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2021/09/13(月)00:26

探偵ベートーヴェン 颯爽(?)登場(Beethoven Investigates)『モーツァルトは子守唄を歌わない』

日本のミステリー小説(56)

みなさん、こんばんは。 今はあまりに沢山の賞が登場してどれがどれやらわからなくなってますが、昔ミステリー作家の登竜門に江戸川乱歩賞というのがありました。その賞の候補に何度かあがりながら受賞できず、ようやくこの作品で受賞した作家、森雅裕さんの作品を紹介します。 モーツァルトは子守唄を歌わない 森雅裕 1781年、ウィーンで作曲家モーツァルトが死ぬ。 1809年6月、作曲家ベートーヴェンは訪れた楽譜屋で、モーツァルトの娘と噂されるシレーネと出会う。彼女は、自分の父が作曲した子守唄を、モーツァルトの作品として出版した楽譜屋に、抗議しに来ていた。ところが楽譜屋が火事になり、死体だけがベートーベンが練習を行っている劇場に現れる。更に魔笛作家の行方不明など不審な出来事が連続して起こり、さしもの偏屈作曲家・ベートーヴェンも、「モーツァルトの死の謎」に関して、無関心を決め込むわけにはいかなくなるのだが。  ちょうど映画『アマデウス』の公開時期とかぶったために、候補に挙がった際に、「インスパイアされたのでは?」という意見もあったが、第31回江戸川乱歩賞を受賞。確かに、ある一点において共通要素はあるけれど、「そこだけで亜流だの何だの言われたら、作品は何も書けなくなってしまうぞ!」とちょっと憤慨。とまれ、この作品が世に出てくれた事にひたすら感謝。  森作品にはつきものの突っ張り美女と共に、愛すべき楽聖・ベートーヴェンが「面倒臭いことは嫌いなんだ。」といいつつも、ノセ上手のチェルニーにノセられて、正義感ともちまえの探究心で、事件の真相に迫ってゆく物語は、テンポが良く、文章に余計な技巧も凝らしてないので読みやすい。  ストレ−トに書けば、この設定ってボギ−&バコールのハードボイルド探偵物語なんだけど、「ああ言えばこう言う」のチェルニー&ベートーヴェン師弟会話で、その二枚目を微妙に崩して二枚目半になっている。作者の照れかなぁ。でも、崩したおかげで音楽室や教科書の中で、かしこまっている写真でしか知らないベートーヴェン、チェルニー、シューベルトが、ウィーンの街で、普段は本当にこんな風に喋ったり、怒ったりしてたのかもしれないなぁと思わせてしまう。(ま、さすがに殺人事件には遭遇してなかったろうけど)。そう思ったのは私だけではないらしく、「楽聖がこんな人だったとは」という手紙が多数来たらしい。それだけフィクションをノン・フィクションだと信じさせる人物造形ができていたって事だろう。  最初に読んだのは受賞後すぐ出た単行本だが、購入したのは1988年の文庫版。その理由は、文庫版の本文イラストとカバー装画が魔夜峰央さんだったから。皮肉屋の正義漢チェルニー&ベートーヴェンのキャラクターが魔夜さんの「パタリロ!」にそっくりだから、この組み合わせってまさに天の配剤。墓場にザクザク十字架を突きさしているコンスタンツェやすね毛がしっかり見えている女装姿のベートーヴェンは爆笑もの。 【送料無料】モーツァルトは子守唄を歌わない楽天ブックス

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