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ほしのきらり。

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カテゴリ

2022.07.01
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カテゴリ:美術館・博物館
レオナルド・ダ・ヴィンチの『​聖アンナと聖母子』についてフロイトの分析による母性についての構想手書きハート

パリ・ルーヴル美術館


レオナルド・ダ・ヴィンチ
​Leonardo da Vinci​

1452年4月15日〜1519年5月2日(67歳没)

フィレンツェ共和国ヴィンチ村〜フランス王国アンボワーズ


レオナルド・ダ・ヴィンチ
​​Leonardo da Vinci​​
Vinci,1452-Amboise,1519

​Saint Anne,la Vierge et
I'Enfant Jouant avec un agneau,
dite La Sainte Annc.
Vers 1508-1519 

『聖アンナと聖母子』1502年〜1516年頃​​

ポピラの板 油彩 168.5cmx130.0cm

パリ「ルーヴル美術館」所蔵。

〈ルーヴル彩色画〉


『聖アンナと聖母子』の初期構想段階を示すものは、

いくつか残っている。

これらのスケッチは、

(未完成ではあるが)

最終形となったルーヴル彩色画に至る

試行錯誤の過程をよく示している。


聖アンナの膝の上に

マリアが座る不自然な形は、

はやくから出来上がっていた。

しかし

​聖アンナの頭部の位置は、​

なかなか定まらず、

右へ左へと揺れ動く。

結局は、

このスケッチで試された

聖アンナのふたつの頭部の、

中間の位置に配されることになった。


一方、

​幼児イエスは、​

自らの受難の象徴となる子羊と遊んでいるのだが、

当初はイエスと羊の距離が長く、


​マリアは、わが子を​

受難の運命から遠ざけようとしているようだ。


しかし​彩色画​では、

イエスと羊はより近づいて密接な関係となり、

マリアは両腕を伸ばして、

イエスを差し出すポーズが選択されている。

それはあたかも母がこの運命を受け容れ、

神の意志に委ねているかのように見える。


ルーヴル彩色画は・・・​

レオナルド後半期に特有の

スフマート技法によって、

丹念に描かれており、

そのため描かれた人体の丸みや

表情の柔らかが一層強調されている。


しかし同技法に

よほどに時間がかかったのだろうか?

特に、

マリアの衣装と背景の風景部分において、

未完成さがも立つショック

しかし、

背景の山々や足元の岩場は・・・

『岩窟の聖母』や、

『ラ・ジョコンダ』に近く、


その険しさによって

幼児イエスに将来ふりかかる悲劇を暗示しているように思える。

また、ルーヴル彩色画では上向き矢印採用されなかったが、


〈バーリントン・ハウス・カルトン〉

聖アンナが、

「天を指し示す手」をしている点は興味深い。

ここでは素直に、

イエスが生贄となるのは、

神の意志によることを、

マリアに教えていると読もう。


しかしその手が、

洗礼者ヨハネの顔のすぐ横に描かれていることで、

いずれレオナルドの最後の作となる

『洗礼者ヨハネ』

同カルトンでの構想の一部がそのまま繋がっているようだ。


それにしても、

マリアとアンナの、

それぞれ我が子を目見つめる眼差しの、

なんと優しく柔和なことだろう〜。


その背景に、

幼児期に実母と離れて暮らした

レオナルド自身の境遇をみることは間違いではないだろう。


母の愛へ飢餓感を始め、

レオナルドは、

これまでにも多くの精神分析の対象となってきた。


それらの最初期のものである

​「フロイトによる分析」​は有名だ。


彼が手がかりとしたのは・・・

レオナルドが語るところの

幼年期の思い出である。


レオナルドが、

ゆりかごの中で寝ていると、

一羽の​​鳶(とび)が飛んできて、​

尾を口の中に突っ込んできて、

その尾で何度も口の中を打った

との思い出話だ。


これをフロイトは、

レオナルドの同性愛的性向に結びつけ、

その深層心理の母の記憶があると考えた。


つまり、

口の中にある鳶の尾は、

母の乳房の思い出だと、

精神分析学の父は考えたのだ。


フロイトは絵画の中に

この深層心理が発露している可能性を考え、

レオナルドが最後まで手放さなかった

三枚のうちの一枚である

『聖アンナと聖母子』にそれを見出した。


フロイトはこの絵の中で、

聖母マリアが着いている服に、

翼を広げた鷹の姿を見出したと主張した。


この説は議論を巻き起こし、

手法自体の有効性についても論争が起こった。


フロイトがしかし“鷹”だと考えた語は、

“鳶”のドイツ語への誤訳から来ているので、

この説自体が成り立たないことは、

今ではすでに明らかである。


また、口の中に尾を突っ込まれて

かきまわされる白昼夢の思い出は、

筆者にはマザー・コンプレクスの発露というよりも、

もっと直接的に彼の同性愛的性向を映し出しているように思える。


ただ、

レオナルドの鳥に対する観察記録には、

母と子の関係についての考察もかなりある。


小鳥があまりに太ると

鳶の親鳥は餌を与えないといった記述に加え、

巣から奪われて他の母に育てられた雛たちが、

大きくなってから

実の母鳥のもとへ戻るといった話だ。


そこには、

彼の幼少期における実母との関係が

無意識に影をおとしているのかもしれない。


重い運命を背負った

わが子を見守る母マリアの眼は、

かぎりなく優しい。


そして娘マリアを見つめる

母アンナの微笑みもまた然り。


レオナルド絵画に頻出する

「子を抱く優しき母」像は、

ルネサンス期には珍しく

官能性にかけるかわりに、

かぎりない母性をたたえている。

だからこそそれらは観る者の心に響くのだろう。


(写真撮影:ほしのきらり)
(参考文献:筑摩書房/池上英洋、レオナルド・ダ・ヴィンチ生涯と芸術のすべてより)


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最終更新日  2022.07.01 00:10:13
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