで、占星術で使われる天体は7つしかありませんでした。
肉眼でもはっきりと見える天体である月・水星・金星・太陽・火星・木星・土星です。

土星よりも遠いところにある天王星・海王星・冥王星は肉眼で見ることはできず、
望遠鏡が発明されてからやっと発見されました。最も早い天王星が1781年発見。
海王星は1846年。冥王星は1930年発見です。10天体が出揃ったのが70年ちょっと前。
それ以前は、12サインに対して7天体がこんな風に割り当てられていました。

牡羊座…火星　牡牛座…金星　双子座…水星　蟹座…月　獅子座…太陽　乙女座…水星
天秤座…金星　蠍座…火星　射手座…木星　山羊座…土星　水瓶座…土星　魚座…木星

太陽と月はそれぞれひとつのサインを支配し、残りの5天体がそれぞれふたつずつ
サインを受け持っていました。牡羊座～天秤座までは現在と変わりませんね。
現在冥王星に支配されている蠍座は、かつては牡羊座と同じく火星の支配下にありました。
水瓶座は天王星が発見される前はお隣の山羊座と同じ土星に支配されていました。
海王星が発見される以前の魚座は射手座と同じ木星が支配星でした。

この、昔の支配星は一定の法則に従って配列されています。
12サインを順番どおりに円形に並べ、それぞれの支配星を書き入れてみると
よくわかります。紙を用意して、牡羊座から魚座までぐるっと丸く並べてみましょう。
サインの順番を間違えないようにしてください。方向は反時計回りに。

まずサインを並べ終わってから、天体を書いて行きます。
ただし牡羊座からではなく、蟹座と獅子座から。

蟹座と獅子座、お隣同士のサインです。
獅子座はごぞんじ太陽が支配しているサインで、蟹座は月が支配しています。
天体の中で、太陽と月は王様と女王様です。王様と女王様は一つの国に一人ずつ。
太陽と月も、それぞれひとつのサインしか支配していない天体です。

蟹座・獅子座を中心にして、両隣へ、両隣へ、と目を移していきましょう。
蟹座のひとつ手前（向かって左隣）にあるのは双子座です。双子座は水星に支配されています。
獅子座のひとつ先（向かって右隣）には乙女座があります。乙女座も水星が支配しています。

水星は、月に次いで動きが速い天体であるというのは、前々回に水星を紹介したときに
書きましたね。この素早い星に支配された二つのサインは、どちらも頭の回転が速く
口が達者で、変わり身が速いのが特徴です。

水星に支配されたふたつのサインの、さらに両隣を見てみます。
双子座のひとつ手前（向かって左隣）にあるのは牡牛座で、金星に支配されています。
乙女座のひとつ先（向かって右隣）にあるのは天秤座です。これも金星支配です。

金星は、水星に次いで動きの速い天体です。心地好さ、快楽や美を求める心を司る星です。
牡牛座も天秤座も、美しいもの・心地好いこと・楽しいことを特に好むサインです。

さらに、両隣へ進みましょう。
牡牛座のひとつ手前は12サインのスタート地点、牡羊座です。火星に支配されています。
天秤座のひとつ先は蠍座です。伝統的な占星術では火星が支配しています。

火星は、太陽より少し遅いくらいのスピードで動く天体です。自己主張、生存競争、怒り
戦いなどに関係する星です。刃物や弾丸のようにするどく切り込む・貫く性質があります。
自分の邪魔になるものを押し退ける力も意味します。こういうことばかり並べると
ネガティブな星のようですが、自分の輪郭をはっきりさせるためにはこういう力も
必要なのです。目標に対する一途さや勢いを持つ星でもあります。

牡羊座と蠍座、一見似ているところがないように思えますが、どちらも火星支配ならではの
「ひたむきさ」「一途さ」を持っています。また、このふたつのサインはそれぞれに
自分を邪魔するものへの怒りをどう扱うか、という課題を持っています。

火星支配のふたつのサイン、その更に両隣には木星支配のサインが並んでいます。
牡羊座のひとつ手前には魚座があります。魚座は今は海王星に支配されていますが、
海王星発見以前は木星が支配していました。蠍座のひとつ先には射手座があります。
射手座は今も昔も変わらず木星に支配されています。

木星は火星より遅く動きます。
12サインを12年かけて一周し、ひとつのサインに約1年間とどまるので
中国では「歳星」と呼ばれています。木星が司るものは「拡大」「発展」です。
「でっかいことはいいことだ」な星で、関わるものを全て今より大きく広げようとします。
広い視野や心、寛大さ、遠いものへの憧れなどを支配します。

射手座と魚座、この取り合わせって「牡羊座と蠍座」に匹敵するくらい、
一見似ているところがなさそうに思えますね。射手座は雑駁、魚座は繊細。
しかし射手座も魚座もそれぞれに心が広ーいサインです。どちらもケチじゃないところが
長所であり短所。

木星の裏の意味には「浪費（限界ってもんがわからない。限界を設けない）」っていうのが
あるんですが、射手座さんと魚座さんは基本的に「お財布の紐を締める」とか
「何かを断つ・断る」というのが苦手だったりします。ふくらませる、お店を広げるのは
大の得意だけど出したものは出しっぱなし、広げた大風呂敷を畳めないというのが
この人たちの困った所です。

木星に支配されたふたつのサインの更に両脇には、土星に支配されたサインがあります。
魚座のひとつ手前は水瓶座。今は天王星支配のサインですが、昔は土星が支配星でした。
射手座のひとつ先はおなじみ山羊座。今も昔も変わらず土星が支配しています。

土星は、古典七天体（望遠鏡が発明される以前から知られていた七つの天体）の中で
最も移動速度が遅い天体です。また、天王星・海王星・冥王星が発見される以前は
この星が最も地球から遠い位置にありました。

土星が司るものは「時間」「時代」。寿命や社会的な制約といった「限界」。
「老年」「晩年」を司る天体とも言われています。山羊座も水瓶座も「時間」という観点から
物を見ることに関係するサインです。木星に支配されている2サインのテーマが「広い視野で
見る」ことであるとすれば、土星に支配されている2サインのテーマは「長い目で見る」
ということです。山羊座は保守・水瓶座は革新といった違いがありますがどちらも
「時代」との関係が深いサインです。

土星に支配されているふたつのサインは、お隣同士のサインでもあります。
太陽と月を中心にして、速い天体から遅い天体まで順々に並べていって
一番遠い天体に支配されている二つのサイン同士で、輪がくっつくように
なっているのです。この古典七天体の並びはとても綺麗だと当番は思います。

この古典的な割り当て方だと、同じ天体に支配されるサイン同士の関係を見ても
180度で向かい合っているサイン同士の支配星の関係を見ても、それぞれに面白いです。
ぴたりと綺麗にはまっているのがとても興味深いのですが、今夜はもう時間切れなので
そのへんのことはまた次回に。おやすみなさい。